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受賞企業・事業部レポート

株式会社パーク・コーポレーション 青山フラワーマーケット事業

2009年度 第09回ポーター賞受賞 生花小売業
個人客の「プライベート&デイリー」な日常の花に特化

業界背景

日本で最も売れている花は、菊、ユリ、バラ、カーネーション、胡蝶蘭、トルコキキョウで、これらで卸売市場の60%以上を構成している(金額ベース)。つまり、日本の花き市場の需要の中心は、胡蝶蘭に代表されるギフトや葬儀といった法人需要である。個人の需要としては、母の日に購入されるカーネーションが突出している。

多店舗展開している生花販売業者は多くないが、彼らの主要顧客は法人であり、ギフト需要に応えるために高価な胡蝶蘭や大輪のバラやユリを常に在庫している。また、出店場所は、結婚式の需要に備えてホテルに出店することが多い。

一方で、個人の需要をターゲットとする生花販売業者は、持ち帰りの利便性を考慮して住宅地の駅周辺や住宅街の中に出店することが多い。個人の需要の中心となるのは母の日のカーネーションと、仏壇に飾る仏花である。しかし、これらの需要だけで売り上げを安定させることは容易ではないので、地域のレストランやブティック、オフィスなどと、活け込みの契約を結んだり、フラワー・アレンジメントの教室を開くことが多い。

概要

青山フラワーマーケットは、東京など大都市圏に65店舗を展開している。「Private & Daily」(個人の日常使い)の花に特化し、また、自らの事業を、「花」を販売するのではなく、「Living With Flowers Everyday」(花のある時間と空間)を提供するサービス業と定義している。同社は、洗練されたイメージを保ちつつ、新鮮で多様な種類の花を安価に提供することに成功した。また、(事前に作られていて)すぐに持ち帰り可能な手頃なブーケという新しい商品カテゴリーを作り出した。その結果、「Private & Daily」の市場を大幅に拡大し、経済環境の悪化によって生花市場が縮小する中、高い収益性を維持しつつ、一貫して成長している。

ユニークな価値提供

青山フラワーマーケットのターゲット顧客は、法人ではなく、個人の顧客であり、彼ら・彼女らの「Private & Daily」(個人の日常使い)のニーズに訴求している。多店舗展開している生花販売業が法人需要を全く訴求しようとしないのは、他に例を見ない。

同社の価値提供は、モノとしての生花の販売ではなく、「Living With Flowers Everyday」(花のある時間と空間)である。「花のある時間と空間」は、店舗での購買経験に始まり、自宅までの移動の時間と空間、自宅での時間と空間までを含んでいる。したがって、同社は、店舗での購買経験を心地よいものにするために、新しい品種を積極的に取り入れる品ぞろえ、洗練されたビジュアル・ディスプレイ、商品知識豊富な店員の育成に注力している。自宅までの移動の時間も心地よくするために、オリジナルの紙袋やボックスの提供を行なっている。また、自宅で花を楽しむ時間を考慮して、保水ジェルによる水切れの防止、延命剤の添付などを行っている。

同社の製品範囲の特徴は、個人が日常に飾るのに適した花の品ぞろえに特化している点にある。バラは中程度の茎の長さのものを常に多種類揃えているが、法人需要で求められる大きなアレンジメントを作るのに必要な茎の長い高価なバラや胡蝶蘭はおいていない。仏花に使われる伝統的な菊もおいていない。

同社の製品範囲のもう一つの特徴は、顧客が即座に持ち帰ることができるプレアレンジド・ブーケの提供である。これを、個人が自分のために飾るブーケと位置付け、価格は350円から1500円、「キッチン・ブーケ」、「リビング・ブーケ」、「ダイニング・ブーケ」などの商品名で販売している。

同社が生花販売業を始めた1989年当時、価格は既存業者の半分程度であった。その後、価格差は縮小したものの、現在も30%程度の価格差を維持している。同社の購入あたり平均購入額は1500円であり、業界平均の3分の一程度である。

自分のために花を買わなかった人にも「Living With Flowers Everyday」を広げるため、同社の出店は、人通りの多い駅構内やデパートの入り口などを中心にしている。個人需要をターゲットとする他の生花販売業が、持ち帰りの利便性と出店コストを考慮して住宅街に出店するのと対照的である。

独自のバリューチェーン

調達
青山フラワーマーケットの本社には購買担当者がいない。多店舗展開をする生花販売業の多くは本社による集中発注をするので、これは例外的である。しかし、青山フラワーマーケットらしさを維持し、また、商品の品質を確保するために、青山フラワーマーケットでは、本社にいるブランド・クリエーターが推薦商品のリストを作成する。しかし、花の発注は、店に一人ずついるショップ・クリエーターが行う。店ごとに異なるニーズに応えるためである。同様に、月替わりのキャンペーンにする花は、ショップ・クリエーターと本社の商品開発担当者が共同で選び、農家と調達を調整するが、店ごとの発注量は各店のショップ・クリエーターが決める。週替わりのキャンペーン商品であるウィークリー・フラワーにいたっては、花の選択から発注量の決定まで、ショップ・クリエーターが行う。

バラなど需要が安定している商品については農家に委託生産を行うが、仕入れは全量、市場を経由する。

インバウンド物流
青山フラワーマーケットは、陶器の運送を専門に行っていた運送会社に、市場から店までの花の輸送を依頼している。近い距離から眺められることの多い日常の花にとって、輸送中に花弁が折れたりしないことが重要であり、陶器を扱っていた運送会社によるサービスは、花の品質を維持することに貢献している。

店舗運営
青山フラワーマーケットは、店舗で花を買う経験を顧客が楽しめるものにするため、花をガラスのキーパーに入れず、近距離で香りを確かめながら花を選べるようにディスプレイしている。また、全ての商品の価格を明示し、花についての情報を黒板やPOPによって伝達する。ブーケを作るための作業台は顧客から見えない別の場所に設置している。

アウトバウンド物流
お客様が花を自宅に持ち帰る時間を楽しめるよう、青山フラワーマーケットはオリジナルの紙袋を使用する他、電車での持ち運びの多い駅構内の店舗では、ブーケを箱に入れて販売している。

マーケティング・販売
青山フラワーマーケットは、マスマーケティングを行なっていない。交通量の多い場所への出店が主たる広告手段である。

研究開発
青山フラワーマーケットは生花の品種開発は行わないが、顧客の嗜好を調査している。また、顧客ニーズに対応して新しい品種に挑戦し、高い品質の花を生産する農家を常に探索している。品種や産地、生産者について店舗のスタッフが学ぶために、農家が月2回ショップ・クリエーターのミーティングに招待される。

ブーケのデザインについては、5人のショップ・クリエーター、本社のブランド・クリエーターと製品開発担当者からなるチームが研究を続けている。店舗のデザインについては、社内の店舗デザイナーがファサード、棚、バケツ、花瓶などのデザインを行う。青山フラワーマーケットは開店費用の10%を棚やディスプレイの開発に使うことにしている。店舗で販売される花鋏、ナイフ、ナイフ・クリーナーについてもオリジナルに開発している。

人事管理
青山フラワーマーケットは、クリエーターとマネジャーの二つのキャリアパスを設けており、各店舗に一人ずつのショップ・クリエーターとショップ・マネジャーがいる。ショップ・クリエーターはディスプレイ・デザイン、品ぞろえ、価格設定、コミュニケーション戦略、顧客サービスの責任者である。ショップ・マネジャーは年間販売目標の立案、採用、ワークシフト作成、顧客管理、店の収益に責任を持つ。本社には、ブランド・クリエーターとブランド・マネジャーがいる。

店舗スタッフの教育については、定期研修の他、他店での研修、月に一度の農家訪問、パリの社有施設利用などの機会が与えられている。スタッフの商品知識と店舗経営の知識を検定する試験は年4回行われ、各スタッフの能力を把握するのはショップ・マネジャーの責任である。財務管理、事業計画、プレゼンテーション・スキルなどからなる正社員資格試験に通ったパートタイマーには「社員パス」が与えられ、社員のポジションが空いた場合の応募資格を得る。

全般管理
青山フラワーマーケットでは、現場に全面的に権限委譲している。すでに述べたように、誰を採用するか、どんな花を発注するのかは現場に権限がある。その他、売上げ目標の設定、ディスプレイやユニフォーム作成なども、現場に権限が委譲されている。

権限が大幅に現場に委譲されているなかでモチベーションの維持と利益管理を図るために、各店の売上や原価率・人件費率が表示された日報や週報を、全社で見ることが出来るシステムが組まれている。

社員の歩合給は店舗の営業利益に連動しており、社員は自分の店の機会ロスや在庫ロスの低減に努めるよう動機づけられている。その結果、年平均3%前後という極めて低い廃棄率を実現している(廃棄率の管理に熱心な業者でも10%前後であることが多い)。

活動間のフィット

青山フラワーマーケットは「Living With Flowers Everyday」をスローガンに掲げ、「Private & Daily」な時間と空間を提供することを主活動としている。「Private & Daily」な花なので、ギフトの花束によく使われる赤いバラなどを常時仕入れる必要はなく、旬のものを仕入れることで手頃な価格での提供が可能となる。また、「Private & Daily」な花は、需要が安定する傾向があり、ロス率が低く、これも手頃な価格での提供に貢献している。
「Private & Daily」な花を定着させるには人通りが多いところへ多店舗出店する必要があるが、そのような場所は商品の回転率が高くなり、結果としてロス率が低くなり、手頃な価格での提供へ繋がる。また、多店舗出店することで出店コストの削減に繋がり、これも手頃な価格での提供を可能としている。
「Private & Daily」な花のニーズは、店の客層によって異なるので、店舗に発注権限を与えている。加えて、店のスタッフの採用から収益管理まで店舗に権限移譲することによって、最適な発注と売り場構成が可能となり、廃棄率の低下につながっている。権限移譲は人材育成の機会ともなり、店舗運営の継続的な効率改善につながっている。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 生花販売業を、「Living With Flowers Everyday」(花のある毎日)という「time and space」(時間と空間)を売るサービス業と定義
  • 「ライフスタイル・ブーケ」
  • 店舗に発注、採用など大幅に権限を委譲
  • 個人顧客を対象とした花屋を、住宅街ではなく、乗換駅の近くや百貨店に開く
  • 店長の仕事を、ショップ・クリエーターとショップ・マネジャーに分割

戦略の一貫性

青山フラワーマーケットは1989年、個人の日常使いの需要に特化すると決めて以来、この戦略を変えていない。実践のしかたは、無店舗完全予約制から店舗販売、多店舗展開へと変わってきたが、個人の日常使いの需要に特化という戦略のコアは変わっていない。

トレードオフ

  • キーパー(冷蔵庫)を置かない(→花の香りや質感を確かめながらお客様が自分で花を選べる。また、花は環境の変化に弱く、キーパーから出した途端急激に劣化が始まるのを防げる。)
  • 作業場を見せない(→お客様に気持ちよく花を選んでいただける。)
  • 店舗でフラワー・アレンジメント教室を開かない(→常に来店されたお客様へのサービスに集中出来る。)
  • 駅などから離れた場所へは出店しない(→'Private & Daily'な花を求めて頻繁に足を運ばれるお客様への利便性を高めることが出来る。)
  • 人口が少なく出店場所が限られるような地方都市への出店はしない(→'Private & Daily'な花は肌理細やかな仕入れをする必要があり、新しい地方へ出店するには市場を始めそこへ出荷している生産者の情報を集めたり、丁寧な荷捌きをしてくれる運搬業者を探さなければならない。2?3店舗のためにそれだけの労力をかけるよりは、ドミナント的に出店した方がより多くの方々に花を届けることが出来る。)
  • いけ込みや胡蝶蘭のギフトなど法人需要を追求しない(→'Private & Daily'な需要に特化した効率的な仕入れが出来る。)
  • 葬儀用の花は扱わない(→いつ注文が来るか分からない菊などを常時開かせた状態で置いておく必要がなく、作業スペースを有効活用出来る。)
  • ホテル向け卸売業をしない(→宴会用の丈のある大輪の花やブライダル用の特殊な花を仕入れる必要がなく'Private & Daily'な花の仕入れに特化出来る。)
  • _
  • 本社が集中発注しない(→店ごとのお客様のお好みに合わせた肌理細やかな発注が可能となる。現場が自分で発注することでモチベーションが上がると同時に商品知識を身に付けるようになる。)
  • 本社で店舗スタッフの採用をしない(→各店の立地や客層にマッチするスタッフの採用が可能となる。また、チームワークを良くしてモチベーションを維持しやすい。)
  • 人材育成を超える成長を目指さない(→新店を出す時に既存店から経験者が移るとその既存店のスタッフレベルは一時的に落ち、レベルが戻るのを待たずに出店を急ぎ過ぎると全体としてのレベルの低下に繋がる。レベルを維持できる範囲内で出店することでブランド価値が維持される。)
  • FC展開しない(→花は年間を通して商材が変わり、産地も移動していくので知識面だけでも最低1年は教育に時間がかかり、安易なFC展開をしないことでブランド価値の維持が可能となる。)
  • 仕入れ先を叩かない(→自分達で生産をしている訳ではなく、仕入先は外部のパートナーだと考えており、共に長期的に発展してける。)
  • ドライフラワーを扱わない(→ドライフラワーを置くようになると、バラなども鮮度が落ちたものはドライフラワーにすれば良いというような考えが蔓延し、鮮度管理に対する意識が薄れロス率が上がる傾向が見られるが、それを防げる。)
  • プリザーブド・フラワーを扱わない

収益性

投下資本利益率と営業利益率ともに、業界平均を一貫して大幅に上回っている。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
41.2%P 25.0%P 58.3%P 51.6%P 35.6%P 23.2%P
Inter quartile range (IQR) = 16.3%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
4.3%P 4.5%P 7.0%P 6.8%P 4.6%P 4.1%P
IQR = 2.8%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

受賞企業・事業部 PDF

第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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