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受賞企業・事業部レポート

新生プリンシパルインベストメンツ株式会社

2015年度 第15回ポーター賞受賞 中堅・中小企業向け投資銀行業

首都圏の中堅・中小企業に特化して投資銀行サービスを提供。創業支援から事業再生まで、企業のライフサイクルに応じて支援。

新生プリンシパルインベストメンツは新生銀行の100%子会社で、首都圏にある年商10億から50億円程度の中堅・中小企業に特化している。このターゲット顧客の選択は、外資系投資銀行、ファンド、メガバンクと比較してユニークである。

次に、サービスが幅広く、時間軸が長い。成長企業への出資を含めた経営支援、安定期にある企業のオーナー交代、要再生企業への債権投資など、企業のニーズに応じた幅広い支援を、長期視点で提供している。

最後に、ユニークな活動の仕組みと大幅に優れた成果だ。中小企業向け投資銀行サービスというニーズがあることは古くから良く知られていた。また、金融業界にはそれに応えるノウハウが以前からあった。新生プリンシパルインベスツメンツが提供している金融サービスも、個々の金融技術という点では特別ではない。しかし、新生プリンシパルインベスツメンツは、中堅・中小企業向けのサービスに適した活動の仕組みを創造することによって、従来よりも大幅に優れた成果を達成している。

新生プリンシパルインベストメンツ株式会社が100%出資する子会社として、新生企業投資(機能:ベンチャー投資、事業継承を中心としたバイアウト投資。母体:新生銀行プライベートエクイティ部)、新生インベストメント&ファイナンス(機能:債権投資、ブリッジファイナンス、アセットバックファイナンス。母体:新生銀行クレジットトレーデイング部の金銭債権買取機能と新生銀ファイナンスの貸付機能を統合)、新生債権回収&コンサルティング(機能:事業再生支援、廃業支援、債権回収。母体:新生債権回収株式会社)の3社を有する。新生プリンシパルインベストメンツ株式会社は、持ち株会社として、投融資に関わる事務、コンプライアンス、人事、経理、総務の機能を持つ。新生プリンシパルインベスツメンツ傘下の3社を含めて、新生PIグループと呼ばれている。新生PIグループのスローガンは、「金融には、もっとできることがある。」

ユニークな価値提供

新生PIグループが提供するサービスは、立ち上げから成長期の中堅・中小企業へのエクイティ投資(多くの場合未上場株投資)、上場前の資金提供、成熟した中堅・中小企業向けの債権投資(買取)によるバランスシート改善とキャッシュの提供、事業継承を円滑化するバイアウト投資(株主議決権の過半数以上を保有し、経営改善することで事業継承を円滑に行う)やブリッジファイナンスなど、幅広い。

新生PIグループのターゲット顧客は、大まかには売上10から50億の首都圏にある中堅・中小企業だ。より具体的には、エクイティ投資であれば、売上規模20から100億円程度、総資産で20から50億円程度。債権投資であれば、原債権額50億円、売上高20億円、総借入額が100億円程度までの規模の企業。この規模の企業は、個別性が強くて手間がかかる割に、取扱額の小ささから、外資系投資銀行は扱わず、また、メガバンクの主たる顧客でもない。

サービス提供の時間軸は、業界に比べて長い。標準的な投資期間は、エクイティ投資で3年、債権投資で5年。投資期間を延ばせば内部収益率(IRR)が下がるが、中堅・中小企業の課題には時間をかけて取り組む必要があるものが多い。また、企業の内部環境や外部環境の変化に対応して柔軟な判断をすることができる。対照的に、他人資本を集めて企業に投資するプライベート・エクイティ・ファンドは、募集時にファンドの解散時期を定めているため、期間に関する柔軟性が低い。新生PIグループでは、サービス提供開始から終了までの期間、同じ担当者が担当し、投資の結果を見届ける責任を持つ。

顧客企業の経営者のニーズは、多様である。従業員の雇用の維持、古くからの仕入先や販売先など取引先への配慮、社名や技術の継承、子どもに跡を継がせること、受け継いだ土地を手放さないことなど。新生PIグループは、顧客企業の、特に経営者のニーズを重視し、顧客毎に最適なソリューションを提供するため、カスタマイズした対応を行う。経営者のニーズを重視するのは、中堅・中小企業の経営が経営者に負うところが大きいからだ。ハンズオンで支援する場合には、顧客企業に新生PIグループの社員を派遣して常駐させたり、社内研修に参加して学びのプロセスを共有することもある。

上場まで数年の新興企業を対象とした上場前エクイティ投資を行った60件のうち3割超にあたる20社以上が既に株式を上場または1年以内に上場予定(実現実績としても3割以上。業界平均は1割割程度)。取引金融機関から支援を見送られ債権売却に至った中小企業の9割以上が、通常の金融取引に復帰している。破産となった先はほとんどない。

独自のバリューチェーン

資金調達
新生銀行の自己勘定投資であるため、安定的な資金調達基盤を持つ。資金調達活動が不要で、柔軟に投資対象を変えることが可能。

案件発掘
新生PIグループの顧客企業の発見ならびに獲得のルートは3つある。一つは、紹介による、ネットワーク・アプローチで、中堅・中小企業を担当する弁護士や税理士からの紹介が多い。また、過去に同グループが投資を行い上場した顧客企業からの紹介も多い。二つ目は、新生PIグループが能動的に潜在顧客を絞り込むターゲティング・アプローチだ。景気動向、株価、為替、政府の方針や法制度の変更、税制等、様々な変化に常にアンテナを張り、潜在顧客をリストアップ、そのニーズを推測し、ターゲットを絞り込む。その上で、個別訪問などの営業を行う。三つ目は、潜在的な顧客から新生PIグループにアプローチするルートだ。上場前エクイティ投資先の高い上場比率から、新生PIグループが投資すると、他のベンチャーキャピタルからの資金調達がスムーズになることが少なくない。上場前の起業家の間で評判が確立してきたことが、この流れを支えている。

投資判断
審査にあたっては、まず、指標、マトリックス、スコアリングなどの定量分析を徹底して行うが、新生PIグループに特徴的なのは、経営者や従業員と面談を重ね、当該企業の課題と重視しているニーズ、特に、企業オーナーが何にこだわりを持っているか、雇用の維持なのか、取引先への影響なのか、など、定性的な要因を把握することに時間をかけることだ。

定量的な判断は、豊富なデータの蓄積に支えられている。新生PIグループでは、投資実行に至った案件や顧客だけでなく、実行に至らなかった案件・顧客もデータベース化し、必要に応じて共有することが可能となっている。この情報を比較対象に、エクイティ投資では、約3000件の候補先から150件を詳細に検討し、優良な60件に投資を行うなど、数よりも質を重視したセレクティブな投資方針。

不動産評価や債権回収などの専門的業務をアウトソースせず、デューディリジェンスの全てのプロセスを社内で行う。

ソリューション作成
事前にあらゆる想定可能なリスクを織り込んだオーダーメイドのソリューションを作成する。この点について企業オーナーの理解を得られているので、投資後に想定外のリスクが発生しても、オーナーと迅速に協働することができ、投資リターンが低下することを回避している。

バリューアップ
新生PIグループは、ハンズオン支援をはじめとする顧客との緊密なリレーションを特徴とし、経営体制やコンプライアンス体制、財務の強化などについて支援やアドバイスを行い、投資先の企業価値最大化を図る。ハンズオン支援では、オーナーの想いに寄り添い、経営陣や社員らと「一緒に汗をかく」スタイル。主体性はあくまで企業側にあり、経営陣のオーナーシップややる気を削がないよう注意が払われている。

債権回収は、「適正な債権管理を通じて債権価値の極大化を図ると共に、顧客を正常な金融取引に復帰させること」を目指し、顧客とのコンサルティングに重点を置く。業務量の7割を顧客との面談に割き、事業の収益力改善に向けて助言を行う。

ポートフォリオ・マネジメント
エクイティ投資においては、リスク分散のために、業種の偏りを避け、幅広い業種に投資する。債権投資では、不動産市況や金融環境が悪化した時期には、一括弁済を猶予して一定金額の返済に留め、インカムゲインの割合を増やすなど、状況に応じて、キャピタルゲイン(一括弁済)とインカムゲイン(一定のキャッシュフロー返済)のバランスを選択する。その結果、外部環境が悪化した時期にも、一定の利益を出している。

人的資源管理
顧客企業とのつきあいは標準で3年から5年になり、その間同じ担当者が担当する。そのために、新生PIグループでは、基本的に人事異動をしない。また、一部の優秀な人材が沢山の企業を入り口のところだけ担当する、ということもできないため、高いレベルでサービスを提供できる人材が多く必要になる。

新生プリンシパルインベストメンツ株式会社の設立時に、社員は新生銀行から転籍。親会社である新生銀行からの出向者はいない。

新卒を含む全ての採用は、新生PIグループで独自に行う。採用は、チームワークを重視する価値観を共有できることを必須条件とし、たとえスキルが卓越していても、スタンドプレイ的な傾向が見受けられ、企業文化に合わないと判断されると採用は見送られる。

人事評価は、担当業務とグループ全体に対する貢献を7:3の割合でウエイト付けし、全体最適を目指す行動を推奨している。担当業務の評価も、個人の業績よりもチームの業績を上位に位置づけ、チームワーク重視の企業文化を支えている。

職位が3階層のフラットな組織にすることによって、職位にとらわれずに柔軟にリーダーシップを採ることを可能にしている。ミドルには広範な権限が与えられており、案件の特性に応じて年齢を問わず、プロジェクトリーダーが入れ替わる。人員割合は、シニア(経営陣):ミドル:ジュニア(社会人経験2-3年程度)が10対80対10。55歳以上のミドル社員は、アドバイザーとして人材育成支援の役割に重きがおかれる。

顧客企業への提案作成は、担当チームが行ない、最終意思決定は経営陣が行う。レポートラインが短く、顧客対応に問題がないか、目が届く。

育児や本人の疾病、介護を理由に、積み立てた有給で最大1年まで休むことができる(第二年休制度)。

業務開始14年で、平均勤続年数は10年超。新生PIグループの離職率は低い(過去5年平均4.2%)。

全般管理
新生プリンシパルインベンスメンツ(持株会社)の傘下にある3つの100%子会社、新生企業投資(ベンチャー投資、事業継承を中心としたバイアウト投資)、新生インベストメント&ファイナンス(債権投資、ブリッジファイナンス、アセットバックファイナンス)、新生債権回収&コンサルティング(事業再生支援、廃業支援、債権回収)は、それぞれに情報管理とリスク管理が求められるが、同時に、一つの顧客企業に対して、一緒にソリューションを考えたりサービスを組み合わせて提供することも求められる。適切に管理しつつ協働を促すために、各社は透明なガラスの壁で区切られたそれぞれに固有のオフィス・スペースを持つが、柱のない一つの広いスペースに配置されており、互いの動きが視野に入る。全社共有のスペースである通路やキャンティーン、ガラス壁の外側にある共有のミーティングスペースでは、子会社間の情報交換や協働作業が行われる。

新生PIグループでは、「顧客と同じ目線で、ソリューションを考え抜く」「顧客の潜在力を最大限引き出す」「長期的視点に立って規律ある投融資を行う」という価値観が共有されている。

活動間のフィット

新生PIグループの活動は、首都圏の中堅・中小企業に「徹底したオーダーメイドサービス」を提供し、顧客企業の潜在力を引出し成長、再生、継承を支援することを目標として、投資先の選択や時間軸に柔軟性を与える「自己勘定を使った資金調達」、専門家を育成し、ノウハウを共有し、専門を超えた協働ができる組織を支援する「人事制度」と「暗黙知を醸成」し「変化を志向する組織」運営が整合性の高い活動システムを形成している。(本セクション最後に掲載した「新生プリンシパルインベストメンツ株式会社の活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • フラットな組織。新生PIグループには、職位の階層が3つしかない。成果は報酬で報われる。

トレードオフ

  • レディメイドの金融サービスの提供はしない。個々のニーズを反映した顧客主体のオーダーメイドの金融サービスの提供にフォーカスする。
  • 手掛ける案件の量を追わない。個々の顧客に向き合う時間を犠牲にしないため、案件の量は、組織のキャパシティを超えないように管理する。
  • 定量要素のみで投資判断をしない。スコアリングだけでは分らない定性要因にも重点を置き、顧客の真の姿を理解する。
  • クロスセルをしない。たとえば企業オーナーに金融商品を販売するなど、投融資以外の商品を営業しない。
  • 価格競争はしない。金利競争に陥るような価格主導の案件は受けず、手間暇をかけてじっくりと顧客に向き合うことで付加価値を発揮できるような案件にフォーカスする。
  • 短期的収益の一義的な追求をしない。中堅・中小企業へのサービス提供にあたっては、「自社の収益極大化に走っていないか」を常に検証する。たとえば、債権回収業務では、担保処分よりも、顧客企業の経営改善による返済能力改善を目指す。
  • 景気後退局面でも支援方針を変えない。景気は循環するという長期的視点に立ち、フェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションを取りながら、数字だけでは判断できない中小企業の潜在能力を引出し、景気後退局面を共に乗り越える。
  • 多店舗展開をしない。一店舗で組織文化やスキルの共有を重視する。
  • 会社規模の拡大を目指さない。サービスの質を左右する暗黙知を共有できる規模を超えない。
  • 親会社からの人材供給は受けない。出向者、天下りなどは受けない。新生銀行との人事ローテーションをしない。
  • 人事ローテーションをしない(新生PIグループ内)。しかし、専門外の分野と協働できるスペシャリストを育成する。
  • 社員間の競争をさせない。職位階層を細かく分け、上位階層のポジションが少なくなるピラミッド型の組織構造にすることによって、限られた高いポジションをめぐって社員を競争させる、ということはしない。他の社員に知識を伝授して人材育成に貢献したり、協働することの妨げになることが多いため。
  • 業務をマニュアル化しない。業務を通じて蓄積されるノウハウは共有、伝承しながらも、個別に提案を創造することを重視する。

戦略の一貫性

新生PIグループは、ターゲット顧客を首都圏の中堅・中小企業に一貫して置きながら、中堅・中小企業のニーズに応じて、徐々にサービス範囲を拡大してきた。その中でも、長期の時間軸、中堅・中小企業(特にオーナー)のニーズを中心としたソリューションのカスタマイゼーション、手間をかけ、経営者と共に汗をかくハンズオンの方針は一貫している。

新生PIグループの前身である新生銀行プリンシパルトランザクションズ本部は、2001年に誕生した。当初手掛けたのは、他行の不良債権処理の結果手放されることになった、破綻先や実質破綻先企業への債権を買い取り、経営改善することで返済を得る事業であった。その後、破綻債権に加え、再建可能な企業の債権を買い取り、コンサルティングサービスを提供することでキャッシュフローを改善し、返済額を増やす事業を追加した。これによって、中堅・中小企業へのコンサルティング・ノウハウを構築した。2005年からは、「債権投資の営業活動は債権の売り手である金融機関にアプローチするもの」という業界の常識を覆し、銀行から債権を買い取るのではなく、自ら再建可能な中堅・中小企業を探して投融資する事を始めた。2009年以降、良質な資産を有するものの信用力の低い企業へのファイナンスを開始。2011年、ベンチャー投資、バイアウト投資へとサービス範囲を拡大。

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに一貫して業界を大幅に上回っている。(業界平均との収益性比較は、PwC Japanの協力を得ている。)

収益性

活動システム・マップ

活動システム・マップ

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