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受賞企業・事業部レポート

プロパティデータバンク株式会社

2009年度 第09回ポーター賞受賞 ソフトウェア業
不動産の運営管理業務をサポートするソフトウェア・サービスに特化。飛躍的な低価格で高品質のサービスを提供

業界背景

土地や建物などの不動産は各所に分散して立地しており、現地の委託先や支社、本部など複数の関係者が関与することから、情報のタイムリーな集約が困難で、効果的なマネジメントが難しい業務領域だった。さらに、立地場所の分散や立場の異なる関係者の存在が、ITの適用を難しくしていた。

伝統的には、不動産管理・運営支援の情報処理サービスは、建物維持管理の分野が先行し、建設会社が新築物件の設備の一部として納入することが多かった。しかし、2001年にJ-REITが始まったように、企業のリストラクチャリングと金融機関による不良債権の処理の結果、不動産の証券化が進み、既存不動産の管理運営に対するニーズが急激に増加した。海外の不動産ファンドは、キャッシュフローベースの不動産価値評価、オーナーに代行する不動産管理サービスの発生、投資家への情報公開の促進などの変化をもたらし、情報処理サービスにも新しい機能の追加が求められることとなった。

2006年に導入された減損会計は、不動産所有者としての企業にも、新しい情報処理サービスのニーズをもたらすこととなった。減損会計の下、企業は所有不動産の財務価値とリスクの把握とマネジメントが求められることとなり、不動産情報の一元管理が必要となった。さらに、大企業は、所有不動産の価値向上に取り組み始め、より高度な不動産管理運営を支援する情報処理サービスへのニーズが高まった。プロパティデータバンクは2000年に清水建設株式会社の社内ベンチャー一号として創業した。創業当時、米セールスフォースがクラウドコンピューティングによるサービスを本邦で提供し始めたばかりで、基幹業務にクラウドコンピューティングを採用した前例はなかった。

概要

プロパティデータバンクが提供するクラウドコンピューティングによるサービス、「@プロパティ」は、800社以上に使われている業界標準である。

ユニークな価値提供

プロパティデータバンクが提供する製品・サービスは、不動産運営管理業務に必要な情報処理業務に特化したソフトウェア、@プロパティに絞り込んでいる。これを、ソフトウェア資産として販売するのでなく、クラウドコンピューティングによってサービスを提供している。クラウドコンピューティングでは、顧客に使用権を提供し、顧客はインターネット経由でサービスにアクセス。使用状況に応じて課金される。

@プロパティは不動産管理運営に必要なほぼ全ての機能を持つ。具体的には、1)基本的な不動産情報のデータベース管理。所在地、面積、地目、構造、価格、工事・診断履歴、図面など500項目を管理し、不動産資産の価値・リスク評価などに利用。2)不動産管理支援。不動産の面積、テナント契約、予算・収支実績、請求・入金、租税、損害保険管理など関連情報1000項目を管理し、これらの業務を支援する。3)ビル管理運営の支援。日常保守業務、設備機器建材台帳、クレーム、エネルギー消費量管理などの業務を支援。ビル管理に関する500項目の履歴管理や報告書作成が可能。4)ポートフォリオ総合分析支援。1から3のデータにもとづいて、 不動産の運用管理および資産戦略立案に必要な情報を抽出、分析を可能にする。これらのソフトウェアは標準化されており、顧客のニーズによって必要な機能を選択して契約することができる。

プロパティデータバンクのターゲット顧客は、ITによる業務の変革を目指しながらも、導入時の簡易性やスピード、開発費や保守費などコストの低減を目指す顧客である。スピードやコストに拘らず、顧客固有の業務に100%マッチしたオーダーメイドの開発を求める顧客はターゲットにしていない。

業態から見た場合、主に、不動産投資ファンド、不動産所有者としての大企業(管財部門)のリーダー企業をターゲット顧客としている。不動産投資ファンドにとっては、効率的な不動産管理運営が重要である。そのため不動産管理運営業務の多くをアウトソーシングしているが、同時に、正確な財務会計処理と迅速な情報開示が求められる。また、この業界では人材の流動性が高く、事実上の標準のソフトウェアを使用することにより、スタッフ採用時の教育費用を削減することができる。製造業をはじめとする不動産所有者としての大企業は、さまざまな地域(時には世界中)に不動産を保有、賃借、賃貸しており、これらの管理運営を関連会社に委託していることも多い。グループ全体での不動産情報の一元化が求められているものの、これは顧客企業にとってはコア業務ではなく、システム導入、運営費用を極力抑え、また、システム保有に関わるコストとリスクを低減したいと考えている。これらのターゲット顧客は、不動産の長期的な価値に関心を持つ顧客で、短期で不動産を売買する事業を営む顧客ではない。@プロパティが投資評価機能を持たないのは、このためである。

プロパティデータバンクのサービスから顧客が得る便益は、不動産管理運営業務に関わる情報処理の効率化、不動産関係の情報一元化、不動産関係の資産情報公開の迅速化、不動産管理運営業務の強化、どこからでもステークホルダーがシステムにアクセスできる(許可された範囲で)利便性、業界で最も多く使われているソフトウェアであることによる顧客ユーザーの教育費用の削減である。さらに、クラウドコンピューティングであることによって、プロパティデータバンクが提供するサービスは、設備およびシステム運用監視保守、プログラム上の不具合補修、ユーザーサポートを含んでいる。その結果、従来型のシステムには難しい以下の便益が可能になっている。第一に、頻繁なソフトウェアの更新によって、先進的な顧客の要求を背景に進化した機能・業務ノウハウを、顧客の全てが追加投資なしですぐに享受できるようになる。小規模な更新は月に2回、大規模な更新は2000年のサービス開始以来すでに6回行われている。第二に、システムへの初期投資および運用費用の圧倒的な削減である。たとえば、顧客企業は自社にシステム管理者をおく必要はなく、また、情報資産はプロパティデータバンクが管理するので、システムのセキュリティに対する投資も追加で行う必要はない。

プロパティデータバンクの収益は3つのカテゴリーに分類される。一つは、クラウドコンピューティングの使用料である。顧客は契約に支払う契約料と、月々の使用料、ソフトウェアのメンテナンスサービス料を支払う。月々の料金は、サービスの対象となる建物の数に応じて決まるが、建物あたりの価格は、使用する機能に応じて1,000円から30,000円ほどになる。第二のカテゴリーは、@プロパティ導入時のコンサルティング・サービスと、顧客の既存システムと@プロパティを連結するためや、特殊機能を追加するためのソフトウェアのカスタマイゼーション料金である。第三のカテゴリーは、パッケージ・ソフトウェアの販売である。パッケージソフトは、大手システム・インテグレータが、公的機関や大企業の大規模システム開発など、開発期間が長いプロジェクトを行う際に、部品として利用する。逆説的ではあるが、プロパティデータバンクはクラウドコンピューティングに特化しているので、大規模プロジェクトにパッケージ・ソフトウェアを提供することによって、自社のクラウドコンピューティングの更新の独立性を保っている。2009年3月時点において、180の顧客の1万棟がクラウドコンピューティングを使用しており、11万棟が大規模システムに組み込まれたパッケージソフトを使用している。

独自のバリューチェーン

導入支援サービス
「@プロパティ」は標準化されたサービスであるため、顧客はサービス内容にあわせて、業務の見直しや再構築を行なう必要がある。「@プロパティ」には先進顧客の業務プロセスが反映されているため、導入企業は導入に伴う業務の見直しを行うことによって、自社の業務レベルを改善することができる。プロパティデータバンクは有料で導入時に顧客業務変革の支援を行なっている。これは、サービスを顧客業務に十分に浸透させ、安定的な利用を促進することとなり、将来の利用料収入を確実なものにすることに繋がる。

大企業において、メインシステムとの連携を図るためにカスタマイズしたソフトウェアの開発が必要な場合には、有料でこれを行う。カスタマイズ開発した部分は、@プロパティの既存部分に影響を与えることなく、追加が可能である。

クラウドコンピューティングによるサービス提供
プロパティデータバンクは、ユーザーの業務を支援する機能を24時間365日、インターネットデータセンターに設置している情報設備により提供する。サービスを提供する情報設備は東京・大阪の2拠点に設定され、顧客の業務情報を2拠点でリアルタイムにバックアップする。その稼働率は、事前に予定されたメインテナンスなどによるサービス提示を除けば、99.99%稼働している。

マーケティング・販売
プロパティデータバンクの販売活動は、「@プロパティ」を業務で実際に使用するビル管理会社やビルメンテナンス会社ではなく、不動産投資ファンドや不動産の所有者である大企業のマネジメント層を対象に行う。「@プロパティ」は高度な不動産経営戦略ツールである為、その有用性は、高度な意思決定を行う部門において理解され易い。また、戦略的な不動産管理や詳細な不動産管理が求められる先端顧客に特化している。先端顧客との取引から戦略的不動産管理に関する高度なノウハウを吸収し、業界内での高い信用、新規顧客の獲得と既存顧客の維持に大きく貢献し、利用棟数約11万棟という圧倒的な実績に繋がっている。

アフターセールス・サービス(ユーザーサポート)
業務上発生するシステム利用上の質問を顧客は、プロパティデータバンクのサポートセンターに寄せる。「@プロパティ」のシステムおよび顧客のデータベースは同社の管理下にあるため、ほとんどの場合、電話1本で対応することが可能である。対照的に、開発販売型のシステムの場合、顧客の管理下にシステムがあり、不具合等の所在がどこにあるか即座に分からず、場合によっては、顧客先に訪問することになる。

研究開発(サービス・アプリケーション開発)
プロパティデータバンクの開発活動の特徴の第一は、機能の標準化とオプション化である。「@プロパティ」の機能は多数の顧客の要望を反映した上で標準化されている。標準化されていないものの比較的ニーズの高い機能ついては、オプション形式で提供する。特徴の第二は、頻繁なソフトウェアの更新である。既存顧客を対象としたクラウドコンピューティングのサービス運営、ユーザーサポート活動、見込み顧客を対象とした営業活動から得られる情報により、機能の見直しや追加などが月に2度の頻繁なペースで行われる。第三の特徴は、この頻繁な更新を可能にする開発手法である。プロパティデータバンクでは、一般的な開発手法であるウォーターフォール・モデル(要件定義、設計、製作、単体試験、結合試験などの工程を順序どおり進める)を採用せず、短い開発サイクルを可能とする独自の開発手法(アジャイル・ソフトウェア開発の一種。最初にユーザーニーズを固めるのではなく、ある程度の見込みで市場に出してみて、ユーザーのフィードバックを得ながら改善していく)を開発している。

人事管理
プロパティデータバンクは、いたずらに社員数を増やすことなく、不動産、IT、金融工学を専門とする少数精鋭の人材採用を方針としている。少数精鋭を最大限に活用するため、性別、学歴、年齢による差別をなくしている。人材育成の目標を明確化し、長期的に能力を育成するため、独自の能力定義と測定を行っている。また、システム開発を手掛ける企業に多く見られる長時間労働は、従業員のワーク・ライフ・バランスに良くないばかりでなく、製品品質低下の原因にもなると考え、毎月残業時間が役員に報告されるなど、残業を厳しく管理している。従業員の55%は女性であり、6つある部長職のうち2つは女性が占めている。

活動間のフィット

プロパティデータバンクの活動は、クラウドコンピューティングというサービス形態の選択が中心になって、優れたフィットを形成している。この選択の結果、顧客はシステム関連投資、その付随費用等を極限までの抑制することができ、従来のソフトウェア販売モデルでは考えられない程の低コストでの機能提供が可能となった。これは、同社のサービスの競争力の源泉ともなっている。

次に、導入支援、サービス運用、サポート活動を通して得られる不動産管理運営に関する業務知識や顧客ニーズは、「@プロパティ」の頻繁で効果的な更新を可能とし、"進化するサービス"の提供を実現している。また、先端顧客へのサービス提供によって、不動産管理における業務標準がソフトウェアに内部化され、「@プロパティ」の頻繁で効果的な更新をさらに有効なものにしている。

「@プロパティ」の信頼性向上は、顧客が、システムの維持・運用、データ管理・保管等について同社のサービスに全面的に依存することになるため、非常に重要である。同社は、情報セキュリティに関する国際認証「ISO27001」の取得、総務省が推進する 「ASP・SaaS安全・信頼性に係る情報開示認定」の取得、SLA(当社が自主的に定めるサービスレベル)の開示と実績の公表、データバックアップ体制の構築等の活動によってこれを支えている。 (「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • @プロパティは日本におけるクラウド・サービスのさきがけ。2000年、クラウドを業務用システムとして事業化している事例が米セールスフォースしかない中、手探りでセキュリティ、高信頼性、アクセス制御、料金計量、システム運用等を独自開発。
  • @プロパティは日本初のクラウド型不動産管理ソフト。不動産管理ソフトの標準として市場に受け入れられた。
  • 不動産管理のためのユニークなアクセス制御。不動産管理には、所有者、管理会社、清掃会社、警備会社、設備管理会社、設備保守会社など様々なステークホルダーが関わる。彼らに、アクセス可能な不動産を定義、使用可能な機能、権限を付与する独自のアクセス制御システムを開発。

戦略の一貫性

  • 新築物件の一部として提供される従来型の建物維持管理のシステムではなく、既存物件の運用管理のためのシステムという価値提供は、2000年の創業時から一貫している。(具体的な運用管理の内容は、物件の収益性向上を重視する不動産管理手法に始まり、多言語対応、不動産所有者の基幹財務会計システムに連結するための会計機能の充実など、進化してきている。)
  • クラウドによるサービスの提供という戦略も創業時から一貫している。

トレードオフ

  • ハードウェアとソフトウェアからなるシステムを、資産として販売しない。(利用料を課金するクラウドのビジネスモデルに特化する。迅速な開発、頻繁なソフトウェアの更新を可能にし、保守費用を抑えられる)
  • 保守サービスのために顧客訪問をしない
  • ソフトウェアの受託開発を行わない。(パッケージ・ソフトウェアを核として、サービス領域あるいは周辺機能の実現のためのプログラムのみ顧客ごとにカスタマイズする。少ない人員、資金で事業を拡大することができる)
  • 不動産に関連しない事業は行わない。(不動産管理業務の習熟、「不動産管理業務システムのプロパティデータバンク」というブランドの確立が可能になる)
  • @プロパティ以外のサービスを開発しない。(@プロパティの改善に全経営資源を集中する。)
  • ソフトウェアのうち成熟して核となる部分は標準として固定し、更新しない>

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに業界平均を大幅に上回っている。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
21.6%P 9.3%P 14.8%P 25.1%P 33.7%P 16.1%P
Inter quartile range (IQR) = 7.4%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年
4.6%P 5.3%P 6.8%P 6.0%P 9.6%P 1.5%P
IQR = 3.6%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

受賞企業・事業部 PDF

第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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