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受賞企業・事業部レポート

株式会社ファーストリテイリング ユニクロ事業

2009年度 第09回ポーター賞受賞 衣料品小売業
あらゆる人が、どのような服にも部品として合わせて着ることのできるベーシック・カジュアル衣料を、 低価格、高品質で提供

業界背景

バリューチェーンの視点から見ると、日本の衣料品小売業には、小売りに特化した百貨店、ジェネラル・マーチャンダイジング・ストア、衣料品専門店のグループ、衣料品の企画を手掛けて製造はアウトソーシングするグループ、企画・デザインから製造まで垂直統合する製造小売りのグループに分かれる。フォーエバー21は第一のグループに属し、ポイントは第二のグループに、ワールド、GAP、Zara、H&Mなどは第三のグループに属する。ユニクロは素材の調達や共同開発まで手掛けており、第三のグループよりも更に垂直統合度を高めているが、自社工場ではなく提携工場に製造をアウトソーシングしつつ、これらと緊密な活動の調整を行い、疑似的な垂直統合を実現している点がユニークである。

製品開発のリードタイムと製品ライフサイクルから見ると、衣料品小売は、ファストファッションとスローファッションに分類することができる。ポイント、Zara、H&M、フォーエバー21などはファストファッションであり、ユニクロはスローファッションである。

概要

ユニクロは、誰でも、どんな服とでも組み合わせて着ることができる部品としての服を、高い品質で他社にできないような低価格で販売するという新しい戦略的ポジショニングを確立した。たとえば、ユニクロが1998年に1900円で投入したフリースや、2003年に投入したカシミヤセーターは、既存製品よりも圧倒的に安かった。ユニクロが販売したフリースは、1998年200万枚、1999年850万枚、2000年2600万枚であった。100%カシミヤのセーターはデパートでは3万円から4万円で売られていたものだが、2003年に4900円と7900円の価格で投入した。当時の安い店と比較しても2割から3割の価格低下となった。東レと共同開発した保温機能の高い素材、ヒートテックを使った衣料は2003年に限定的に投入されたが、毎年改善を重ね、2007年には2000万枚、2008年には2800万枚を売り上げた。ヒートテックの単価は1000円から1500円である。
ユニクロは、ファーストリテイリング社の事業部門で、同社は他に、セオリーやコントワー・デ・コトニエ、キャビンなどのブランドを所有している。ユニクロは810店舗を持ち、年間売上49億ドル(2009年8月期)は日本では2位のしまむら(2009年3月期 39億ドル)に大きな差をつけているが、グローバルな競合と比較するとまだ成長の余地は大きい。(GAP 157億ドル、 Inditex (Zara)140億ドル、H&M 123億ドル。ユニクロの海外売上比率は2008年8月期で6.0%、2009年8月期は6.5%であった。

ユニークな価値提供

ユニクロは、年齢、性別、人種などではターゲット顧客を特定しない。あらゆる人がターゲット顧客である。ファッションアパレル産業においては、特定の顧客層にターゲットを絞り、ファッション、テイストを特定した会社が多いが、ユニクロは、高品質なベーシック・カジュアルに製品を特化することにより、特定の顧客層にとどまることなく、全ての人を顧客とすることを実現している。

ユニクロの製品範囲は広い。男性、女性、子供用衣料、Tシャツ、セーター、パンツ、ジャケット、下着、靴までをカバーしている。デザインは比較的ベーシックであり、製品種類(品番)は少ないが、一つの品番を多色展開する。

ユニクロ製品の相対価格は、百貨店よりは大幅に安いが、ジェネラル・マーチャンダイジング・ストアよりは高い。(※1)しかしながら、製品の品質を考慮すると、ユニクロ製品の相対価格は他社の商品よりも圧倒的に低いことが多い。低価格の衣料品は、品質、スタイル、ファッションなど何かを削って安くすることが多かったが、ユニクロはそれらを犠牲にすることなく、並立させながらも安さを実現している。

ユニクロが顧客に提供している価値は、第一に、部品としての服である。つまり、デザインがベーシックであるので、様々な服とコーディネートしやすい。第二に、高品質の商品を大幅な低価格で提供することである。第三は、新しい機能を持った衣料品を提案することである。たとえば、飛躍的に高い保温機能によって冬に厚着しないファッションを提案したヒートテックなど。

あらゆる人にアピールするベーシックな高機能商品を低価格で提供するという価値提供は、いくつかの大ヒット商品に帰結してきた。たとえばヒートテックは2008年に2,800万枚を売り上げた。日本人の4人に一人が購入した計算となる。

(※1)この価格帯に対してはFRグループ内のg.u.ブランドが対応している。

独自のバリューチェーン

上に述べたように、ユニクロの価値提供は、あらゆる人が、どのような服ともコーディネート可能なベーシック・カジュアル衣料、つまり、部品としての服を、高品質かつ他社では実現できない低価格で提供することである。この価値提供を実現するバリューチェーンの特徴は、商品の企画から、素材開発、生産、マーケティング、販売までを一貫して自社でコントロールする垂直統合(製造小売業)の仕組みを、卓越した日本の繊維技術を持った会社や海外の工場など、ビジネス・パートナーとの長期的安定的な関係を構築し、協業しながら作り上げたことにある。

商品の企画・開発
ユニクロの商品企画の方針は、顕在化しているファッションや流行に留まることなく、顧客の潜在的ニーズまで掘り下げ、デザイン、ファッション、カラー、機能性のある素材開発など、今までにない付加価値をもった高品質で低価格のベーシック・カジュアルを開発することにある。

商品の開発期間は他のアパレル各社と比較して長い。開発活動は、素材開発と商品企画の二つの分野で行われている。例えば素材開発においては、ヒートテックの開発で素材メーカーと一体となり、保温性、保湿性、速乾性、抗菌、ドライ、伸縮性、薄さなどの機能性を、数年をかけて進化させた。品質、素材、完成度が飛躍的に上がると、ユニクロは大々的な販売促進活動を行う。ヒートテックが最初に販売されたのは2003年だが、大ヒットしたのは2007年であった。スキニージーンズも最初に投入されたのは2005年だったが、その後、発色、伸縮性などの改善を続けている。

次に、商品企画については、前年度の販売実績や店舗からの意見、全世界から収集するトレンド情報(※2)などを反映し、顧客が本当に要望する商品やデザイン、カラーなどを、R&D部門やマーチャンダイジング部門といった商品開発部門だけでなく、経営、店舗営業、マーケティング、生産部門なども企画段階から入り込み、単に前年踏襲するだけでない、新しい商品の企画を行っている。

製造
ユニクロの商品は全て生産委託先の工場で生産されており、自社の工場は持っていない。商品生産を行う工場は、売上高がグローバルで5,000億円を越える現在でも70社程度に絞り込まれており、品質、生産量、納期、コストなどユニクロの基準を満たすことのできる工場と長年のパートナーシップを築いている。工場の多くは中国にあるが、ユニクロの170人の社員が週に3日から4日は製造現場に入り込み、製造品質、安全、デザイン準拠、製造量をモニターし助言している。さらに、日本の繊維メーカーで30年以上の経験を経て引退した人材を「匠」として再雇用し、工場への技術指導を提供している。匠は、糸の検査から完成品の出荷までの全工程を指導する。これらの活動の結果、ユニクロの求める品質基準、完成度のある商品生産が、生産委託先の工場で行われている。平均生産ロットが百万に上るユニクロでは、多品種少量生産の競合に比較して、製造品質の安定は、はるかに重要である。

インバウンド物流
中国を中心とする海外で生産された商品は、日本に運ばれ、商品部門ごとに決められた倉庫で保管される。倉庫から店舗への商品の輸送は、外部の運送会社に委託している。

店舗開発
ユニクロの店舗は、従来はロードサイド型でファミリー層を中心とした顧客層が中心であったが、その後、50坪から1000坪までサイズが多様化、都心への出店など立地も多様になり、新しい顧客層の開拓を行っている。(※3)ユニクロの店舗の60%はロードサイド型で、売上高に占める家賃比率は低い。ユニクロは大型店を増やすため、小型店を標準店や大型店に、標準店を大型店に変更している。2008年には45店舗を閉店したが、55店舗を新しく開店した。

店舗運営
店での販売活動は、ヘルプ・ユア・セルフ方式を採用している。顧客が要望するときにだけ商品案内、接客を行うことで、顧客は自由かつ気軽に商品を選び、購入することができる。ヘルプ・ユア・セルフ方式の接客は、店舗における作業の標準化とあいまって、効率的に店舗を運営することを可能にしている。

ヘルプ・ユア・セルフ方式では、欲しい商品がすぐに見つかる、買いやすい売場構成が必要となる。まず、商品そのものの付加価値、機能性、ファッションなど、商品を買うべき理由が、売場で表現され情報発信される。また、面積あたりの商品数が多すぎないので顧客が商品を探しやすい。チラシや販促と連動して、特定の商品が、売場でもわかりやすく且つ大量に展開される。

マーケティング・販売
マーケティング部門は、商品の企画段階から参加し、商品認知を上げる最適な方法でテレビコマーシャル、ウェブ、新聞広告、広報活動などを連動させる。毎週のチラシ広告は、お得感を打ち出しながら商品をアピールすることで、来店動機を喚起している。

ユニクロのマーケティング・コミュニケーションに特徴的なのは、新商品の告知に積極的にテレビコマーシャルを活用することである。1998年のフリース、2003年のカシミヤ、2007年のヒートテック、2009年のブラトップのキャンペーンは、新商品の認知を上げるのに貢献した。

もう一つの特徴は、商品そのものだけでなく、ユニクロの価値提供や会社としての先進性などを伝えることに投資していることだ。個性的な著名人がベーシックなユニクロの服を着て登場するテレビコマーシャルは、部品としての服、個性的なのは服を着る人間であって服そのものではない、というユニクロの価値提供を顧客に伝えるのに貢献している。また、「UNICLOCK」など、ウェブを利用した斬新な情報発信を世界中のクリエイターと協業して行うことで、商品そのものだけでなく、会社としての先進性、卓越性、企業イメージアップの情報発信を行っている。

人事管理
店舗系の人事制度として、店長、スーパーバイザー、ブロックリーダー、スター店長、スーパースター店長やフランチャイズ店長のポジションが設けられている。スーパースター店長は店長の中から選抜され、大幅に大きな仕入れと在庫予算を与えられ、給料は財務的な成果によって大きく異なる。こういった人事制度は、店舗が唯一のプロフィットセンターであるという認識の下、店長がサラリーマン的に仕事をするのでなく、商売人として成長する機会を提供するものである。実力ある若手を積極的に昇進させるのも特徴だ。

全般管理
店長と売り場が、会社全体の組織の中心に位置付けられており、店長が発信する現場の意見は、会社全体の意思決定に結びついている。本部は店舗サポートセンター、つまり、店舗へのサービス部門、店舗での販売を最大限にサポートするための存在と位置づけられている。

ローコスト・高効率経営を徹底し、無駄なコストの削減、費用対効果のあわない投資の中止などを徹底している。

世界で一番良いやり方を探し、それを標準化し、全世界を一つのやり方、仕組みで実行する「グローバルワン」経営を掲げ、その実現を追求している。たとえば、グローバルマーチャンダイジング(商品構成を各国で決めるのではなく、基本的な商品構成はグローバルで統一する)、グローバルマーケティング(各国で売れる商品でバラバラにキャンペーンをするのでなく、ヒートテックキャンペーンを全世界でやったようにグローバル統一で行う)などの取組みを進めている。

また、「全員経営」を目指している。全員経営とは、経営者だけが経営をするのではなく、社員全員で行うという考えであり、現場と経営が直結して現場で全社員が実践、実行すること。社員の行動としては、一人一人がお客様の要望にこたえる、会社の成果を上げる、困難な状況下でも会社の課題を解決することを考え抜く、全員が会社全体のことを理解し、経営者マインドを持ち、会社全体の成長、業績改善に自分の仕事をむすびつけることを意味する。その端的な例が、「会社というところに自分の自営業をしに行っている」(柳井)つもりになることで、店長への大幅な権限委譲はための一つの仕組みである。

(※2)ユニクロは、東京とニューヨークのR&Dセンターで、ファッショントレンド、素材、ライフスタイルの変化、顧客の嗜好の変化を観察している。
(※3)店舗の広さは、立地によって異なり、もっとも大きい店は銀座で、もっとも小さい店は駅の構内にある。標準は700から800坪か、あるいは1600坪である。

活動間のフィット

ユニクロは商品を、「部品としての服」たりうるベーシック・カジュアルに絞り込んでいるので、デザインの豊富さを追い求める必要がない。したがって、少品種を大量に生産することができ、品質の安定化、商品コストの低減が可能になる。また、ベーシック・カジュアルであるから、デザインが流行に影響される度合いが少なく、また、年齢などセグメント間でデザイン傾向の違いが少なく、ターゲット顧客を絞り込まないことの負の影響が少ない。幅広い顧客に販売できるので、素材開発や調達や製造の規模の経済を享受することができる。素材メーカーとの共同開発や数年をかけての品質改善は、これによって可能になっている。 (「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • アパレルメーカーとして初めて、厳選した中国の取引先工場と長期間パートナーシップを構築し、高品質、低価格を実現した。素材、縫製などに長年の経験と技術を持つユニクロの匠チームが工場に入り込み、工場現場で技術指導を行うことで、生産技術の向上を果たした。また、安定的かつ大量発注を行うことで、同じ商品を継続的に生産することが可能で、安定的な品質向上が可能になる。
  • 素材メーカーとの協業による素材開発。日本の繊維メーカーが持つ高い素材開発力と、ユニクロが営業現場や市場調査などから得た顧客の潜在ニーズを融合させ、顧客が求める商品に最もあう機能性のある素材を共同で開発する仕組みを構築している。
  • 素材開発から企画、製造、販売までシームレスにつながった疑似垂直統合モデルを、パートナー企業と構築した。
  • ヒートテックやブラトップなどの製品イノベーション。
  • ヒートテックで訴求している日本発の技術、UTで訴求している日本のPOPカルチャーなど、「新しい日本の企業」というポジショニングを差別化要因としてグローバルに発信している。
  • 「革新的なベーシック商品」というユニークな価値提供の定義。

戦略の一貫性

1984年のユニクロ事業の創業以来、ベーシック・カジュアル衣料品分野において、顧客セグメントを特定せず、ノンエイジ・ユニセックスをターゲットとした低価格で良い服の販売を開始。1987年からは低価格かつ高品質でお客様のニーズに合った服を販売するために、商品の企画から販売まで自社で100%コントロールする製造販売小売業モデルの構築を開始した。その後、店舗は、150坪程度のロードサイド店から、都心ビル、郊外型ショッピングセンター、海外大都市などへ、広さも10坪から1000坪まで多様化したが、戦略のコアは変わっていない。それは、1)高品質かつ低価格のベーシック・カジュアル衣料の大量販売、2)売場を基点として、商品企画、生産、販売、マーケティングを完全連動させ、顧客の潜在ニーズを追求する商売構造の構築と顧客の創造である。

トレードオフ

  • 自前の工場を持たない。(ユニクロの単品大量販売を実現するためには、一つ一つの商品について大規模な生産能力を持った工場であることが不可欠である。商品も、ボトム、アウター、カットソー、インナーなど多岐にわたる。そのため、自前で工場を運営するのは投資面、運用面から難しい。委託先の工場は、それぞれに生産能力や生産する商品に専門性や強みを持っている。)
  • 単なる低価格商品、「低価格品=品質も悪い」は取り扱わない。低価格のために品質や機能性やファッション性を犠牲にしない。(高品質で付加価値のあるベーシック・カジュアルを市場最低価格で継続的に販売する。本当に欲しい商品を開発することで今までにない需要を創造し、大量販売することでコストを削減し、その結果、低価格で継続的に提供する。)
  • 通常のアパレル企業のように顧客、商品をセグメント化しない。セグメント化すると、購買層を限定し、大量販売には向きにくい。(あらゆる人がいつでも、どのようなシーンでも着こなすことができるベーシック・カジュアルな商品を大量販売する。)
  • 少量多品種の製造販売をしない。
  • 販売は原則的に直営店舗で行い、大規模なフランチャイズやライセンス・ビジネスは行わない。(製造から販売まで自社でリスクをコントロールし運営する製造販売モデルを貫く。お客様との直接の接点である営業現場を重視する。)

収益性

投下資本利益率と営業利益率ともに、業界平均を一貫して大幅に上回り、その差は大幅な拡大傾向にある。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
39.1%P 25.8%P 16.4%P 32.7%P 57.2%P 85.7%P
Inter quartile range (IQR) = 17.2%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
11.6%P 12.9%P 8.1%P 10.8%P 10.6%P 15.8%P
IQR = 4.4%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

受賞企業・事業部 PDF

第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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