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受賞企業・事業部レポート

株式会社 ベネッセコーポレーション 教育事業グループ

2005年度 第05回ポーター賞受賞 教育サービス
受験勉強だけでなく、毎日の勉強を継続的に支援。6ヶ月の乳幼児から高校3年生までを対象に、通信教育による個別対応で、低価格ながらも高い顧客満足。その結果として高い顧客維持率を誇る。

概要

ベネッセコーポレーション教育事業グループ(以下、ベネッセ)は、6ヶ月の乳幼児から小学校入学前の子供までには、「こどもちゃれんじ」、小学生から高校生までは「進研ゼミ」ブランドの通信教育講座によって、全19コースを提供している。
教育サービス業界は、過去数年間にわたって、少子化、学校での教育内容の変更と多様化、という環境変化に直面してきた。同社は通信教育に特化し、独自の活動システムを構築することによって、教室型の教育サービスに伴う、画一化したマス教育か、あるいは少人数制で高価格な個別対応というトレードオフを超え、手ごろな価格で個別対応を可能にした。2005年の受講者は約401万人(2005年4月時点、昨年度比4.7%増)で、0歳から18歳までの子供人口の5人に一人が顧客という計算になる。顧客維持率は、学年をあがる際(たとえば小学1年生から2年生へ)、学校をあがる際(たとえば小学校入学前から小学校)、いずれも非常に高い数字を誇っている。

ユニークな価値提供

 ベネッセが提供している価値は、自宅で自ら勉強する子供を対象に、日常の勉強をサポートすることである。この価値提供は、進学のための受験勉強支援とは異なり、6ヶ月の乳幼児から始まり、高校を卒業するまでの継続的な勉強の支援を意味している。
 同社は、進学先としての高校や大学の情報を提供するのにとどまらず、その先にあるキャリアに子供の意識を向けるため、小学生、中学生、高校生にキャリア情報を提供したり相談の機会を設けている。さらに、学力を向上させるための教材の提供、進路について考え選択するために必要な情報の提供、学力を診断するための全国レベルの精度の高い評価テストを提供している。これら全てを提供することによって、つまり、将来を自ら考え目標を持つことと、そのための力をつける手段、力がついたか評価する手段をセットで提供することによって、将来の目標、学力向上、実力評価、学力向上への更なる取り組み、あるいは進路修正といった形で、子供が自らの将来を考え選んでいくプロセスを支援している。
 また、同社の勉強支援は、学齢によって発生する共通のニーズを基礎としながらも、個別対応によってそれぞれの子供を支えている。月々送られる教材の中身は、学校で使っている教科書や授業の進み具合、受講者のレベルに合わせて編成される。受講者が送り返した回答へは、「赤ペン先生」の赤ペンでの書き込みによる個別のフィードバックが提供される。フィードバックは単なる回答の採点にとどまらない。たとえば、受講者が勉強法や部活との両立などの悩みを書いて送ると、より効果的な勉強法などがアドバイスされる。
 さらに、5人に一人が会員という規模と、全国ネットワークであることを活かし、質・量ともに充実した情報を提供している。学力診断や合否判定に限らず、進研ゼミ卒業生からの学校紹介、受験体験談、アドバイスといった生の声を含め、圧倒的に多くの進学先(高校、大学)の情報を提供することができる。
 また、同社のサービスは、手ごろな価格で提供されている。これは、同社が、日常の勉強を継続的に支援するために、必要なことである(高価格であれば受験前だけなど、短期間しか継続できないであろう)。「こどもちゃれんじ」の価格は月1487円、「小学講座」は月2431円から4472円(学年による)、「中学講座」は4982円、「高校講座」は7211円である(2005年現在)。

独自のバリューチェーン

教材作成・採点・フィードバック作成
 同社の勉強支援は、個別対応によってそれぞれの子供を支えているが、これは、一つには、豊富な教材の蓄積と、ITシステムを利用した教材の自動的な組み合わせによって可能になっている。まず、同社は、多彩な教材を開発、蓄積しており、たとえば高校1年生の英語のテキストには2000種類、数学のテキストには1400種類が用意されている。同社は、受講生のレベル、受講生が通っている学校の授業の進み具合、学校で使われている教科書、受講生の将来の希望などにあわせて、自動的に最適な組み合わせを選び出し、自動印刷システムによって教材を印刷する。
 印刷部数は、会員の月々の継続率が非常に高いこと、過去のテレビコマーシャルやダイレクトメールへの反応データの分析から、新規顧客の獲得数が非常に高い精度で予測可能であることによって、高い精度で必要数を予測することができる。その結果、在庫はほとんど生じない。
 提出された回答への添削指導、学習指導、励ましやメッセージは、赤ペン先生が個別に手書きをすることによって、ハイタッチな個別対応を行っている。同社は現在、約2万人の赤ペン先生を組織している。赤ペン先生は、子供の学ぶ力を伸ばすという仕事の意義、直接のコミュニケーションに動機付けられていることが多いが、加えて同社は、社員と赤ペン先生、赤ペン先生同士がコミュニケーションする場をウエブ上に提供したり、先生への研修、先生から教材の企画を募ったりすることで、赤ペン先生のモチベーションを高めている。

出荷物流
 自動で個別に印刷・パッケージされた教材は、自動配送センターから自動配送システムによって顧客に直送される。

顧客維持・顧客のサポート
 コールセンターから、定期的に顧客にアウトバウンドコールをし、教材を活用できているか、勉強法で困っていることはないか、などの質問をしている。顧客の悩みを積極的に解決することで、顧客維持率の向上に貢献している。
 同社は、受講者に対して、さまざまな情報提供を行っている。たとえば、大学の様子などについて、進研ゼミOBによる「ゼミレポート」が提供される。

新規顧客の獲得
 同社の教育サービスは顧客維持率が非常に高いため、新規顧客の開拓に対して、多大な投資をする必要がない。そのような中で、新規顧客の開拓は、全国規模のテレビコマーシャルやウエブマーケティングなどの販促活動を行う「HQマーケティング本部」と、地域に密着した販促活動を担当する「地域営業推進本部」が連携し、コミュニケーション・ミックスにより関心を高めた上で、本部からダイレクトメールを送ることによって、非常に効率的に契約を得ている。マーケティング、営業活動がこれらの組織に集中化しており、担当者の人数は、非常に少ない。

研究開発
 通信教育は、子供が一人で勉強ができることが前提である。したがって、読んだだけでわかりやすい教材を開発するため、教材に関する顧客へのアンケートはもちろん、通信添削、模擬試験において蓄積された、子供がどんな問題でどのような間違いを犯しやすいのかに関するデータを活用し、つまずきやすい点について、特に重点的に説明をする。また、図解、イラストの多用、バーチャルな進研ゼミの先生による語りかけ口調などといった工夫を重ねている。
 1980年より継続して、教育課題がどこにあるのかを探る各種調査を行っている。定期調査は4?5年毎、加えて、トピックにフォーカスした調査も行っている。現在は、乳幼児から大学生までの発達を連続的に捉えている。教育学の専門家、各教科の専門家、その他子供の成長や教育に関係するさまざまな学問領域の専門家、研究機関とのネットワークを構築し、上記調査に活かしている。

全般管理
 企業名でもあるベネッセ(ラテン語で「よく生きる」という意味の造語)という企業理念は、社員のみならず、赤ペン先生や進研ゼミ卒業生からなるゼミレポーターにとって、仕事の意義を明確にし、誇り、やりがいを持って働けるようなモチベーション向上に貢献している。継続的な広報活動の結果、同社の企業理念、企業姿勢は顧客にも伝わってきており、顧客からの信頼感、忠誠度を向上する効果を現すようになっている。

活動間のフィット

 同社の活動は、低コストと、個別対応をいずれも高い次元で可能にしている。さらに、個別対応、高い継続率、データベースの蓄積による優れた個別対応と低コスト構造、という循環で、これらは、互いに強め合っている。
 進学塾と違って通信教育講座は、(しばしば高給を払わねばならない)有名講師を雇う必要はなく、赤ペン先生の多くは主婦業に従事する高学歴の女性であることが多く、パートタイマーとして雇用することにより、正社員よりも低コストでハイタッチで高品質な個別対応が可能になっている。また、教室などの賃貸料を支払う必要もない。
 膨大なデータベースを利用して、教材のカスタマイズ化と印刷、パッケージング、発送が自動化されている。継続率の高い年間申込者に対するサービスであるので、印刷物の過剰在庫は発生しにくい。
 教材の開発とマーケティングは本社と地域本部に集中化し、地方に営業担当者を持たない。継続率が高いので、新規顧客獲得に要するマーケティング費用も少なくてすむ。
 さらに、継続しているため、顧客に関する情報が蓄積され、より効率的に個別対応をすることができる。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 0歳から18歳まで継続して学習支援するという戦略概念
  • 赤ペン先生という低コストで質のよい個別対応が可能なしくみ
  • 顧客情報と多様な教材のデータベース化と、カスタムメイド教材を自動で作成、発送するシステム

戦略の一貫性

 同社の教育事業の核である進研ゼミは、1969年に始められたが、当時から、通信教育、会員制(継続性)、個別添削が行われていた。しかし、当時は受験対応が主眼であった。
 1980年に、対象を「受験勉強をする人」だけでなく「学校生活を送る全ての子供」に拡大し、サービスの内容も受験準備だけから、進路選択、子供の生活にかかわる様々な情報提供へと拡大し、これが、現在の戦略の基礎となった。
 さらにこれは、1990年における同社の企業理念へと結びついた。子供の日常における勉強を支援するという同社の戦略は、1990年に発表された同社の企業理念、「Benesse」(ラテン語のbene=良い、と esse=生きる、からの造語)に則している。Benesseeとは、同社の定義によれば、「よく生きる」であり「前向きに人生を謳歌する人間味豊かな生き方」を意味している。この企業理念の下、同社は、「一人ひとりが主体的に人生を切り開いていくことを「教育・語学・生活・福祉」の分野でお手伝いする会社になろうという決意」を持ち、「赤ちゃんからお年寄りまで生涯にわたって課題解決や向上意欲を応援する」ことを事業目的の一つとした。
 2000年には、個別対応をさらに強化し、学年ごとに共通だった教材を、1000種類を超える教材から組み合わせて個人別に作成する方式へと改めた。
 小学校入学前の子供を対象とする「こどもちゃれんじ」は、継続性を重視している点と手ごろな価格設定、教室などの設備を使わず絵本やビデオを使った通信教育を行っている点、会員制によってニーズを把握し教材を開発する点、母親を中心としたハイタッチなつながりを構築している点が、学齢期の子供を対象とする「進研ゼミ」と共通した戦略である。違いは、複雑な問題を解くわけでないため添削活動(個別フィードバック)が発生しない点、個別対応の程度が進研ゼミよりも低い点に限定されるが、これらの相違点はいずれも、学齢期前と学齢期の子供のニーズの違いによるものである。
 同社は近年、二つの環境変化に直面した。一つは、少子化の影響で子供が減少していること。二つ目は、日本の学校教育改革である。2002年の新教育指導要領により、「ゆとり教育」の方針の下、小学校の授業時間が全体として短縮され、また、経験型の学習時間が増やされた。その結果、従来の勉強に費やされる授業時間は大幅に削減されたのと同時に、各学校の指導内容の多様性が増した。この変革の結果、学校教育への不安感が増した一方で、同社のサービスには、従来に増して個別対応と信頼性が求められるようになった。同社は、既存戦略を深めることでこれに対応した。レベル別コースや、一部のトップ大学向けコースを導入するなど、個別対応を徹底すると同時に、赤ペン先生に加えてコールセンターからの電話などによってハイタッチな関係を強化した。また、個別対応強化を伝えるテレビコマーシャルを投入、従来のダイレクトメールとの相乗効果によって、顧客数は、2000年のピーク時に向けほぼ回復しつつある。

トレードオフ

  • 手ごろな価格で個別対応ができないため、教室を借り上げての塾形式の教育を行わない。
  • 講師が教える形式の対面指導を行わない。(近年、赤ペン先生が自宅で子供の学習を支援する仕組みが始められたが、これは学習の習慣が確立する前の小学生に対して、赤ペン先生が子供の自主学習を支援するものであり、教えるものではない。また、赤ペン先生の自宅を使用するので、教室を借り上げることはしない。)
  • 生産計画が立てにくく、流通マージンがかかるため、参考書や教材を書店で販売しない。
  • 新規顧客開拓、顧客ニーズ調査、製品の配達などの役割を果たす営業担当者を地域に置かない。

収益性

 投下資本利益率は、教育サービス業界の平均(中央値)を一貫して大幅に上回っている。営業利益率も業界平均より優れている。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年
79.8%P 115.6%P 86.8%P 47.7%P 73.2%P 93.5%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2004年 2003年 2002年 2001年 2000年
7.5%P 8.1%P 7.5%P 4.0%P 9.3%P 9.8%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

受賞企業・事業部 PDF

第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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