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受賞企業・事業部レポート

カイハラ株式会社

2007年度 第07回ポーター賞受賞 デニム製造卸売業
ファッションジーンズ用ブルーデニム生地に特化。紡績から織布、整理加工まで垂直統合し、高くても世界に求められる品質、スピード、提案力を実現

歴史的背景

img_2007_01_p.jpgカイハラは1893年に広島県で創業した備後絣の企画、製造を行うメーカーで、主な製品は農作業用のモンペの生地であった。しかし、高度成長下での洋装化に対応する為に開発した広巾絣も、合繊繊維の普及とプリント技術が発達すると、絣の需要は激減した。その後広幅絣技術を応用して中近東向けのサロン(回教徒用の衣装)で業容を順調に伸ばしたが、政情不安、通貨切下げにより突然の輸出停止に追い込まれる。1970年、カイハラはデニム生地事業に軸足を移すことに決め、紡績会社の下請けとして糸の染色に特化した。この時武器になったのが、絣事業で培った藍染の技術を活かして自社開発した染色機械であった。これは大成功し、1977年には国内デニム染色市場のシェア75%をおさえた。しかし、カイハラはそれに満足することなく、織布、整理加工、さらには紡績まで手がけ、国内外のアパレル企業と直接取引きをするようになった。

概要

カイハラ製品の品質は世界に「カイハラデニム」として認められ、価格は高くても、世界のアパレルメーカーから求められている。国内デニム生地市場のシェア50%を持つ国内最大のデニム生地メーカー。

カイハラは、日本の繊維業界の主な二つの流れと異なる道を選択した。一つは、垂直統合である。日本の繊維業界は従来、紡績、染色、織布、縫製、企画などの分野に分業がなされていた。カイハラが垂直統合を始めた当時は、非常に例外的であった。その後紡績各社が垂直統合の方向に動いたが、いずれも他分野の企業を買収するなどの手法を採っている。二つ目は、国内特化である。繊維業界各社が1970年代以来、低コストを求めて製造を海外に移転する中で、カイハラは国内、しかも広島県北部の山間地域に工場を集中している。

ユニークな価値提供

カイハラのターゲット市場は、カジュアル・ファッションとプレミアム・ファッション用ジーンズであり、カイハラの顧客には、リーバイス、エドウィン、GAP、ユニクロ、セブンジーンズ、ヒューゴボス、ピーエル・カルダンなどが含まれる。

カイハラのデニムは1ヤード当り4.5ドルであり、中国のメーカーの2.5ドル、米国系メーカーが中国で生産した場合の3.5ドルと比較して大幅に高い。

カイハラの提供している価値は、品質、スピード、提案能力である。カイハラは、様々なニュアンスのデニム生地を、正確に高い再現性を持って提供することができる。ファッションジーンズには、中古感覚、肌触り、風合い、色相などのニュアンスがその売れ行きに大きく影響する。しかし、これらのニュアンスは、綿の質、綿糸の紡ぎ方、インディゴ染料の糸へのしみこみ方、黄色など他の色の追加、織布の具合、最終生地仕上方法など、さまざまな要因によって影響され、コントロールするのが非常に難しい。企画時に同意したとおりのニュアンスを実現でき、追加生産時の再現性も高いことは、顧客であるアパレルメーカーにとって重要である。

また、カイハラは、必要な時に、必要な量のデニム生地を提供することができる。ファッション性の高いアパレル商品は製品ライフサイクルが短期化し、アパレルメーカーはジャストインタイムの納品を求めている。カイハラの生産リードタイムは短く、また、生産プロセスは多様な製品を扱うことができる。

カイハラは顧客からの要望に応えられるだけでなく、新製品を顧客に提案している。年間600から700種類の異なったニュアンスのデニム生地を提案し、そのうち25%が実際に商品化されている。

独自のバリューチェーン

研究開発
カイハラの製品開発ポリシーは、ファッションデニム特化の戦略を反映して、「より良い」デニムを開発することだけではなく、「新しい」デニムを継続的に開発することだ。

カイハラは、製造技術を自社開発している。特に、染色工程に係わる機械は社内で開発し、自社の鉄工所で製造している。紡績、織布、整理加工などの工程に関しては製造機械を購入するが、大幅に改造する。工場のフロアレイアウトなども自ら手がける。

製造
カイハラは紡績、染色、織布、整理加工などの全ての工程を垂直統合し、地理的に近接した社内工場で、緊密にコーディネーションしながら行っている。紡績を自ら手がけることで、カイハラは常に一定の品質の綿を使用することができる。低品質な綿は、生地のニュアンスに影響を与えるだけでなく、織布工程で糸切れを起こし、製造効率を悪化させる。カイハラは自ら紡績を行うことによって、使用する綿のタイプをコントロールし、生地のニュアンスをコントロールすることができる。

多品種生産を効率的に可能にするため、カイハラの製造工程は、ムラ糸、ストレッチ綿糸、レーヨン糸など、様々な製品を扱うことができる。また、製造装置も多様なものを所持している。たとえば染色機を7台所有し染色の多様性を拡げ、中古風デニムにはビンテージ織機を使用し、その保有台数は国内随一である。

品質管理のため、カイハラは、生地の強度、耐久性、洗い、退色度、インディゴの浸透度など独自の基準を設けており、最終検査は全品目視で行い、異物が織り込まれている場合には一つ一つ手作業で取り除く。

製造リードタイムの短縮及びシーズンの変わり目の一斉生産投入量に対応するため、カイハラは、製造能力に余裕を持っている。

マーケティング・販売
カイハラは商社を通さず、直接にアパレルメーカーにマーケティング活動をする。海外顧客に対しては、香港の専門の販売代理店が一元管理する。「カイハラデニム」ブランドの認知はアパレルメーカーの間では高かったものの、エンドユーザーにはあまり知られていなかった。近年、カイハラはエンドユーザーのブランド認知を向上するべく取り組んでいる。たとえば、ユニクロのジーンズの商品タグで「カイハラ(株)と共同開発したデニムを採用」と説明している。

アフターセールス・サービス
カイハラは個々の製品をトレースバックすることができ、品質問題や、洗い加工後に期待された効果が得られなかった場合などには、迅速に改善することができる。

人事管理
カイハラは、複数の機能や製造工程を担当できるように社員を教育している。たとえば、間接部門の社員であって製造工程を担当できる。この方針は従業員に成長の機会を与えモラルを高めるだけでなく、突然の需要増加に対応することができる。また、カイハラは工場を工業地帯に置かず、広島県北部の山間地域に置き、自らが敷地造成を行い、地域と密接な関係を構築している。従業員の家族と家族的な関係を構築することで、急激な需要増による残業増加への理解が得られやすい。親子、夫婦で勤めているものも多い。

カイハラは全従業員を対象に、所定の生産量と収益を達成すると、期末決算賞与を支給している。実績は、過去8年間平均で、基本年収の平均15%である。

全般管理
カイハラは非上場の同族企業であり、貝原家が100%の株を所有するが、株主資本を5000万円と小額に維持することによって、中小企業としてのメリットを活かすこととともに、資本家としての貝原家への配当を少なくしている。

カイハラは、垂直統合を進める際に、リスクを取ってきた。1978年に織布を始めた際、1991年に紡績を始めた際にも、単年度の投資額が当時の資本勘定を上回る投資が必要であった。これらは内部留保と商社金融(分割払い)、そして銀行借入でまかなわれてきた。

活動間のフィット

カイハラの活動は、様々なニュアンスのデニム生地を高い品質で正確に迅速に製造することを中心に組み上げられている。社内に一貫して製造工程を持つため、カイハラの商品開発期間は短く、また、試作から量産への移行も迅速である。自ら紡績を手がけることで品質の前工程における作りこみが可能になり、垂直統合は品質の安定にも寄与している。加えて、素材、加工などについてプロセス毎に情報管理しており、品質の安定性、再現性に貢献している。また、商社を通さない直接販売によって、顧客との共同開発や商品イメージのすり合わせが容易になり、品質と迅速性が可能になっている。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 自社開発の藍染連続染色機(ロープ染色機)

戦略の一貫性

デニム糸のインディゴ染色に特化した下請け企業であった同社が、1978年に織布を始め、直接アパレルメーカーに販売を始めた時から、現在の戦略は一貫している。低価格品ではなくファッション性のあるジーンズの市場をターゲットし、品質、スピード、提案能力を提供してきた。1991年の紡績工程への参入は、この戦略を一層強化する結果となった。

トレードオフ

  • ブルーデニム以外の生地を製造しない
  • 備後地区以外の地域で製造しない。工場は車で2,3時間の範囲に留める。
  • 糸を販売しない。
  • 少ロットで生産しない。中ロット生産のみ。
  • 縫製業に進出しない。「はさみを入れない」
  • 下請けにならない。
  • 商社経由で販売しない。
  • 綿の在庫を最小化しようとしない。安定供給を優先するため。
  • 上場しない。非上場を維持する。

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに、デニム生地製造業界の平均(中央値)を一貫して大幅に上回っている。同社の利益率は2002年をピークに下降傾向にあるが、これには、いくつかの要因が作用している。第一に、織布規模拡大、整理・加工工程追加、紡績工程追加など次々と投資を続けてきた吉舎工場がフル操業になり、また償却負担がピークを超えたのが2002年度であった。第二に、その後、織機、染色機の設備更新、2005年の三和織布工場新設竣工、2008年稼動予定の三和紡績工場新設のための減価償却負担の増加および人件費(教育期間中)の増加が影響している。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
10.3%P 18.2%P 12.2%P 11.5%P 7.1%P 5.5%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
8.6%P 12.7%P 9.9%P 7.0%P 6.2%P 5.9%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

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