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受賞企業・事業部レポート

株式会社伊藤園

2013年度 第13回ポーター賞受賞 茶葉・飲料製造販売業

緑茶を中心とした清涼飲料に特化し、無糖飲料市場を創造。緑茶飲料の幅広い製品ラインアップ、ルートセールス、茶産地育成事業を特徴とするユニークなバリューチェーンが支える。

業界背景

 itoen.jpg日本の飲料業界は、消費者の健康志向の高まりに加えて、夏場の天候などの状況により、飲料市場全体での販売数量は増加傾向にある。しかし、長引く不況と消費者の節約志向、市場の低価格化により、業界を取り巻く環境は一段と厳しい状況にある。2008年に起きた金融危機に始まった景気後退の影響、清涼飲料間における競争の激化などから、日本国内の緑茶飲料市場は2005年のピークからその後縮小したが市場規模は戻り始め、2012年は3,830億円(2013年4月期。伊藤園、「決算説明会資料」)。



株式会社伊藤園は、緑茶、紅茶、中国茶、コーヒー、野菜・果実飲料など、自然素材を中心とした清涼飲料に特化し、アルコール飲料は扱わない。国内201拠点、社員5,307名のうち約4,000名によるルートセールスが、幅広い製品ラインアップから売り場毎に最適な品揃えの提案をすると共に、市場ニーズを把握。緑茶については、茶葉のブレンド技術、製造技術と優れた研究開発機能がそれに応え、全国の契約工場がそれぞれの強みで製造。国内茶農家の生産性改善を助け、高品質な茶葉を安定的に調達。主力製品である緑茶飲料市場のシェアは37%、上位7社では45%(2013年4月期。伊藤園、「決算説明会資料」)。

 

ユニークな価値提供

伊藤園の提供価値は、自然、健康、安全、おいしい飲料(リーフを含む)である。ターゲット顧客は、これらの価値を求める顧客で、年齢層や性別から見れば幅広い。製品ラインアップは、日本茶(「おーいお茶」「健康ミネラルむぎ茶」など)、中国茶(「ウーロン茶」など)、野菜(「充実野菜」「1日分の野菜」など)、果実(「ビタミンフルーツ」など)、コーヒー(「TULLY'S COFFEE」など)、紅茶(「TEAS' TEA」など)、ミネラルウォーター(「evian」)など、自然素材を中心とした清涼飲料に特化しており、これらだけで同社売り上げの84.4%を占める(2013年4月期実績。他に、機能性飲料(「黒酢ともろみ酢」など)、乳性飲料、スポーツ飲料、炭酸飲料、フード飲料、茶葉(リーフ)など)。アルコール飲料は扱わない。特に、緑茶飲料の品揃えは幅広く、「緑茶」「濃い味」「ほうじ茶」「玄米茶」「ぞっこん」などの「おーいお茶」シリーズ展開に加え、容器は、缶、紙、PET、ホットPET、容量も、2リットル、500ミリリットル、200ミリリットルなど、業界随一の幅広さである。

清涼飲料は、スーパーやコンビニエンスストアでは値引きの対象になり易く、また、従来、定価販売が可能であった自動販売機においても、価格競争が始まっている。伊藤園は、以下のような取り組みによって価格競争の影響を緩和している。第一に、ルートセールスにより、各小売の状況にあった製品をきめ細かく提案する。例えば、公園の小さな売店であれば小型容器を中心に置くなど。第二に、飲料売場から外れた場所に売り場を確保すること。例えば、ホット飲料用の保温ケースをコンビニエンスストアなどに提供し、レジ横などに置いてもらうことによって、飲料売場における横並びの競争を避けている。第三に、ブランド戦略による価格維持。傘下企業のコーヒー・ショップであるタリーズのブランドを冠した缶コーヒーは、他社商品が120円であった時に130円で発売開始し、この価格を維持している。

 

独自のバリューチェーン

伊藤園のバリューチェーンは、調達、製品開発、製造、マーケティング・販売のそれぞれにおいてユニークであり、整合性が高い。ここでは、同社の売上の約半分を占める緑茶飲料を中心にバリューチェーンを分析する。

調達:日本茶飲料は伊藤園の売上の46.3%を占め、その主力ブランドである「お〜いお茶」は、国産茶葉100%を宣言しており、結果として伊藤園は国内荒茶(注1)の約4分の1を使用しており、茶葉調達市場において、規模に起因する価格交渉力を有する。一方で、国内の茶園面積は年々減少している(注2)。伊藤園は、2001年より、農業者や行政と協働で「茶産地育成事業」を開始し、機械化、IT化などのノウハウを提供することで、新規・既存農家による生産性改善を支援し、また、全量買い上げ契約を結んでいる。当事業が支援する作付面積は2012年度において863ヘクタール(既存農家との契約栽培542ヘクタール、新産地事業321ヘクタール)、伊藤園の茶葉調達量の13.2%を占めるまでになった。農家は生産性が改善し、伊藤園は、高品質な茶葉を安定的に調達できるメリットを享受している。

製造:伊藤園は、調達した荒茶を、それぞれの製品向けに火入れ、ブレンドし、抽出可能な状態まで準備する段階までを、主に静岡相良工場で行う。これに続く工程である、茶の抽出およびボトリングは、製造メーカー(パッカーと呼ぶ)に委託する。こうすることによって、伊藤園は設備投資をすることなく、需要に即した生産量の調整、それぞれのパッカーの強みに基づいた最適な生産ラインの利用、パッカー間の競争による技術革新の成果を享受している。

研究開発:伊藤園の幅広い製品ラインアップは、基礎研究に加え、特許・ノウハウに裏付けされたブレンド技術、製造技術などの、茶葉・飲料に対する研究開発活動が支えている。また、伊藤園は、世界で初めて缶入りウーロン茶と缶入り緑茶を発売した。これらのイノベーションの背後には、お茶を酸化させないで缶に充填するなどの、製造技術における革新があった。緑茶にかかる特許戦略にも特色がある。

さらに、パッカーの技術革新を積極的に取り入れている。例えば、業界に先駆けて加熱可能なホットPETボトルの導入、緑茶用PETボトルとして業界最薄級の軽量化を可能にし、かつ、殺菌用薬剤を使用しない環境負荷の低い新充填システム(NSシステム)の開発など。

伊藤園の研究開発は、茶殻のリサイクルにも向かっている。伊藤園の茶飲料の製造工程からは、年間約49,000トンの茶殻が発生するが、これは、名古屋市の一か月のごみ処理量に相当する。ほとんどは、農家の飼料や堆肥として使用されるが、都市部のパッカーからの輸送費や乾燥費は合理的でない。そこで伊藤園は2001年より「茶殻リサイクルシステム」を開発。紙、ボード、樹脂、建材などへ、茶殻を乾燥させる工程を経ることなく、リサイクルしている。特に、レンゴーと共同開発した茶殻入り段ボール箱は、「お?いお茶」500ミリリットル24本を入れる段ボールの年間使用量、約2,500万ケースにのぼる。

マーケティング・販売・物流:伊藤園は、競合と比較して、広告宣伝費が少なく、営業人員への投資が厚い。全て正社員からなる約4,000名のルートセールスでは、全国201の拠点から、商品の説明、商談、配送を行う。ルートセールスでは、自動販売機や売り場のロケーション(オフィス、路面、売店、公園、観光地、工場、工事現場、託児所、学校、老人ホーム、病院、空・海・陸の交通など)、ターゲット(性別、年齢など)などに応じて、商品構成を社員自ら考えて提案する。また、常に流通や顧客と接しながら、新しい需要傾向の把握に努めている。ルートセールスで集めた市場情報は、社内提案システム「Voice制度」で新商品提案につながっている。

人的資源管理:伊藤園では、全社員でマーケティングを行うという理念に基づき、人材を育成。お茶についての高い知識と技術を有する人を認証する「ティーテイスター制度」を独自に設け、2013年5月時点において社員約5,300名のうち1,460名が資格を取得している(1級4名、準1級7名、2級210名、3級1,239名)

 

活動間のフィット

伊藤園の活動は、高い茶葉調達力が高品質と安定調達に貢献し、高い技術開発力と製造工程のパッカーへのアウトソーシングと相まって、幅広い製品ラインアップを支えている。幅広い製品ラインアップは、正社員によるルートセールスによって、小売りの個々の現場に即した形で品揃えされて顧客ニーズに対応すると共に価格競争を緩和し、また、新商品開発へのアイデア創造につながっている。(本セクション最後に掲載した「伊藤園の活動システム・マップ」を参照ください。)

 

戦略を可能にしたイノベーション

  • 世界初の缶入りウーロン茶飲料発売(1981年)
  • 世界初の缶入り緑茶飲料発売(1985年)
  • 業界に先駆けてPETボトル入りホット飲料発売(2000年)

 

トレードオフ

  • ボトリング工程を内製化しない。
  • 動物実験を行わない。
  • アルコール飲料を商品として持たない。
  • ルートセールスを外注しない。
  • 緑茶飲料に香料、調味料を加えない。

 

 

戦略の一貫性

伊藤園の戦略は、技術差別化による新市場創造を軸として一貫している。伊藤園の創業は、茶葉の卸売であったが、量り売りが中心であった茶葉市場に対し、簡便性と保存性に優れるパック入りの茶葉という商品を開発し、それまで茶葉を取り扱っていなかったスーパーマーケットに市場を創造した。飲料事業においても、1981年に世界初の缶入りウーロン茶を発売することで飲料市場へ本格参入を果たし、1985年には酸化の解決策である脱酸素技術を開発し、世界初の缶入り緑茶飲料「缶入り煎茶」を発売開始した。これにより、茶飲料による「無糖飲料」市場を創造した。1990年には、世界初のPETボトル入り緑茶飲料を発売。2000年にはホット用PETボトル製品を発売。これらのイノベーションを販売面、マーケティング面から支えるルートセールスは、支店第一号を横浜市に開設した1968年から。

伊藤園の製品ラインアップは、緑茶飲料から、紅茶、コーヒー飲料、野菜・果物飲料、ミネラルウォーターへと拡大しているが、自然、健康、安全、おいしいという価値提供は一貫している。また、品揃えの拡大は、ルートセールスやパッカーへのアウトソーシングとも整合性が高い。



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注1:荒茶とは、生葉を蒸してもみ乾したままの茶(三省堂『大辞林』)。

注2:農林水産省、「平成24年度食料・農業・農村白書」。

 

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに業界平均を大きく上回っている。



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活動システム・マップ

itoen2.jpgのサムネイル画像

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第17回 ポーター賞 応募期間

2017年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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