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受賞企業・事業部レポート

株式会社 良品計画

2007年度 第07回ポーター賞受賞 製造小売業
「本質において高品質、無駄を省いてわけあって安い」という無印良品の価値提案を、自社ブランド品企画流通(SPA)の価値連鎖全体を通じて徹底して実現

概要

img_2007_03_p.jpg良品計画は、「無印良品」ブランドの商品を企画し、「無印良品」の店舗で販売している。その明確な価値観に裏付けられた事業は、競合のコピーを許さず、世界各国で受け入れられている。

ユニークな価値提供

良品計画は、「無印良品」ブランドの商品を通じて、ライフスタイルを提案している。そのライフスタイルとは、「モノの本質にこだわる」ことだ。良品計画は、商品企画において、商品の本質を見極め、商品の本質としてはレベルを高くし、本質ではないものを取り除くことによって価値を創造している。何かを加えることで価値を創造するのではない。その結果、「無印良品」ブランドの商品は、シンプルなデザイン、その本質的な機能において高品質、低価格で、多くの場合ナショナルブランドの価格を3割下回る。
たとえば、「肌触り」は衣料やタオル、寝具などで本質の価値として重視される。本質でないものを取り除いて低価格にするために、良品計画は注意深く素材を吟味し、製造、流通過程を検討し、本質に関係ない余分な機能や包装をなくする。素材の吟味という点ではたとえば、頭や尾に近い部分を活用したフレーク「鮭水煮」や、裁断して残ってしまうU字型の部分だけの「スパゲッティ」など。また、製造工程の見直しという点では、生成り色の綿製品が象徴的だ。これは、漂白や染色の工程を除いた結果である。この製品ポジショニングは、「わけあって安い」という創業初期のキャッチコピーに表れている。
良品計画はまた、安心感も提供している。同社は、年に15%しか製品を入れ替えない。顧客は、お気に入りの商品が常に店にある、という安心感を持つことができる。
良品計画の製品ラインは幅広く、家庭用品(寝具、インテリア、家具、家電、台所用品、文房具、健康・美容関連商品、アウトドア関連商品)、衣料(男性・女性・子供用衣料、下着、アクセサリ、バッグ、靴)、食品(菓子、加工食品、飲料、冷凍食品)の3分野、7,000アイテムにのぼる。しかし、これらの商品は、「生活者の視点」でという基準で選ばれている。

独自のバリューチェーン

研究開発
良品計画は簡素さを持った「生活美」と「安っぽい」の境目を見極めるため、最高意思決定機関である「商品戦略委員会」で、半期に一度、企画開発の方向性と次期開発商品計画の検討を行う。また、外部の独立デザイナーによるアドバイザリーボードを有しており、彼らを交えた「判定会」で、「無印良品」らしさを俯瞰で見たアドバイスをもらい、意見交換を行う。
良品計画は、無印良品の商品企画のために、アドバイザリーボードの他にも社外の協力を積極的に得ている。衣料・雑貨部門ではヨウジヤマモト社との提携による商品開発によって、ベーシックでありながらも陳腐でない商品の開発を行った。また2003年に始まった「ワールド・ムジ」プロジェクトでは、無印良品が海外で生まれたらどのようであったろうかという問いかけの下、同じコンセプトで海外発の商品を開発している。イタリア、イギリス、ドイツなどで無印良品の考え方に共鳴する一流のデザイナーが匿名で商品開発を行っている。「ファウンド・ムジ」プロジェクトでは、世界各地の生活に根ざした優れた日用品を発掘し、無印良品の考え方で再編集、商品化している。これらのプロジェクトから700もの商品が生み出され、2006年の売上の20%を占めた。また、良品計画では、顧客が商品企画に参加している。インターネット上に設けられた「ネットコミュニティ」では、顧客が欲しい商品を提案し、提案されたアイデアに投票する。投票が一定数を超えると無印良品によってデザイン案が複数提示され、顧客が投票する。一定期間中にデザイン要件を全て解決できると商品化され、顧客はネット上で購入予約をすることができる。この手法で開発された商品には、たとえば、立方体の形をしたソファがある。異なる側面に伸縮性の異なる生地を使うことによって、体を包み込むすわり心地を様々な体勢で楽しむことができる。2006年の販売は13万個、15億円であった。他に、店頭で寄せられる顧客の意見を本部宛に定例報告する「顧客視点シート」、一般消費者の自宅を訪問するオブザベーションなど、顧客ニーズ把握の様々な活動がある。

製造・アウトバウンド物流
良品計画は自社工場を持たない。
海外生産比率の高い衣料・雑貨は、素材と生産地を集約し、生産をより計画的にすることで、物流の集約化を図っている。インナー商品の一部では、店舗の発注回数を週1回に減らし、生産地で各店への仕分けを行うことで、国内物流センター)を省略する試みも開始されている。

店舗運営
良品計画は店頭作業を減らし、標準化し、店で働く人材に顧客サービスと商品説明の時間を与えている。品揃えとストアレイアウトは標準化され、在庫補充は自動的に行われるが、その修正は店舗が行う。取引の多い店には、店での作業を減らすため、物流センターで事前に仕分けされた商品が届く。
出店決定は25の評価項目に基づいて行われる。2004年から2006年度に出店した62店舗のうち、8割を超える店舗で当初計画を上回る実績を残している。

マーケティング・販売
良品計画は、商品タグや包装で、その商品の企画の意図やどのようにして低価格を実現したかを説明する。また、店舗で働く人々には商品知識がある。商品情報は企画段階からシステムで管理され、ウエブカタログなど一連の情報の根幹となっている。
良品計画は、ネット会員とムジ・カード(クレジットカード)会員から構成される無印良品メンバー約180万人の顧客を組織化し、情報発信・収集をしている。
良品計画には、複数の販売チャネルがある。無印良品店舗(240店舗、うち直営が172、ライセンスが68)、西友内のショップ(78店舗)、駅構内のショップ、ファミリーマート内のコーナー、自社サイト内のインターネット店舗。また、アスクル(2002年度ポーター賞受賞企業)でも無印良品を取り扱っている。ライセンス店舗、西友内店舗、駅構内ショップ、ファミリーマート内コーナーはいずれも、無印良品の直営店舗と同じ什器を使い、店構えを持ち、良品計画が品揃えを決める。

人事管理
良品計画では、店舗での仕事を全て「ムジグラム」としてマニュアル化している。新規に採用された社員は、「ムジグラム新人版」によって、7日間で一通りの業務を習得することができる。全社員必携の「販売基本ルール」には、顧客へのサービスと最低限の販売知識が記載されている。
標準店舗では閉店後30分以内に全員が退社する。本部でも残業は行わず、基本は19時までに退社する。やむを得ず必要な場合は事前に許可を得る。

活動間のフィット

同社の活動は「本質において高品質、無駄を省いてわけあって安い」の事業コンセプトを実現することを中心に組まれている。この事業コンセプトを実現するための3つの主な活動領域は、商品企画、情報発信、販売環境の管理である。ある商品にとって本質的な機能は何であるかを追求し、それ以外の機能を加えない。製造工程、物流工程まで視野にいれて無駄をはぶく。そうすることによって、低価格な商品を、本質機能においては高品質で実現することができる。このように「わけ」があって安いから、それを伝える情報発信の必要性が高い。最も効果的に情報発信できる媒体は、無印良品の商品と店舗である。だから、簡略な包装や、什器・インテリアを木・鉄・ガラスを中心としたシンプルな販売環境が重要となる。また、店舗における作業(販売環境)を簡素化することによって、店で働く人が商品説明に時間を使え、情報発信も可能になる。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 「本質において高品質、無駄を省いてわけあって安い」の価値提案
  • モノの本質を訴求するために、ブランド名を表示することを否定したブランド戦略
  • 商品企画段階におけるオープン・イノベーションの仕組み(ワールド・ムジ、ファウンド・ムジ、ネットコミュニティなど)

戦略の一貫性

無印良品は、1980年12月、西友のプライベートブランド商品として誕生した。当時の日本は、高度成長期から安定成長時代に入り、「モノ充足欲求」から「合理性、本質、わけ、こだわり」をベースに「自分に必要なもの・自分にあったもの」を大切にする「選択的消費欲求」を持つ顧客が増えていた。無印良品は、彼ら・彼女らをターゲットとし、家庭用品9アイテム、食品31アイテムでスタートした。この当時から無印良品の商品企画は「本質において高品質、無駄を省いてわけあって安い」であり、素材の選択、工程の見直し、包装の簡略化、商品タグによる商品説明は行われてきた。

2000年に入ると、ユニクロや100円ショップに代表される低価格を武器とする新業態との競争、成長率維持のためのコンセプトを見失った商品開発によるブランドの希薄化・陳腐化が起こり、また在庫管理などの業務の効率化の不十分さが問題を拡大し、2001年2月期に初の営業減益、2002年2月期には大幅減益と業績の急降下を経験した。

良品計画は、属人的だった商品企画プロセスの可視化と合理化、結果としての商品開発期間の短縮、出店基準の明確化、店舗運営の効率化、在庫管理プロセスの改善、全社的コスト構造の抜本的な見直しを行なった。同時に、商品企画力を強化した。衣料品分野におけるヨウジヤマモト社との提携、ワールド・ムジ、ファウンド・ムジなどがその代表である。これら変革の間も、「本質において高品質、無駄を省いてわけあって安い」のコンセプトは変わっていない。

トレードオフ

  • 人口統計的な側面からターゲット顧客を絞り込まない
  • 無印良品のためにデザインされたもの以外は扱わない。また、無印良品のためにデザインされたものは、他のブランドで売らせない
  • 製品にブランド名をいっさいつけない(無印良品というブランド名さえつけない)
  • 製品に強い色をつけない
  • 製品に過剰な包装をしない
  • 法令で定められている品質基準や安全基準を上回る独自の基準である「良品基準」を満たさない素材は使わない、試作品は商品化しない。
  • その製品の本質的な機能に限定し、機能を追加しすぎない
  • 有名人を広告に起用しない。中心は製品である。
  • 著名なデザイナーがデザイン提供しても、その個人名を明かさない
  • 良品計画が什器、レイアウト、品揃えをコントロールできる環境でだけ無印良品の製品を販売する
  • 出店基準に合わない出店、商品開発力を超えた出店はしない
  • 全国の店舗でいつでも同じ価格で商品が購入できるように、大幅な値引きや先着5名様のみ半額といった短期的な客寄せを目的とした値引きを行わない。
  • 顧客対応以外の作業を店舗で極力やらない
  • 本部業務で標準化された通常業務であるにもかかわらず就業時間内に終了できない業務は、部門長が無駄な業務かどうかを判断し、無駄と判断された業務はやらない。

収益性

投下資本利益率と営業利益率ともに、自社ブランド品企画流通業界の平均(中央値)を一貫して大幅に上回っている。業界平均との差は拡大傾向にある。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
20.1%P 7.1%P 17.4%P 25.9%P 31.0%P 28.2%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
3.9%P 2.9%P 3.5%P 3.0%P 6.7%P 4.4%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

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