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受賞企業・事業部レポート

株式会社オープンハウス 戸建事業部

2016年度 第16回ポーター賞受賞 戸建住宅の製造販売業

「東京に、家を持とう。」をキーワードに、首都圏に特化し、低価格で初めて住宅を取得する層をターゲットに戸建住宅を提供。土地の取得から設計、販売まで内部化し効率化を実現

openhouse_2.jpgオープンハウスは、平均的な会社員が都心で一戸建購入を可能にすることを価値提供とし、駅からの距離など利便性が高くても真四角でない土地や、細い通路で道路とつながった旗竿地などを積極的な購買活動で入手。社内の設計士が土地の形状にあった建物を設計し、土地を効率的に使用。商品のある地域で潜在顧客に営業し、高い回転率で開発から販売までを行う。

1997年設立、2001年2月新築戸建物件の販売を開始、2013年9月20日東京証券取引所第一部に上場。

ユニークな価値提供

オープンハウスの商品は、木造3階建てを中心とする、「最高級の仕様ではないが、好立地で手の届く価格帯の戸建住宅」だ。好立地とは、東京都心への通勤に便利な人気駅から徒歩10分以内程度の距離にあることを意味する。オープンハウスの戸建は、駅から徒歩10分程度に立地しながら、同駅同距離帯にある物件の市場平均価格に対して、東急田園都市線・桜新町駅で5%程度、東急池上線・戸越銀座駅では10%程度、東急大井町線/東急東横線・自由が丘駅では14%程度、坪単価が割安(過去5年間の実績、オープンハウス調べ)。

ターゲット顧客は、東京都心への通勤に便利な立地を重視するものの、従来の戸建は高すぎると考える個人。その多くが年収500万円から1000万円ほど。

オープンハウスが市場平均価格よりも安くできる理由は、第一に割安な土地を購入することにある。都心への通勤に便利な地域では土地の値段が高いことが多い。オープンハウスでは、ほぼ正方形などの建物を建てやすい形状をしていない土地、前面道路が多少狭い土地(※1)、道路まで狭い通路でつながっている土地、駐車スペースを取れない土地、高さ制限(※2)や斜線規制(※3)などの建築制限が厳しい土地、借地権の土地などを選んで購入する。第二に、1棟あたりの土地面積を小さくする。上に挙げたような特徴の土地は、割安な反面、画一的な設計を採用しにくい。それぞれに形の違う土地に設計を工夫して沢山の建物を建てると、画一的な設計よりは設計費用や材料費が多く必要になることが多いが、オープンハウスは、他社であれば4棟分の戸建しか建てられない土地に5棟分の3階建てを建てられるような設計上の知見を蓄積し、設計、材料、施工費用の増加分を吸収して余りあるコスト優位性を実現した(3階建ては斜線制限など準拠すべき規制も多く、工夫次第で違いが創り出せる)。第三は、戸建住宅の仕様から必要以上の贅沢をそぎ落とすことだ。たとえば、庭を作らない、玄関の床材は天然大理石でなく、人工大理石にする、など。第四は、回転の速さだ。土地の仕入れから設計、施工、販売完了まで、一気通貫で行われるので、資産の回転率が高い。

(※1)道幅4メートル未満の道路(狭あい道路)に面した土地は、緊急車両の通行を可能にするため、建築基準法42条第2項により、道路の中央から2メートルは壁や門を含め建築物の設置が禁じられている。

(※2)都市計画法の用途地域(たとえば、第一種低層住居専用地域や第二種低層住居専用地域)によっては、建物の高さの絶対値が規定されている。

(※3)建築基準法第56条。道路、河川、公園など隣接するものを起点としてある傾きで斜線を引き、それによって建築物の高さを制限するもの。斜線の勾配、つまり、制限される高さの求め方は、都市計画法の定める用途地域(住居、商業、工業など)によって異なる。

独自のバリューチェーン

オープンハウスのバリューチェーンは、土地の調達、整備、設計、施工管理、土地・建売営業までの工程を滞ることなく高速で動かすことで、資産回転率を高め、コスト競争力を得ると同時に、不動産という市況のある事業のリスクを低減している。このバリューチェーンは、都心の好立地に年収500万円から1000万円の人たちが手の届く低価格で戸建住宅を供給するという明確な戦略に導かれており、また、ユニークな人的資源管理がその実践を支えている。

調達
安く良い土地を仕入れるためには、不動産仲介事業者への仕入営業が鍵を握る。オープンハウスでは、営業担当者は地域担当制をひいているが、不動産仲介事業者別に担当は割り当てていない。しかし、仕入営業担当者は、一日に25社へ飛び込み営業を行っている。したがって、同じ不動産仲介事業者にオープンハウスの営業担当者が一日に何人も何度も訪れることが起こる。頻繁な訪問では、不動産仲介事業者との関係構築が進むようなアプローチが模索される。頻繁な訪問によって、売り出されたばかりの土地を見つけられる確率が上がる。次に、購入の意思決定が速くなければならないが、オープンハウスでは、土地物件の情報入手から買付書提出まで半日程度で対応できるよう、承認プロセスが組まれており、土地物件の情報入手当日に契約日を確定させることも可能。借地権の土地や変形の土地など、一般の戸建事業者では事業化が難しい土地も扱えることで、「オープンハウスならなんとかしてくれる」という信頼が不動産仲介事業者に生まれ、これもまた、土地の仕入れに貢献している。

建材の購入や、施工事業者への発注については、専門部署を設け、集中購買によるコスト低減と業務効率化が図られている。オープンハウスの急成長に伴って発注量も急速に増加しており、購買単価は3か月に一度の頻度で見直されている。

設計
借地権土地や変形の土地なども手間を惜しまず、社内の設計士が、どうしたら用地化できるかを検討する。知見の蓄積のため、極力、設計の外注は避けられる。設計士は組織上、仕入部門に所属し、自らの工夫によって多くの土地が仕入れられると、部門業績に貢献することができる。

施工管理
真四角でない土地を最大限に活用するため、オープンハウスでは半地下の3階建てを設計するなど、設計が複雑になり、かつデザインが多様な傾向がある。すると、建築材料の種類や量も異なるため、施工難易度も高くなり、工期は伸びる傾向にある。長い工期はコストが増えるだけでなく、在庫が増えることにつながり事業リスクが増大する。

オープンハウスでは、長期にわたる建築工期を細かい工程に細分化し、工程ごとに標準工期を一日、二日のレベルで定めている。たとえば、その土地に以前から建っていた建物を解体し、更地に整備し、境界フェンス設置や造成工事を行うまでの準備段階では、解体する建物の構造やその地域の建築規制などに大きく影響を受ける。オープンハウスでは、現場条件数十項目から目標工期を設定し、これに対する達成率を、第一段階を手配するチームの評価項目とし、本工程を評価制度導入前と比較して約65%(90日程度から30日程度へ)短縮することに成功している。

営業
価格競争力のあるオープンハウスの戸建住宅は強力な営業力がなくても販売が可能であるが、オープンハウスは、「より速く売る」ことをミッションに、営業活動に力を入れている。

現在賃貸住宅に住んでいる都市生活者の多くは、通勤の利便性を求めて、郊外の戸建ではなく賃貸住宅を選んだ経験があることが多く、現在の収入で手が届く戸建が近隣にはないと思い込んでいることが多い。同時に、彼ら彼女らは、住み慣れている、周辺に知り合いが多い、子供の通う学校を変えたくない、などの理由から、現在住んでいる場所から大きく動きたくないと考えていることが多い。したがって、オープンハウスの営業は、ニーズが顕在化する前の顧客にアプローチし、ニーズを喚起する必要がある。営業活動は、現在の収入で購入可能な戸建物件が地域にあることを気づいてもらう、購入検討のきっかけを与えることを目的とし、新築物件での呼び込みや地域の商業施設での声掛けの形で行われることが多い。これをオープンハウスでは「源泉営業」と呼び、販売の30%超がこの手法により実現している。

戸建営業の担当者は地域別担当はなく、たとえば、赤羽センターの営業担当者が渋谷の戸建物件を販売することもできる。したがって戸建営業担当者は、常に、特別に割安で人気がありそうな物件が完成しないか注意を払っており、店舗を超えた社内競争が存在する。

オープンハウスでは営業業務を集客、物件案内、契約締結の3ステップに分け、各営業担当者はそれぞれのステップに特化する。そうすることで、迅速な育成が可能になる。オープンハウスの営業担当者の半分以上が入社1年以内の業務経験しかないが、顧客との会話内容などまで細かくマネジャーに報告、相談することで経験不足を補い、顧客のニーズに最適な物件を迅速に提案する。契約のクロージングはマネジャーが行う。

一般的には戸建物件の発売開始から購入契約締結まで1か月から2か月を要することが多いが、オープンハウスの場合、業界平均よりも大幅に短い。売れるまでの期間が短いことで、何度かオープンハウスの物件を見ている潜在顧客は、早く決断しないと売れてしまうことを知り、意思決定が早くなる傾向が生まれる。

オープンハウスが販売する物件の半分は建物完成後に販売する「建売」、半分は更地で販売し、顧客が購入後に設計を発注する「土地売」である。資産の回転率を重視する立場からは、土地代金が先に入ってくる土地売の方が望ましいが、オープンハウスの得意とする道路から奥まった土地(旗竿地)や狭小地では建築後のイメージができにくく、購買に結び付きにくい。オープンハウスでは、車の騒音や通行人の視線が気にならないなど旗竿地のメリットを伝えられるよう営業担当者を教育している他、全ての土地物件に参考プランと完成予想図を用意することで、顧客の判断を支援している。また、土地売の場合でも、建売と同様、建物部分は原価で請け負うこととしており、顧客は、本来は高価な注文設計を原価で享受することができる。

アフターセールス・サービス
戸建物件販売後3か月以内に訪問し、顧客満足総合推進室が、建物自体、販売担当者、設計担当者などを5点満点で評価いただき、お客様の意見を聞き取り調査する。引き渡し後メンテナンスなどのオプション提供は行っていない。

全般管理
土地の仕入から古屋解体、建築、戸建販売までの工程を一貫して管理できるシステムを自社開発し、部門間の情報伝達ミスと工期のジョイントロスをなくし、仕入れから販売までの期間を短縮、回転率を高めている。

人的資源管理
仕入営業も戸建住宅の販売営業も、一見単純な業務をやりきることが必要なので、動機づけが重要。オープンハウスでは、モチベーションを高いレベルで維持するために、成果型の業績評価を中心にしており、これに基づいた頻繁な表彰制度、3か月ごとの昇格の機会、早い昇格スピード(5年で3から4名のユニットを統括する係長、10年で30?50名程度を統括する事業部長・部長の補佐として事業部や部の戦略をサポートする、あるいは、7?10名程度の小さめの部を統括し、リーダーとして役職を果たす次長クラスに昇進することが可能)、高年収(新卒入社で営業職在籍社員の平均年齢は26.7歳、平均年収765万円。これは、同世代上位1%の年収クラスにあたる)が与えられる。また、業績報告は経営トップに対して直接行うことになっており、これも動機づけに貢献している。マネジャーは、3名から4名体制のチームの業績が評価対象となるため、チームメンバーの育成に力を注ぐ。その結果、2016年4月に入社した新旧社員の全員が仕入営業か戸建営業において3か月以内に少なくとも1件の契約を成立させており、人材の早期育成が可能になっている(業界では、新入社員は年間に1件契約締結できれば良い方と評価される)。これは、動機づけにも貢献する。

戸建営業は特に、休日や祝日が繁忙期となるため、勤務形態は平均週5.5日。しかし、夏季休暇は連続10日間、正月休みは連続15日を公休とし(2016年9月期)、よほどの理由がある場合を除き、ほぼ100%の社員が休んでいる。2年前から残業管理を強化しており、現在は21時までの帰宅が義務付けられている。

オープンハウスは年間約200名超の採用を予定しているが、社長が採用時最終面接を担当し、オープンハウスの方向性に共感し、活躍できる資質のある人材を選別する。新規採用のために社長が行う面接回数は年間1000回弱。新規採用者のうち、新卒と中途採用者がそれぞれ50%程度。

離職率は低下傾向にあり、現在は10%を上回る程度(2016年9月期)。

活動間のフィット

オープンハウスの戸建事業部の活動は、年収500万円から1000万円の個人が購入できる好立地の戸建住宅という価値提供を端的に表した「東京に、家を持とう。」という戦略コンセプトを、「狭小地や旗竿地など手間がかかるが割安な土地の仕入」「速く売る源泉営業」「資産の高回転」が主な活動として実現しており、それを、「社員のやりきるモチベーション維持と育成体制」が支え、また、「高い成長率」という経営目標がけん引している。(本セクション最後に掲載した「株式会社オープンハウス 戸建事業部の活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 年収500万円から1000万円で手が届く好立地の一戸建という価値提供。
  • 狭小地や旗竿地など、設計や施工に手間のかかる土地を集めることで、急成長を目指した。
  • 土地仕入れに、不動産仲介事業者別の担当などの制度を入れず、訪問頻度を重視した仕入営業体制を導入した。
  • 販売営業に、ニーズ喚起型の源泉営業(物件への呼び込みや地域商業施設での声掛けなど)を導入した。

トレードオフ

  • 以下のような顧客はターゲットとしない。住居に高いカスタマイズ性を求める顧客。立地重視でなく、通勤時間がかかっても大きな住宅に住みたいと考えている顧客。郊外に勤務先があり、勤務先付近で家を購入できる顧客、など。
  • 戸建設計の際に、以下は追求しない。必要以上の高級感、高いデザイン性、フルオーダーメイドの家。
  • 仕入れる土地については、以下のような土地は求めない。真四角など、設計がしやすく、建てやすい土地。大規模な開発用地。2階建て中心の区画整理された区域。都心の人気駅に近くない、あるいは駅から15分以上離れた土地。面積の関係でオープンハウスでも2棟建てられないなど、他社がやっても同じようなプランとなるような土地。
  • 仕入営業で、個々の営業担当者が特定の不動産仲介事業者との関係性を深めることを基礎とした情報収集のスタイルを採らない。オープンハウスでは複数の仕入営業担当者が同じ不動産仲介事業者を訪問する。
  • 仕入営業で、不動産仲介事業者別担当、地域別担当制度にしない。
  • 戸建営業は、地域別担当制にしない。支店のある地域の外にある戸建物件を販売しても良い。
  • 戸建住宅販売では、個別物件の販売を広告に依存しない。源泉営業にも経営資源を投資する。
  • ワンストップ型で全ての業務を行わない。経験の浅い営業担当者は顧客接点の数と頻度が必要な源泉営業に特化し、契約締結までのフォローを経験の豊富なマネジャーに引き継ぐ分担制を採る。

戦略の一貫性

2001年の戸建事業部の設立以来、提供価値は、都心の好立地に、割安で手の届く価格で戸建住宅を提供することに限定されている。オープンハウスのバリューチェーンや活動システムは、この価値提供を念頭に、最適に設計、構築されてきた。現在も、好立地を人気駅から徒歩10分以内と定義し、営業範囲は東京23区に加え、一部の西東京エリアと横浜市、川崎市に留め、これら地域の中でのシェアを高めるアプローチを採ってきた。

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに業界平均を大幅に上回っている。(業界平均との収益性比較は、PwC Japanグループの協力を得ている。)

収益性

活動システム・マップ

活動システム・マップ

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第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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