受賞式・カンファレンス
ポーター賞とLBO
一橋大学大学院国際企業戦略研究科
准教授 野間幹晴
ポーター賞は独自の事業戦略を実行し、高い収益性をもつ事業に与えられる賞です。収益性評価においては、事業そのものから生まれる利益を評価するために、売上高営業利益率(ROS)と投下資本利益率(ROIC)を重要な指標として使用しています。これらの指標について、今年より若干の修正を行いましたので説明いたします。LBOとは、ファンド等が、買収先企業の将来生み出すキャッシュフローを担保に資金を借り入れて買収する手法です。ファンド等が出資したSPC(特別目的会社)が債務を負って買収するので、買収後に新会社のバランスシートには多額ののれんと借入金が計上され、日本の会計基準を採用していれば、のれんの償却費が販管費に計上されます。この結果、LBOはROSとROICに対してネガティブな影響を与えることになります。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の中村副社長が言われたように、「物言う株主」が上場企業に大きな影響を与えています。日産自動車によるカルソニックカンセイの売却、パナソニックによるパナソニックヘルスケアの売却、東芝の事業売却等に見られるように、プライベート・エクイティ・ファンドの重要性が高まりつつあります。これらの事例は上場企業ですが、非上場についても当てはまります。受賞企業4社のうち、プロシップ以外の3社は現時点で非上場であり、大株主が何度か変わっています。
LBOを通じて戦略の独自性に磨きがかかり、組織が強じんになったポーター賞にふさわしい企業が、ROICやROSの悪化により対象から除外されるのを回避するため、LBOの影響を控除することにしました。具体的には、企業買収資金に充てられた負債、のれん、のれん償却費を控除したROICやROSを使用して評価します。ただし自社がM&A(合併・買収)を行って負債やのれんが発生しても修正計算をしません。また、LBOを経た企業が負う借入金の返済義務を軽視するものではないことを申し添えます。
受賞企業・事業部 PDF
- 第18回ポーター賞受賞企業・事業PDF (当年度の全ての受賞企業が掲載されています)