受賞企業・事業レポート

株式会社ネットプロテクションズ

2017年度 第17回ポーター賞受賞 後払い決済事業

後払い決済サービスのパイオニアでリーダー。後払い決済サービスを自社で行っていたメーカーの直販事業からのアウトソーシングに加え、小規模なオンライン販売会社の売り上げ増加に貢献。小口の与信を圧倒的多数の買い手に分散することで与信リスクを管理。

業界背景・企業概況

img_2017_02_p.jpg通信販売やオンラインショッピングなど、非対面の購入における決済手段には、クレジットカード払い、プリペイドカード払い、配達時代金引換、前払い(銀行振込、コンビニ払い)、後払い(銀行振込、コンビニ払い)などがある。オンラインショッピングの取扱高が急速に拡大してきた中、ペイパルを始めとする様々な決済サービスが生まれた。さらに、スマートフォンからのオンラインショッピングが盛んになるにつれて、クレジットカード情報を打ち込まなくても良いなど、より少ないステップで支払いができる決済サービスが次々と生まれている。これらのサービスは、事前に会員登録しておくことによって、決済に必要な手続きを簡便化している場合が多い。

ネットプロテクションズは、これら決済サービスの中でも、後払いに特化した後払い決済サービスを2002年に開始したパイオニアであり、年間流通総額1400億円超、年間3000万人超、累計で1億人超の買い物客が利用している(2016年度)。2016年1月、通販企業上位247社(※1)の62%が後払い決済を導入していたが、それら導入済み企業において、ネットプロテクションズはシェア64%と1位(ネットプロテクションズ調べ)。

(※1)2016年8月4日付通販新聞掲載の「第66回通販・通教売上高ランキング」の売上高上位300社から家電や高級ブランド品を扱う企業を除く。

ユニークな価値提供

ネットプロテクションズの後払い決済サービスは、「全てのステークホルダーが最も『手間』なく『信用リスク』なく利用できる決済の構築を目指す」というネットプロテクションズの根本思想を軸に、個人を対象とした通販やオンラインショッピング(B to C)向けと、企業間の市場(B to B)のそれぞれに対して提供されている。以下に、その仕組みを大まかに説明する。

B to Cにおいて提供する価値

ネットプロテクションズのB to Cにおける後払い決済サービス「NP後払い」を通販事業者やECサイトの運営者(以下、売り手)が採用し、買い物客が支払い方法として後払いを選んだ場合、ネットプロテクションズは、買い物客の氏名、住所、電話番号、メールアドレス、取引情報だけで、与信を行う。ネットプロテクションズの与信審査は、信用情報機関のデータを参照するのではなく、自社で積み上げた取引情報に基づいて自動審査が行なわれ、24時間365日、取引情報の受け取り後5から10分以内にメールにて返信される。詳細審査が必要な場合でも、10時から17時の1時間毎に締め、1時間以内に結果を売り手に報告する。

ネットプロテクションズは、買い物客一人当たりの与信限度額を月額54,000円に設定することで、一つ一つの与信リスクを少額に抑え、それを多数に分散することで、与信リスク管理を行う。ネットプロテクションズのサービスの利用履歴がない場合にも、与信54,000円を限度に後払いサービスが利用でき、買い物客にとっては、利用し始めるのが容易である。

ネットプロテクションズからある取引について与信許可を得た売り手は、その商品を発送、配送伝票番号をネットプロテクションズに伝える。配送伝票番号把握の翌営業日にネットプロテクションズは買い物客に請求書を発送し(※2)、請求書の支払いの有無にかかわらず商品の到着確認後最短5営業日でネットプロテクションズが売り手に代金を支払う。ネットプロテクションズから売り手への支払いは毎週、月2回、月1回などの頻度でまとめて行われる。買い物客は請求書発行日から2週間以内にコンビニで支払うか、銀行や郵便局で振り込みを行う。コンビニでの支払いは手数料無料だが、銀行や郵便局からの振込手数料は買い物客の自己負担となる。

NP後払いの顧客は、75%が女性、年齢別では最も多いのが35から45歳で27%、45から55歳で25%、25から35歳で18%。利用デバイスはPCが51%、携帯電話・タブレット端末が49%(2016年度)。ターゲット顧客は、大きく3つに分けられる。第一は、まず商品を受け取って内容を確認してから支払いをしたいと考える買い物客で、通信販売の利用時に後払いの習慣を身につけた50代以上あるいは女性を中心とする顧客層。第二は、オンライン決済でクレジットカードを使用したくないと考える、情報セキュリティに不安を抱く顧客層。特に、初めて購入するオンラインショップでクレジットカードに対して後払いを望む買い物客は多く、ネットプロテクションズの調べによれば、初めて購入するオンラインショップでは、5人に1人以上、20.4%が後払いを選択したいと回答している(※3)。第三は、クレジットカードを保有しない若年層、クレジットカードが利用不能となった顧客層。ネットプロテクションズは、これらの顧客に、簡便な手続きでオンラインショッピングを可能にするという価値を提供している。これらは手数料なしで提供されるうえ、ネットプロテクションズはNP後払いの利用時にポイントを付与、貯まったポイントは専用のサイトで商品交換や懸賞に応募することができる。対照的に、代金引換払いの場合、手数料が発生することが多く、また、荷物受け取りの際に現金を用意して指定の時間帯に在宅でなければならない、という心理的な負荷もかかる。

(※2)売り手は、ネットプロテクションズが作成した請求書を商品に同梱することもできる。
(※3)全国の10代から50代の男女2065人を対象にインターネットリサーチを2016年3月25日から26日の間に実施。

B to Bにおいて提供する価値

もう一方の顧客である、通販事業者やECサイトの運営者への価値提供について。価値提供の第一は、後払い決済サービス提供のコスト削減である。ネットプロテクションズが承認した買い手については、ネットプロテクションズが全ての信用リスクを負うため、通販事業者やECサイトの運営者は売掛金の未収リスクから完全に開放される。さらに、与信審査、請求書発行、代金回収までの後払い決済に関わる全ての業務をネットプロテクションズが行う。

価値提供の第二は、売上向上である。後払い決済を導入することは、新規顧客の獲得に貢献する。初めてのオンラインショップで後払いを望む買い物客が5人中1人以上いることを既に述べたが、後払いがオプションとして提供されなかった場合、そう答えた人のうち30%が購入をやめ、46%が別のサイトで購入すると、同じ調査で回答している。

価値提供の第三は、サービス品質だ。NP後払いを導入している主な顧客層は、直販サイトを運営するメーカーやオンライン販売を加速する流通業者。自社で既に後払いを提供していた売り手がアウトソーシングする場合と、新たに後払いを導入する場合がある。自社で後払いを扱っていた売り手は顧客体験を変えないために細かなカスタマイズなどを求めることが多いが、ネットプロテクションズはそういった要求に応えることができる。

価値提供の第四は、導入、使用の簡便さだ。通販事業者やECサイトの運営者は、導入、運用の手間をあまりかけずにNP後払いを導入することができる。NP後払いでは、通販事業者やECサイトの運営者は、買い物客の情報(氏名、住所、電話番号、メールアドレス)と商品情報をネットプロテクションズに知らせ、与信が許可され商品が発送されたら配送伝票番号などをネットプロテクションズに知らせる必要がある。NP後払いは、ショッピングカート、受注管理システム、EC構築パッケージなど、90を超える多くのシステムとの連携を実現しているため、システム開発を行うことなく簡単な手続きで、これら取引情報の登録作業の自動化が可能となる。ネットプロテクションズが必要書類を受理後、最短10営業日でNP後払いの利用が可能。利用料金体系は、請求書発行費用に加え、月額固定費と請求額の一定割合の組み合わせで何種類か用意されており、NP後払いの取扱額によって最適な組み合わせが選択可能。

BtoBにおける後払い決済サービス、NP掛け払いは、業界の集中化が進んでおらず顧客企業が多数存在するような業界において高い価値提供をもたらしている。具体的には、一店舗のみで事業が行われている個人事業主や企業が多いラーメン店などだ。この業界の売り手企業である、たとえば製麺業者や冷凍食材のメーカーはこれまで、これら多数の顧客に対して売掛金の管理を自ら行ってきた。販売形式は、対面販売、ネット通販、カタログ販売、継続課金や従量課金型サービスに対応。買い手企業の企業名、住所、電話番号、メールアドレス、取引情報を売り手企業から受け取り後、ネットプロテクションズは原則5分から10分で与信を完了する。時間を要する案件であっても営業時間内なら2時間以内に回答。買い手企業は企業情報を登録するなどの手続きをする必要は一切ない。月末締めで売り手企業名の請求書を受け取り後、ネットプロテクションズへの支払い期限は翌月末の30日サイト。月間与信限度額は買い手企業あたり30万円から300万円で、少額多数の与信によって未回収リスクを分散する仕組み、買い手側の利用開始時ならびに利用時の負担がほぼないこと、売り手企業のサービス導入時に新たなシステム構築が必要ないこと、未回収リスクの完全な引き取り、売り手側の売掛金管理と回収に関わる業務を全て請け負う事などはB to CのNP後払いと同じ。売り手企業にのみ課金する点も同じで、月額基本利用料とサービス手数料、請求書発行費用を請求する。

最後に、社会インフラとしての価値提供について触れておきたい。ネットプロテクションズの後払い決済サービスは、B to C、B to Bいずれにおいても、個人事業主や中小企業が、売り手としても(B to C後払い)、買い手としても(B to B後払い)、新しい取引を始める際の最初の壁、信用という壁を超える助けとなっている。

独自のバリューチェーン

ネットプロテクションズのバリューチェーンの設計思想には、「全てのステークホルダーが最も『手間』なく『信用リスク』なく利用できる決済の構築を目指す」というネットプロテクションズの根本思想があり、「最も汎用性が高く最もサービス品質の高い決済サービスを提供」できるように組み立てられている。ユニークな人的資源管理がそれを支えている。ここでは、売上の中心であるB to C向けNP後払いのバリューチェーンを説明する。なお、BtoB向けNP後払いにおいても、バリューチェーンの設計思想や仕組みは原則同様である。

与信審査
ネットプロテクションズの与信方針は、「疑わしきは信じる」である。氏名、住所、電話番号、メールアドレス、商品情報という限られた情報で与信判断を行い、ネットプロテクションズの利用歴のない買い物客には初回は必ず与信を認める。利用上限額を超えるか、支払い期日になっても未払いがある買い物客に対してのみ、繰り返し利用を断る。こうして未回収リスクを積極的に請け負うことで与信情報を蓄積し、期日までに支払う買い物客のみが利用者に残っていくようにすることによって、長期的に未回収リスクを逓減する(ネットプロテクションズはこのプロセスをデータクレンジングと呼ぶ)。また、少額多数の分散債権による取引件数と取り扱い金額を増やすことで、未回収リスクと後払いサービスの業務を平準化する。
NP後払いの与信審査は、24時間365日対応の自動審査によるものがほとんどだが、数パーセント、日に5000件程度は自動審査で保留され、人による詳細審査が行われる。与信審査を通過する買い物客が増えるほど、買い物客への後払いサービス提供が可能になるだけでなく、売り手の売上向上になるとともに、ネットプロテクションズにとっても売上拡大につながる。

支払い請求・回収
定期的な周期、タイミングで請求書の再発行とメールによるリマインダを行うが、これらの作業はシステムによって自動化されている。コミュニケーションの内容はソフトで、売り手や後払いサービスへの心証を悪化させることなく、高い回収率を実現している。電話や訪問による督促はほとんど行わない。

コールセンター運営
導入企業、買い物客からの問い合わせ対応を行う。定型の問い合わせにはアウトソーシングしたコールセンター要員がマニュアルに則って対応、不定形の問い合わせは正社員にエスカレーションされ、あらかじめ共有されているポリシーに基づいて判断される。月間300万件以上の取引と3万件以上の問い合わせに対して、正社員は10名以下で運営。

セールス&マーケティング
見込み客獲得フェーズでは、ウェブ広告を中心としたオンライン施策と、展示会などのオフライン施策を行う。実行は広告運用代行会社やイベント代行会社などを活用し、正社員は企画と外部ベンダーのマネジメントに集中する。見込み客育成フェーズでは、マーケティングオートメーションツールを活用、メール配信や成熟した見込み顧客についてのアラート通知などを自動化し、また、常駐する営業代行会社が担っている。商談は、訪問営業で行うが、小中規模の案件はそのほとんどを常駐する営業代行会社が行う。正社員は、難易度の高い大規模な案件を担当する他、営業代行メンバーのマネジメント、営業活動のさらなる仕組化、つまり、営業用ツールや教育体制の標準化に注力する。

システム構築・開発・保守
与信や請求書管理システムなど、顧客へのサービス提供に関わるシステム、セールスやコールセンター業務などに使われる営業支援ツールや顧客管理ソフトなど、業務の効率化に関わるシステム、いずれも、より付加価値の高いサービスの提供のための企画に正社員を集中させ、それ以外のシステム関連業務は外部のシステムインテグレーターを積極的に活用する。

全般管理
ネットプロテクションズの企業理念は「つぎのアタリマエをつくる」であり、「物事の本質をとことん追求し、既成概念にとらわれることなく、あたらしい普遍のしくみを生み出し提供する会社でありたい」というミッションを掲げている。

全般管理の目的は「部分最適ではなく、全体最適の視点でサービス構築できる組織体制を築くこと」である。たとえば、営業が機能最適を追求した結果として過度に回収リスクが高まるとコスト増になる。また、不定形な運用の提案が過度になると、サービス部門ヘの問い合わせの増加や運用品質の低下を招きかねない。また、運用部門が未回収リスク回避を第一として企業や買い物客の審査基準を過度に引き締めると、サービス導入が可能な企業が減少したり、与信が通らない買い物客が増えた結果、買い物客の利便性が損なわれ、利用者が増えないことから、少額分散債権によるリスク管理が進まなくなる。これらの部分最適を避けるため、ネットプロテクションズでは、メンバー全員が事業の全体構造を理解し、部分最適ではなく全体最適を志向できる人材になるための人的管理を行なっている。

人的資源管理
新卒を中心に採用し、全体最適の視点を教育し、既成概念にとらわれないサービス企画や改善を求める。中途採用の採用も、全体最適の視点を重視する。
機能ベースの分業による組織構造をベースにしつつ、メンバーが自主的に多領域の業務を担うことを可能にしている。メンバーの希望によっては複数の事業部を兼務するケースも多く、1年単位での部署異動も可能。プロジェクトベースのタスクフォースである「ワーキンググループ」には、全メンバーが挙手によって参加することができ、新卒採用や新卒研修、中期経営計画の策定など、会社の中核業務にコミットすることができる。新しい「ワーキンググループ」を自主的につくることも可能。
個々のメンバーが自主性を発揮しながらも、その意思決定が会社の目指す方向性に合致するよう、「全てのステークホルダーが最も『手間』なく『信用リスク』なく利用できる決済の構築を目指す」という根本思想を全社員に浸透させることに努めており、そのために、理念の浸透を目的とするワーキンググループによる社内報の発行、新規採用者向けのワークショップなどが実施されている。採用基準の設計にも理念が反映されている。

活動間のフィット

ネットプロテクションズには、3つのコアとなる戦略上の選択がある。「全てのステークホルダーが最も手間なくリスクなく利用可能な決済」というサービスコンセプト、「多数の少額債権で未回収リスクを分散する」という与信方針、「長期的に維持可能かつ全体最適を目指したサービス品質の向上」という長期的な方向性。これらは、「つぎのアタリマエをつくる」という企業理念に導かれている。

ここでは、B to CのNP後払いの活動を例にとって活動システムを説明する。「全てのステークホルダーが最も手間なくリスクなく利用可能な決済」の実現のために、「請求書発送から回収まで一貫して請け負い」「未回収リスクの完全な引き受け」「限られた情報で与信」「機械審査を基盤としつつ、あいまい案件は人の目を介する、疑わしきは信じる与信審査」「高い与信率」「会員登録不要で利用開始」「買い物客側の費用負担なし(銀行振込手数料を除く)」などの活動が行われている。「多数の少額債権で未回収リスクを分散する」与信の実現のためには、「買い物客当たりの月間与信限度を54000円に設定」することで少額債権とし、「初めての取引は与信を通す」「高い与信通過率」「会員登録不要で利用開始」「買い物客側の費用負担なし(銀行振込手数料を除く)」などで買い物客の利用開始時ならびに利用時の利便性を高め、利用者と取扱取引数を増やすことに貢献している。「長期的に維持可能かつ全体最適を目指したサービス品質の向上」の実現のためには、「業務実行にBPO活用」「正社員リソースを企画とマネジメントに集中投下」「部署を超えて全体最適・長期最適を志向し自走する正社員メンバーの育成」「システム改善やマーケティング戦略に必要不可欠な予算の投下」が貢献している。(活動システム・マップを参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 少額の未回収リスクを積極的に多数取るというサービス設計思想。会員登録不要、上限内なら初回は必ず利用可能、支払えば必ず再度利用可能という与信方針でNP後払いを利用する買い物客の数を急速に増加。売り手に対しても、後払い決済に必要な全ての業務を提供することで、利便性を高め、NP後払いを採用する売り手を増加。
  • 与信審査に機械学習を活用。利用者ベースの拡大を通じてネットプロテクションズが蓄積した膨大な取引データを基に、決定木を用いた機械学習与信を行う。
  • 決済業務のほとんどをシステム化。
  • BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の積極的な活用。業務を、機能でなくプロセスに分解することで、作業の徹底したアウトソーシングを可能にし、営業、システム開発、コールセンターなどでBPOを活用。業務費用を抑えつつ、急速な事業拡大を可能にした。

トレードオフ

  • サービス利用時に買い物客の会員登録を必須にしない。会員登録がないことで買い物客の特定の精度は下がり未回収リスクは上昇するが、一方で、会員登録しないことで利用のハードルが下がり、新規利用者の増加が容易になる。新規利用者の増加によって、取引データと与信データの蓄積が加速する。
  • 与信審査に外部の信用情報を利用しない。外部の信用データを利用すると最初から未回収リスクを低下させることができるが、自社内に取引データや支払いデータが蓄積しない。また、外部信用データに依拠すると、一般的に信用力の低い買い物客に後払い決済サービスの提供ができなくなってしまう。
  • 買い物客の支払い期限を最長2週間に制限し、それ以上長くしない。後払いの支払い期限を数か月単位にすることは、「支払いの後ろ倒し」という価値提供が可能になるが、同時に、手元資金がない状態でも買い物をする誘因となり、未回収リスクは高まる。ネットプロテクションズの提供したい価値は融資ではなく、「安心・安全で便利なお買い物体験」であるので、支払期限の延長は原則行わない。
  • システムのみで与信審査する即時与信審査(リアル・タイム・オーソリゼーション)は行わない。全ての取引の与信審査を即時に完結することは、売り手にとってもネットプロテクションズにとっても業務効率に貢献する。しかし、数パーセントは存在するあいまいな案件については、一律に可か不可をつけることとなり、可とした場合は未回収リスクの増大、不可とした場合は買い物客の買い物経験を損なう結果となる。したがって、あいまいな案件は、人手をかけて個別に、かつ迅速に判断を下す。
  • 単純な機能別分業の組織構造に陥らない。機能最適が強くなりすぎると決済サービスに必要な全体最適が損なわれる。
  • スキルセットのみに注目した中途採用を行わない。スキルが高くても、機能内で完結するマインドセットと行動が強く、他部門と連携したり長期的視野に立てない人材は採用しない。
  • クレジットカードで決済する買い物客には積極的に訴求しない。クレジットカードで決済している買い物客は、後払いしたいという欲求が低いと思われ、かつ、既に即時決済の利便性を享受していることから、NP後払いへ移行する可能性は高くない。
  • OEM提供による別サービス・ブランド導入を原則行わない。事業拡大には貢献するが、請求書紙面やコールセンターなどのユーザー接点を分ける必要があり、オペレーション・コストが増大する。

戦略の一貫性

ネットプロテクションズは2000年1月に会社設立、2002年3月には通信販売に対して買い物客の会員登録が不要の「NP後払い」のサービスを開始した。2011年4月、同様に買い手企業の会員登録が不要のB to Bの後払い決済サービスを開始した(NP企業間決済という名称でスタート)。2015年7月、訪問型サービス向け「NP後払いair」のサービスを開始。2017年6月、BtoC後払い決済サービスで、会員登録により、これまでは取引毎の請求であったものを月締めにして請求支払いができ、売り手、買い手双方の利便性を高める「atone」をリリース。

NP後払いのサービス開始から、B to Bの後払い決済サービスまで、戦略の軸は変わっていない。その戦略の軸とは、1)未回収リスクを積極的に請け負うことで自社に与信情報を蓄積し、支払い履歴の良くない買い手のみが離脱する仕組みによって長期的に未回収リスクを逓減する。2)少額多数に分散した債権を対象に取引件数と取扱金額を増やすことで、未回収リスクと業務コストを平準化する。3)回収代行や債権保証といった一部の業務をアウトソーシングすることはせず、決済プロセス全てを代行する。

ネットプロテクションズが最初に手掛けたB to Cの領域は、クレジットカード決済の代替は難しいことから市場規模は限られていると考えられたものの、通信販売において後払いの購買習慣を既に身に着けている消費者のニーズという顕在化している市場に訴求し、サービスコンセプトの証明と業務プロセスの構築を行った。その後、当初から視野にあったものの、取引毎の金額がより大きいことから未回収リスクが高く、よりカスタマイズも求められ業務管理が複雑なB to Bや訪問型サービスの分野に事業を展開した。

収益性

投下資本利益率、営業利益率ともに5年間の業界平均を上回っている。
収益性

株式会社ネットプロテクションズの活動システム・マップ

活動システム・マップ

受賞企業・事業部 PDF

第24回 ポーター賞 応募期間

2024年5月 7日(火)〜 6月 3日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
PAGETOP