受賞式・カンファレンス

受賞企業インタビュー

インタビュワー:一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授 大薗恵美

キュービーネットホールディングス株式会社
代表取締役社長 北野泰男 様

キュービーネットホールディングス株式会社

5つのお手軽 ユニークな価値創造

大薗
御社は提供する価値として5つのお手軽さを挙げています、低価格、短時間、ヘアカットのみ、高利便性、予約なし。これを実現するために、お客様がカットされるユニットに様々な工夫がなされた設備や道具を揃えています。また、店頭には混み具合を表示するサインがあり、スマホアプリでは、希望するヘアスタイルを選択でき、近隣店舗の混み具合もわかります。
また、トレードオフとしては、シャンプーをしない、予約をとらない、指名制度なし、レジ対応しない、が挙げられます。創業当時の業界では、何故このような事をしなかったのでしょうか。
キュービーネットホールディングス株式会社 代表取締役社長 北野泰男 様
北野
創業者は、業界の方ではありませんでした。事業が忙しく、短時間で仕上げてくれる理容室を探しましたが見つからず、それなら自分で事業を起こしてみようという考えに至りました。起業時は、バブル崩壊で景気が一気に低下傾向に入り、理容室はなんとか売上の低下を防ごうと新しいサービスを付け加えることにより、差別化を積極的に図っていました。個室で足の爪まで切ってくれるサービスも出てきたそうです。「爪は自分で切る、マッサージは専門店に行けばよいし、シャンプーもいらない」と言っても、値引きされません。顧客にメニューを取捨選択できる権利がなく、全てお店が決めたセットメニューでの提供で、勿論、座ってから短時間で店を出られる理容室はありませんでした。また、理容師の方々は職人気質が強く、時間を気にせず自分の腕前を見せたいという気持ちが強い傾向にあるようでした。創業者は、このような理容室と顧客のギャップを利用者として感じ、手ごろな値段かつ短時間でカットのみのサービスを提供する専門店を顧客とともにつくるというアイデアに至りました。

模倣の脅威

大薗
ビジネスが成功し、それを模倣されることはよくありますが、その話と、その後どのように変わったかを教えてください。
北野
シンガポールで実際に経験した話です。2002年頃に、シンガポールの事業家からの誘いを受け、当初は国内と同様にフランチャイズ形式で展開を始めました。ところが、20店舗を超えたところで、全ての店舗の看板が別の屋号に付け替えられるという事件が起こりました。社内で対応を協議した結果、直営店の出店で挽回することとなりましたが、以前のQB HOUSEであった20店舗と、どのように差別化するかは大変難しい課題でした。こちらに戻ってきてくれたスタイリストと深く話す機会があり、QB HOUSEで働くことに対して抱いていた期待と実態とのギャップなど、以前は聞くことのできなかった本音の話が聞けました。ビジネスモデルを前輪とすれば、それを後押しする後輪が必要で、それは人材育成、組織づくりだという考えに行き着きました。当時、日本においても自らが人材を育成するというよりは、他社の経験豊富なスタイリストを中途採用するということを基本スタンスとしていました。しかし、この事件を契機に、国内も海外も、教育カリキュラムを再構築し、人材育成に最大限力を注ぐ方針に切り替えました。今、シンガポールは直営店で展開し35店舗まで広がっていますが、コンセプトも大事ですが、10分という限られた時間で最高のパフォーマンスを出したいという意欲をいかに高められるかで、サービスの質が決まるということを、この海外での失敗から学びました。

データ活用、スタイリスト育成

大薗
2つの大きな意思決定をされています。一つはフランチャイズから直営店にかわっていくということ、もう一つは、スタイリストを自ら育てるようになったということです。今、店の席の利用率は高いレベルにあると思いますが、この効率性を高めるために何をしているのかを教えてください。
北野
10分で高いパフォーマンスを出すために、店舗の状況をできる限り数値化し、それを店舗責任者に提示し、改善余地を抽出し徹底してPDCAを回します。あと、シンガポールは日本のような国家資格制度がありません。基本的には現場で見よう見まねで身に付けた技術しかありません。鋏を使わずバリカンだけでカットしているスタイリストもいました。そこで、日本のスタイリストが現地に赴きカット技術を教えましたが、最初は簡単には伝わりませんでした。10分で仕上げるための技術を伝授するには、かなり論理的に形式知化しなければなりません。ただ、日本では伝わることも、海外では伝わらないことも多くありました。日本人スタイリストは自分の技術をさらに細かく分解し、日本以上に各々の技法の意味、意図を伝えることに重点をおくことに努めました。その結果、徐々に技術習得度が高まり、バリカンの方が楽だと言っていた現地のスタイリストが、鋏を使うことにより色々なヘアスタイルに仕上げられる楽しさに気付き、より多くの技術を習得しようと、積極的に研修に参加するようになっていきました。自らが成長している実感を得て、現地のスタイリストが誇りをもって仕事をするようになりました。このように、海外の方々に技術を伝承する過程で、これまで以上に技術の形式知化が進み、今の日本のQB HOUSEの技術研修の再構築につながり、それがグループ全体の持続的な成長を支えています。

今後の海外展開

大薗
QB HOUSEはシンガポール、香港、台湾で多くの店舗を展開し、今年、マンハッタンのミッドタウンに出店しました。アジアの中の経済が発展した都市だけでなく、これからは欧米にも進出していくと思いますが、海外の経験から学んだこと、また大事にしていることを教えてください。
北野
どの国でも、適正な育成プログラムを根付かせることができれば、日本と同様のクオリティが実現できます。そして、基本的に「散髪は面倒である」と思っている方が、世界中にいます。そのような方々に短時間でリーズナブルな価格でサービスを提供し、そこに日本の高いクオリティ、清潔感を加味して提供することで、世界中の人達に喜んでもらえるようになりたいと考えています。
大薗
ニューヨークは20ドルですが、何故10ドルではないのですか。
北野
店舗ビジネスですので、人件費、賃貸料などの経費、収入からどれだけ利益をだしていくかと考えると、ニューヨークは家賃が高いので20ドルになりました。もっと低価格の競合店が存在しますが、サービスの質は勿論のこと、忙しいニューヨーカーにQB HOUSEの時間価値を体感してもらえば、十分に20ドルの価値を感じて頂けると判断しました。
大薗
シンガポールのチャリティの事を教えてください。
北野
「Hair for Hope」という、小児ガンの子供たちを、募金するだけでなく、自らが丸坊主になって励ますというチャリティ・イベントに、メインスポンサーの1社として長年参加させて頂いています。ロングヘアーの方々については、切った髪の毛をウィッグにして子供たちに差し上げています。毎年、年間を通して様々な催しが取り組まれますが、締めくくりのイベントには、趣旨に共感するQB HOUSEの有志が他の3カ国からもボランティアとして参加し、2日間にわたってトータル約3,000人をカットさせて頂きました。もともとは、技術に関心が強くなかった海外のスタイリストたちも、自分達の仕事への誇りが高まり、当該活動に参加を希望する方が年々増えてきています。国境を超えて大変すばらしい取り組みとなっており、これからもこのような活動に積極的に取り組んでいきたいと思います。

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第24回 ポーター賞 応募期間

2024年5月 7日(火)〜 6月 3日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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