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受賞企業・事業部レポート

大同生命保険株式会社

2004年度 第04回ポーター賞受賞 生命保険
中小企業の経営者の在任中の死亡などに関わる企業にとってのリスクをカバーする保険を提供するため、中小企業団体や公認会計士・税理士団体との販売提携や、公認会計士・税理士との代理店契約により、ユニークな販売体制を作り出した

企業概要

大同生命は総資産では生命保険業界で8位、業界の総資産の3.3%を構成するにすぎない。しかし、中小企業市場に特化し、同社の顧客企業は38万社であり、全国182万社の中小企業(総務省「事業所・企業統計調査」)のうち約21%が同社の顧客である。また、当該市場に適した商品である個人定期保険市場において、市場シェア23.1%(保有契約高)と圧倒的な強さを誇る。

ユニークな価値提供

 大同生命は、中小企業市場を対象に、主に在任中の経営者の死亡などに関わる法人にとってのリスクをカバーする保険を提供している。この市場に特有なニーズに最もよく対応する個人定期保険(一定の保険期間だけ死亡保障が得られる掛け捨て型の保険)を主力商品とし、全社売上げに占める同商品の売上げは89%を超える。保険契約者は法人、被保険者は経営者、保険金受取人は法人とするしくみ。

顧客企業への価値提供
 大同生命の商品は、中小企業のニーズにきめ細かく対応している。例えば、社長の死亡・生存退職金をあわせて準備できるような100歳までの超長期定期保険、企業の成長や個人の昇格などに伴う責任の拡大に対応するために保険金額が一定割合で増加する逓増定期保険、企業の債務残高減少にあわせて保障金額が一定割合で減少する逓減定期保険、企業の経営環境の変化にあわせて契約途中で契約内容の見直しができる契約内容変更制度などを提供している。
 また、損害保険会社と提携して生損保セット商品を提供することにより、生命保険では補填されない中小企業経営者特有のリスクを幅広くカバーし、これを同社営業職員からワンストップでの購入が可能。
 さらに、労務管理支援や公的な低利融資制度の紹介など、情報提供を中心として、保険商品を超えた中小企業のニーズに対応している。
 その他に、法人会や納税協会など、中小企業団体と提携することによって団体の福利厚生制度の一環として保険商品を販売するため、企業が個別で加入する場合よりも割安な保険料率を適用することができる。
 同社は、多くの会計士や税理士と保険の募集代理店として契約しているが、これは、税理士などが行う中小企業への財務、税務等の経営指導の一部として保険商品の推奨を行っており、顧客企業にとってより高い価値を提供している。

販売提携先への価値提供
 会計士や税理士にとっては、通常の経営指導に保険を加えることで自身の付加価値を高めることができ、また、彼らは同社から募集代理店報酬を得ることができる。中小企業が所属する団体は、団体の福利厚生制度を充実することができ、また、彼らは同社から事務手数料を得ることができる。
 販売チャネルに参加するパートナーは、顧客企業に価値を提供すると同時に、大同生命から価値提供を受け、また、大同生命も効率的な販売活動などの価値提供を彼らから受けており、三者の間で「ウイン・ウイン」の関係にある。

独自のバリューチェーン

募集体制(募集・販売と保険金収納)
 大同生命の販売チャネルの構造は、大きく二つに分けられる。一つは、TKC全国会(会員数8800人、顧問先企業数約55万社)や税理士協同組合に属する会計士や税理士が募集代理店となるもので、彼らがクライアント先企業に生命保険(団体が導入する制度商品)の販売活動、申込書・保険金の支払い手続き・解約など各種事務手続きを行い、販売コミッションとして手数料を受け取る。TKC全国会や税理士協同組合は制度商品の保険料収納業務を行い、大同生命より団体事務費を手数料として受け取る。

第二の構造は、営業職員による販売であるが、法人会(会員数約119万社)や納税協会(法人会員数約12万社)など、顧客企業の所属する団体と提携して販売活動を行う点が特徴的である。まず、営業職員による新規顧客開拓活動の中心は、提携先団体の会員企業である。また、新規顧客開拓のためのマーケティング活動は、提携団体と一体となって行われたり、営業職員が関係する会計士・税理士を通じても行われる。このため、独自に営業基盤を開発するよりも営業職員の生産性が高い(大同生命の営業職員は約5000名である)。営業職員は、販売活動の他、申込書・保険金の支払い手続き・解約など各種事務手続きを行なう。団体は制度商品の保険料収納業務を行い、団体事務費を大同生命より得る。

TKC全国会、税理士協同組合、法人会・納税協会が提携している生命保険会社は、同社一社である。(法人会と納税協会については、医療保険分野を他社と住み分けている。)

商品開発
 中小企業経営者のニーズに対応した保険商品の開発に特化している。主力である団体制度商品は、同社と団体が共同で開発し、同社だけが扱うことができる専用商品である。

顧客維持・顧客のサポート
 顧客である中小企業の保険周辺のニーズにきめ細かく対応している。たとえば、(1)顧客企業の決算期に合わせて支払保険料や契約者配当の経理処理方法を案内するサービスの提供、(2)就業規則の無料診断や社内規定の雛形の提供など人事労務支援サービスの提供、(3)従業員向け福利厚生制度が整備されていない中小企業のために、契約者およびその従業員が利用可能な国内宿泊施設、レンタカーなどの各種割引特典を提供、(4)経営やビジネスに関するテーマで経営者向け講座をビデオ講座によって実施。

販売パートナーのサポート
 保険商品の提案やクロージングの経験、販売ノウハウの蓄積が少ない税理士に必要な研修を実施。また、TKC全国会所属の税理士・会計士代理店向けに、TKCが提供する会計システムと連動して、適切な保障額算定など税理士業務の一環として保険指導をより効率的に行えるツールである保険指導支援システムを開発、提供。税理士協同組合の会員税理士に対しては、オンラインネットワークにより、税理士の顧問先企業の加入状況のデータ提供や制度商品の設計書作成などを支援。

事務処理
 2001年10月、太陽生命とシステム部門を統合。大同生命本体にはシステムの企画部門のみを残し、開発・管理を統合会社に移管。2001年11月、事務処理機能を事務サービス子会社に移管、2004年4月には太陽生命と事務サービス子会社を統合。いずれもコスト削減と生産性向上に寄与。

資金運用
 中小企業は保険会社の選択の際に保険会社の健全性を重視することから、収益性よりも安定性を重視した資産運用方針を採用している。

活動間のフィット

 同社のターゲット市場である中小企業経営者に最も適した商品である個人定期保険に注力し、また、この市場にアプローチするのに効率的かつ効果的な中小企業団体や会計士・税理士団体と販売提携を行ない、制度商品の開発・提供や共同でマーケティングを展開するほか、集金業務を委託している。また、会計士・税理士を募集代理店としている。以上の仕組みは、大同生命、提携団体、会計士・税理士および顧客企業といったいずれもがこのシステムに参加することによって利益を得、相互に強化しあう、「ウイン・ウイン」の関係を構築しており、ターゲット顧客、商品、販売チャネル、事務オペレーションにおいて非常に優れたフィットを実現している。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 効率的な保険料集金業務を可能とするため、銀行協会や地銀協会などに働きかけ、全国の銀行を一本化した口座振替を実現。それ以前は、各銀行の口座振替方式が異なっていたために事務が煩雑であったり、保険会社の専門職員による集金が行われていた。(昭和46年・1971年)
  • 経営者の在任中の死亡という中小企業のリスクを保障するため、1000万円保障が普通であった時代に、生損保セット商品を開発し、最高保障1億円の商品の提供を開始した。当時の制度では保険会社による生損保の併売が許されていなかったため、同社営業職員が個別に損害保険代理店登録を行うことによってセット販売を可能にした。(昭和46年・1971年)
  • TKC全国会所属税理士を募集代理店とすることを開始。当時としては税理士の募集代理店化を組織的に展開することは業界初の試みであった。(昭和51年、1976年)
  • TKC所属税理士の代理店向けに、TKCが提供する会計システムと連動した保険指導支援システムを開発、提供。税理士業務の一環として保険指導をより効率的に行うことを可能にした。(昭和63年、1988年)
  • 業界に先駆けて、収益性よりも安定性を重視した資産運用へ方針転換。国内株式と外国証券の割合を圧縮して公社債へシフト。保険会社の健全性重視は中小企業市場の特徴でもある。健全性指標の一つであるソルベンシー・マージン比率は2003年度、国内主要生保では最高水準。(平成3年度、1991年より)
  • 顧客である中小企業の保険に関する経理処理を支援するサービスの開始。中小企業の経理担当者は保険料の経理処理などに不慣れな場合もある。そこで、顧客企業の決算時期に合わせて、支払い保険料、契約者配当などの経理処理方法を案内するサービスを業界に先駆けて開始。(平成12年、2000年)
  • 生保で初めて、法人契約者に対してインターネットで契約内容の確認、契約者貸付の申し込みなどを可能とするサービスを提供。契約者貸付は午前11時までの手続きで当日着金が可能であり、中小企業で突発的に生じる資金繰り需要に迅速に対応が可能。(平成13年、2001年)
  • 本社(コールセンター)から顧客への通話を録音し、実際に訪問する営業担当者が内容を聴き、適切な提案に活かすシステムを生保で初めて導入。(平成16年、2004年)

戦略の一貫性

 中小企業市場へのフォーカス、中小企業団体である法人会への制度商品提供や販売提携は、1971年の法人会の制度商品の引き受けに始まり、それ以降、一貫してフォーカスを深めてきた。たとえば会計士・税理士代理店は、1974年のTKC全国会との提携開始時よりTKC全国会が中心的であったが、1996年より、税理士チャネルでの優位性確立に向けて税理士協同組合との提携関係強化に注力。本社部門の新設や要員の重点配置、TKC全国会との提携で得た経験を活用し、1995年には税理士代理店の3割弱でしかなかった税理士協同組合所属税理士の代理店を2004年9月にはほぼ5割にまで増加。TKC全国会所属税理士のうち大同生命と募集代理店契約を締結している税理士と税理士協同組合の税理士で大同生命の代理店になっている税理士を合算すると1万店となり、全税理士事務所33,000の30%に達する。
 また、中小企業市場に適した保険商品の開発と提供、提携団体と代理店のサポートの分野においてイノベーションを継続している。このように、中小企業市場をターゲット市場とし、中小企業団体や会計士・税理士の所属団体と販売提携を行うという一貫した戦略を強化し続けている。

トレードオフ

  • 個人(家計)市場への販売を行わない、個人を対象とした大企業の職域営業も行わないなど、大手生保が注力している個人市場での競争は行っていない。
  • 大手生保が主力商品と位置づける定期保険特約付終身保険や定期保険特約付養老保険など、死亡保障と一定の貯蓄機能を有する個人向け商品を積極的に販売しない。これらの商品は、商品内容、税制面から中小企業のニーズに一致しない。また、保険会社としても、貯蓄性保険よりも定期保険の方が商品の収益性が高い。
  • 単純な価格競争には参加しない。個人定期保険は商品内容がわかりやすく価格競争になりやすい一面を持つ。生保業界への新規参入の増加によって競争が激化し、この商品分野でも保険料率の引き下げや募集代理店に対する報酬率の引き上げなどの価格競争が激しくなったが、同社は、価格競争には参加せず、販売サポートの充実や提携団体と一体となった活動によって新規契約の獲得、既存契約の維持を実現している。

収益性

 投下資本利益率は、生命保険業界の平均を一貫して大幅に上回っている。営業利益率も業界平均より優れている。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年
27.7%P 40.2%P 23.0%P 23.0%P 41.3%P 21.3%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2003年 2002年 2001年 2000年 1999年
1.7%P 1.8%P 1.9%P 2.5%P 1.6%P -2.9%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

受賞企業・事業部 PDF

第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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