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ハーバード大学 ユニバーシティ・プロフェッサー
マイケル・E・ポーター教授

ハーバード大学 ユニバーシティ・プロフェッサー マイケル・E・ポーター教授 第17回ポーター賞受賞式と競争力カンファレンスにようこそお越しいただきました。今年は皆さんと一緒に参加できずとても残念ですが、近いうちにぜひまたご一緒したいと思っています。というのも、私はこのポーター賞のプロセス全体をとても誇りに思い、いつも心から楽しんでいるからです。この日とこのイベントを実現した一橋ICS(一橋大学大学院国際企業戦略研究科)研究科長の一條和生教授と彼が率いるチームのご尽力を賞賛したいと思います。なかでも大薗恵美教授は、長年にわたりポーター賞において重要な役割を果たしてきました。また、一橋ICSの初代研究科長で、もちろん、長年にわたる私の大切な友人で同僚でもある竹内弘高氏に敬意を表します。このポーター賞のプロセスへの大きな貢献と、一橋ICSを何もないところから築いてきた竹内弘高氏のすばらしいリーダーシップに私は心から感謝しています。その後の年月にわたる一橋ICSの繁栄と発展を見ることは私にとって大きな喜びです。

また、このプロセス全体を可能にしたスポンサーの皆さんに私の感謝の気持ちを伝えたいと思います。三菱UFJモルガン・スタンレー証券、ピー・アンド・イー・ディレクションズ、電通の皆さんは、このプロセスの大切なパートナーとして私たちを支えてくださいました。そして、ポーター賞の選考過程をより厳密で分析的なものにするためにお力添えいただいた技術パートナーの皆さんにもお礼を申し上げます。バリュークリエイトとPwC Japanはデータの正確性や正当性を検証し、この賞においては非常に重要な収益性の分析を実行する上で素晴らしい役割を果たしました。なぜなら、ポーター賞、そして戦略は、優れた財務業績、優れた収益性を実現することが目的だからです。そのために私たちはデータを収集し、厳密に検討して、真の勝者である企業を最終的に選ぶ必要があります。

これまでポーター賞受賞は57社にのぼりますが、本日、新たに4社に賞を授与できることをとてもうれしく思い、とても誇りに思っています。カチタス、ネットプロテクションズ、プロシップ、キュービーネットホールディングスの4社は、いずれも非常に興味深く革新的な企業です。そして、今年の受賞者は、すべてサービス業でした。サービス業は、日本経済について考えるときに最初に思い浮かべるものではありませんでしたが、最近は日本でも、世界の他の地域でも、サービス業は経済の中で最も重要で革新的な勢力のひとつになっていると思います。そして、これらの興味深く革新的な日本企業の成長と繁栄を見ることは、私たち全員にインスピレーションを与えてくれるとともに、日本が競争力を高め、発展していることを非常に強力に示していると思います。これは日本経済の未来にとって明るい兆候でありますが、来年は再び製造業がポーター賞を受賞するかもしれません。製造業とサービス業の両方が、あらゆる経済に必要なものだからです。しかし、これらのポーター賞受賞企業について多くを学ぶことができて私はうれしく思っていますし、彼らが成し遂げたことに感銘を受けました。次回、私が皆さんにお会いするために訪れるときには、ぜひ直接行って自分の目で見たいと思っています。

最近の私が取り組んでいることについて、ごく簡単にお話しします。昨年競争力カンファレンスで、私は"Smart Connected Products"について話しましたが、このテーマでは、共著者のジム(ジェームズ)・ヘプルマンとともに、経済において進行中のデジタル革命についてここ3、4年の間に2つの記事を『ハーバード・ビジネス・レビュー』に発表しました。これはビジネスだけでなく、他のあらゆるものに影響を及ぼしています。デジタル革命を始動させたのは情報技術です。つまり、非常に効率的に情報を処理し、保持し、分析する能力です。それは企業の中で、そしてバリューチェーンの中で始まりました。注文処理のオートメーション化、コンピューター支援設計によるオーメトメーション化、その他、企業における事業の進め方の効率性と生産性を高めるために使用される多様なテクノロジーです。

しかし、時間が経つにつれ、それは企業の中だけでなく、企業間の関係や、ビジネス・パートナー、チャネル、顧客との関係を再構築するようになり、インターネットが企業による社外のパートナーとのやりとりの手段になっています。それが今日のスタンダードであり、ますます強力で効果的になりつつあります。情報技術は企業内で使用し、企業がより効率的で生産的に機能し、顧客に届ける価値を高めるだけのものではなくなりつつあり、その情報技術は今、会社が製造する製品自体に埋め込まれるようになっていることを、昨年はお話ししました。ご存知のように、多くの製品がスマート化され、情報技術が埋め込まれており、ソフトウェアを内蔵し、計算能力も持っています。そして、次々とさまざまな製品が接続機能を持つようになっています。つまり、常にクラウドやインターネットに接続され、その先のすべてのものにつながっているのです。

そして今、このような"Smart Connected Products"は、経済の至る所に存在するようになりました。昨年お話ししたのは、それが競争というものを変革し、企業による戦略的な選択を変えているということです。そしてこのテクノロジーを手に入れた企業は、これまでは考える必要のなかったような新しい選択をしなければならなくなっています。そこで、最近の私が何をしているかについてお話ししましょう。

接続機能を持つスマート製品は、製品の能力や融通性、パーソナリゼーションを強力に向上させますが、その一方で新たな問題を生み出したことを私たちは発見しました。新たな問題とは、私たちのもとには膨大なデータがあり、製品をどのように使用し、構成し、導入するかについての無数の選択肢があるというものです。そして膨大な能力とデータがあるために、我々人間とのインターフェースという新たな問題が出現しました。われわれは人間としてどのようにこの大量のデータ吸収し、何をすべきか、何をしなければならないか、どのような選択をするかを判断するための情報に変換できるのでしょうか。

これが経済の将来的な発展と革新のための最大の問題であると私たちは考えています。ヒューマン・インターフェースです。現在のインターフェースでは、大量のデジタル・データがあっても、それは多くの場合、コンピューター画面や紙の上やスマートフォンにとどまっています。私たちが見てアクセスするデータは2次元の平面的なものです。ところが、そのデータが表している現実の世界は3次元のリアルなものです。画面の上に存在するものではありません。私たちが毎日経験している現実の世界です。そして今、課題として出現し、同時にソリューションが提示されているのは、パワフルなデータや無数の選択肢と、現実の世界で選択や決定をしている人間をどのように結びつけ、このデータを利用し、応用して、製品の能力を活用するかという問題です。その非常に重要な役割を担うために登場したテクノロジーはしばらく前からあちこちで現れていますが、ここ数年の技術的進化はめざましく、今、「オーグメンティッド・リアリティー」と呼ばれる新しいテクノロジーが私たちに大きな力をもたらしています。

オーグメンティッド・リアリティー(AR、拡張現実)というものついてすでに見聞きしている方もいらっしゃるでしょう。これについては、あちこちで見聞きするようになりました。「Pokémon GO」というゲームのような非常にシンプルな利用法によってその認知度が高まりました。しかし、ARはビジネスにも重大な影響をもたらすことが明らかになっています。ビジネスにおける意思決定や選択、製造やサービスの提供方法、そしてバリューチェーンのあらゆる分野に重大な影響をもたらすのです。そしてオーグメンティッド・リアリティーは、これまでになかった、まったく新しいコミュケーションと学習の方法であり、長時間の訓練や技術的知識がなくても人間の潜在的能力を解き放つことができるすばらしい機会をもたらします。それは私たちが生きているこの新しい世界に価値をもたらしたのです。オーグメンティッド・リアリティーとは、コンピューターの画面ではなく、人間が見る現実の世界に製品や世の中についてのデータを重ね合わせるテクノロジーです。

コンピューターの画面で見る情報を現実の世界に置き換えるのは、とても効率が悪く、面倒なプロセスです。カーナビゲーションの画面を思い出してください。その画面を見て、それが現実世界で何を意味するかを解読しなければなりません。そのため、画面と現実を行ったり来たりしながら、情報を変換する必要があるのです。それは複雑で効率が悪く、自動車事故の原因になります。情報を現実にうまく結びつけられないため、曲がり角を通り過ぎてしまいます。しかし、オーグメンティッド・リアリティーによってカーナビゲーションの情報を現実世界と重ね、リアルタイムで見ることができます。それはスマートフォンやタブレットで見ることもできますし、最近の自動車に搭載されたカーナビゲーションの場合には、いわゆる「ヘッドアップ・ディスプレイ」を通じて、現実世界を見て運転しながらカーナビゲーションの情報をフロントガラスで見ることができます。そのため、画面と現実世界を結びつけるために考える必要がありません。現実世界を見ているときに必要な情報がリアルタイムで目の前にあります。

そして、今後はウェアラブルが登場します。現時点では、それはメガネのような形のものになると予想されています。そのメガネは、現実の世界で行動をとり、意思決定をするために必要な情報を、現実世界を見ている私たちの視界の中に表示することができるため、平面的なコンピューター画面で見た情報を変換する必要がありません。オーグメンティッド・リアリティーのテクノロジーは飛躍的に向上しています。パイロット・プロジェクトや実験の大きな波が生まれています。今はまだごく初期の段階ですが、すべての企業はこれを理解し、利用しなければなりません。そうしなければ、差別化を行い、効率と効果を高める大きな機会を逃してしまうからです。

また、社会のトレンドや発展について考えたときにも、オーグメンティッド・リアリティーはとてもエキサイティングな展望をもたらします。オートメーションやデジタル化、ロボットや人工知能により、人間が必要なくなるのではないかという大きな不安があります。しかし、これは大きな間違いだと私たちは考えています。人間はとてもユニークな存在です。幸運なことに、私たちは特別なのです。予見しうる未来においては、リーズナブルなコストでは機械にできなくて人間にできることはたくさんあります。私たちはクリエイティビティと想像力に満ちており、視点を変えることができますし、何か新しいことが起こっていると察知して迅速に対応することもできます。プログラミングと人工知能を持つ機械は、見たことがない新しいものに対応できません。データ分析とは将来的に何をするべきかについて過去から学ぶことだからです。しかし非常に多くの場合、意思決定や選択への橋渡しをするために人間が必要です。そしてオーグメンティッド・リアリティーは人間がその役割を果たす機会を提供します。それと同時に、コンピューター科学の博士号を持っていなくてもデジタルの世界に参加できるようになります。つまり、それは私たちが想像しなかったような形で人間の能力を高め、デジタルの世界とデジタルの情報へのアクセスを民主化しているのです。

ですから、過去の技術革命と同様に、人間にもたらされる機会は減少するのではなく、増加すると私たちは考えています。そしてオーグメンティッド・リアリティーというこの新しいテクノロジーは、それを可能にする鍵であり、主要なテクノロジーのひとつであり、データと現実世界の分析の橋渡しをするために、すべての企業と、大学などすべての団体が理解しなければならない、情報技術の次の大きな波であると私たちは考えています。ですから、これについて書いた先週の『ハーバード・ビジネス・レビュー』に掲載されたばかりの記事をぜひご覧いただきたいと思います。タイトルは「すべての組織にオーグメンティッド・リアリティー戦略が必要な理由(Why Every Organization Needs an Augmented Reality Strategy)」です。これはオーグメンティッド・リアリティーというものを理解する足がかりとなります。また、この記事は、ここにコピーがありますが、スマートフォンを使い、雑誌でオーグメンティッド・リアリティーを体験できます。 これを皆さんにぜひ体験していただき、この新しいテクノロジーがビジネスと価値の創造のための大きなパワーになることを実感していただきたいと思います。そして、近いうちに皆さんに直接お目にかかり、これについてもっと詳しくお話ししたいと思っています。

以上、最近私が取り組んでいることを簡単にご紹介しました。しかし、本日のショーのスターは、受賞者の皆さんです。ここで再び皆さんにお祝いを申し上げたいと思います。本日お越しくださり、私がとても誇りに思っているこの賞とそのプロセスに参加してくださった皆さんにお礼申し上げます。そして、次に皆さんと直接お目にかかる機会を楽しみにしています。どうもありがとうございました。

「すべての組織にオーグメンティッド・リアリティー戦略が必要な理由(Why Every Organization Needs an Augmented Reality Strategy)」『ハーバード・ビジネス・レビュー』の論文はHBRのサイトにて無料で公開されています。
https://hbr.org/2017/11/a-managers-guide-to-augmented-reality#why-every-organization-needs-an-augmented-reality-strategy

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