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受賞企業・事業部レポート

株式会社ユナイテッドアローズ

2013年度 第13回ポーター賞受賞 衣料品小売業

セレクトショップの企業化に成功。仕入品と自社企画商品がいずれも高い品質で編集される。

UA0.jpg ユナイテッドアローズは、売上高1000億円、220店舗を持つ、日本最大の「セレクトショップ」である。セレクトショップは、ここでは、自主企画品と仕入れ品の両方を扱うアパレル小売業者を意味する。海外の有名なセレクトショップには、フランスのColetteやアメリカのOpening Ceremonyなどがあるが、いずれも、多くても数店舗の規模にとどまっており、数百店舗の規模に事業を拡大するのは難しいとされてきた。セレクトショップの事業の動機であり、成功要因でもあるマーチャンダイジングが、多くの場合、オーナー個人に依存しているからだ。
 

ユニークな価値提供

 ユナイテッドアローズのターゲット顧客は、ファッション感度の高い消費者で、価格や基本的な機能で洋服を選ぶ人たちではない。ユナイテッドアローズではこのセグメントを、「トレンドマーケット」、あるいは、「半歩先を行く」と表現している。
 ユナイテッドアローズには、17のブランドがあり、それぞれが異なる価格帯にポジショニングしている。主力ブランドのうち、最も高い価格帯に位置するのが、シルバーアクセサリーと革製品をメインに取り扱うブランド「クロムハーツ」であり、次の価格帯に「ユナイテッドアローズ」と「ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ」がある。中価格帯は「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」で、「ユナイテッドアローズ」ブランドの30%ほど安い価格設定がされている。
 ブランド・ビジネスである「クロムハーツ」以外の主力ブランドは、メンズとレディス、フォーマルからカジュアルまで、アクセサリーや雑貨まで幅広く扱っている。ファッションのテイストにおいても、クラシック、モード、エレガント、ナチュラル、ベーシックまで、幅広い。
 多くのファッション・ブランドは、性別や年齢、ファッション・テイストでセグメンテーションすることが多いので、上に述べたユナイテッドアローズのセグメンテーションは、ユニークである。ユナイテッドアローズのブランドは、中価格帯から中高価格帯にかけて展開している。それぞれのブランドのセグメンテーションは、テイストに加えて価格帯でも行われており、個々のブランドは幅広い製品ラインを提供することで、多様な顧客ニーズに応えている。
 顧客にユナイテッドアローズが提供する価値は、買い物の楽しさ、生活の快適さ、精神的な豊かさであり、同社は、お客様に満足を提供する三要素として「ヒト(接客サービス)」「モノ(商品)」「ウツワ(店舗環境)」を重視している。顧客は、ユナイテッドアローズの「半歩先」の品揃えと接客を求めて、ユナイテッドアローズの店舗を訪れる。接客サービスについては、社是に「店はお客様のためにある」と掲げられている通り、高度に洗練された接客サービスを提供する。店舗環境については、真の心地よさを追求した施設・空間・環境を提供することを目指し、十分な出店改装費を投下する。
 同社は、経営理念として「世界に通用する新しい日本の生活文化の規範となる価値観の創造」を掲げており、幅広い製品ラインと半歩先を行くライフスタイルの提案は、この経営理念に導かれている。
 

独自のバリューチェーン

 ユナイテッドアローズのバリューチェーンは、商品の仕入れ(調達品)・生産(自社企画品)から店舗への投入、消化までのバリューチェーン全体の可視化と、業務標準化に特徴がある。特に、マーチャンダイジングと店頭での接客に特徴がある(多テイスト、多アイテムの多様な品揃えゆえに、より高度な接客が必要となる)。
マーチャンダイジング:ユナイテッドアローズでは、商品開発理念として、「トラッドマインド」=「歴史と伝統をレスペクトする。そこに革新性を加えることで、新たな伝統を作っていく」を定めている。この理念の下、基本商品政策が設定され、商品開発の基本方針、品揃え理念、商品サイクル等が整理されている。シーズン毎には、全てのブランドを包括する方向性「ディレクション」を設定する。個々のブランド・ディレクターは、このディレクションに沿ってブランド・ディレクションを設定するので、各ブランドの根底に同一のテーマが存在することとなり、お客様への提案に一貫性が保持される。
 ユナイテッドアローズは、自主企画品の質を確保するため、デザイン機能を自ら持ち、デザイン・素材の開発やパターン作成を行っている。バイヤーの買い付けにデザイナーが同行するなどして情報共有する他、「企画資料室」には各種素材やデザイン資料があり、「アトリエ」ではサンプルを作成することができる。
 ユナイテッドアローズは、自主企画品と仕入れ品がそれぞれのブランド特性に応じて適当な割合になるように管理している。独自に開発した「MDプラットフォーム」という商品管理支援システムによって、1年52週のマーチャンダイジングと在庫を計画・管理を支援している。具体的には、全事業で統一された進捗管理表と指標を提供することで、売れ筋商品の追加生産、スローセラー商品の消化促進対策などのための判断を支援する。
 これらのマーチャンダイジングは、マーケットインを可能にする本部と現場の頻繁なコミュニケーションによって、頻繁に調整され、市場の変化に対応している。各店舗からは、高精度な週報と分析、週次・月次・シーズン毎の会議、事業本部スタッフによる定期的な店舗巡回、本部と店舗の電話会議などによって、店のセールススタッフ、デザイナー、バイヤー、マーチャンダイザーの間のコミュニケーションが図られている。
製造:ユナイテッドアローズは、製造プロセスを外注しているが、生産管理者は社内においている。独自に「生産プラットフォーム」という商品管理支援システムを開発し、工場の選択、材料の調達計画、製造費用の管理などに役立てている。このプラットフォームによって、事業ごとに持っていた原料や素材の調達先、生産工場の情報を全社で集約、最適化することが可能になった。
物流:ユナイテッドアローズは、衣料品専門の物流業者との協業により、物流・商品管理を行っている。自社専用、24時間稼働の物流センターが国内4か所にあり、タグ付、検品、在庫管理を行っている。店舗の在庫は必要最小限で、23時までに売り上げ計上した商品は、翌日の開店時間までに補充される(一部地域除く)。
店舗オペレーション・接客:ユナイテッドアローズは、基本販売政策を定めており、接客サービスの基本、お客様との信頼関係のサイクル、CRM(customer relationship management)、売り場作り、店舗の運営管理項目とプロセスなどが定義されている。
チャネル開発:ユナイテッドアローズは、成長の余地のある流通チャネルを見極め、いち早く出店をする。たとえば、駅ビルの「ルミネ」やファッション通販サイト「ゾゾタウン」が実績、知名度とも高くなかった時期に、大手セレクトショップとして初めて本格出店している。
 また、チャネル間のサービスの統合を積極的に進めており、自社運営のオンラインストアでは、実店舗の在庫情報の確認ができる。この在庫情報は1.5時間毎に更新され、実店舗でもオンラインでも顧客の都合に合わせてどちらでも利用できるようにすることで、機会損失を防いでいる。また、実店舗で購入を検討したものの、意思決定に至らなかった場合には、品番メモを渡すことで、オンラインでの購入を容易にしている。オンライン売上比率は11.2%(2013年3月期)と、他社と比較して多い。
マーケティング:テレビCM、交通広告、雑誌広告、ブログ、ツイッターなどによる宣伝は、他のセレクトショップと比較して、積極的に行われており、各種の賞を受賞している。
人的資源管理:ユナイテッドアローズは人材開発理念として、「創造的商人」を掲げている。「創造的商人」とは、「CSマインド、商売マインド、クリエイティビティマインドを併せ持ち、何かひとつの分野での専門性を持ちつつ幅広い分野に精通している人」を指す。
 販売員への認証制度として、ユナイテッドアローズは、セールスマスターを設け、販売員の動機づけと育成のマイルストーンとしている。約3000人の販売員の中から厳しい選抜を経た数名のみが認証される。また、各ブランドから1名ずつの選抜によるロールプレイング方式の販売コンテスト、束矢グランプリを開催し、販売技術の育成普及と共に、各ブランドおよび会社への一体感を醸成している。
 企業内教育機関である束矢(たばや)大学では、「ヒト、モノ、ウツワ」を切り口とした研修を提供する。例えば接客(人)であれば、関連技術として、メジャーリング、品質表示、購買心理等が学べる。束矢大学で得た販売技術に関する知識は、店舗でのロールプレイング形式の実践的訓練で補完される。
 個人の評価は、売上高、客数、買い上げ率など、部署や役割に応じた目標指標を設定し、きめ細かい進捗管理を行っている。お客様からのお礼の手紙など、質的な情報も評価の対象となる。
 2007年、ユナイテッドアローズは、希望する全てのパートタイム社員をフルタイムに昇格させた。また、「店はお客様のためにある」という経営理念の浸透を図るため、販売スタッフの教育訓練への投資を強化した。
全般管理:ユナイテッドアローズは、個々のブランドを、ビジネスユニットとして収益管理している。2007年から2009年の間に、10のブランドを廃止した実績がある。
 ユナイテッドアローズでは、経営理念の浸透のために、「理念ブック」という経営理念の解説書を全従業員に配布、束矢大学や部署単位の研修で、「ユナイテッドアローズという会社は何のために存在するのか」「自分は何のために働くのか」等のディスカッションを何度も行っている。
 

活動間のフィット

 ユナイテッドアローズの活動システムは、「店はお客様のためにある」という社是を実現するために、ヒト・モノ・ウツワを磨き上げることを中心に、組まれている。(本セクションの最後に掲載した「株式会社ユナイテッドアローズ の活動システム・マップ」を参照ください。)
 

戦略を可能にしたイノベーション

  • 製品開発、マーチャンダイジング、調達、在庫管理の経営品質を改善する「MDプラットフォーム」と「生産プラットフォーム」という商品管理システム。
  • 駅ビル(ルミネ)、オンライン・ファッション・モール(ゾゾタウン)など、新しい流通チャネルに取り組む(セレクトショップとして最も早く対応)
  • オンラインショップと実店舗のシームレスな統合。顧客は、オンラインショップで実店舗での在庫状況を検索したり、実店舗で購買の決心がつかなかった顧客が品番メモをもらい、オンラインショップで注文することもできる。

トレードオフ

  • ファッションより価格や他の機能の方が重視されるセグメントに参入しない。
  • 人材育成のスピードより速いペースで店を出さない。市場の潜在的規模以上に店を出さない。
  • 在庫を処分するために店を開かない。在庫はアウトレット店で販売する。
  • ブランド毎に適当と判断した水準を超えて、自主企画商品を増やさない。
  • 店舗運営と接客を、パートタイム社員に任せない。店頭にいる社員には、理念教育とスキル教育をする。
  • フランチャイズ制によって店を増やさない。顧客との直接のコミュニケーションが減るので。
  • 自ら決めた基準以上の賃貸料が必要な場所に出店しない。人件費と内装費への投資を確保する必要があるので。
  • 商品開発理念「トラッドマインド」=「歴史と伝統をレスペクトする。そこに革新性を加えることで、新たな伝統を作っていく」に合わない商品を売らない。
  • 工場を持たない
  • 物流施設を持たない

戦略の一貫性

 ユナイテッドアローズは、1989年の創業以来、高感度・高品質をキーワードにしており、これに該当しない市場セグメントでの事業を行ってこなかった。ターゲット顧客も、一貫して、「ファッションに強い関心があり、ファッションによって生活を豊かにしたいと考える人々」である。また、「ヒト・モノ・ウツワ」を三要素として重視する姿勢や、「トラッドマインド」の商品開発理念も変わっていない。
 

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに、業界平均を一貫して大幅に上回り、投下資本に対して効率的に利益を生み出していることを示している。
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活動システム・マップ

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