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受賞企業・事業部レポート

株式会社リクルートライフスタイル 旅行営業統括部(じゃらんnet)

2012年度 第12回ポーター賞受賞 オンラインホテル予約&旅行代理店業
オンライン宿泊情報・予約サイト「じゃらんnet」で、旅行者と宿泊施設の幸せな出会いを促進

業界背景

img_2012_01_p.jpgオンライン宿泊情報・予約サイト業界における戦略グループには、幅広い宿泊施設をカバーするグループ、ビジネス旅行客にフォーカスしたグループ、高級施設にフォーカスしたグループ、などがある。

概要

じゃらんnetは、先行者の利益が大きいと言われるオンライン・サービス業界において、後発でありながら、先行者に追いついた。じゃらんnetのサービス開始は2000年、業界のパイオニア、旅の窓口(現 楽天トラベル)の4年後であった。しかしながら、そのユニークな戦略によって事業を確立し、市場を拡大し、高い収益性を得ている。

先行者が初期採用者(ビジネス旅行客)をターゲット顧客としたのに対して、じゃらんnetは、マイクロセグメンテーションによって多数採用者(マジョリティ・セグメント、一般的な人々)に市場を創造することに成功した。じゃらんnetは、独自のセグメンテーションをきめ細かくすることで、旅行者がニーズにあった宿泊施設を見つけやすくしている。たとえば、ペット連れで旅行をしたい人に適した宿や、夫婦でゆっくり過ごしたい人に適した宿など。その結果、旅行者はパーソナライズされたサービスを提供されているかのような経験をすることができる。これは、結果として顧客のスイッチングコストを上げることになる。

ユニークな価値提供

じゃらんnetのミッションは、「人と地域の出会いに満ちた笑顔が溢れる世の中でありたい。―MORE CHANCE, MORE SMILE♪―」である。もし全ての宿泊施設が、顧客評価で満点を取るようになれば、旅行体験に満足した人々はもっと旅行するようになり、旅行業界全体が拡大する。
このミッションは、旅行業界における出会いの総量を増やすことで可能になると、リクルートライフスタイル旅行営業統括部(以下、RLS)は考えている。1)旅行に関する情報収集から旅行、その後のフィードバックまで含んだトータルサポートによって、旅行者のアクションの総量を増やすこと。2)宿泊施設のサービス水準の向上。3)地域の良さを引き出す提案及びPRなどによって、感動体験を提供する支援をすること。

じゃらんnetは、旅行者と宿泊施設の両者が顧客であり、両面プラットフォームとしての特徴を持つ。旅行者について、じゃらんnetは個人の旅行者をターゲットしている。宿泊施設については、都心、地方、日本各地の様々な規模、タイプの宿泊施設がターゲット顧客であり、幅広い品揃えを目指している。

旅行者の多様なニーズに合った施設を探すことができるように、じゃらんnetは、第一に、最も多くの宿泊施設を掲載することを目指している。そこには、数部屋しかない非常に小規模な宿泊施設や、訪問者の多くない地域の宿泊施設も含まれる。第二に、検索を速く、簡単にしている。基本の表示順は、宿泊者評価の高かった順である。宿泊者による施設の評価は、ポジティブなものもネガティブなものも、そのまま掲載される。

航空キャリアやJRとの提携商品であるダイナミックパッケージ「じゃらんパック」においては、一度に交通機関の予約も済ませられるよう、航空便など交通機関のリアルタイムの空き情報を提供し、予約も完了できる仕組みを提供している。

宿泊施設への価値提供は、宿泊客の獲得支援である。じゃらんnetは、多くの旅行客が訪れるプラットフォームを提供し、そこでは、個々の宿泊施設が自らの特徴やお勧めを表現し、そのままの旅行者のフィードバックを聞き、旅行者評価に応じて良い表示位置を得られる。

じゃらんnetは、宿泊施設の運営を支援するサービスも提供している。じゃらんnetでは、宿泊施設が自ら、空室情報のアップデート、曜日・季節・イベントに合わせた価格設定、様々なプランの公開・停止、宿ブログを通じた旬の情報の発信などを行うことができる(宿泊施設専用管理画面)。このシステムは、過去予約実績や地域の販売状況など、様々な分析が行える。

さらに、各地にいる営業スタッフが、予約状況のヒアリングや、全国の予約状況の分析、に基づいて予約管理の方法を説明、宿泊プランの提案を行なったり、顧客とのコミュニケーションの改善の仕方や、顧客からのフィードバックの活かし方の提案、業界のベストプラクティスを共有などをして宿泊施設に対する旅行者の満足度を改善する手助けをする。これらの助言や提案は無料で提供される。

宿泊施設への手数料は、伝統的な旅行代理店業界と比較すると圧倒的に安い。じゃらんnetが事業を始めた2000年、手数料は伝統的旅行代理店の約半分であった。オンライン宿泊情報提供・予約サービス業界では、手数料に大きな違いはない。

じゃらんnetの価値提供の特徴の一つは、仲介業としての価値を徹底して追求していることだ。つまり、旅行者と宿泊施設のマッチングが効果的であればあるほど、じゃらんnetは成功し、全体が相乗効果的に成長するという考え方である。この考え方は、リクルートで伝統的に「リボン図」として共有されてきた。リボン図の両側を大きくすることで、真ん中の結び目も大きくなる。さらに、マッチングの質を上げることで、両サイドが満足する。この考えに従って、じゃらんnetは、料金を取って有利な表示位置を販売することをしない。マッチングの質が下がるかもしれないからだ。

独自のバリューチェーン

調達
じゃらんnetの調達は、宿泊施設が直接、管理画面を通じて空室を提供することで、行われる。空室提供を促すのは、地域の営業の役割である。

また、RLSは、航空会社、JRと提携することで、交通機関の空席情報提示と予約も、宿泊予約と同時にじゃらんnetで、できるようにしている。

マーケティング・販売
宿泊施設に対する営業活動としては、RLSは、地域に在住している人も、営業スタッフに採用する。これは、RLSに特徴的である。彼ら・彼女らの多くは、1990年創刊の宿泊施設情報雑誌「じゃらん」の営業スタッフであった。営業スタッフは宿泊施設を訪問し、じゃらんnetへの参加を促し、宿泊プランの提案などを行う。営業スタッフには地域を愛し、地域経済が活性化する事を望んでいる様な人材を中心に採用している。

2010年、RLSは、「お客様サービスグループ」を設け、宿泊施設への電話サポート体制を整備した。じゃらんnetに掲載されている2万以上の宿泊施設に対するサポートを、即効性をもって網羅するためである。

旅行者に対する営業活動、特に、サイトへの集客を、RLSは、広告費用ではなく、予約・売上の原価と位置づけており、積極的に投資している。

RLSは、その規模を活かして、全国ネットのTVコマーシャルを放送し、認知度を維持、旅行への関心を喚起している。

RLSは、サイトへの訪問者を増やすために、リスティング広告を積極的に活用している。また、提携他社サイトからの旅行者の誘導や、雑誌じゃらんとの連携によるサイトへの集客も行う。

また、RLSは、社内の他の事業との範囲の経済を活かしてじゃらんnetへの集客を促進している。たとえば、美容情報サイト「ホットペッパービューティー」とのポイント連携や、割引チケット共同購入サイト「ポンパレ」との集客連携などだ。

アフターセールス・サービス
RLSは、じゃらんnet専用の問い合わせ・意見窓口、「CS(カスタマーサティスファクション)推進部」を設け、じゃらんnetサービスおよび宿泊施設におけるサービスへの意見を集約している。

RLSは、地域の魅力を再発見し、地域主導の観光プログラムを育て、旅行需要を喚起するため、じゃらんリサーチセンター主催の「旅作り塾」を、行政や地域の観光協会等に対して開催している。

人的資源管理
RLSでは、スキル教育に加えて、価値観教育を重視している。働くことの意味や個人のビジョンを議論し、じゃらんnetのミッションを共有する。

活動間のフィット

RLSの活動システムは、宿泊施設と旅行者の最適なマッチングを最大化することを中心に選択され、整合性の高いシステムを形成している。その中でもコアとなる選択は、圧倒的な旅行者の集客、全国営業体制による宿泊施設のフォロー体制、旅行市場活性化の取組みである。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • マジョリティ・セグメントは、実は細分化(マイクロセグメンテーション)可能であり、ロングテールだと認識した。
  • 創業初期、必ずしもインターネットで宿泊予約をすることに慣れていない一般的な利用者をじゃらんnetに勧誘する方法を模索。「箱根、土曜日、旅館、予約」ではなく、旅行と直接関係のないキーワードに対するリスティング広告を購入。前者は、既に具体的な旅行計画がイメージされているため、予約につながる確率が高く、広告としてより効果的であるが、そうしなかった。あえて、旅行計画が具体的でない利用者に広告することで、短期的には予約に結びつかなくても、じゃらんnetをより多くの一般的な人に知ってもらうことに成功した。

戦略の一貫性

最も幅広い選択肢を示すことで、ニーズにあった施設が見つけられる、料金を払っても有利な表示位置を入手できない、地域の営業が施設への提案を行う、などは、じゃらんnet創設当初から変わっておらず、戦略は一貫している。

しかしながら、ミッションは、創業後ある時期に、進化した。これは、それまでの戦略と矛盾することなく、一層フォーカスを際立たせるものであり、ポジティブに評価される。じゃらんnet創業時のミッションは、雑誌「じゃらん」のミッションであった「日本をすみずみまで予約するブッキングメディア」であり、日本の全ての宿泊施設を掲載することであった。じゃらんnetも、掲載施設数を業界一にすることを目指していた(選択肢が多ければ、ニーズにあった宿泊施設を探し出せる確率も上がり、顧客満足も生まれる)。しかし、掲載施設数を最大化することはできても、それ以上の付加価値を追求していないことに気付いた。そこで、現在のミッションが生まれた。現在のミッションは、どこでも予約できるだけでなく、宿泊体験の質を向上させる提案を行うことで、旅行市場全体を拡大していこうとするものだ。

トレードオフ

  • リクルートのほかの事業部の宣伝などを、じゃらんnetで行わない。
  • 旅行に関係ない広告を掲載しない。
  • 料金をとって有利な表示位置を販売する事をしない。顧客評価が改善しないと表示位置は改善しない。
  • 特定の顧客セグメントに特化しない。
  • 大都市に営業部隊を集中させない。地域に密着した営業部隊とする。

収益性

投下資本利益率、営業利益率、ともに業界平均を大きく上回る。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
16.8%P 32.1%P 23.0%P 16.3%P 12.2%P 18.8%P
Inter quartile range (IQR) = 6.9%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
32.9%P 28.8%P 32.6%P 33.4%P 29.5%P 38.3%P
IQR = 12.2%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

受賞企業・事業部 PDF

第16回 ポーター賞 応募期間

2016年5月 6日(金)〜 6月 3日(金)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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