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受賞企業・事業部レポート

株式会社ぐるなび

2010年度 第10回ポーター賞受賞 情報サービス業
ロングテールの飲食店市場を、ICTと人間系の2層のネットワークで活性化する

業界背景

ぐるなびが登場する前、飲食店の販売促進手段は非常に限られていて、雑誌や電話帳に広告を出すか、駅前でチラシを配る以外は、口コミに依存するなどしかなかった。その結果、飲食店の成功は、立地に大きく左右されていた。

国内の外食市場は23兆円、50万店(クラブなど一部の業態を除く)があり、毎年9%程度が開業・廃業などを通じて入れ替わる。

概要

ぐるなびは、1996年創業。飲食店業界の活性化と日本の食文化の育成を目指して、中小企業や個人事業主が中心の飲食店という顧客に対して、ICTベースのインフラと、約1000人の営業系スタッフに代表される人間系のインフラの2層プラットフォームで支援を提供している。

具体的には、外食に関する情報サイト「ぐるなび」を運営。飲食店を探しているユーザーに情報を提供し、また、飲食店には販売促進のツールを提供している。外食に関する情報サイトのパイオニアで、外食前にネットで飲食店を探したり情報を確認するという新しい行動パターンを根付かせ、外食産業を活性化した。現在も、外食に関する情報サイトとしては国内最大で、ぐるなび会員(登録ユーザー)が685万人(2009年12月時点)、8億4000万ページビュー(2009年12月月間)、2000万人のユニークユーザー(2009年12月月間)、50,227店の飲食店と契約している(2010年3月時点)。2008年以降の景気後退にもかかわらず売上と営業利益額は一貫して増加、投下資本利益率と営業利益率は共に5年前より改善している。

サイトへの情報提供は飲食店が行い、また、様々なサービスを提供する対価として飲食店から料金を得る仕組みで、ロングテールの市場で一般的な、ユーザーによる情報提供と広告収入を組み合わせるビジネスモデルとは、一線を画している。

ユニークな価値提供

ぐるなびは、競合に比較して幅広くターゲット顧客を設定している。顧客としての飲食店は、客単価300円のカフェから5万円の料亭などまで、幅広い。ユーザーについても同様で、全てのユーザー層をターゲットにしている。しかし同時に、「こちら秘書室!」のコーナーのように、様々なセグメントに特化した入り口を用意し、適した情報にアクセスを可能にすることで、セグメントに特有のニーズにうまく応えている。

ぐるなびは飲食店に対して、そのサービスを、「飲食店のサポーター」と位置付けている。ぐるなびが飲食店に提供している価値は、以下である。1)検索性の提供。2)飲食店が販売促進策を低コスト、リアルタイムに使えるインフラを提供。たとえば飲食店は、顧客が少ない時間帯には、ウエブページや電子メールなどでタイムサービスのような販売促進策を実施することができる。3)新規顧客を獲得するツール、固定客を増やすツールの提供。4)メニューの改善、店の改装、採用、地方の農家の紹介など、飲食店が事業を改善するための情報やサービスの提供。基本サービスは月額5万円以上で、追加金額に応じて様々なサービスを得ることができる。

ぐるなびはユーザーに対しては、「食のトータルサイト」と位置付け、外食の情報についてオフィシャルな存在であり続けることを目指している。ぐるなびがユーザーに対して提供している価値は、以下である。1)網羅性、検索性、リアルタイム性高く、様々な条件で飲食店を探せる、2)場所、定休日、開店・閉店時間、メニュー、予算、駐車場の有無、個室の有無、店からのお勧め、デリバリーやテイクアウトの有無、などの正確で詳細な情報を提供する、3)クーポンや特別企画などの割引へのアクセス、4)予約ツールの提供、など。これらの価値は、無料でユーザーに提供される。

独自のバリューチェーン

ぐるなびの価値提供は、ICTのネットワークと人間系のネットワークに支えられている。

企画・システム開発
ぐるなびは、新しい情報やサービスを積極的に加えてきた。ユーザーがネット上で出前の注文ができる「ぐるなびデリバリー」、取り寄せができる「ぐるなび食市場」、テイクアウトできる飲食店の情報提供など。ぐるなび会員の生産者やメーカーが飲食店に対して販売できるチャネルの提供。

営業やGPC(後述)による飲食店のニーズ把握に加えて、業界最大の飲食店との人間系のネットワークに惹かれて、生産者やメーカーなどがアイデアや情報を持ちこんでくる。

情報入力・検索
加盟飲食店がサイト上に掲示される情報をインプット、更新する。検索はシステムによる自動化。

営業・アフターセールスサービス
営業、GPC、ぐるなび大学、コールセンターから構成される総勢1000人の多層な営業体制を構築。営業部隊は担当飲食店を定期的に訪問し、広告代理店のアカウント・エグゼクティブ型の提案営業によって、その店、その時に最適なサービスを提案する。

子会社GPC(Gurunavi Promotion Community)に所属する、主婦を中心とするパートタイマーは、会員飲食店を訪問し、情報提供、飲食店からのフィードバック収集、調査実施、新しいサービスの紹介などを、フェーストゥーフェースのコミュニケーションで行う。これは、飲食店との関係構築、強化にもなる。また、コールセンターからのアウトバウンドコールで、営業とGPCの活動をフォローする。また、コールセンターは、ユーザーからの問い合わせや苦情も対応するが、サイトに掲載された情報が不正確であった場合には、直ちに対応が取られる。毎月10万部から15万部発行される紙媒体の「ぐるなび通信」で、成功している飲食店の情報や、ぐるなびのサービスを使いこなす方法などを説明。ぐるなび大学では、販売促進、店舗経営などの講座を提供。これらの活動によって、飲食店の社長、店長、シェフといった様々な人々と多層なネットワークを構築している。また、人間系プラットフォームが飲食店の意識変革を促すことにより、ICTを活用したイノベーティブなソリューションの導入に成功している。

人的資源管理
優秀な人材に対しては、柔軟に権限とチャンスを与えて能力を伸ばす。この人材育成方針に惹かれて優秀な人材が入社する。人材の育成においては、日々新たなことにチャレンジ、創造することを重視、進化のDNAを組織に浸透させることを目指し、「4つの進化」」を毎朝朝礼で全社員が唱和している。

アカウント・エグゼクティブ型営業を推進するために、新規契約先開拓数などの「結果」よりも、訪問頻度や商談内容などの「プロセス」を管理・評価。

活動間のフィット

ぐるなびの活動システムは、多様で豊富なサービス、「オフィシャルな情報を提供するポータルサイト」という地位、強力かつ多層に構築された営業力・サポート力という戦略上コアとなる選択を中心に、これらを実現する活動によって支えられている。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 飲食店自らが情報発信主体となる双方向型の販売促進プラットフォーム
  • オンラインとオフライン(人間系)のインフラを併せて提供
  • 宴会の条件をユーザーが入力すると、飲食店から要望に合った提案が届く仕組み。どんなに面倒な宴会の幹事でも要望に合ったプランの一覧表が手に届く。「スーパーらくらく幹事さん」
  • オンライン、リアルタイムの予約システム。飲食店は、予約がキャンセルになった時間や空いた時間を安く売ることができる。「バリュープラン」
  • 秘書のコミュニティサイト「こちら秘書室」。約1万社以上の企業の秘書2万人以上が登録。接待に適した飲食店やお土産などの情報交換が活発に行われている。
  • ぐるなび大学。飲食店の販売促進に必要な様々なノウハウを講義形式で提供。ぐるなびが飲食店の成功事例を把握し、そのエッセンスをノウハウとして提供。

戦略の一貫性

飲食店業界を活性化する、世界に誇る日本の食文化を守り育てる、というミッション、質が高く充分な情報量をユーザーに無料で提供する、飲食店の経営改善手段(当初は販売促進手段のみ)を提供する、ICTのインフラだけでなく、営業部隊からなる、ぐるなびと飲食店をつなぐ人間系のインフラを構築する、という戦略のコアは、1996年の創業当初から変わっていない。ただし、それを実現するアプローチについては、プラットフォームの成長段階に応じて変化させてきた。初期は、加盟飲食店を早く1万店に増やすことを第一目標に、比較的単純なサービスを割安な料金で提供したが、1万店達成後は、より高額だがより販売促進効果のあるサービスを、アカウント・エグゼクティブ型の営業によって提供するアプローチに変化させた。現在は、飲食店向けのサービスを求人や改装などまで拡大したのに加えて、産地の活性化が飲食産業の活性化につながるとの考えと、世界に誇る日本の食文化を守り育てるというミッションから、プラットフォームを生産者にまで広げ、生産者と飲食店、生産者と消費者を直接に結び付けている。

トレードオフ

  • 全てをICTに乗せることによって可能になる効率性を追求することをしない。ICTを人間系のインフラで補完する。
  • 一つの機能、一つのサイトに特化することによる単純化がもたらす効率性を追わない。ぐるなびは、「食に関わる情報問屋」として飲食店が必要とする情報を幅広く充実させる。
  • ウエブ経由の販売アプローチに限定しない。ぐるなびは、営業部隊、GPC、コールセンターという多層な営業体制を有する。
  • ユーザーがインプットする情報(UGC=User Generated Contents)に依存しない。

収益性

テキストテキストテキストテキストテキストテキストテキスト

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
32.0%P 19.9%P 7.0%P 32.0%P 39.3%P 40.5%P
Inter quartile range (IQR) = 12.8%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
13.2%P 9.6%P 3.9%P 14.9%P 14.5%P 15.2%P
IQR = 8.0%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

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