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受賞企業・事業部レポート

株式会社カチタス

2017年度 第17回ポーター賞受賞 中古住宅再生事業

地方の中古住宅を再生して販売。賃貸アパートの家賃と同程度の住宅ローンで戸建住宅が手に入る価格で販売。新築住宅の供給が少ない人口減少地域に良質な住宅を供給することで成長している。

img_2017_01_p.jpg「平成25年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)によれば、空き家は全国に820万戸あり、住宅約6000万戸の13.5%、住宅の7戸に一戸が空き家となっている 。空き家は昭和38年の調査から一貫して増え続けており、直前の調査である平成20年調査から空き家は63万戸増加し、増加分のうち一戸建てが50万戸と、増加分の79%を占めた。空き家が増え続けているのは、空き家の取り壊しや再生が進んでこなかった結果である。空き家の増加は、雑草の繁殖などによる景観の悪化のみならず、治安の悪化にも結び付くことが懸念されており、社会問題として認識されている。
カチタスは、リフォーム産業新聞による中古住宅買取再販ランキング で年間販売戸数が調査開始以来4年連続首位(2013年度から2016年度)。

ユニークな価値提供

カチタスは、人口5万から30万人規模の地方都市を中心に、一戸建ての中古住宅を買取り、再生、販売している。カチタスのリフォーム済み中古住宅の売価は大体1000万円から1500万円(2016年度の販売実績において、93%が戸建住宅。販売価格が1000万円から1500万円の物件が55%を占めた。平均売価は1300万円)。主な顧客は、賃貸住宅に住む世帯年収500万円以下の層で、多くは初めて持ち家を所有する一次取得者で、子育て世代が多い。(カチタスの顧客の76%が世帯年収500万円以下で、販売地域は東京大阪名古屋の三大都市圏以外が販売の87%を占める。)

カチタスのリフォーム済み中古住宅事業は、従来からあった、新築住宅、中古住宅、賃貸住宅に加えて、第4の選択肢を創造した。カチタスの価値提供の第一は、人々が、手ごろな価格で優良な戸建住宅を所有することを可能にしていることだ。カチタスの販売するリフォーム済み中古住宅は、住宅ローンの支払いが月5万円以下で購入できる物件が大半で、多くの場合、賃貸住宅の家賃より低い住宅ローン支払いによって持ち家を手に入れることができる。賃貸住宅に住んでいて新築物件は高すぎると考える顧客に、追加の経済的負担少なく持ち家を手に入れることを可能にしている。カチタスのリフォーム済み中古住宅は、同程度の戸建が新築の場合の約半分程度の価格だ。

価値提供の第二は、信頼できる中古物件の提供だ。中古物件には古いものも多く、シロアリ被害があったり、隣接する宅地との境界線が曖昧であったり、敷地の地価を隣家の水道管が通っているなど、様々な問題があることが多く、多くの人が中古物件ではなく新築物件を選ぶ理由の一つとなっている。カチタスが仕入れる物件の平均築年数は30年を超えており、経年劣化を含めて何らかの問題を抱えていることが多いが、カチタスは、これらの問題を一つひとつ解決し、売主として2年間の瑕疵担保責任を負って販売する。具体的には、カチタスのリフォームは、キッチン、バス、トイレなど水回りの交換、屋根・外壁などの修繕、外構の再生、防蟻工事などを施し、安心で清潔にするだけでなく、間取りの変更や、郊外の生活に欠かせない駐車場の拡張など、快適な生活のためのリフォームも行う。また、隣地との境界を確定したり、地下配管の越境を解消するなど、権利関係もクリーンにする。

価値提供の第三は、売り手に対するものだ。カチタスが買取に同意し、売り手が提示価格に同意した場合、不動産仲介業者経由で個人に家を売却する場合と比較して、簡単、かつ迅速なプロセスで売却が可能だ。まず、査定立ち合いの日程がうまく合えば、査定依頼から価格提示まで最短3日で行うことが可能である。売り手が提示価格を受け入れた場合、登記書類などがそろった後で最短3週間で代金が振り込まれる。カチタスは価格提示に先立って査定をしているので、後から減額などの交渉が行われることはない。対照的に、不動産仲介業者を通じて売約する場合には、関心のある買い手候補が現れる度に売り手が内覧に立ち会いを求められることが多い。また、売却後も続く、雨漏りや給排水管の故障などの不具合に関する売り主としての責任からも解放される。

価値提供の第四は、工務店に対するものだ。カチタスは、リフォームの施工は自ら行わず、全国約750社の中小施工業者をパートナー工務店として活かしている。これらの工務店には、キャパシティに応じて一定頻度で仕事を発注するため事業の安定が保証される。必ずしも経済活動が活発ではない中小規模の地方都市に所在する工務店にとって、価値のあるパートナーシップだ。また、大きなリフォーム設備や部材はカチタスが支給するので、工務店は大きな財務負担なく事業を行うことができる。さらに、工務店の技術の維持向上や動機づけにも貢献している。カチタスのリフォームは、使用する資材や設備がある程度カチタスから支給されたり、仕上がりなどにおいて標準が定められているが、それでも、中古物件のリフォームは常に一軒一軒異なり、工務店にとっては、創造性の高い仕事である。

価値提供の第五は、地域社会に対するものだ。カチタスが空家となった中古住宅を再生販売することで、景観の悪化などの空家問題の解消に直接的に貢献する。

カチタスが注力する人口5万から30万人規模の地方都市の多くは、多くの不動産事業者にとっては、注力すべき対象ではなかった。取引単価が低く手数料が少ないので、不動産仲介業者による中古住宅の扱いは少ない。市場が小さいので新築物件の供給も少ない。カチタスは、リフォーム済み中古住宅という価値提供によって、人口5万から30万人規模の地方都市に市場を見出した。

独自のバリューチェーン

カチタスのバリューチェーンの最大の特徴は、買取、施工管理、販売にある。買取時の査定と値付けが適切でないと、リフォームに多大な手間と費用が掛かって、収益性を圧迫する。施工管理が効率的にできないと、リフォーム費用の管理と顧客満足を同時に実現することができない。販売活動が優れていないと、リフォーム済み中古住宅という個別性の高い商品を、ある一定の期間でかつ、適切な価格で販売することができない。

買取
カチタスの物件買取のチャネルは2つある。一つは、全国の地方都市に配置した100以上の店舗への売却希望者からの直接の買取依頼。二つ目は、疑似フランチャイズ的な関係性を構築した、小規模から中規模な不動産仲介業者である「コア仲介」を介した買取依頼である。2016年度には、不動産仲介業者を介さない直接買取の割合が3割以上であった。東京、大阪、名古屋の三大都市圏以外の地域で積極的にテレビコマーシャルを流すことによって「家を売るならカチタス」というブランド・イメージを構築し、売却希望者がカチタスに直接、物件の査定依頼するよう促している。(「家を売る先として思い当たる会社は?」という質問への純粋想起において、三井のリハウスなど大手仲介会社を超え、一位を獲得。2017年5月、サーチライト社調べ)。
買取時の物件調査は、適切な価格設定と共に、想定外のリフォーム費用の発生を防ぐためにも重要である。査定時の想定以上の建物の劣化や蟻害、建物の構造上リフォームが難しいなどのことが後からわかると、リフォーム予算の超過や工期延長につながる。カチタスでは、不動産評価を行うカチタスの社員に加えて、リフォームの費用と建物の構造の柔軟性を判断する工務店、蟻害を確認する防蟻業者の3者が必ず立会うこととしていており、3者立会い導入前と比較してリフォーム予算超過と工期延長が大幅に減少した。
地方の中小都市は不動産市場の流動性が低いため、市場を参照して価格をつけることが難しい。しかし、カチタスは、地方の中小都市に特化し、市場の理解を深めてきた。100以上ある店舗の店長は過半が現地採用で現地の情報に精通している。さらに、3から8店舗を管轄するエリアマネジャー(課長)が、少し広域での市場動向を把握し、ダブルチェックの体制を整えている。異動もあるが、その際には、店長か課長のいずれかが地場の情報に精通しているようにしている。適切な価格設定が行われている結果、高い収益性を維持している。

リフォーム企画
地域ごとの事情に適した販売価格を先に設定し、そこからリフォーム費用の限度額を算出し、それに見合うリフォーム企画を立てる。
「安心、清潔、快適」を実現できる範囲でリフォームを企画し、高価な装備で付加価値をつけるようなことはしない。

リフォーム施工
全国約750社のパートナー工務店にリフォームを委託する。様々な工務店が作業を行う中で、リフォーム費用と品質水準を揃えるため、壁、床、屋根などの部位ごとのリフォームの水準、仕様までを具体的に網羅する「標準仕様書」を、パートナー工務店に開示。個別物件ごとのリフォーム依頼については、独自のフォーマットである「再生要綱」を必ず使用し、工務店がこれに署名、押印してから工事を始める手続きとしている。
リフォームに用いる設備類については、キッチンやバスなどの大型設備を中心に、カチタスが設備メーカーや設備問屋から仕入れ、工務店に支給する。カチタスが一括して購入することでボリューム・ディスカウントを享受することができるうえ、工務店には資金負担がなく、リフォームコストの低減に貢献している。
これらの仕組の結果、リフォームに要する期間は平均1.5か月に抑えられている。

リフォーム済み中古住宅の販売
カチタスは、過去に購買意思の表示のあった顧客に営業をすると同時に、ホームページおよび住宅ポータルサイトでの物件告知を積極的に行っている。特に、ホームページでは、個々の物件のリフォーム進捗状況について詳細に掲載することで、迅速な物件の売却を可能にしている。インターネットへの掲載は、工事への姿勢やリフォーム前後の変化がわかるよう、工事中の様子や床下なども積極的に開示する。閲覧者に対して物件を内覧したかのような情報量を提供するため、設備などについて詳細な説明を加え、リフォームの進捗を反映して定期的に更新される。これらの告知作業は、約100ページにおよぶ「ネット掲載ガイドライン」に従って行われている。店舗の営業担当者が物件写真を撮り、コメントを入力、本部の専任担当者が定期的に掲載品質の確認を行い、店舗に修正指示をフィードバックする。2016年度は、全販売物件の約3割について、リフォーム完成前に販売契約が行われた。買取販売を手掛ける企業の多くは、リフォームの完成後に広告をする。カチタスも以前は同様であったが、販売のための新聞折込広告を抑制してネット広告中心に移行した結果、販売のための広告宣伝費は大幅に縮小した。

マーケティング
店舗の営業担当者が不動産仲介業者や物件の近隣住民にヒアリングを行い、顧客ニーズの把握に努めている。

全般管理
販売契約の締結時、販売価格、回転日数、利益などの内容が記された定型のメールがトップマネジメントに送られる。全案件につき、トップマネジメントが「どんなお客様が買われたのか」「なぜ販売が長期化したのか」などについて担当者に直接質問、回答を得ることで、現場における機会とリスクの把握に努めている。
週1回1時間、全店舗をPCで繋ぎ、「全社朝会」を行い、情報共有を徹底している。社内ルールの変更や注意事項の周知、好事例や失敗事例の共有、優秀店舗の表彰など。全社朝会の後は必ず全員提出のアンケートを実施して理解度を確認し、要望や質問などを受け付ける。アンケートの全回答はトップマネジメントが確認、直接回答する。

人的資源管理
一つの物件につき、仕入、リフォーム、販売を、同じ営業担当者が一気通貫で担当する。そうすることによって、個々の活動の専門性は犠牲になる危険性はあるが、中古物件という個別性の高い商品についての情報が担当者が変わることにより失われるという問題を回避することができ、業務品質の安定につながる。また、買取った同じ担当者がリフォームから販売まで担当するので、リフォームや販売に苦労するような物件の買取には慎重になる。
「会社の利益と個人の利益が合致すること」「個人プレーに走らない組織的な営業行為が推進されること」を実現するために、報酬制度が設計されている。

活動間のフィット

カチタスには、4つのコアとなる戦略上の選択がある。「地方・築古・戸建中心」という製品範囲における選択、「低価格での販売」という価格における選択、「安心・清潔・快適を満たす最低限のリフォーム」という再生に関する選択、最後に、この事業の健全性を測るKPIとしての「在庫回転率向上」。地方に点在する築古の戸建を魅力的な商品にするためには、安心清潔快適な住まいに再生し低価格で販売する必要がある。カチタスは、地方では比較的安価なテレビコマーシャルを利用して売り先買い先としての顧客認知を高め、また、中小規模の市町村で営業する不動産仲介業者をパートナーとして物件情報を集め、ネットで販売物件の情報を提供することで、比較的低コストで拡散した物件を調達し、販売することができている。また、地方で活動する工務店とパートナーシップを組み、標準仕様書や再生要綱を使用して作業を発注することで、また、設備や部材を集中購買し工務店に支給することで、ある品質を維持しながら低コストでのリフォーム施工を実現している。最後に、買取から販売までの一連の価値連鎖が効率的に行われ、在庫回転率が改善するよう、買取から販売まで同じ社員がそれぞれの物件を担当する仕組みや、長期在庫をなくすインセンティブが提供されている。(本セクション最後に掲載した「株式会社カチタスの活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 地方に住む、住宅を初めて購入する人々に、新築でも中古住宅でも賃貸でもない、リフォーム済み中古住宅という第4の選択肢を創造した。
  • 個別性が高く手間のかかる中古住宅のリフォームについて、コストと品質のコントロールが可能な仕組を創造した。

トレードオフ

  • 東京23区や大阪市内など、都心部での事業展開をしない。人口も多く流通する中古住宅も多いが、競合が多く、また、土地代が高いためリフォームによる付加価値の向上が販売価格に反映されにくい、顧客の要望水準が高いため接客、リフォームともにコストアップする。
  • ハイエンドはやらない。ハイエンドは、顧客層が異なるため、ニーズも異なる。例えば、リフォームに使用する設備や部材は、ボリューム・ディスカウントで調達しているものでは顧客満足が得られない。
  • 同じ買取再販事業でも、中古マンションをメインに据えない。マンションは戸建と比べてリフォームできる範囲が狭いので、付加価値がつけにくい。それゆえ参入障壁が低く、競争が激しい。流動性があるため、市場が形成されていて、販売価格も高く設定しにくい。
  • 買取を伴わないリフォームのみの請負はしない。
  • 出店を中心とした事業拡大は行わない。事業拡大は、原則として、人員増による取り扱い物件数の拡大を中心とする。店舗の増設は固定費増加になるので、慎重に行う。
  • カスタマイズしたリフォームはやらない。工期の長期化、キャンセルのリスク増大、顧客の期待との齟齬が顧客の不満に結びつくリスクが増大するなどの理由から。
  • 過剰なリフォームはやらない。リフォームは、「安心、清潔、快適」をモットーとし、「高いデザイン性」や「高い独自性」、「全て新品交換で新築同様」などは追求しない。

戦略の一貫性

カチタスの戦略のコアは、地方の、1000万円から1500万円の、戸建住宅の買取再生販売に特化していることにある。

カチタスの前身である株式会社やすらぎは、1998年の民事執行法の改正により競売物件の取得が簡易化されたことをきっかけに、同年、中古戸建物件の買取再生販売事業を開始、競合の少ない地方都市を中心に事業を拡大した。

2012年、日本住宅再生株式会社(アドバンテッジパートナーズが投資助言を行うファンドが間接的にその株式を保有する株式会社)が100%株主となり事業戦略を再検討したが、戦略のコアを維持することを確認。より高価格帯への参入も検討されたが、既存の活動システムとの整合性が低いことから、却下された。

戦略のコアは維持しつつ、外部環境の変化に対応して、調達ルートの変更が行われた。競売から直接買取への切り替えだ。競売物件数は2008年9月に発生したリーマンショックとそれに続く不況によって2009年にピークを迎えたが、不況の影響を緩和するために2009年12月に施行された「中小企業金融円滑化法」によって中小企業が借入金の返済猶予を求めた場合は銀行は対応を求められることとなり、競売物件数が減少し始めた。また、2010年頃から小規模な競合企業が競売仕入による中古住宅の再販事業に参入しはじめ、競売物件の落札価格が上昇した。そこでカチタスは、中古住宅の仕入ルートを、競売から直接買取へとシフト、中古住宅の買取をする企業というブランド認知を高めるため、2013年には社名をカチタスへと変更し、積極的にテレビ広告に投資した。その結果、2012年度は仕入れの9割が競売からであったが、2016年度は直接買取が9割以上となった。

また、販売活動の変革も行われた。以前はリフォーム完了後に新聞折り込みチラシを入れ、販売会の来場者に営業活動を行っていたが、2013年以降は、インターネットの住宅ポータルサイトや自社ホームページへの物件掲載が中心となった。販売棟数は2012年から2016年の4年間で2415棟から3451棟まで、1.4倍に増加したが、同時期にネット経由での販売は6.3倍に増加した。

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに5年間の業界平均を上回っている。特に営業利益率は業界平均を大幅に上回っている。(業界平均との収益性比較は、PwC Japanグループの協力を得ている。)
収益性

株式会社カチタスの活動システム・マップ

活動システム・マップ

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