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2025年度ポーター賞は、次の3企業・事業に決定しました。
コメントは受賞理由の要約です。

株式会社eWeLL

株式会社eWeLLは、訪問看護事業所の支援サービスを提供している。市場規模としては同社の創業時に訪問看護の4倍と言われた訪問介護市場ではなく、訪問看護市場に特化し続けている事が第一の特長だ。訪問看護の充実は高齢化社会における医療体制にとって重要だが、多くの訪問看護事業所は小規模で廃業率は中小企業の平均廃業率を上回る。eWeLLは、訪問看護における看護師の日常業務、つまり、カルテ、保険請求、看護計画書と報告書の作成などの業務の電子化、効率化により一日当たりの訪問件数を増やすこと、看護の質を改善することによって訪問看護ステーションの成功に貢献する。同社は特に、日々の看護記録の電子化と電子カルテの普及から手掛けており、この情報が看護計画書や報告書の素案の自動作成など、一連の業務の効率化の基盤となっている。多くのサービス提供業者が保険請求から手掛け始めたのとは対照的だ。

訪問看護は医療保険、介護保険、時には障がい福祉制度にも関係しており、複雑だ。さらに、毎年のように法制度対応や行政手続きが変更になる。だからこそ、この分野に特化し知見を蓄積することと、それを織り込んだ使い勝手の良いシステムが価値を生む。同社は、営業とカスタマーサポートセンターを自社で運営し、顧客への助言提供とともに、訪問看護ステーションの運営ノウハウのコンサルティング機能も提供している。カスタマーサポートセンターには全従業員の2割が配置され、顧客への支援と共に、毎月の製品更新に活かされている。

株式会社SCREENホールディングスSCREEN セミコンダクターソリューションズ

株式会社SCREENホールディングスの主力事業を担う子会社、SCREEN セミコンダクターソリューションズは、半導体製造装置、中でも洗浄装置で1999年から世界シェア1位を維持している。洗浄は、製造過程で発生する微細なゴミを取り除く工程であり、半導体の製造工程のイールド改善、良品率に大きく影響する。同社はウエハー上の表面改質の処理技術に強みを持ち、個々の技術、ノウハウの組み合わせ力によって同社の装置は高い洗浄処理性能を持つ。加えて、同社は、半導体製造の前工程全体の処理速度に影響を与えている。洗浄は、様々な加工の前後に何度も行われ、一つの製造ラインに複数台の洗浄装置が使われる。半導体製造の前工程の30%を担っているとも言われる。洗浄装置の前後には他社の製造装置が使われているが、同社は、繰り返し行われる洗浄という機能を担うことから、取り除くべきパーティクル(ゴミ)の素材、形状、温度、所用時間など、に対して最適な解を持っている。

半導体製造装置の市場は変動が大きいが、同社は、一部の鍵となる部品を内製、構成部品は外注し、自社クリーンルームで外注先が組み上げて検査を行う半ファブレスの体制を取っている。また、顧客へのカスタマイズが求められる事から、製品構造をユニット化し、さらに、大部分を標準化しながら一部をカスタム対応するセミオーダーメイドとする事によって、カスタム対応しつつ需要の変動、納期管理、品質管理、保守サービスの効率化と高信頼性を可能にしている。装置の売切りでなく、直接販売、直接サービスの提供により顧客のニーズを満たし続け、長期的な信頼関係を構築している。

株式会社フジクラ情報通信事業部門

株式会社フジクラ情報通信事業部門は、光ファイバケーブルの製造販売に力を入れている。その戦略の特長は、独自の製品・製造技術に基づいた高付加価値領域の創造と特化にある。同社は、日本における光ファイバ市場の飽和を機に、従来からの構造（スロット型、ルーズチューブ型）の光ケーブルの生産・販売から完全に撤退、自社開発した間欠固定型リボンファイバを用いた光ファイバケーブルに特化、ターゲット市場も日本から海外へとシフトした。この新しい構造は、超多心、細径高密度、軽量であり、従来品と比較して製造費用が大幅に低減できるだけでなく、顧客の施工費用の低減も可能。同社は、光ファイバ素線、光部品・コンポーネント、融着接続機、光応用製品などの関連製品を全て提供しており、これが、新しい構造の光ファイバケーブルの特長を実現する事と、その優位性を確保する事に貢献している。また、販売においては、顧客側の総費用低減を訴求し、それが生み出す価値に見合う価格を得られるような販売活動を直営の販売会社で行っている。販売会社は、ケーブルだけでなく部品や機器、敷設工事への助言やサービスまで対応することによって配線ソリューションを提供することができる。海外としたターゲット市場は、米国のハイパースケール・データセンター市場における浸透に成功、欧州においても大手通信キャリアや鉄道市場を中心に浸透が進んでいる。

安価を強みとする光ファイバ、ケーブルメーカーとの価格競争と一線を画しており、業界比高い収益性を実現している。