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受賞企業・事業部レポート

株式会社クレディセゾン クレジットカード事業

2012年度 第12回ポーター賞受賞 クレジットカード事業
ステータス・シンボルから、日常の買い物をサポートするサービスへと、クレジットカード事業を再定義

業界背景

img_2012_02_p.jpg日本のクレジットカード業界は、3つの戦略グループからなっている。一つ目は、銀行の子会社で、三井住友フィナンシャルグループが17.5%と、最大のシェアを有し、三菱UFJフィナンシャル・グループが16.2%で続く。二つ目のグループは、事業会社の子会社で親会社の顧客へのサービスを第一の目的としている(ハウスカードと呼ばれる)。このグループからは、イオン・クレジットが8.2%、トヨタファイナンスが7.0%の市場シェアを持つ。第三のグループは、独立系のクレジットカード会社で、特定の業界との資本的なつながりが少ない。クレディセゾンはここに属し、17.2%、全体で2番目に大きなシェアを有する。(市場シェアは2011年度イシュアー取扱高推定値)

概要

クレディセゾンのクレジットカード事業(以下、クレディセゾン)は、勤続年数の長い男性を主なターゲットにしていたクレジットカードを再定義し、買い物をする一般の人々、特に女性をターゲット顧客とした。年会費無料、即時発行・即時利用、カード申込等のサービスカウンターを提携小売店に設置、スーパーマーケットの食品売り場におけるサインレス取引、有効期限を撤廃した永久不滅ポイント、ポイント・サイト「永久不滅.com」など、使い勝手を良くするための革新的なサービスを次々に導入。同時に、不良債権率とオペレーションコストを低く抑えることに成功している。

クレディセゾンは、旧セゾングループのクレジットビジネス会社として出発し、当初は百貨店の顧客を対象としたハウスカードであったが、顧客基盤をその外側に拡大してきた。現在、3,500万枚のカードを発行し、年間取扱高は6兆円、国内で2番目に大きなクレジットカードサービスである。ハウスカードから出発してここまで広く展開できた例は他にない。

ユニークな価値提供

クレディセゾンは、クレジットカードの提供価値を、日常の金融サービスと定義した。これは、クレジットカード事業を始めた当時に決められたことだったが、クレジットカードをステータス・シンボルと位置づける業界の考え方とは一線を画していた。ステータス・シンボルという考えの下、業界では、ターゲット顧客は、「一流企業に勤続10年以上の役職者、持ち家」などの条件で絞っていた。しかし、クレディセゾンは、日常のサービスという考えの下、ターゲット顧客を女性にした。登録した電話番号に連絡がつけば、勤務先は関係なかった。事業開始当初、主な顧客は、西武百貨店に買い物に来た20代、30代の女性であった。今日でも、セゾンカードの顧客の約70%が女性である。

日常の金融サービスという提供価値の下、クレディセゾンは利便性を提供している。1982年の事業開始当初より、年会費無料、即与信・即発行・即利用を実施してきた。これは、百貨店を訪れた顧客をターゲット顧客としてきた同社にとって、その場でカードメンバーになっていただけるうえで、重要な利便性であった(即与信・即発行・即利用は、クレディセゾンの140のカードサービスカウンターのうち、60箇所で可能)。1992年には、西友の食品売り場で、サインレスでの決済を可能にした。

利用者に対するセゾンカードの価格は、相対的に低い。年会費無料に加えて、2002年には、ポイントの有効期限を撤廃した永久不滅ポイントを導入した(ポイントは実質的な値引きであり、クレジットカード会社にとって顧客への負債である)。ポイントサイト「永久不滅.com」はクレディセゾンが運営し、様々な小売店(ネットショッピング・サイト)が商品を提供しているウェブサイトで、ここを経由して商品やサービスを購入すると永久不滅ポイントが最大20倍貯まる。クレディセゾンのプレミアムカードであるセゾン・アメリカン・エキスプレス・カードには年会費があるが、オリジナルのアメリカン・エキスプレス・カードのブランドサービスを受けられる等ハイグレードなサービスを提供するにも関わらず、ブルーカードで3,150円、ゴールドカードで10,500円、プラチナカードで21,000円と、リーズナブルである。セゾン・アメリカン・エキスプレス・カードは発行開始以来多くの会員を獲得しているが、その中心も、女性である。

クレディセゾンは、年会費収入よりも、顧客の購買金額に焦点をあてている。したがって、クレディセゾンにとって良い顧客とは、高い信用力を持つ(貸倒リスクが低い)買い物をあまりしない人よりも、クレジットカードを日常生活の決済手段としてより頻繁に使ってくれる人である。

クレディセゾンは既存のカードサービス以外にも、様々な金融サービスを導入した。オンライン・チケット販売サービスのイープラス、投資信託、リース・レンタル、住宅ローン(フラット35)、信用保証など。

独自のバリューチェーン

調達
クレディセゾンは、ビザ、マスターカード、アメリカン・エキスプレス、JCBの4つの国際ブランドを取り扱った日本で最初のクレジットカード会社である。

新しいカード会員の獲得
クレディセゾンの従業員の65%は、営業機能を担っている。全国の小売販売店と幅広く提携を行なっており、その小売店舗内に約140箇所のサービスカウンターを持っている。これらカウンターの運営は全て、同社の社員が自ら行なう。業界で、これほど、新規顧客獲得に自らの資源を投資している例はない。提携先社員による獲得活動を主に活用する例が一般的である。

クレディセゾンは、定期的にこれらのカウンターの収益性を査定し、不採算カウンターの閉鎖と新しいカウンターの設置を継続している。

1996年には、同社独自の与信ノウハウのシステム化によって大量処理を実現し、申し込みから30分程度でのカード発行が可能になっている。更に、近年はカード申込をタブレットPC上で行い、完全にペーパーレスなプロセスを実現している。

カード会員へのサービス
クレディセゾンは、会員のカード利用を容易にするために、サインレス取引、永久不滅ポイント(有効期限なし)の付与、永久不滅.comサイトの運営などを手掛けている。

小売販売店へのサービス提供
クレディセゾンは、提携先小売販売店の売り上げ拡大への貢献を目指して様々なサービスを提供している。カードを利用した店舗での販売単価改善提案、カードの店舗外利用分析に基づく集客施策提案、明細書やメールなどを通じた会員への情報発信、エリア特性を踏まえた地域単位での共同プロモーションなど。これらのサービスは、全国10箇所ある支店及び140箇所のセゾンカウンターを中心に、地域の小売販売店と連携しながら実行しており、地域に密着した営業体制が支えている。

利用代金回収・督促
クレディセゾンでは、利用代金の回収と督促業務を、「お客様にご案内を差し上げる」「お客様の相談にのる(カウンセリング)」活動と定義している。ベテラン社員の経験によって蓄積された属人的なノウハウに、業界の多くの企業が依存する中、クレディセゾンは、業務の標準化とマニュアル化を行い、パートタイマーが業務を担っている(当該業務における正社員比率は10%程度)。

2007年、クレディセゾンは、審査、カード発行、利用管理、利用代金請求、コールセンターなどの業務とシステムインフラを一貫して管理運営する子会社「キュービタス」を、みずほ銀行、ユーシーカード株式会社と共に設立した。同社は他社からの業務受託を積極的に獲得し、規模の経済を享受、効率化している。

人的資源管理
クレディセゾンは、女性が活躍できる組織を目指し、セゾンカウンターの責任者は全員女性、役職者における女性比率は約50%である。成果主義による若手の抜擢など、年齢、学歴、経歴を問わない人事制度を有している。イノベーティブな社員の育成と、Open・Frank・Innovativeな社風を目指しており、同社ではこれを「ヒューマニズムの風土創り」と概念化している。

全般管理
クレディセゾンは、流通業、金融機関、通信サービス業などを中心に、積極的に提携を結び、相手先とクレディセゾンの両方のブランドをつけた様々なクレジットカードを提供しているが、それぞれの収益性は常にモニターされ、社内ハードルレートに至らない事業は積極的に見直しされる。

クレディセゾンは、信用審査、与信リスク管理などの組織能力を活かし、リース・レンタル、信用保証、投資信託などの金融サービスを多角化し、サービスを提供している。

活動間のフィット

クレディセゾンの活動システムは、「サービス先端企業」という経営理念の下、顧客の求める日常的な「便利」「おトク」「安心」商品の実現、カード会員拡大のための地域密着営業、商品力・現場力を支えるローコスト・オペレーション、Open・Frank・Innovativeでヒューマニズムの風土創り、という戦略上コアとなる選択を中心に、これらを実現する活動によって支えられており、これらの活動の間のフィットが良い。たとえば、クレディセゾンでは、3年間使用実績がなかったカードについては、更新カードを郵送しない。そのことによって、コストを低減することができるが、これが可能なのは、年会費が無料だからである。(「活動システム・マップ」を参照ください)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 年会費無料カードを店頭で即与信・即発行する獲得モデルの確立(1982年より。業界初)。
  • キャッシング用無人キャッシュ・ディスペンサー設置開始(1982年より。業界初)。
  • インターナショナル・カード(ビザ、マスターカード)を年会費無料で発行(1988年より。業界初)。
  • 西友食品売場で、サインレス取引を開始(1990年より。業界初)。
  • カード申込書の入力を光学スキャン(OCR)化(1992年より。業界初)。
  • 永久不滅ポイント導入(2002年より。業界初)。
  • 永久不滅ポイントがお得に貯まる(最大20倍)オンライン・ショッピング・モール「永久不滅.com」の運営開始(2006年より。業界初)。
  • アメリカン・エキスプレス・カードと、そのブランド・シンボルである古代ローマの百人隊長「センチュリオン」のデザインが入った提携カードを発行。アメリカン・エキスプレス社として世界で初めて、このデザインの使用を提携カードに認めた(2010年より。業界初)。

戦略の一貫性

クレディセゾンの事業の歴史は1982年、西武百貨店のハウスカード、「西武カード」の発行に始まる。その後、小売業を中心に提携先を拡大し、ハウスカードから独立系カードへと変わったが、1)提携先の顧客サービスと売上拡大に貢献する、2)クレジットカードを日常サービスと位置づけ、革新的なサービスで入会と利用の利便性を飛躍的に改善する、という戦略の軸は変わっていない。年会費無料カードを店頭で即与信・即発行するスキームは創業からであり、当時業界初であった。業界初のサービスの開発はその後も続いている。また、アメリカン・エキスプレスとの提携カードでは年会費を導入したが、提供するサービス対比でリーズナブルな年会費設定とするなど、年会費よりもカード使用、利便性重視の戦略はハイエンドにおいても変わらない。

トレードオフ

  • クレジットカードをステータス・シンボルと位置づけない。
  • アクワイヤラー(加盟店契約会社)事業に参入しない。この事業領域では、銀行子会社が支配的である。イシュアー(カード会員)事業に特化する。
  • 一般的なメディア広告は最小限にする。小売店での広告(告知活動)を重視。
  • 利用代金回収・督促を経験豊富なスタッフの暗黙知的なノウハウに依存しない。

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに5年間の平均で業界平均を上回っている。

投下資本利益率(ROIC)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
1.9%P 1.7%P 1.7%P 2.0%P 0.9%P 0.3%P
Inter quartile range (IQR) = 1.2%P
投下資本利益率=営業利益/平均投下資本

営業利益率(ROS)   (単位:%P=パーセンテージ・ポイント)
5年間平均 単年度 業界平均との差異
業界平均との差異 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年
7.5%P 3.1%P 6.4%P 5.4%P 0.1%P -6.2%P
IQR = 22.8%P%P
営業利益率=営業利益/売上高

活動システム・マップ

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