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受賞企業・事業部レポート

オイシックス 株式会社

2008年度 第08回ポーター賞受賞 オンライン食品小売
安全な食品に特化したオンライン小売。

業界背景

日本の自然食品市場は急速に拡大しているものの(1999年135億ドル、2008年予測240億ドル。富士経済、Seed Planningによる)、米国や欧州と比較してその規模は非常に小さい。有機食品(オーガニック)となれば、日本の市場規模は26億ドル、日本の健康食品市場の10分の1でしかなく、米国の170億ドル、欧州の180億ドル(Organic Trade Associationによる)に対して、さらに小さい。食品の安全性に対する懸念が高まるなか、今後は更なる市場規模の拡大が予想される。

オイシックスは2000年に創業したオンライン食品小売だ。創業当時は、今ほど食品の安全性に対する問題意識が広まっていなかった。また、食品をオンラインで注文する習慣もなく、農家が小規模な小売業者に作物を直接販売することも一般的ではなかった

概要

オイシックスは、「作った人が自分の子供に安心して食べさせることができる食品」のみを販売商品とするオンライン食品小売だ。2008年3月期の売上は47億円(連結)。2,300品目を販売し、自然食品にフォーカスした食品小売業の中で、売上規模ですでに上位3社に入っているが、3社のうちで最も高い成長率を記録している。2002年に単年度黒字に転換してからの売上高成長率は年35%。成長は、顧客数の増大と、一人当たり売上増加の両方によってもたらされている。定期購入サービス「おいしっくすくらぶ」のメンバーは30,000人、顧客一人当たり月間売上高は12,750円(2008年9月)。4位以下のオンライン食品小売業者は、オイシックスの売上の10分の1でしかない。上位2社は、店舗とカタログ販売が中心で、オンライン販売はしていない。

ユニークな価値提供

オイシックスのターゲット顧客は食品の安全性と味を重視する人々である。このセグメントは、有機食品に強いこだわりを持つニッチセグメントを内包する。

オイシックスが販売する商品は、1)果物、野菜、肉、魚など、広義の生鮮食品、2)冷凍食品、加工食品、酒類、乾物、缶詰、茶葉、飲料、ベビーフード、ペットフードなど、保存可能な食品、3)食品や料理に関連した本、台所用品、風呂用品などの生活雑貨であるが、果物と野菜が売上の3?4割を占め、中心商品である。

価値提供の第一は、食品の安全性である。オイシックスが販売する商品は、生鮮食品、加工食品、ペットフードなど、種類を問わず、オイシックスが設定した安全基準を満たしていなければならない。安全基準はウエブサイトで公表されており、誰にでも閲覧可能だ。

提供価値の第二は、美味しさだ。オイシックスは、野菜や果物の大きさや見た目ではなく、美味しさ、収穫時ではなく食べる時点での美味しさ、を重視している。

価値提供の第三は、買い物を簡便にすることだ。会費はなく、1個からでも注文ができる。配達は週7日6つの配達時間帯から選択することができる。多くの自然食品小売りが、入会金や年会費を徴収し、決められたセットの定期購入をサービスの中心とし、自社配送サービスゆえに配達時間帯の選択肢が少ないのと対照的である。

オイシックスで販売している商品の価格は、店舗やカタログで販売されている自然食品専門店と同程度である。

独自のバリューチェーン

研究開発
オイシックスが注力する研究開発の領域は、ウエブサイトの利便性改善と、美味しさと鮮度を損なわない梱包ノウハウの開発である。

オイシックスの顧客のほとんどは15分以内で買い物を済ませ、平均14商品を購入する。短時間で多品目の商品を少量ずつ購入する顧客には、買い物時間をさらに短縮したり、自分が欲しい商品がすぐに見つけられることが重要である。オイシックスは、たとえば、顧客が定期的に購入する商品を独自に設定できる「Myセット」サービスや、似たような購買傾向のある顧客が選択した商品を推奨する「コレスキ?」サービスなどを開発してきた。

オイシックスは既存の宅配業者を使って商品の配達を行うため、自社便で出荷する場合よりも、配送時の商品の取り扱いを丁寧にすることが難しい。その中でも美味しさと品質を保持できるよう、梱包ノウハウの研究開発に取り組んでいる。例えば、トマト専用の箱、卵専用の衝撃吸収箱、鮮度保持フィルムの採用など。また、衝撃や温度を計測する機器を出荷箱につけるなどして、配達過程の分析を行っている。

調達
オイシックスは、野菜、果物などは生産者から直接調達する。オイシックスの調達ポリシーは、「作った人が自分の子供に安心して食べさせることができる食品」だ。野菜、果物、精肉、鮮魚、加工食品など販売する商品すべてに独自の安全基準を定め、基準に適合する商品のみを調達する。旬の期間が短い野菜と果物以外のすべての食品は、料理研究家や栄養士、主婦を交えた6人からなる「食質監査委員会」で安全性を監査され、オイシックスでの販売には、この委員会の承認が必要である。月に一度開かれるこの委員会は、添加物が基準内であること、主原料の非遺伝子組み換え承認取得の有無や畜産物の飼料などを監査する。野菜や果物は、栽培方法や散布農薬履歴が明示された栽培管理表を生産者から取得し、農薬や化学肥料が慣行栽培の半分以下のものだけを調達する。

オイシックスは、消費者の求める「美味しい」食品に対する生産者の理解を深めるため、顧客の感想やクレームを生産者に伝える。また、年に一度「農家・オブザイヤー」を開催し、取引先農家1000軒から、顧客に最も支持された上位3軒の生産者を表彰している。2008年は約200人の生産者が参加した。
インバウンド・ロジスティクス
オイシックスでは、野菜などは、顧客からの受注後に収穫する仕組みを構築している。その結果、在庫管理費用を削減し、在庫廃棄率を1%以下に抑制している。

受発注管理
オイシックスは、有機農法の特徴である、自然の影響をより大きく受け、生産量のコントロールが難しいという問題にうまく対応している。オイシックスでは、収穫量が多く見込まれる場合にはサイト上の目立つ位置に配置して需要を喚起する。予測収穫量に受注が達した場合には、受注管理システムが「売り切れ」表示をする。

アウトバウンド・ロジスティクス
オイシックスは、既存の宅配業者を使って商品の配達を行なう。その結果、顧客は、週7日、一日6つの時間帯から配達時間を選択することができる。

マーケティング・販売
オイシックスは、新規顧客の獲得に定額型の広告費用を投入しない。インターネット上のブログや、カタログ販売業者のウエブサイトに成果報酬型広告を出している。また、顧客認知の向上のために、ナチュラルローソンの一部の店舗でオイシックス商品を販売している。

オイシックスは、生産者と顧客の1対1のコミュニケーションを促進するために、生産者の情報を開示している。すべての生鮮食品について詳細情報(生産地、生産者、生産者の写真、栽培形態、栽培方法の特徴、栄養値の特徴、調理方法など)を掲載している。加工食品についても、同様の詳細情報を提供している。

アフターセールス・サービス
オイシックスでは、受発注管理が自動化されているため、カスタマー・サポートは小さな組織で運営が可能である。その分、オイシックスのアフターセールス・サービスは、料理や食卓で食品を楽しむための情報提供サービスに注力している。たとえば、購入商品や季節に合わせたメールを、顧客に随時配信する。初めてオイシックスで商品を購入した顧客には、商品が配送された日の夜に、生産者からのメッセージが送信される。

人事管理
オイシックスは、生産者の想いや顧客ニーズに対する理解を深めるため、以下の施策を行っている。1)ものづくり体験制度。年4回、機能部門を問わず、社員が産地訪問や食品作りを体験する。2008年4月の開催では、社員とその家族100人超が参加した(同社の社員数は76名)。2)お客様インタビュー。年4回から5回、全社員で顧客との面談インタビューを1時間行う。3)2008年6月から「至福の食 休暇制度」導入。2日間以上の有給休暇を取得すると、食事の補助費として一万円が支給される。

活動間のフィット

オイシックスの活動は、安心・安全な食品という信頼の構築、美味しさの実現、顧客の利便性という3つの差別化要因の実現を中心に、選択され、組み合わせられている。 (「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • オンライン・ビジネスの先進市場である米国にもないようなビジネスモデルの構築を目指した
  • 受注後に収穫する生鮮食品のロジスティクス・モデル

戦略の一貫性

  • 「作った人が自分の子供に安心して食べさせることができる食品」のみを販売商品とするポリシーや食質監査委員会は、2000年の創業時から一貫している。
  • オンラインでのみ受発注する仕組みも創業時から一貫している。

トレードオフ

  • インターネット以外のルートで受注しない
  • セット販売をしない
  • 慣行栽培の野菜や添加物の多い加工食品を販売しない
  • 食品と関係のない商品の販売をしない
  • 卸事業をやらない
  • 生産をやらない

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに業界平均を上回っている。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年
85.5%P -121.3%P 14.4%P 19.4%P 11033.6%P 406.9%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年
3.2%P -2.9%P 0.2%P 1.3%P 3.7%P 2.1%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

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