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受賞企業・事業部レポート

日本電産株式会社 精密小型モータ事業

2006年度 第06回ポーター賞受賞 モーター製造
ブラシレスDCモーターに特化し、技術革新、設計と製造における顧客対応力、積極的な顧客開拓で圧倒的シェアを誇る。

業界背景

小型モーター業界は、主に3種類のモーターから形成されている。ブラシ付DCモーター、ブラシレスDCモーター、ACモーターである。ブラシ付DCモーターに比べると、ブラシレスDCモーターはモーターの制御に優れ、音が静かで、電磁ノイズがなく、消費電力が少なく、耐久性が高く、より小型化、薄くできるという特徴を持つが、半導体を使用するため設計、製造プロセスがより複雑で、より高価格である。ブラシレスモーターは、ハードディスクドライブ(HDD)、光ディスク、ファン、オフィス機器、家電製品、自動車などで幅広く使われている。用途の広がりと共に、ブラシレスDCモーターの価格は低下傾向にあり、ACモーターやブラシ付モーターの代替が加速している。

2001年にポーター賞を受賞したマブチモーターは、ブラシ付DCモーターに特化し、ブラシ付DCモーターで世界市場シェア60%を誇るリーダー企業であった。その戦略は、標準化をコア概念とし、顧客の仕様に合わせてカスタマイズする日本電産とは戦略が異なる。ポーター賞は、一つの業界に複数の優れた戦略が存在すると考えており、マブチモーターの戦略も日本電産の戦略も、いずれも有効で優れた戦略であると考えている。

概要

日本電産の精密小型モータ事業は、ブラシレスDCモーターに特化しており、その売上は同社の売上の51%を占める。主な市場はHDD用で世界シェアは75%、特にノートブックPC向けHDD用では世界シェア90%と高シェアを誇っている。

ユニークな価値提供

日本電産は、ACモーターやブラシ付DCモーターをブラシレスDCモーターで置き換えることを戦略の核としている。したがって、それまでACモーターやブラシ付DCモーターを利用していた顧客には、ブラシレスDCモーターの製品特性であるところの、静音性、制御性、省エネ性、小型化、薄型化、長寿命、電磁ノイズレスなどの価値を提供している。
 さらに、ブラシレスDCモーターを提供している競合他社と比較すると、幅広い品揃え、開発技術力と生産技術力に基づいた顧客ニーズへの対応力とそのスピード、短納期、価格競争力、市場拡大に先行する積極投資による安定供給を可能にしている。また、先端領域では技術力によって差別化をしており、ノートブックPCに使われるような薄型のブラシレスDCモーターでは、特に圧倒的な市場シェアを誇る。
 ターゲットとする顧客は、用途先としては幅広く、HDD・光ディスクドライブ・ファンなどのIT機器メーカー、OA機器メーカー、家電メーカー、自動車メーカーが含まれる。しかし、顧客の仕様に応じてカスタマイズ設計するため、量産効果による価格競争力が得られるように、一商品あたり大量の生産量が見込まれる顧客にターゲット顧客を限定している。また、市場シェア1位になることによって得られる情報優位性や量産効果を得るため、一旦開拓した用途先は、その市場で活動する主な顧客全てをターゲット顧客に設定している。

独自のバリューチェーン

研究開発
日本電産はM&Aによって精密金型技術、精密計測技術、金属加工技術といった要素技術を獲得し、技術による差別化を可能にしてきた。たとえば同社は、世界で初めて流体動圧軸受の量産に成功したが、これには高度な精密加工技術や測定技術が必要であった。これらの技術を有する企業を他業界から買収し、技術を内部化することによって、いち早く量産が可能になった。また、そのための製造設備の内製化も可能となり、技術流出を防ぐことができている。

製造
同社は、自前で生産設備を開発、製造し、生産を顧客のそばで行う『メイド・イン・マーケット』をポリシーとしている。そうすることによって、顧客への対応力を高めている。

販売
販売活動は、顧客の業種にとらわれず、ブラシレスDCモーターの特性を活かせる用途先を常に探して、提案型営業を行っている。そのために、営業担当者は毎月100社以上訪問するという目標を与えられている。その成果として、たとえば炊飯器やウォシュレットなど、モーターが使われるとは思われなかった製品でブラシレスDCモーターが採用されている。

価格設定は、製造部門と協議の上行われる。同社では製造部門が収益責任を負っているため、値下げには厳しい態度を示す。シェア拡大のための安易な値下げが、販売部門の独断で行うことができない仕組みである。短期的な収益悪化が予想される普及のための価格設定など、戦略的価格設定はトップ判断であり、文字通り戦略的に行われる。

営業部門は顧客への納期に責任を持っており、製造部門で材料不足や人材不足のために納期が難しい場合には、材料確保や人材確保のために営業部門が尽力する。

全般管理
同社においては、「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」という精神の下、個々の職責や職制にとらわれず、必要なことは何でもやる文化が根付いている。

また、同社は、「3Q6S」を重視し、これを管理している。「3Q」とは、良い社員、良い会社、良い製品を目指すという目標であり、それを実現するためには「6S」、つまり、「整理、整頓、清潔、清掃、作法、躾」が重要であるという考え。同社は、3Q6Sを測定し、その監査、査定を行う役員クラスの専任スタッフを任命し、同一基準でグループ全社の本社や国内外の事業所の査定を定期的に実施している。

活動間のフィット

同社の活動は、シェア拡大と利益確保、事業成長が鍵概念になって選択、調整されている。シェア拡大と利益確保のためには、高度技術をもって顧客ニーズに対応し、しかし同時に業務の効率性を確保する。より具体的には、顧客ニーズに対応するために、常に技術の進歩を試みており、そのためにM&Aによる要素技術の取り入れを行い、製品技術、製造技術の高度化を図っている。これらの技術力によって顧客の要望に応じた設計を短期間で行い、顧客の近くで短納期で製造する。一方で、コスト競争力を失わないために、小ロット生産は行わず、同じ用途先市場で活動する顧客のなるべく多くと取引を行ない、また、製造拠点に収益責任を持たせてコスト意識を高めている。最後に、事業を成長させるために、市場拡大に先駆けて生産能力増強に積極的に投資し、営業部隊は常識にとらわれずに新しい潜在顧客に提案型の営業を行う。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 技術革新によってHDD用モーターをベルトドライブ方式からダイレクトドライブ方式へ移行させた。熱発生を削減し、回転速度を大幅に引き上げることによってHDDの記録密度向上、より少ないスペースに納められるようにすることで、HDDの大幅な小型化を可能にした。
  • 流体動圧軸受を業界で初めて量産に成功した。その結果、高速回転精度、省エネ性、長寿命化などモーターの性能を改善した。また、流体動圧軸受の新モデルであるRMタイプでは従来の軸受と比べ、加工時間の大幅短縮が可能であり、コスト削減が可能になったと同時に、生産工程の内製化もあわせて、同社の利益率も改善した
  • 1996年からストックオプションを導入した。当時日本ではほとんど導入している企業がなかった。
  • 他社に率先して大企業から従業員を中途採用し始めた。日本の部品メーカーにはない習慣であった。

戦略の一貫性

ブラシレスDCモーターへの特化、分野を限定せず新たなニーズを掘り起こす、用途先市場のトップシェアにこだわる戦略は、1973年の創業当初から実践されてきた。そもそも同社の創業の目的がブラシレスDCモーターの普及にあったが、当時はブラシレスDCモーターが高価で市場が小さかったためACモーターを手がけた。しかし、翌年ブラシレスDCモーターを手がける顧客が倒産し、同社が技術スタッフを受け入れ、以降、ブラシレスDCモーター事業を育成し、事業のコアを移行してきた。その育成は、ACモーターを代替することによって進んだ。たとえば、HDDが開発された当初、競合他社がACモーターを使ってHDD用を開発していたが、同社はブラシレスDCモーターで1980年に本格量産化を果たした。ファンモーターについても、1982年にブラシレスDCファンモーターの本格生産に成功し、高性能化、高付加価値化によって従来のACモーターを代替した。

また、分野を限定せず新たなニーズを掘り起こす営業方針は、創業間もない同社が規模や実績を重んずる国内の大手メーカーから受注できず、米国で一から販路を開拓した経験に始まっている。その後もこの営業方針は一貫している。

トレードオフ

  • ブラシレスDCモーター以外のモーターを製造しない
  • 垂直統合しない(顧客の商品と競合するような製品を手がけない)
  • 小ロットの生産、販売をしない(例外的な小ロット販売品はブラシ付モーター代替のための標準品で、これは、従来より小口販売の経験がある子会社、日本電産コパル電子を通じて販売する)
  • 生産拠点の一極集中をしない(顧客の近くで製造するため、結果として生産拠点は世界規模で分散している)
  • 下請けになるのを避けるため、独占取引契約はしない
  • シェア拡大を求めてメジャーでない顧客から注文を積極的に取ることはしない(十分な生産規模が見込めないから)
  • 商社経由の販売はしない(自分で作って自分で売る。例外はファンモーターの一部の汎用品)
  • 同族経営にしない
  • 成長のための投資を犠牲にして短期的な収益性を優先することはしない
  • ブラシレス市場拡大よりも製品あたり収益性を優先することはしない

収益性

 投下資本利益率と営業利益率ともに、モーター製造業界の平均(中央値)を一貫して大幅に上回っている。特に、投下資本利益率は、業界平均との差が拡大している。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年
28.8%P 40.8%P 33.5%P 23.9%P 19.1%P 19.5%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年
7.9%P 6.9%P 4.7%P 5.8%P 6.6%P 7.2%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

受賞企業・事業部 PDF

第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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