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受賞企業・事業部レポート

株式会社Plan・Do・See ブライダル部門

2011年度 第11回ポーター賞受賞 婚礼関連サービス業
「帰ってくる場所」―リピート・ビジネスとしての婚礼サービス

業界背景

婚礼サービスは、ホテル・ウエディング、結婚式場(専用施設)でのウエディング、レストラン・ウエディングなどの形で提供されてきた。その中で、専用施設は、大規模結婚式場から、庭付き一軒家のハウス・スタイルへと、流行が変わってきた。

婚礼サービス業界の参入障壁は低く、差別化は容易ではない。婚礼専用施設を持つ場合には、5年から10年ごとに施設を建て直したり、あるいは、新規顧客獲得のために売上の5%から15%を広告費に投入する必要がある。しかし、同時に、競争を阻害する要因も存在する。結婚という一人の顧客が何度も体験するわけではないイベントを扱っているため、比較対象がなく肯定しかない、改善しても同じ顧客が再度体験するわけではないので改善の効果が伝わりにくい、という性格も持つ。

ゼクシィ・ネットによれば、結婚式・披露宴会場のタイプは、ホテルが31.2%、専用施設が28.3%、ゲストハウス型施設が21.8%、レストランが8.6%であった。

概要

Plan・Do・Seeブライダル部門(以下、Plan・Do・See)は、7つの施設で婚礼サービスを提供している。3つのホテル(福岡に2つ、神戸に1つ)、4つのレストラン(名古屋に3つ、京都に1つ)である。これらの施設にあるホテルやレストランの運営は、同社の別部門が担当している。

Plan・Do・Seeは、婚礼サービスをリピート・ビジネスと定義することによって、招待客を含めた顧客満足度を高めることに注力している。招待客の満足度に直接影響する主要な要素である、料理とワインの質を向上させ、メニューをカスタマイズ化し、シームレスなオペレーションを可能にするユニークな組織と人材育成の仕組みを有している。必ず併設するホテルやレストランとの相乗効果も、顧客との長い関係性構築に貢献している。

ユニークな価値提供

Plan・Do・Seeが提供している価値は、1)高品質でカスタマイズされた食事、2)シームレスなサービス、3)帰ってくる場所、の提供である。ホテル、レストラン、専用施設のいずれのモデルでも、これら全てを同時に実現することは難しい。

Plan・Do・Seeは、カップル毎に食事をカスタマイズすることが可能で、シェフがカップルと献立内容の打ち合わせをする(これは業界では一般的ではない)。また、献立の数量変更は、挙式の2日前まで可能である(業界では2週間前から10日前が標準)。

シームレスなサービスを提供するために、Plan・Do・Seeでは、同じウエディング・プランナーが会場見学時の接客からから婚礼当日まで担当する。(業界では、販売、プラニング、当日のオペレーションと分業するのが一般的)。Plan・Do・Seeの社員は管理部門を含め、ブライダル・フェアなどで婚礼サービスを担う機会を持ち、また、キッチンからプランナーへの異動などの人事異動も行われる。これらによって、シームレスなサービスを可能にするための、機能部門を超えたディスカッションや連携が可能になっている。

帰ってくる場所:Plan・Do・Seeは、婚礼サービスを、1回の取引の集積ではなく、リピート・ビジネスととらえている。披露宴に招かれた招待客が自分の披露宴に同社の施設を選択する。また、ホテルやレストランの顧客が婚礼サービスを利用したり、婚礼サービスを利用した顧客が後にホテルやレストランを訪れたりする。ホテルの宿泊部門やレストランも同社によって運営されているので、顧客は同じ優れた体験をすることができる。新規顧客獲得について同社の広告への依存度は、業界と比較して低い。

Plan・Do・Seeのターゲット顧客は、20代、30代、大都市に住み、高品質なサービスを求め、披露宴の招待客の満足度が大事だと考える層である。

同社の平均単価は、365万円(2010年)で、業界平均326万円よりも12%高かった。(※1)

(※1)ゼクシィ 結婚トレンド調査 2010年。

独自のバリューチェーン

調達
Plan・Do・Seeは、「帰ってくる場所」として、その土地の歴史と文化に根付き、さらには、その土地の魅力を高めることができる(だから将来帰ってきたくなる)ような施設を注意深く選んでいる。たとえば、京都のレストランは、有名な日本画家が住んだ邸宅、名古屋のレストランは、尾張徳川家御用達の400年の歴史を持つ料亭であった。神戸のホテルは、外人居留区にあり日本で最も古いホテルの一つであった。

Plan・Do・Seeは、フラワー・アレンジメント、写真サービス、ヘア・メークアップ、引き出物手配などのサービスを、複数の業者から仕入れている。フラワー・アレンジメント以外は、各施設が独自に供給業者を選択する。Plan・Do・Seeは、供給業者から保証金を徴収しないので、供給業者のサービス品質が充分でないときに供給業者を変更することができる。Plan・Do・Seeは1社と独占契約を結ばないので供給業者間で競争をさせるが、同時に、Plan・Do・Seeが目指すサービス概念を共有するための教育プログラムも提供している。ドレス・レンタルを例外として、Plan・Do・Seeはこれらの活動を、基本的に自らは行わない。

Plan・Do・Seeは、サービスの質を維持するため、引き出物などの持ち込みや、顧客による供給業者の指定を、母から譲り受けたドレスなど他で代えがたい例外を除いて、受け付けていない。例外的に顧客による持ち込みが行われる時には、持ち込み料は請求しない。

Plan・Do・Seeは、飲料と食材を自身で調達する。生産地、加工法、加工場所を注意深く選択し、鮮度と安全面を確保する。披露宴で良く使われるある種の魚については、特定の業者と契約し、生産地に近い工場で加工してもらい、翌日には納品される体制を整えている。ワインについても、自社でワイナリーの発見、交渉、買いつけを行い、中間マージンを省くことにより、より高品質なワインを提供している。

オペレーション
ウエディング・プランナーが、カップルのケース・マネジャーとして、初回打ち合わせ、契約、打ち合わせ、当日のオペレーション、フォローアップまで担当する。料理の配膳は、常駐のサービス業者が行うが、同じ会社が全てのPlan・Do・Seeの施設を担当しており、シームレスな運営を可能にしている。

披露宴当日は、カップルと招待客が、特別なもてなしをされた、自分たちの式は唯一無二だと感じられるよう、注意深く計画、実行される。たとえば、ガーデン・オリエンタル京都には、4つの披露宴会場があるが、花嫁同士が互いに会ったり、すれ違ったりすることがないよう、配慮される。

料理をサーブするスタッフは、取引先の社員であるが、この会社とは長い安定的な取引関係にあり、サービス概念の共有が行われている。

マーケティング・販売
Plan・Do・Seeは、独自のデータ分析によって、披露宴枠を売り切るべきタイミングを判断しており、その時期が来ると、特別価格でのプランを売りだす。

広告については、各施設のウエディング・プランナーが、タイミング、メディア、内容を決める。多くの競合が、広告機能を本社に集中化しているのとは対照的である。Plan・Do・Seeは、売上の4%から5%を広告に投じており、これは、業界平均と比較して少ない。

ウエディング・プランナーは、打ち合わせで、披露宴の様子がうまく伝えられるように訓練されている。顧客が選択したり意思決定する助けとなる。

顧客からのフィードバックを積極的に活用しているのも、Plan・Do・Seeの特徴である。カップルからのフィードバックは、本社に送られ、分析され、各施設にフィードバックされる。ウエディング・プランナーが、担当したカップルからフィードバックを得るよう、フォローし、その回収率は、ほぼ100%に近い。招待客からのフィードバックは、カップルの了解があった場合には、テーブルの上に小さなアンケート用紙でおかれ、披露宴終了後直ちに、各施設で分析される。

ウエディング・プランナーの評価は、契約成立率、担当カップル数、顧客満足度、苦情、ブライダル・フェアや広告の企画力などに基づく。

アフターセールス・サービス
Plan・Do・Seeは、メンバーシップ・カードを発行し、ホテルやレストランなど同社の運営する他の施設と共通のポイントを発行している。また、結婚記念日などに招待状を送るなどして、顧客との関係性が長く続く工夫をしている。

人的資源管理
Plan・Do・Seeは、勤続年数に関係なく、仕事を任せる。また、社員は、機能を超えて、チームとして働く。

シームレスなオペレーションと人材育成のために、Plan・Do・Seeは、社員を、キッチン、レストラン、プランナーなど、様々な機能の間で定期異動させる。また、宿泊や経理など他部門の社員も、ブライダル・フェアで接客に従事し、同社の婚礼サービスへの理解を深め、顧客が「帰ってきた」時に、シームレスなサービスが提供できるようにしている。

Plan・Do・Seeは、「I am one of the customers」というマインドセット、つまり、顧客視点を社員に持ってもらうため、優れたサービスを提供する他社のホテル、レストラン、娯楽施設などを積極的に経験することを促している。費用の半分を同社が負担する。同様の目的で海外視察旅行も企画し、費用の一部を同社が負担する。Great Place to Work Institute Japanによれば、Plan・Do・Seeは、社員一人当たり教育投資において、日本で4位であった。

Plan・Do・Seeは、基本的に、ウエディング・プランナーという職位での採用はしない。同社は、みんなを束ねる幹事肌、責任感が強く、とりまとめを好む人材を積極的に採用する。

同社の社員満足度は高く、Great Place to Work Institute Japanの調査では、5位であった(2011年)。

全般管理
Plan・Do・Seeのビジョンは、スタイルのある「おもてなし」サービスを提供することで、将来的には海外にこれを展開し、日本ならではのサービスでより多くの人々を幸せにすることである。

Plan・Do・Seeは、人材育成に時間をかけ、施設を注意深く選ぶ方針であり、成長の速度は緩やかにならざるをえない。同社は、資本市場からの成長の圧力を避けるため、上場しない方針である。

活動間のフィット

Plan・Do・Seeの活動システムは、「カップル毎完全オーダーメイドの商品設計」「一店舗毎に行う概念・デザイン開発」「サプライヤーに依存しない商品開発」「結婚式当日前後も続く顧客との関係性構築」を核として、整合性の高いシステムを形成している。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 婚礼サービスは、リピート・ビジネスという定義
  • カップルからだけでなく、招待客からもフィードバックを得る
  • CRM、販売マネジメント、プランナー評価に横串をさせるマネジメント・システムを開発。
  • 個々の皿の下に、独自開発のプレート・ワーマーを設置
  • 婚礼に関わる全てのスタッフが、年4回、飲料を含めて、フル・コースを試食する。

戦略の一貫性

Plan・Do・Seeは、1993年の創業時より、新郎新婦の満足度とともに、招待客の満足度に注目し、婚礼サービスをリピート・ビジネスと位置づけた。この考えは、貸しホールを会場として披露宴を企画・オペレーションした創業期から、その後、専門施設としてのハウス・ウェディングに進化した成長期にも維持された。

トレードオフ

  • 花嫁花婿は舞台の上に乗らない。披露宴は、招待客をおもてなしする場と位置づけているため。
  • 持ち込み料を取らない。供給業者から保証金を取らない。一つの業者と独占契約を結ばない。
  • 特定の人数以上の規模の披露宴を受けない。そうすることによって、予備の椅子やテーブルなどを保有する必要がなくなる。
  • 施設を所有しない。運営者に徹する。
  • レストランの貸切を受けない。「帰ってくる場所」を維持するため。
  • メディアへの露出を増やそうとしない。同社のターゲット顧客は、自分のセンスに自信があるので、流行だと思われると避けられる危険性がある。有名なシェフからメニューを買ったり、俳優に使ってもらって広報に使ったり、ウエディング・プランナーを有名する、創業者の露出を増やすなどの手段でメディア露出を増やすことをしない。
  • 自社がオペレーションを請け負っている施設以外で、婚礼サービスを提供しない。顧客の帰ってくる場所にならないから。
  • 白亜の御殿のお姫様、というような、非日常の演出をしない。同社のウエディングの経験は、結婚式当日だけのものではなく、カップルの過去と未来の一部であるべきと考える。
  • 食事、飲料、引き出物など、招待客の満足に直結する分野で、満足度を下げるほどの低予算を求める顧客の要望には応えない。
  • 全ての施設に同じ設計を転用するということはしない。同社の施設は、地域の歴史と文化の一部であるべきで、さらには、地域の価値を高めることを目指す。
  • 上場しない。顧客を常に、株主より上位に置くため。
  • ウエディング・サービスを、モジュラー部品からなるパッケージにしない。同社は、コンサルテーションを通じて、個別にカスタマイズしたウエディング・プランを設計する。このプロセスは、より時間がかかるが、高い顧客満足につながる。同時に、従業員満足も高まる。
  • シェフという職位を設けない。代わりに、キッチン・マネジャーの職位がある。キッチン・マネジャーは、キッチンのスタッフの上に君臨するのではなく、キッチン・チームをマネジャーとして率いる。キッチン・マネジャーはキッチンから出て、顧客とのメニュー打ち合わせにも参加する。

収益性

投下資本利益率と営業利益率ともに、業界平均を一貫して大幅に上回っている。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
32.1%P 71.7%P 51.3%P 22.5%P 35.5%P 16.5%P
Inter quartile range (IQR) = 18.6%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
13.0%P 16.3%P 16.3%P 11.4%P 13.8%P 11.5%P
IQR = 6.9%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

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