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受賞企業・事業部レポート

スター・マイカ株式会社 中古マンション事業

2011年度 第11回ポーター賞受賞 不動産投資業
賃貸中のファミリー・タイプ中古マンションの市場を創造

業界背景

中古マンションに投資する不動産業者は、4つの戦略グループに分けられる。一つは、空室リフォームのグループで、空室のファミリー・タイプのユニット(50平米以上目安)を買い、リノベーションして売却する。大きな投資を必要としないので、中小中堅の再販業者が主たるプレイヤーである。値下りのリスクを避けるため、なるべく早く売却し、平均保有期間は3ヶ月程度である。二つ目のグループは、ビル再生のグループで、一棟ごと買い上げ、賃料や稼働率を改善した後で、ファンド等に売却する。大きな投資が必要になるので、参入障壁が高く、REITなどが中心的プレイヤー。不動産価格の上昇に依存する部分も多く、不動産価格下降局面では収益が圧迫される。三つ目のグループは、ワンルームマンション(30平米以下目安)を運用商品として扱うグループで、賃貸中のワンルーム・マンションを買取り、転売する。売り手も買い手も投資家であることが多い。保有期間は3ヶ月程度。第四のグループが、スター・マイカによって創造されたものだ。

概要

スター・マイカは、賃貸中のファミリー・タイプのマンションのユニット(建物全体でない)、中価格帯(2000万から3000万円程度)で主に築10年以上のものに特化して、買取り、保有中はオーナーとして物件を管理しながら家賃収入を得、貸借人が退去した後はリノベーションして実需のある買い手に売却するという事業を営んでいる。スター・マイカ以前には、なかった戦略的ポジショニングである。

その背後には、賃貸中のファミリー・タイプのマンションは、空室の場合と比較して売りにくい、売れても30%程度安値でしか売れない、という不動産業界に長年にわたって存在する構造がある。ここに着想できれば誰にも実践可能な戦略のように思われるが、模倣に成功した例はまだない。

その理由は、第一に、不動産業界の既存の戦略的ポジショニングとの間にトレードオフが存在することだ。スター・マイカは、市場変動による不動産価値の上昇を収益源としていない。あるいは、一件数百億規模の投資も追わない。対照的に、一件あたりの投資規模は小さいが、市場の上昇局面、下降局面にかかわらず利益を生み出せる仕組みである。また、市場変化に起因する価格変動リスクに対するアプローチも異なる。業界では保有期間を短くすることで対処する傾向が一般的だが、スター・マイカは、価格の安定性を吟味したうえ、多数のマンション・ユニットを持つことでリスクを分散する。

第二に、実践に必要な活動がユニークなためだ。スター・マイカの戦略コンセプトを実践するためには、信頼性の高い値付けが可能なデータベースとモデルの開発、資金調達の工夫(単純な運転資金や設備資金と異なるポートフォリオ貸付形態)が必要なだけでなく、ある程度の事業規模も必要である(保有ユニットでポートフォリオを組めるだけの数が必要。また、不動産売買、保有管理の様々な手続きを行うオーバーヘッドを賄わねばならない)。

ユニークな価値提供

スター・マイカの投資先は、賃貸中のファミリー・タイプのマンション・ユニットに特化している。しかも、中価格帯(2000万円から3000万円)、経年変化による値下がりが終る築10年超の物件が中心だ。同社は、1,000件超のユニットを保有することによって、個々の物件の価格変動リスクを分散させる。2010年11月、スター・マイカは、東京圏に1,000ユニット、210億円相当のマンション・ユニットを保有していた。平均築年数は17年、平均面積は69.9平米、平均購入価格は2100万円であった。

スター・マイカのターゲット顧客は、売却の要望を持つファミリー・タイプのマンション・ユニットのオーナーである。

スター・マイカが提供している価値は、第一に、賃貸中のマンション・ユニットに流動性を提供している。スター・マイカが事業を始める前は、賃貸中のマンションは買い手が見つかりにくく、オーナーは売却ニーズがあっても、長く待つか、売却をあきらめる他なかった。第二に、賃貸中のマンションを、以前よりは高い価格で買うことができる。市場に流動性が生まれたことで、賃貸中のマンションと空室後のマンションの価格ギャップは若干縮小したが、その分、売り手と買い手が利益を得ている。

独自のバリューチェーン

調達
スター・マイカは、主に、不動産仲介業者から売却希望の物件情報を得る。マンションのオーナーから売却の意向を知らされた不動産仲介業者は、既にこの分野で最大の買い手であり、迅速に買い取り価格を提示できるスター・マイカに価格を問い合わせる。スター・マイカは仲介業者に3%の手数料を支払うが、自社の買い付け担当者は非常に少ない人数ですませることができる。

スター・マイカは、買取価格を査定する独自のシステムを開発しており、照会後2時間以内で買い取り価格を提示することができる。市場価格、個別ユニットの特徴、管理費、リノベーションに必要な費用などが考慮され、独自に開発した価格モデルで計算される。社員の経験や勘に依存することはしない。

迅速に買取るため、スター・マイカは、現金を厚く保有している。また、複雑な不動産売買や管理の手続きを迅速、正確に行うため、独自のプログラムを開発している。

不動産管理
家賃の集金管理や保険など、保有中のユニットの管理は、アウトソースしている。

リノベーション
スター・マイカは、不動産価値を上げるための、凝ったリノベーションを行わない。リノベーションの設計、素材は標準化し、短期に低コストでこれを実行する。リノベーションは、外部の業者にアウトソーシングしている。

マーケティング・販売
スター・マイカは、販売は不動産仲介業者を通じて行う。3%の仲介手数料を支払う。

研究開発
スター・マイカの研究開発活動は、二つの分野に集中している。一つは、価格モデルの改善、二つ目は、新しい資金調達のスキームを開発することである。

資金調達
マンション・ユニットを購入するための資金の調達は、株式市場からと、銀行からの3年から5年の借り入れで賄われる。多くの中古マンションの再販業者が3ヶ月から6ヶ月の借り入れで資金調達しているのとは、対照的である。

全般管理
スター・マイカは、複雑な不動産取引、管理のオペレーションを支えるICTシステムを開発している。このシステムによって、価格査定、買取交渉、賃貸管理、退去時期管理、販売など、不動産のライフサイクルを通じて一貫した情報管理とマネジメントが可能になっている。

不動産売買取引だけでなく、賃借人管理、資金調達、抵当権設定・解除などの煩雑な仕事を、非常に少ない社員で行っている。役員と社員合わせて、2011年10月現在で65名。

スター・マイカは、オフィスの賃貸料、人件費などの固定費を、保有不動産の賃貸収入以下に抑え、常にポジティブなキャッシュフローが得られるようにしている。この方針は、人員増強の抑制になり、急成長を難しくするが、財務の健全性には大きく貢献している。

活動間のフィット

スター・マイカの活動システムは、ファミリー・タイプのみを取得、賃貸中物件のみを取得、大量物件の保有・売買、長期保有可能な財務基盤、低い固定費、精度の高い物件査定、といった戦略のコアとなる選択を中心に、整合性の高いシステムを形成している。(「活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 新しい戦略的ポジショニングを創造。業界で「スター・マイカ・モデル」と呼ばれる。
  • .
  • 金融の知識を不動産投資に活用。
  • 事業を、マーケット・メーカーと定義。
  • マンションを不動産ではなく、コモディティと定義。
  • 保有中のマンション・ユニット(在庫)を、ポジティブなキャッシュフローを生む事業機会と捉える。また、賃借人の退去は、リスクではなく、売却可能になった事業機会の到来と捉える。これらは、業界の常識的な見方とは異なる。
  • 資金調達の新しい方法。資金調達が困難な事業初期は、不動産ファンドを活用。また、抵当の対象となる不動産ポートフォリオの中身が入れ替わるノンリコース・ローンを開発。
  • マンションの査定システムを開発。
  • 不動産売買、管理などを支えるICTシステムを開発。

戦略の一貫性

スター・マイカは、2001年設立。賃貸中のファミリー・タイプのマンション・ユニットに特化する戦略は、創業時からのもの。資金調達の手段など、個別の活動のレベルにおいて新しい工夫は積み重ねられてきたが、戦略のコアは変わっていない。

トレードオフ

  • ワンルーム・マンションは買わない。
  • ファミリー・タイプのマンションでも、ハイエンドのものは買わない。市場が小さく、また、標準化したリノベーションでは満足されない可能性が高い。
  • 値付けを中心としたマーケット・メイキングの活動に特化し、それ以外の活動をやらない。不動産管理、リノベーション、販売などの活動は、アウトソースする。
  • 家賃収入以上に固定費を増やさない。
  • 急成長を追わない。

収益性

投下資本利益率は、業界平均を一貫して大幅に上回り、投下資本に対して効率的に利益を生み出していることを示している。営業利益率は業界平均を大きく下回るが、これは、同社の戦略の特徴の表れである。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
7.5%P 8.6%P 7.3%P 7.4%P 7.2%P 7.2%P
Inter quartile range (IQR) = 1.0%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
-32.1%P -29.7%P -32.5%P -32.9%P -32.8%P -29.8%P
IQR = 16.4%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

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第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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