受賞式・カンファレンス

受賞企業インタビュー

インタビュワー:一橋ICS 教授 楠木 建

RIZAP株式会社
代表取締役社長 瀬戸健 様

RIZAP株式会社

戦略のポイント

  • 顧客が求める結果にコミット
    • 専属のパーソナル・トレーナーと共同で2か月後のなりたい姿の目標設定
    • 携帯アプリ「RIZAP touch」からのレポート
    • パーソナル・トレーナーによる毎日のアドバイスとサポート
  • 累積12万人のユーザーの実績データに基づいたプログラム
  • 高額・前払い
  • 全額返金制度とリバウンド保険
  • 直営のみで路面店にこだわらない
  • 全てのトレーナーを正社員として採用
    • RIZAPアカデミーでトレーナーを育成する
  • 非稼働会員をよしとしない
  • 店舗にスイミングプールや大浴場、サウナなどの設備を持たない

優れたイノベーション ... 結果にコミット

一橋ICS 教授 楠木建
一橋ICS 教授 楠木建
――ポーター賞の発表があった後、若干、世の中的に話題になりましたね。けれども、ポーター賞は他の賞と違って、会社ではなくて事業の戦略を対象とした賞ですので、ボディメイク事業の戦略の素晴らしさをお話しいただきます。
ボディメイク事業ですが、僕はこういうのがイノベーションだなと思います。体重を落とす、ボディメイクする、健康な体になるなど、多くの人たちがそのニーズを達成するためにいろんなことやっています。しかし、何故その結果を正面から売るところがなかったのか。そう思わせるのが最高にイノベーションと、ピーター・ドラッカー先生も58年前に言っています。これは皆さんご存じの、RIZAPの"結果にコミットする"という独自の顧客価値定義ですが、何故今までなかったと思いますか。
あらゆることで手段と目的をどう捉えるかが重要ですが、やはり、目先のことにどうしても行きやすい、というのが理由ではないでしょうか。
――ほけんの窓口さんと似ている面がありますよね。
RIZAP株式会社 代表取締役社長 瀬戸健 様
RIZAP株式会社
代表取締役社長 瀬戸健 様
非常に似ていると思いました。"結果にコミットする"というのは言い方を変えると、お客さまが求めるものを必ず提供します、ということです。あらゆる商売に、結果があるはずだと思います。提供する商品、サービスはあくまでも手段であって、お客さま求めているものが必ずあるはずです。そう考えると、RIZAPもそうですし、ゴルフもそうですが、お客さまはトレーニングを求めているわけではなく、理想の体と自信を手にしたいと思って来ているはずだと考えています。お客さま視点に立てば、自分たちのサービスの本質を、"結果にコミットする"と置き換えることができ、もしかすると、違う手段が出てくるのではないかという気もしています。
――ほけんの窓口さんも基本的に同じ構図だと思います。手段の目的化というのがどうしても起きますが、商売に組み込まれた本能みたいなとこがあって、そこにきっちりブレーキをかけて、本来の結果に向けてあらゆるサービスの要素を一つのストーリーにつなげることだと思います。

ボディメイクが提供するサービス

――RIZAPのボディメイクが実際どんなものなのか、ご存じない方もいらっしゃると思いますので、僕が顧客だとしたら、どのように進むのか説明してください。
CMで出ているのは大体2か月がベースなのですが、実は、お客さまが求めているゴールは多種多様なのです。
――単純に、何キロ減量したいだけではないのですか。
違います。体重を減らすというのは手段ですよね。お客さまはそれを通して本当はどうなりたいのか、健康になりたいっていう方もいらっしゃいますし、かっこいい体になりたいとか、ちょっともてたいとか色々です。それをどうやって、言いにくいことも含め信頼関係を築きながら引き出していけるかがポイントです。
それがはっきりすると、最適なソリューションが決まります。例えば、自分にとって最高の体でこんな服着たいとか。そのためには、例えば10キロ痩せたい。10キロ痩せるためにはどれぐらいのトレーニング期間が必要で、どんなトレーニングが最適なのか、食事をどうすべきなのかが見えてきます。結果的に、2か月ではなくて3か月、4か月かかる方もいらっしゃいます。ゴールが決まると、手段としての商品、サービスが決まってきます。

人材育成 ... リーダーシップ

――ゴールを決めて、相互で握るという、これは従来のフィットネスとかトレーナーの持っているスキルの全く外にあるものですから、この人材を育てるのが鍵になりますね。
そうですね。例えば、トップアスリートをサポートしているトップトレーナーは、選手と強力にゴールを共有しています。その手段として信頼関係を築きながら、ハードなトレーニングでも乗り越えていける。ですから、トレーナーは、ゴルフでも、英会話でも、学校の先生でもそうですが、ゴールから手段を導き出せることが必要で、リーダーシップが大切になります。われわれが磨いてくのはリーダーシップです。お客さまとともにビジュアライズをいうか、ゴールをありありと共有することができるかどうか。顕在化されてない意識もありますから、潜在的に意識していることを探ることもあります。お客さまに言っていただけることには限界あり、引き出させていただいたゴールから手段を導くということです。リーダーシップを磨くというのは、このようなノウハウを得ることです。
――相当奥の深いスキルだと思います。本当のゴールを言いにくいお客さんもいるのではないですか。リーダーシップのある方が話すと、「本当言うと、もてたい」っていう人もいるわけですよね。
そうです。そのようなお客様もいらっしゃいます。
――同じパーソナル・トレーナーがずっと寄り添うのですか。
そうです。
――トレーナーはトレーニング以外には、お客さんとどのようなコミュニケーションをするのですか。
食事です。毎日、最低1日3回、食べたお皿を全て写真で撮って送っていただきます。2カ月間だから180回。これで食生活の修正を行います。そして、ちょっと食べ過ぎてしまった時にどうお声掛けするかが重要です。行動を変えていただけなければいけないので、いつも「いいですよ」では絶対駄目です。プロフェッショナルとしては、お客さまの行動を変容させなければいけないので、お客さまのことは認めつつも、愛情をもつことを前提に、指摘するところは毎回指摘する。
――なるほど。厳しいことも言うし、このお客さまだったらどういう働き掛けが一番効果的なのか、人によって違い、そこがトレーナーの腕の見せどころですね。

ユーザーデータに基づいたトレーニング

――食事に関するデータのやり取りは、RIZAP touchというアプリを通じて行われるのですか?
そうです。これまでの12万人のユーザーデータをずっと分析しています。どのトレーナーが結果を出せたのか。どのトレーナーがそこまで結果出せなかったのか。お客さまのどういう行動が結果に結び付いたのかなどで、因果関係と相関関係もしっかり分析しています。優秀なトレーナーはどんなメールのやり取り、どんな単語を多用してるいのか、そういったアクションを導き出します。そうすると、法則性が見え、再現性が確保されてきます。
――そうすると、一面でものすごくアナログなところがある裏で、徹底的にデータビジネスっていう面があるわけですよね。
やはり再現性が非常に重要だと考えています。多くの業界で、属人的で職人気質の方々がやられているものがたくさんあると思います。見て覚えるという方法はあると思いますが、お客さまに一定の品質を提供するためには、見てではなくて、そこに共通するものを見つけ、組織として再現性がないといけないと思います。
――しかも、この事業で蓄積されるデータは、他では中々手に入らないものですね。例えば、過去のポーター賞受賞企業で最近話題になっている例だと、ZOZOSUIT。あれは体の寸法を測る一つの新しいやり方ですが、ただ、寸法測るっていうそのデータ自体は他にもいろいろと取りようがあって、また取る場もあります。ところが、何か月間の食事、トレーニング、成果を、最初と最後だけじゃなくて、途中の変化もずっと追いかけているのは、他では手に入らない宝の山みたいなデータだと思います。
そうですね。おっしゃるとおりですね。
――属人性を乗り越え、だんだん法則に従った、より効果的で効率的なやり方が分かってくると、ボディメイク事業の他のことでも、または他のサービスにも利用でき、全体としてビジネスが大きくなってくっていうこともあるのですか。
色々な形で利用できると思います。効果的なトレーニングがあったとしても、努力なしには成果は得られません。できるだけ楽をしてやりたい、という本音みたいなものがありますから、「楽をして痩せる」情報がインターネットに載っていたり、本屋さんで売っています。ですけど、情報っていうのはある程度コモディティ化していて、かつ、正しい情報が伝わればみんな痩せられる訳ではなく、生活習慣病になる方もなかなか減りません。やはり情報だけでは完全なソリューションにはなり得ないと思います。知っているけどやりきれない、要は三日坊主が絶対にあると思います。効果的なものは当たり前で、三日坊主に絶対させないところが、われわれの価値です。ゴールを目指し正しいことを最後までやりきること、ゴルフでも、英語でも応用可能だと思っています。
――なるほど。それは同じロジックで、しかもデータの蓄積とその解析。この知見を持っていないとできないことと思います。
どういう言葉を使うとお客さまは挫折しない。どういう関係性を保っていると、どういう関わり方をするとお客さまが2か月間、3か月間、挫折しないで最後までやりきってくれたのか、このようなノウハウが積みあがっていきます。

高額、前払い、全額返金サービス、リバウンド保険

――サービスの独自性が、プライシングにも非常にきちんと反映されていると思います。他にない独自のサービスでお客さんに対して結果を約束するので、相対的に高額になり、かつ、前払いっていうのはポイントですね。ゴールが約束されて支払をするから、よしやろうという気になります。ただ、あくまでも達成された結果を売るので、全額返金サービスとかリバウンド保険っていうのが用意されているわけですね。
全額返金サービスは非常に効果的なのですが、RIZAPのときもゴルフのときも、全額返金サービスを導入するときには、トレーナーから「みんな返金を要求してきますよ」と、すごい反対が出ました。そのときに必ず聞くのが、「お客さまは皆さんに何を求めていらっしゃるのですか」です。トレーニングをすること、ゴルフならレッスンを受けることですか、それとも、痩せて理想の体になること、ゴルフならスコアをアップさせることですか。RIZAPのお客さまは、痩せること、スコアをアップさせることです。何を提供するのがプロフェッショナルなのか、と話します。
そうするとトレーナーは、「じゃあ、覚悟決めてやりましょう」、「結果が出るまでやります」となり、トレーナーのお客さまに対する緊張感が一気に増し、会話も手段も関わり方全部変わりました。
――なるほど。面白いですね。全額返金サービスは、お客さまのためでもありますし、働いている人にとっての規律にもなるわけですよね。
なります。そうやって言われると、お客さまもゴールに向かって一緒に進みますから、やっぱうれしいわけですよね。実際に結果が出て、お客さまから「ありがとう」ってたくさん言われるわけですよ。そうするとトレーナーは、自分のやり方に自信、誇りを持てて、新しくカウンセリングにいらっしゃる方が、どうせ痩せないとか、私なんて無理だと思っている方に対して、お客さまがまだ見えてない未来をトレーナーはしっかりと伝えることができます。
――先ほどのほけんの窓口さんもそうですが、ついつい手段の目的化を起こしたり、手っ取り早いほうに行ったり。お客さんも三日坊主になったり、どれも人間の本性だと思いますが、王道をきちんと道筋作って進むと、お客さんと一緒に人間の本性に根差した好循環が生まれるということですね。

今後の展開、ボディメイク事業の進化の方向

――これもピープルビジネスとしての一つの強みで、やればやるほど強くなるということだと思います。今後、RIZAPのボディメイク事業の進化の方向については、どのように考えていますか。
パーソナルトレーニングは、あくまでも手段でしかありません。一人のお客さまだけではなくて、たくさんの方が悩んでいますし、RIZAPの金額は手が届かない方もいると思います。そうすると、やはり1対1のパーソナルトレーニングだけに留まらず、データを解析していくと、どういうアクション取れば1対30とか1対100でも結果を出せ、アプリだけでも結果を出せる、そういった可能性が見えてきました。そうすると、そのアクションだけをしっかり捕え、より多くのお客さまに、より安くやっていただくこともできると考えています。世界中でも可能ではないかと思います。
やり方は分かっているけど最後までやりきることができない、低い目標でなく高い目標を目指しているけど一人ではなかなか目標に到達しない。そういう時に背中を押せるような存在、人の力で人は変われるのを証明するようなことを目指しています。悩みを抱えている人、もっと自信を持ちたい人、健康的になりたい人、ゴルフがうまくなりたい人、そういった方々に1対1だけではなくて、たくさんの方に結果をしっかり出すサービスができると考えています。
――健康とか痩せるという切り口で切り取った一つの新しいプラットフォームみたいなものが、今のデータの蓄積でできるだろうというとお考えですね。今日はどうもありがとうございました。

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第19回 ポーター賞 応募期間

2019年5月 7日(火)〜 6月 3日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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