受賞式・カンファレンス

受賞企業インタビュー

インタビュワー:一橋ICS 教授 楠木 建

株式会社MonotaRO
代表執行役社長 鈴木雅哉 様

株式会社MonotaRO

戦略のポイント

  • 顧客の間接資材購買活動全体の効率化
  • 産業資材以外に手を出さない
    • 直接資材(原材料)は取り扱わない
  • 中小の事業者がターゲット顧客
    • 段階的にターゲット業界を広げる
  • ワンプライス、ワンストップ・ショッピング
    • 1,700万点超の商品
  • 約40万点の商品については、自社物流センターで在庫
    • 平日の午後3時までの注文はその日のうちに出荷
  • データベース・マーケティング
    • 300万超口座の顧客との取引データを分析
    • ニーズのありそうな商品を個別に紹介

なぜ、間接資材に特化するのか

一橋ICS 教授 楠木建
一橋ICS 教授 楠木建
――ここまで2社は、全然事業は違いますが戦略的にいろいろと共通点があるというところに興味深いものがありました。この後の2社は事業立地がお隣同士で、ポーター賞の歴史で初めてのケースですが、売り手と買い手の関係にあるという2社です。MonotaROという社名のローマ字表記ですが、MとRとOが大文字になっていますが、その意味を教えてください。
会社を立ち上げるときに、会社の名前を考えるというミーティングで、われわれが扱う間接資材を表すものとして、maintenance, repair and operationsの頭文字のMとRとOを大文字にしました。
――間接資材とは何ですか。
企業の生産活動において必要な、製品を製造するために必要な原材料、その原材料を加工したりとか組み立てたりするために必要な資材です。
――直接資材はやらないのですか。
はい、扱いません。
――間接資材の、しかもお客さんにとっての購買活動全体を効率化することが、MonotaROさんが本当に売っているものということですが、間接資材購買活動全体が効率化されるということを、お客さんの立場に立って具体的にご説明してください。
株式会社MonotaRO 代表執行役社長 鈴木雅哉 様
株式会社MonotaRO 代表執行役社長
鈴木雅哉 様
間接資材は使用量のばらつき、需要のばらつきが非常に大きな領域で、そのために、BtoBにおいて一番重要なポイントは、買い手が探すという時間が人件費になっていることです。BtoCで買い手が消費者であれば、少しでも安いものを探す時間を、面倒くさいと思うことはあるかも知れませんが、自分の人件費と感じることはありません。例えば、わが家で卵を1カ月に10万個使いますという話になれば、時間をかけてでも養鶏場を回ってどこで、デリバリーも含めて、いくらでどのように届けてくれるかということに対して、時間をかけてでも最適化することが仕事になります。
ところが、間接資材は、それぞれの工場の担当者によって、また、日によって使う商品が全く違い、それを探すことに多くの時間が使われています。これを、インターネットというネットワークを活用しワンストップで提供することにより、探す、発注する、受取る、支払うまでの、その全体プロセスを改善するのが、われわれの事業だと思っています。

ワンストップ、ワンプライス

――面白いですね。間接資材の購買ということについて言えば、お客さんにとっての利便性とか経済的なポジティブのインパクトは大きいということですね。
われわれの創業は2000年ですが、BtoBの資材調達に与えた大きな変化は、一つは、今までは人が訪問して「今日は何が必要ですか」と訪問営業だったところに、インターネットのネットワークを活用することで、お客さまが必要なタイミングで検索、購入できることを実現したことです。
もう一つはワンプライスにしたことです。BtoBでセールスがいる以上は、プライシングは必ず価格交渉可能な領域になりますが、それを価格交渉する時間を無くし、また、めったに使わないものこそ安くすることが、お客さまにとっての価値になります。

1,700万点超の商品、40万点の自社在庫

――ワンストップだけではなくて、ワンプライスにすることに意味があるのですね。しかし、間接資材なので、1,700万点超の商品って、ものすごい数ですよね。
40万の商品は自社の物流センターで在庫しています。日本の流通構造においては、アメリカと違って、卸売業というレイヤー、問屋さんというレイヤーがありますので、その方々がお持ちの商品を、われわれがお客さまに対して提供させていただくことも可能です。
――そうすると、横にいる競争相手みたいな人もMonotaROさんのプラットフォームの利便性の受け手でもあるということですね。
BtoBでは、人のネットワークによって商品を売買する場合は、売る方も買う方も人件費と時間がかかりますから、われわれがワンストップ、ワンプライスで商品を提供することにより、隣にいる人の効率性も上がるということです。
――お客さんの側に立つと、1個1個の資材の値段が安くなるというよりも、人件費が下がるのが大きなファクターですね。
一概に言い切れない面もありますが、コモディティの領域ではプライベートブランドを提供します。消耗品のなかにはお客さまがブランドに対するこだわりがそれほどない領域もありますので。内外の製造業者さんから直接商品を調達しまして、お客さまにダイレクトに販売します。
――プライベートブランドのアイテム数はどれぐらいですか。
今はトータルすれば30万点ほどで、かなり限られていますが、扱っている商品のほとんどはロングテールと呼ばれるもので、お客さまがめったには使われないものです。
――例えば、ある機械工具の消耗品の部品であるとか、そういうものですね。
これは、われわれが実感として理解し、他社と違う点だと思います。それぞれのお客さまがめったに使われないような商品であったとしても、より多くのお客さまがわれわれのプラットフォームを活用していただくようになりますと、同じような仕事をする人がわれわれの顧客ネットワークの中に増え、以前ではとてもじゃないけど扱えなかったようなロングテールの商品が、徐々に増え在庫もできるようになりました。それがコモディティになって、プライベートブランドにできるものもあり、利用者が増えると利用者の利便性が上がるというサイクルができていると感じています。
――そうすると、実際の結果を見ながら、これについてはプライベートブランド化しようとか、これについては必ず在庫を持つとか、何をすべきかが、やっているうちにわかってくるということですね。
そうですね。18年前始めたときは、まだインターネットがBtoBにおいてはほとんど活用されていませんでしたから、まずはファックスを使って、もしくは郵便を使ってダイレクトメール、カタログの送付からのスタートでしたが、だんだんとインターネットを活用するようになって、より多くの商品でお客さまに利便性を与えられるようなネットワークができてきたと思います。

ターゲット顧客

――ターゲット顧客は中小の事業者ということですけれども、イメージで言うと、小規模な工場、建設会社、建設の現場などですね。今、お客さんの口座数は300万超ということですが、そういう小規模な事業所では、MonotaROに発注する担当者のような方がいるのですか。それとも、現場の人がそれぞれ、これが足りないからと自分でMonotaROに発注するのですか。
中小企業においては、ご担当の方が発注することが多いです。もともとは先ほど言った、本当にゼロからスタートしまして、最初の月の売り上げは19万円でした。注文を受けてから、この商品の仕入れ先がないことに気付いて、近所の文房具屋で買って発送したこともあります。
最初にダイレクトメールを送った時に、製造業の中でも鉄工所や機械加工されるような町工場の方々が、われわれが最初に扱おうとした商品に対しての反応が良いことが分かり、同じような商品を使う人を探し始めました。例えば板金であれば、工事業で板金をするところ、自動車整備で板金をするところを探すように、産業が違っても似たような仕事で必要な商品の品ぞろえを広げていくことを繰り返してきました。
――ここが上手いところだなと思います。そうやってお客さんの購買行動や需要が分かった段階で、徐々にターゲット業界を拡げることで、結果として、今、300万以上の口座になっています。徐々に拡げた結果そうなっているということですね。闇雲に拡げて、誰でも来いということはしないのですね。
できないですね。ほとんどのお客さまには、既に調達先がありますから闇雲では上手くいきません。いちいち電話したりとか、見積りを依頼したりとか、そういうことよりもショッピングサーチとして、インターネットというネットワークを通して検索するほうが便利であることが浸透してきて、徐々に増えていくような感じです。今ですと、大体月に5?6万ぐらいお客さまが増えています。
――そうすると、今の世の中の動きでいうと、人手不足はMonotaROの価値がより高まる追い風になるわけですよね。
ローカルでサービスをされているような業者さんで、今までたくさんお客さまがいたところにだんだんと廃業が起きてきています。人件費が上がっていく段階と、さらにその段階を通り越えて人手不足になる状態というのは、人を介したネットワークよりも、インターネットを中心としたネットワークによってサービスできるほうが、将来的にも有利ではないかなと思っています。
――中小のターゲットから始まって、大きな事業所、大企業でも、使うところは増えているのですか。
今、売上の大体13%ぐらいは、大手企業の調達システムと当社のデータベースをつないだ取引で、前年と比べ5割以上増えています。
大手企業には、調達手続きや承認申請の複雑さはありますが、大手と中小の違いは、実はそんなに大きくありません。一つの会社の名のもとに、色々な仕事をする人がたくさんいるという状態が大手企業だと思います。何故われわれが大手企業もカバーできるようになったかというと、中小企業の製造業からスタートして、工事業に行って、自動車整備業に行って、研究所に行って、農業に行って、林業に行ってと、どんどん拡げてきたのですが、そうすると、一つの会社の中でいろんな仕事をされる大企業の方も、MonotaROで大概間に合うと認識されたようになりました。
――なるほど。逆はなかったわけですよね。中小からじわじわ拡げて、結果的に大企業にとっても満足のいく価値が出るようになったということですね。
実は、もともとの事業プランAは、大手企業向けに調達、購買を提供することでした。しかし、1年やってみて、コンセプトはいいけど中身が伴っていないという評価で、どこにプレゼンしに行っても、「まあ、分かりました」みたいな感じになりました。このままでは会社もうまくいかないし、場合によっては潰れるから、インターネットはちょっと置いといて、中小企業向けにチラシでダイレクトマーケティング、通信販売を始めたのが2001年です。

海外展開

――初期はネットではなかったけれど、お客さんにとっては本当にダイレクトにうれしいものだったわけですね。本当の顧客価値があるところにビジネスが広がるということがよく分かります。今後のことを考えると、大企業にさらに拡がると思いますが、海外への拡張も考えられるのですか。こういうビジネスは、世界中どこでもローカルでドメスティックなものだと思いますが、如何ですか。
5年前に韓国で始め、2年前からインドネシア、今年から中国で始めています。また、アメリカのグレンジャーという会社が当社の親会社ですが、そこもわれわれのBtoBのワンプライス、ワンストップ・ショッピングのオンラインの事業を、グレンジャーの営業がやるスタイルとは別に始めています。世界中でBtoBのインターネット通販、MROのインターネット通販というかたちをチャレンジしています。
――同じようなソリューションが、同じようなお客さんの悩みの解決になりそうですか。
一番国によって違うと思うところは、サプライチェーンのデリバリーネットワークですね。日本の配送ネットワークの品質はかなり高いです。韓国はほぼ同等のサービスネットワークがあり、中国は今その部分がすごく良くなっていますけれども、インドネシアでは国内配送に1週間かかる場合もあります。
そういう違いがあるのが一つ。あと、商品を探すという行動が、日本とアメリカはGoogleか、もしくは日本であればYahoo!などの検索エンジンを通して探すということが消費行動のスタートになっていますが、国によって違います。例えばNAVERだったり、百度だったりということで違うのが、国による違いの大きなポイントでしょうか。
――それは時間の差こそあれ、お客さんが抱えている問題の本質は多分同じで、これからやりようによっては、こういうビジネスでもグローバル化があり得るということですね。
基本的にどこの国にも同じ事業、同じ産業が存在している以上は、間接資材の調達という仕事はありますので、お客さまのお仕事を効率化させる手段は通用すると思っています。
――ますますの成長を期待したいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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第19回 ポーター賞 応募期間

2019年5月 7日(火)〜 6月 3日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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