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受賞企業・事業部レポート

星野リゾート

2014年度 第14回ポーター賞受賞 リゾート施設運営

星野リゾートは、リゾートホテルの運営に特化している。

施設を保有しないことで星野リゾートは、「星野リゾート」というマスター・ブランドの下で、急速に運営施設数を増やすことができた。

同社は、各地域の特長に根差した独自性のあるサービスを提供することで顧客に支持され、星野リゾートというブランドは質の高いサービスを提供するということで知られるようになった。

同時に、星野リゾートは、作業の平準化と、各種作業によって異なる、一日の中にある作業負荷の波に合わせて人を移動させることを可能にするマルチタスクの採用によって、労働生産性を改善している。マルチタスクは、スタッフの仕事のやりがいを高め、また、サービスの質向上にも貢献している。

星野リゾートは、星野リゾートというブランドの下、日本国内で32の施設を運営している。このマスター・ブランドの下に、5つのカテゴリーがあり、そのうち3つはサブ・ブランドがつけられている。一つ目はフラッグシップの星のやで、比較的大きな施設である。星のやには3施設があり、山あいにあり天然温泉を楽しむことができる星のや軽井沢、沖縄の亜熱帯気候を伝統的な沖縄スタイルで楽しむことができる星のや竹富島、歴史ある京都で伝統的な日本の旅館を楽しめる星のや京都。二つ目は、界ブランドで、小規模な温泉旅館(50室以下)である。三つ目は、リゾナーレ・ブランドで、近代的かつスタイリッシュなファミリー向けのリゾートであり各種アクティビティが充実している。四つ目のカテゴリーが、山のロッジやスパなど、それぞれに特徴のある宿泊施設だ。たとえば、十和田八幡平国立公園内にある奥入瀬渓流沿いに立てられた奥入瀬渓流ホテル(青森県)など。五つ目のカテゴリーが、宿泊客だけでなく一般客がアクセス可能な各種施設である。例えば、レストラン、スキー場、エコツアーなど。これらのリゾート施設は、既存施設の再建の場合と、新たに開発される場合とがある。
日本には約45,000の旅館があるが、所有者と運営者が同じであることがほとんどである。その結果、規模の経済を享受するのが非常に難しい。

ユニークな価値提供

星野リゾートは、リゾート施設の運営に特化している。したがって同社の顧客は、リゾート施設の所有者であったり、リゾート施設開発の投資家であったりする。再生案件の場合、星野リゾートは、宿泊客の満足度を改善し、また、施設と労働の生産性を改善することで、利益を生む事業へと作り替える。
リゾートの宿泊客には、日本の伝統的なホスピタリティに対する考え方である、おもてなしを提供する。同社の考えるおもてなしとは、お客様のあらゆる要望を満たそうとするだけでなく、施設ごとのユニークな経験を提供することで、お客様の期待を超えることである。たとえば、星のやの客室にはテレビが置かれていない。これは、非日常を経験してもらいたい、という星のやからの提案である。星のやは、自然な環境の中に設けられており、宿泊客は小川のせせらぎや小鳥のさえずりなどの自然の音に耳を傾けるように、自然と促される。

独自のバリューチェーン

星野リゾートのバリューチェーンは、調達、運営、マーケティング・セールス、人的資源管理、全般管理においてユニークである。

調達:
星野リゾートは、リゾート運営の優れた能力がその実績と共に広く知られるようになったので、リゾートの所有者や開発業者が提案を持って星野リゾートを訪れることが多い。

運営:
リゾートの運営において、星野リゾートは、業界で標準的な専門化を採らず、代わりに「サービスチーム」と呼ばれる、マルチタスク制を採用している。一人一人の従業員が、調理、客室清掃、フロント、レストランサービスの4つの機能全てにわたって仕事をする。各機能の作業量は、一日の中で変動があるため、スタッフは一日中4つの機能の間を移動する。その結果、部屋当たり従業員数を低く抑えることが可能になっている。加えて、同社は、「ワクログ」という勤怠管理システムを開発しており、スタッフは15分刻みで機能間の移動を記録する。マルチタスクは、また、職務充実にもつながり、従業員への動機づけ、サービスの質向にもつながる。従業員には、地域の特長を活かした、施設に特有な新しいサービスを創造することが期待されている。
星野リゾートはセントラル・キッチンを有しており、食材の調達、標準的な料理の調理などで規模の経済を享受している。標準的な料理は各施設に運ばれ、各施設で調理される、その施設で開発された料理や、その土地に固有の料理と一緒に供される。

マーケティング・セールス
星野リゾートは、マスター・ブランドによる規模の経済を享受しつつ、同時に、個々の施設ごとの特長を生み出すことで、地域ごとのカスタマイゼーションを活かしている。規模の経済によって顧客獲得費用は安く抑えられ、地域ごとのカスタマイゼーションによって32施設の中での顧客維持を高く保つことが可能になっている。
星野リゾートというマスター・ブランドのブランド認知を高めるため、同社は投資を行ってきた。また、同社は、自社ウエブサイトとコールセンターからの予約を増やすことにも成功した。その結果、同社の旅行代理店に対する交渉力は強くなり、販売代理店手数料の抑制と、露出の増加につながっている。同社は、ウエブサイトへの訪問者が実際に予約をする割合をモニターしており、これを改善するために、ウエブサイトのコンテンツを改善し続けている。
宿泊客のチェックアウト時には、全ての顧客にウエブ上での顧客満足度アンケートへの記入を依頼しており、数値の正確性を確保するために、30%の回答率を目指している。結果は、全てのスタッフに共有され、数値の分析や対応策の検討もスタッフが担当して行う。アンケート内容はまた、CRMにも活用され、同じ顧客が星野リゾートの別の施設を利用する際に参考にされる。

全般管理
星野リゾートでは、調理、客室清掃、フロント、レストランサービスの4つの機能に従事するサービスチームの生産性を測定している。スタッフは、個々の機能に必要な技術の習熟度と実践度において評価される。それぞれの施設は、スタッフの4機能における技術の習熟度とサービスの質によって、SからDの5段階で評価される。
星野リゾートの組織はフラットだ。個々の施設は、サービスチーム・ユニット、スパ・ユニット、アクティビティ・ユニットなど、ユニットを単位として組織されている。ユニットは、運営に必要な、10人から30人のスタッフで構成されている。それぞれのユニットは、顧客満足度や収益性に責任を持っており、ユニット・ディレクターがチームのキャプテンとして指揮統率する。

人的資源管理
星野リゾートでは、管理職の職位は、総支配人とユニット・ディレクターだけである。職位に関係なく、全てのスタッフにはリゾート運営を改善するためのアイデアを貢献し、議論することが求められている。そのために、スタッフには、顧客満足度調査の結果が共有され、施設の収益性情報も提供されている。
管理職の職位は、立候補したスタッフから選出される。候補者は、年2回の立候補プレゼン大会においてプレゼンを行わなければならない。従業員は、自ら管理職になることを選ばなければ、管理職になることを求められない。

財務
星野リゾートでは、所有する施設を証券化(REIT)することで、一般の投資家からも資金調達をしている。

活動間のフィット

星野リゾートは、規模の経済性と現地でのカスタマイゼーションの両方を活かしている。
また、高い顧客満足度と、構造的に低いコストを実現している。
これらは、ユニークな活動の選択と、活動間のフィットが優れている結果可能になっている。
運営に特化するという選択の結果、施設数を迅速に拡大することができ、調達、ブランド投資、販売チャネル、セントラル・キッチンなどにおいて、規模の経済を享受することを可能にした。
マルチタスクは、労働生産性、サービスの質、それぞれの地域の特長を活かした独自性のあるサービスのアイデア創出などに貢献している。
フラットな組織は自由闊達な議論と情報共有を可能にしており、従業員は、施設の顧客満足度調査の結果や、施設の収益性について常に最新の情報を得ている。
(本セクション最後に掲載した「星野リゾートの活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • マルチタスク。一人の従業員が 調理、客室清掃、フロント、レストランサービの4つ機能に従事する(2005年 開始)。
  • 伝統的で小規模な日本旅館に統一的なサブ・ランドを冠するブランド戦略。中には300年の歴史を持つ旅館もあるが、その名前を変える(2009年開始)。
  • 非常にフラットな組織。リゾート施設における管理職の職位は、総支配人とユニット・ディレクターのみ。

トレードオフ

  • 施設を所有しない。
  • 再生案件で、旅館の名前をそのまま継続しない。希少性を追求しない。
  • 組織にヒエラルキーを作らない。
  • 年次で従業員を評価しない。
  • ホテル業界で標準的な分業体制を採らない。
  • お客様のニーズを満たすことに留まらない。お客様が期待していないような経験をプロアクティブに提案する(たとえば、星のやの施設においては、自然を満喫してもらうため、客室にテレビを置かない)。

戦略の一貫性

星野リゾートがリゾートの運営に特化すると決めたのは、星野佳路が社長に就任した1991年のことであった。
この方針は、1992年に、「リゾート運営の達人になる」というビジョンとして発表された。
当時、星野リゾートは、星野温泉ホテルという施設を一つ所有しているだけであり、当面、ホテル運営のノウハウを技術として開発することに注力した。
その中で、同社は、たとえばマルチタスク・チームなど、独自性のある仕組みを創造していった。
運営特化という意図にも関わらず、2004年までは、同社が運営するためには、施設を所有することが必要であった。
しかし、2001年から手がけたリゾナーレ八ヶ岳の再生に成功すると、同社のリゾート運営の独自性と卓越性が広く知られることとなった。
2005年には、ゴールドマンサックスが、日本で所有するリゾート施設の運営を、星野リゾートに委託することとなり、これ以降、星野リゾートは、運営に特化することができるようになった。
2013年、同社は、所有していた施設を証券化し(REIT)、東京証券取引所にこれを上場した。
このREITは、星のや軽井沢(2005年に星野温泉ホテルを改装した)を含んでおり、同社の運営特化という戦略への明確なコミットメントを示すこととなった。

収益性


投下資本利益率、営業利益率ともに業界平均を大幅に上回っている。

活動システム・マップ

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