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受賞企業・事業部レポート

トレンドマイクロ株式会社

2003年度 第03回ポーター賞受賞 ソフトウェア・サービス業
ネットワーク・セキュリティ対策の中でもウイルス対策という一分野に特化し、ウイルス情報の蓄積と解決策開発を、24時間365日、世界に散らばった拠点から、誰よりも速く誰よりも効果的に行なうことに集中

企業概要

トレンドマイクロは1988年に創業、ウイルス対策ソフトウエア製品とサービスを提供する会社で、世界のウイルス対策製品・サービス市場で売上高3位の企業である。
(業界リーダーの世界市場シェアは36.6%、同社は14.3%。IDC Market Analysisによる。)

ユニークな価値提供

 世界のいつどこで発生するか予測不能で急速に広がるウイルスの対策を、どこよりも早く提供する。企業および個人に、ウイルスの予防と万が一感染した後に迅速に修復するサービスを提供。
 水際でウイルス対策をすることにより、顧客はウイルス感染した場合に起こるであろう業務効率の低下を避けたり、感染による業務効率の低下からいち早く立ち直ることができる。

独自のバリューチェーン

技術開発
世界中に分散したエンジニアが、日本、米国、台湾、ドイツ、中国などに常駐し、ネットワーク上でリアルタイムに情報共有しながら製品開発を行なっている。(これほど国際的に展開して開発活動を行なっている競合はいない)

アフターセールス・サービス
世界中から選び抜かれた250人以上のスタッフがフィリピン、台湾、カリフォルニア、ミュンヘン、パリ、東京などに常駐し、ネットワーク上でリアルタイムに情報共有しながら24時間365日ウイルスの情報収集や調査、解析活動を行なっている。

開発されたソリューションを迅速に世界中の顧客に提供するため、調査、解析を行なう技術開発部門と顧客サポートを行なうアフターセールス・サービス部門が一つの部門に統合されている。

オペレーション
ウイルス感染の予防から隔離、修復までの製品とサービスを提供。パッケージ製品の購入後一年間のサポート期間が終了しても、再度ソフトウエアを購入する必要は無く、コンテンツとサポートサービスのみを購入することができる。

マーケティング・セールス
セールスの仕方は、同じ大企業向けでも、日本市場と海外の市場で大きく異なる。海外進出の際には「フォーチュン1000」のリストに載るような大企業をターゲットとしていたが、そういった海外の大企業顧客は社内に経験豊富な情報システム管理担当者を有することが多いので直接販売を行なった。しかし、日本企業は必ずしもそうではないので日本市場では、大企業のネットワークを熟知しているシステム・インテグレーターを販売チャネルとし、彼らに手厚いサポートを提供している。(ただし、サポートサービスは自社で提供。)日本におけるこの活動は、90年代初頭から取り組んだ同社が、業界での先駆者となる。

活動間のフィット

 同社の活動は、とにかく誰よりも速く有効なウイルス対策を開発し提供することに集中している。同社の活動の大きな特徴の一つは、国際的な分散だが、機能によって活動の自立性と調整のバランスがそれぞれの強みを活かすようにマネージされている。ウイルス情報の収集活動は各国に分散し、解決策は世界各国から吸上げた情報をもとに、拠点で集約され、対策提供の仕方は顧客を良く知る各国のオペレーションにまかせている。顧客開拓の仕方も同様に各国にまかされている。

 ウイルス対策ソフトは、PC,ユニックス、リナックスなどと、対応すべきOSプラットフォームが多く開発が複雑だが、トレンドマイクロは、ウイルス対策ソフト専業であり、他のネットワークセキュリティ分野のソフトと統合をしないで独立で提供するため、開発を迅速に行なうことができる。

 それぞれの国において最も要求の厳しい顧客をターゲット顧客とし、高機能な製品とサービスを提供することに専念する。この市場セグメントは機能性重視である上、その効果がターゲットマーケティングや口コミで広がりやすく、一般大衆を対象とした広告活動の必要性が低い。日本企業である同社としてはブランドイメージの向上に多大な広告費を投入する必要が無い。

 開発活動と海外での販売活動が大企業市場に特化しているのに対して、日本市場においては中小企業市場、自治体・官公省庁および個人市場でも活発に活動し、市場リーダーの地位を確立している。しかしこれは、活動のフィットを崩しているわけではない。ソフトウエアという商品特性により、製品種類を増やしても製造設備に投資が必要になるわけでも、在庫費用が増えるわけでもない。製品内容の変更も多くの追加投資を必要とせずに可能である。広告などの販売促進活動については、日本市場ではすでにブランド認知が高まっていることから必要性が低いし、中小企業市場へはシステム・インテグレーターによる販売活動を行っていることから直接販売する場合よりも同社販売組織への負担は少ない。
(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • インターネットへの出入り口(ゲートウエイサーバー)で機能するウイルス対策ソフトの開発に成功、先行他社に先駆けて発売を開始した(1996年。米国特許取得済み)。現在でもゲートウエイ製品の世界市場シェアは40%にのぼり、2位企業の倍のレベルにある。
  • 世界各地で発生し急速に広がるウイルスに迅速に対応することを可能にする多国籍企業としての国境を越えた組織運営。

戦略の一貫性

ウイルス対策分野への特化は、創業時、1988年より。

トレードオフ

  • ネットワークセキュリティにおけるアンチウィルス以外の分野(ネットワークのアクセス制限/ファイアウォール、不正侵入監視システム/IDSなど)で製品開発をすること。(競合他社はこれらの分野に進出し、複数の分野のソリューションを一つの製品にまとめ、運用管理の一元化を可能にする戦略を採用している)。トレンドマイクロは、複数のセキュリティ分野に資源を分散させ、またそれらを一つの製品に統合する作業にも資源を割いていたら、刻々と変化するウイルスには十分に対応できないと考えている。
  • 同社がウイルス対策専業であるがゆえに異なる分野毎に違うメーカーの製品を運用しなければならないというユーザー側の不便さに対しては、他の分野の専業メーカーと提携し、互換性を確保する他、パッケージ価格や一括購入の利便性を提供している。
  • 機能による差別化を重視しているため、使い手の知識によっては運用管理の簡便性が不足する傾向にある。
  • 広告宣伝費を、個人市場向けに、知名度を上げるためのマーケティング投資には積極的に使わない。

収益性

 営業利益率はソフトウエアサービス業界の平均を一貫して大幅に上回っている。投下資本利益率についても業界平均を上回る。
 同社は1998年に店頭市場で株式公開、99年にアメリカのナスダックで株式公開、2000年に東証一部に株式上場をしたため、投下資本額が大幅に増加している。このような場合、投下資本利益率は通常悪化するが、同社の場合には一貫して改善、業界平均との差も拡大傾向にある。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年
13.9%P 17.2%P 7.5%P 8.1%P 3.7%P 2.0%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2002年 2001年 2000年 1999年 1998年
27.6%P 28.3%P 26.3%P 30.1%P 27.1%P 20.0%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

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