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受賞企業・事業部レポート

株式会社丸井グループ カード事業

2016年度 第16回ポーター賞受賞 クレジットカード事業

小売とクレジットカードの一体運営により、発行時の利便性を確保。顧客と一緒に信用を創造するという方針の下、30歳代以下を中心とした顧客を持ち、リボルビング払い利用率が高い。

marui_2.jpg丸井グループのクレジットカードはエポスカードというブランドで運営されている。カード会員は613万人、取扱高1兆4650億円。グループの営業利益構成比で75%を占める中核事業(2015年度)。

エポスカードの会員数613万人は、業界リーダーであるイオンフィナンシャルサービスの2,588万人、クレディセゾンの2,561万人と比較すると非常に少なく、三井住友カード、三菱UFJニコス、セディナ、NTTドコモ、トヨタファイナンス、オリエントコーポレーション、ジャックス、ライフカードに次ぐ業界11位の規模(※1)。

エポスカードは、小売のテナント販売員が商品精算時にクレジットカードを勧誘し、申し込み手続きをその場で完了、数十分のうちにIC機能付き本カードを発行することで、顧客獲得費用は抑えつつ、財布に入れられ、使われるカードとすることに成功している。会員には提携先ごとにカードを発行せず、1枚のカードで全ての提携先の特典を享受できる。

(※1)矢野経済研究所『16年版クレジットカード市場の実態と展望』

ユニークな価値提供

丸井グループのクレジットカードは、「初めてつくって末永くご利用いただけるカード」を目指し、購買意欲が高く、利用期間の長い若者を主なターゲット顧客としている。18歳を超えた若年層は、職業に就いたり、学生であればアルバイトを始めるなど、自分で使えるお金が増え、購買意欲が高いことが多い。

エポスカードが提供している価値の第一は、「顧客と一緒に信用を創造する」ことだ。これは、丸井グループの与信哲学でもある。最初は利用限度額を他社よりも低く設定することで、18歳以上のすべてのお客様にサービスの提供を始められる。利用額や支払遅延などの利用実績に応じて利用限度額を引き上げていくことで、顧客の利便性を高めると同時に、与信管理が可能。ゴールドカードも同じ方針の下に運営されており、他社においては年収による審査基準のハードルが高いゴールドカードでは、エポスカードのユニークさが特に際立っている。一般カードの利用実績に応じて発行されるため、年収などで他社では発行基準を満たさない若年層にも発行が可能。エポスカードが初めて持ったクレジットカード、エポスゴールドカードが初めて持ったゴールドカードという顧客が多い。エポスカードの会員のうちプラチナあるいはゴールドカード保有者は21%、取扱高は約6割を占める。一人当たりの利用額は、一般カード利用時の約3倍(2015年度)。

提供している価値の第二は、発行や利用におけるプロセスの簡便さだ。ポイントやセールの優待などカードの付帯サービスは、小売店舗での精算時に、店舗の販売員が接客の中で説明するのでわかりやすい。申し込みはその場でタブレット入力し、そのまますぐに使えるICチップつきの本カードを最短20分で受け取ることができ(※2)、後日郵送で受け取る手間は必要ない。銀行口座からの引き落とし手続きも、その場で引き落とし口座のキャッシュカードを提示することで完了する。最初から本カードを受け取ることで、常時財布に入れて使うカードとなることができる(店頭即時発行と後日郵送では、カードの利用率が10%以上差がある)。2015年度に新たに加入したエポスカード会員の約7割が丸井グループの店舗(マルイ、モディなど28店舗)で入会した。また、約1割は、提携商業施設における入会であるが、その場合にも、エポスカードカウンターが設けられ、商業施設のテナントから誘導されたお客様がタブレット入力し、即時発行を受け、ウエブ会員登録を行っている。

ゴールドカードへの切り替えも店頭で行われ、5分程度で受け取りが可能だ。従来は郵送のみであったゴールドカードへの切り替え方法に、店頭即時発行を加えたことによって、ゴールドカードの発行枚数が従来の2倍に伸長した。現在は約半分のゴールドカードが店頭で切り替え発行されている。

会員サイトへの登録も容易で、カード申し込み時に同じタブレット端末から登録もすませられ、これが、リボルビング払いの利用の多さにつながっている。リボルビング払いを利用する顧客は、精算時には一括払いとしておき、後日、ウエブからリボルビング払いに切り替えることが多い。会員サイトからは、支払額確認などが行える他、優待サービス告知も行われ、カードの利用率向上にも貢献している。エポスカード会員の会員サイトへの登録率は75%で、他社の平均的な登録率25%を大幅に上回っている(丸井グループしらべ)。ゴールドカード会員によるリボルビング払いの利用傾向は、一般カードと同程度。

リボルビング払いを繰り上げ返済したい場合には、小売店舗にあるカードセンター、自社ATM、銀行やコンビニATMなど、様々なチャネルからいつでも返済が可能。

第三は、付帯サービス。ポイントプログラム、丸井店舗での年4回の会員限定セール、期間限定の優待キャンペーンなどが中心で、これらは多くのクレジットカードが提供しているサービスでもあるが、丸井グループの特長は、丸井の店舗以外の商業施設や企業が提携先に加わった場合、既存のカードホルダーが新しい提携先の付帯サービスを享受できる点だ。これは、丸井グループが、提携先限定のカードを発行しない方針をとっていることで可能になっている。他社の場合、提携先ごとに特別なクレジットカードを発行することが多く、特典利用もそのカードの保有者に限られる。2016年3月末現在、エポスカードの提携先他社商業施設は7施設、異業種企業は13社。カード会員への特典のお知らせはエポスカードがとりまとめて行う。

一枚のカードで全ての提携による特典を共有することは、同時に、エポスカードと提携する商業施設やサービス業者に対する価値提供にもなっている。新たに提携に加わることで、613万人のエポスカード会員に特典を提供することができる。

ゴールドカードでは、ポイントサービスはさらに拡充し、「えらべるポイントアップショップ」サービスでは、外部加盟店300ショップの中から利用頻度の高い3ショップまでをウエブ登録することで、当該ショップでの決済時に付与されるポイントが3倍になる。対象となるショップには、東京ガスやJR東日本など、日常の生活費に関連したショップも多く、お客様のスイッチングコストを高めると同時に、お客様が中心的に使用するメインカードとしての位置づけを得ることに貢献している。

第四の価値提供は、愛着のあるカードの発行だ。標準デザインの他に74種類のデザインの券面を発行しており、お客様がお気に入りの一枚を選ぶことができる。デザインカードには発行手数料500円が必要。デザインカードの一部は、ゲーム系コンテンツと連携して開発されており、2015年度は年間41回のイベントを開催し、4100人のカード会員入会につながった。デザインカード保有者の約8割が30歳代以下で、デザインカードの一人当たり加盟店利用額は一般カードの2.7倍、リボルビング払いの利用率は3.3倍。前の段落で述べたように、カードデザインは異なっても、提携施設や提携企業によって提供される付帯サービスは、その1枚で享受することができる。

一般カード、ゴールドカード(インビテーションの場合)の年会費は、ともに永年無料。プラチナカードの年会費は2万円。

(※2)ICチップ搭載カードの店頭発行システムで特許取得済み。

独自のバリューチェーン

丸井グループのカード事業のバリューチェーンは、会員獲得、与信哲学(全般管理)、システム開発、グループ統一の人事制度(人的資源管理)に特徴がある。

会員獲得
28ある丸井グループの小売店舗(マルイ、モディ)では、買い物の精算時に店舗の販売員がエポスカードの勧誘を行なう。口頭で入会特典や優待サービスなどの説明を行えるため、お客様の理解を得やすく、申し込みに至る割合も高い。クレジットカードとウエブ会員への申し込み作業は、タブレット端末で完了し、最短20分でICチップ付き本カードを交付することができる。カード会員勧誘は、店舗販売員の職務でもある。店舗の販売員が商品販売の接客中に行う入会提案からカード発行までの活動については、マニュアルに留まることなく、一人一人が創意工夫を重ねている。他社の販売員が商品販売の接客を担っているテナント店舗については、カード入会によるキャンペーン参加などテナントへのメリットを説明するだけでなく、同じ小売目線に立ってテナントの業務を支援するなどして信頼関係の構築に努めている。丸井グループの店舗においては、個人やフロア(階)単位でカード入会の目標枚数が設定され、これにはテナント店舗による協力が不可欠である。丸井グループの店舗の年間来客数は延べ2億人(2015年度)。

その他にも、カードセンターを設置する丸井グループ外の商業施設の開拓や、優待制度を設ける異業種企業との提携開拓、デザインカードでのコラボレーションやイベントを共催するアニメやゲームのコンテンツ開発企業との連携を開拓している。
外部商業施設においては、丸井グループの店舗においてテナント店舗との連携の経験を積んだ社員が、施設のテナント店舗に、エポスカードの会員が増えることによる店舗への便益を説明するだけでなく、テナント店舗社員との関係構築の上、短い時間で伝わるカード勧誘の仕方などを提案している。競合も含め複数のカードセンターが入居する商業施設においては、各テナントの店員がどのカードへの入会を勧めるかが、成功の鍵を握っている。

マーケティング
丸井グループでは、お客様のニーズを把握する手法としてウエブアンケートなどに留まらず、お客様に集まっていただき直接対話できる場を重視している。たとえば、2016年4月に開業した博多マルイでは、同施設限定で発行されるオリジナル・デザインのカード券面があり、そのデザイン案募集からお客様アンケートによるデザイン決定、発行までに約800名のお客様の協力を仰いでいる。博多マルイ開業後2か月のカード発行枚数は過去最高の約2万枚となり、その64%がオリジナル・デザインの券面を選択した。また、スマートフォン用のエポスカード公式アプリの開発においても、使用者となるお客様から搭載機能の選定や画面デザインへの意見を募集した。丸井グループにおいては、お客様参加型のマーケティング活動を、「信用はお客様とつくるもの」という同社の与信哲学に基づいたお客様との「共創活動」の一環と位置づけている。

独自の与信哲学
エポスカードの限度枠は、所得額だけでなく利用額や支払い遅延などの利用実績に基づいて決定される。

グループ統一の人事制度
丸井グループでは、職種、担当、グループ内各社の壁を越えて異動するグループ統一の人事制度を有しており、グループの約6000名の正社員のほとんどが小売事業を経験している。カード事業にも小売事業を経験した人材が配置され、小売現場の効率性が高まるような発行オペレーションの開発に活かされている。2012年4月から2016年4月の間に異なる事業に異動した社員は1500人で全社員の25%にあたる。

システム開発
1960年のクレジットカード発行以来、システム管理と開発を内製化してきた。その歴史を通じて蓄積したノウハウがある。また、システム管理・開発に携わる社員のほとんどが小売事業経験者であり、カード発行の現場を経験していることから、より効果的な問題解決が可能で、状況確認から要件定義までを圧倒的なスピードで完了することができる。その結果、年間100案件以上のシステム開発を行い、ICチップ付きカードの店頭即時発行、ウエブ会員への店頭での登録、ゴールドカードへの店頭即時切替が可能になっている。たとえば、ゴールドカードへの切り替え対象顧客である場合には、商品の精算時、レジ画面にその旨が告知され、販売員がゴールドカードへの切り替えを促す。ゴールドカードへの店頭即時切替を支えるシステムは、一般カードの店頭即時発行システムを進化させたものだ。

情報システムの内製化は、また、情報管理が社内で完結するため、情報漏洩や不正利用のリスクが軽減される。2015年5月に開催されたVISAセキュリティ・サミット2015において、不正利用の抑止に積極的に取り組んでいる会社として、カード発行会社部門の「チャンピオン・セキュリティ・アワード」を受賞。

活動間のフィット

株式会社丸井グループ カード事業の活動システムは、「小売とカードの一体運営」を特長とし、「若年層の顧客」をターゲットに、「利用実績に基づいた与信管理」の下、「内製されたITシステム」に支えられた、「小売店舗を核としたカード発行とウエブ会員登録」を、「小売・カードの知識を併せ持つ人材」が行なったり、支援する。また、「提携先限定カードを発行しない」提携方針の下、お客様は1枚のカードで全ての提携先のベネフィットを享受でき、また、提携先は全てのエポスカード会員にアプローチできる。お客様とともに創り上げる共創活動」によって、お客様に支持されるサービスを開発している。(本セクション最後に掲載した「株式会社丸井グループ カード事業 の活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 小売部門との人事の流動性により、小売視点に立ったサービス開発。
  • 小売店舗の店員による加入勧誘体制。
  • 即時発行を可能にするタブレット入力など。
  • 2006年以降、世界で初めて、ICチップ搭載のクレジットカードを店頭即時発行。
  • 提携先が増えても顧客が持つカードは一枚。

トレードオフ

  • ゴールドカードの収益源を年会費にしない。年会費による収益よりも、会員数増加と利用額増加を優先。収益源は、総取扱額増加によるリボ分割手数料と加盟店手数料。
  • ゴールドカードを富裕層囲い込みの手段としない。丸井グループのゴールドカードは、若年層をターゲット顧客に設定。
  • システム関連業務をアウトソーシングしない。
  • 一人の会員に複数枚のカードを発行しない。エポスカードでは、1枚で全ての優待サービスが利用可能。提携先企業は相互に送客しあうメリットを享受。

戦略の一貫性

丸井グループのクレジットカード事業は、1931年に家具店として創業した時から始めた月賦販売に源流を持つ。当時も、単価の高い家具を現金一括払いで購入することが難しい若年層が念頭にあった。

1960年、月賦をクレジットと改称し、日本初のクレジットカードを発行。信用調査機関である丸井クレジットセンターを開設した。

お客様の利便性に鑑みた小売店舗での店頭即時発行は、1975年に遡る。

このように、信用は与えるものではなくお客様と一緒に創るという与信哲学、若年層への注目、店頭即時発行に象徴される顧客利便性は、丸井のクレジットカード事業の核を一貫して構成してきた。

その核を維持しながら行われた戦略上の大きな転換は、2006年の「汎用カード」化だった。それまでは、丸井の店舗でのみ使えるハウスカードであったが、世界中のVISA加盟店で利用可能な汎用カードへと位置づけを変更した。これによって、他の商業施設やサービス業との提携という、新たな顧客獲得の経路と顧客便益の強化への道が開かれることとなった。

2010年に実施された改正貸金業法によりキャッシングサービスの金利が引き下げられ、多くの消費者金融業者やクレジットカード業者が収益低下に苦しんだが、上述した一貫性ある特徴をてこにして、丸井グループは、利益貢献の柱を、キャッシングからショッピング(リボルビング払い)に転換することに成功した。

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに業界平均を大幅に上回っている。(業界平均との収益性比較は、PwC Japanグループの協力を得ている。)

収益性

活動システム・マップ

活動システム・マップ

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第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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