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授賞式・セミナー

受賞企業インタビュー

ピジョン株式会社 ベビー・ママ用品事業

ピジョン株式会社
point
  • 0か月から18か月の赤ちゃん用品に特化
  • 育児の「お困りごと」を解決
  • 「母乳実感」(2010年)
  • 産院と連携したマーケティング
  • グローバル展開
楠木
ビジョンの受賞で日本全体に強いメッセージになるのは、本当のモノ作りの力を示したことだと思っています。消費者にとって価値のあるモノを作って儲かっていることが素晴らしいことです。まず、日本でトップシェアである哺乳器の強みをお聞きしたいのですが、哺乳器の良さは複雑です。エンドユーザーの赤ちゃんの声は聞けないし、また、簡単に飲めるようでは飲む力の発達を阻害するかも知れません。お母さんたちも、哺乳器の良さがわからない。良い哺乳器とはどのようなものなのですか。
山下
粉ミルクだけでなく母乳で育てる場合でも、哺乳器は使われます。お母さんのおっぱいからでも哺乳器からでもスムーズに飲んでくれるのが良いのですが、我々の調査によると、哺乳器から上手くミルクを飲めない(哺乳器を嫌がる)、または哺乳器からは飲むのだけどお母さんのおっぱいからあまり飲まない(おっぱいを嫌がる)という赤ちゃんが5~6人に一人の割合で存在します。このような赤ちゃんの状態を「乳頭混乱」と言っています。良い哺乳器というのは、この「乳頭混乱」を赤ちゃんが起こしにくいものであると思います。ミルクを飲むということは、赤ちゃんの命に係わるものですから大きな問題なのです。アメリカでは哺乳器のメーカーが17社ありますが、他のメーカーのものは受け付けなくて、ピジョンの哺乳器でやっと飲んでくれた、Life Saverだと感謝されたことがありました。
楠木
女性の社会進出が進む中で、なるべく母乳を飲ませ、時間がないときにミルクを飲ませたいというお母さんが増えていると思うのですが、お母さんの乳首になるべく近い、というのが良い哺乳器なのですか。
山下
はいそうです。単なる形状ではなく、お母さんの乳首(おっぱい)の「機能」に近づけようと真面目に取り組んでいます。赤ちゃんの哺乳の仕方を研究し、哺乳の3つの原則を見付け、それに基づいて製品化することにより、他社とは機能的に差別化できた乳首を作れたと思っています。
楠木
ブランドでは母乳実感が日本ではトップシュアで、海外でも売れていまして、中国でもトップシェアですか。
山下
中国では日本より高い価格となっていますが、それでも売れています。
楠木
本当に良いものであることがお客様に伝わり、喜んで対価を払うことにより、企業としても結果として利益がでる。モノ作りの力というのは、こういうことだと思います。
良さを伝える際に、産婦人科の医師が重要な役割を果たしているそうですが、説明してください。
山下
育児用品を買う時に誰の影響を受けるのかを、日本だけでなく、中国、ブラジル、ロシア、インド等で調査しましたが、共通して、一番が口コミ、次が医療関係者となっていました。更に店頭でもそのイメージにあった陳列をしています。
楠木
ポーター先生の考え方にポジショニングというものがあり、その本質の一つは、何をやるかよりも何をやらないかです。
ピジョンでも0か月から18か月を追求しているということですが、18か月以上を対象外としている理由は何ですか。
代表取締役社長 山下茂 様
代表取締役社長 山下茂 様
山下
最大の理由は、世界中の赤ちゃんの発達過程が人種を問わず18か月まではほぼ同じである、ということです。知識、研究をグローバル生かせます。しかしながら、その上の層を対象にすれば、自我や各国の文化の影響をうけたり、強いグローバル・プレイヤーがいて熾烈な競争があったりします。
楠木
今のお話をまとめますと、18か月までであれば、ピジョンが手間ひま、コストをかけて作ったベビー・ママ用品が、良いものを作れば、世界中で良いものとして受け入れられる。18か月を超えると、国によって異なるライフスタイルの影響が大きくなり、日本で良いものが必ずしも受け入れられない可能性がある。モノ作りの力が一番報われるのが18か月までである、という理解でよろしいですか。
山下
その通りです。あと、それほど強い競争相手がいない領域で勝負しているということもあります。
楠木
18か月以降の子供服等はやらないのですか。
山下
以前はやったことがありましたが、上手くいきませんでした。海外でも展開しましたが、ブランドがそこまでストレッチできなかった、そこに強い専業メーカーがあったり、我々が持っていないビジネスモデルを要求されたり、ということがありました。簡単に始められることは成功しないと思いました。
楠木
お話をお聞きしていますと、ビジネスは顧客の問題を解決することにより対価を得ているという面があり、本質的にピジョンが問題解決できるのが、今の商品と今のセグメントであるということですね。
セグメントが18か月までならば、粉ミルクはやらないのですか。
山下
粉ミルクは非常に大きな市場なので魅力的であり、社内でも積極的な意見がでていましたが、当社は「母乳育児を応援する」というスタンスであり、私が社長の間はやりません。
楠木
では、今後の成長はグローバル展開ということになりますか。
山下
売上の半分位が海外になりましたが、アフリカは手つかずで、インドは漸く来年黒字化が見えてきた状況であり、まだまだ伸びしろがあると思っています。
楠木
新興国でも、ものの良さを理解してもらえれば、相当の対価をいただけるというのは、モノ作りの底力を感じるところですね。
山下
殆どの国はそうなのですが、インドは違います。中国の場合は2割位の富裕層から始めていまは5割位がターゲットになっていますが、インドでは当初3%と考えていましたが小さすぎるので10%をターゲットとしましたが、顧客、流通を始め様々なところが中国とは全く違っています。中国では良い商品は高くても買ってくれるのですが、インドでは独特の価値観があり、商品の良さがストレートに伝わりにくい状況です。そこで、インドの消費者向けに商品を開発し、それを中南米で展開するような仕組みができつつあります。
楠木
インドが製造の拠点になりつつあるということですね。インドのマーケットの開拓でご苦労があると思いますが、インドで新しいビジネスを作ることができれば、それが新たなピジョンの将来像をさらに広げることになりますね。
山下
インドにある程度目途がつけば、次はアフリカです。
楠木
モノ作りが商売として報われる例であり、日本の多くの企業に心強いメッセージをいただけたと思います。

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