受賞企業・事業レポート

RIZAP株式会社 ボディメイク事業

2018年度 第18回ポーター賞受賞 スポーツジム業

専属のパーソナル・トレーナーによる、週2回のジムでの運動指導とスマートフォンを活用した日々の食生活や行動への助言によって、顧客とともに打ち立てた減量目標という「結果に100%コミットする」ボディメイク事業を運営。R&Dに投資し、エビデンスに基づいたボディメイク・メソッドを開発、12万人の利用者のデータに基づいた減量予測など、トレーナーの個人技に依存しない仕組みを確立。

業界背景

img_2018_03_p1.jpg フィットネスクラブ市場は、2017年度の市場規模が4,610億円、前年比2.9%増で、2012年から一貫して拡大している(※1)。日本生産性本部の行う余暇市場調査は、スポーツ部門、趣味・創作部門、娯楽部門、観光・行楽部門に分かれる。観光・行楽部門は、海外からのインバウンド消費が貢献して、4年前と比較して8%、市場が拡大したが、趣味・創作部門と娯楽部門は同期間、縮小を続けており、趣味・創作部門は6.8%、娯楽部門は5.9%の減少となった。スポーツ部門は同4%増。うち、フィットネスクラブ市場は8.7%増加した。フィットネスクラブ市場の市場規模はスポーツ部門の市場規模の11.3%であった。

img_2018_03_p2.jpg フィットネスクラブ市場の近年の継続的な拡大の背景には、高齢化の進行を背景とした健康寿命や長生きリスクという概念の浸透や、企業でも健康経営が重視されるなど、健康への意識の高まりが指摘されている。同時に、成果報酬型、24時間セルフ、女性専用小型スタジオ、暗闇ジム、ホットヨガ、ストレッチ専門、シニア向けロコモ対策プログラムなど、新しいサービスが挿入され、サービスの多様化が進んだ。

(※1)公益財団法人日本生産性本部、『レジャー白書2018』、2018年7月.

ユニークな価値提供

RIZAPは、120店舗のスポーツジムを展開し、800名のパーソナル・トレーナーを雇用している。RIZAPのサービスの特徴は、「顧客が求める結果に徹底的にフォーカスし、短期間で結果を実現する」こと、「顧客が求める結果に100%コミットする」ことだ。

RIZAPのターゲット顧客は、体重を減らしたい、体型を変えたい、より健康な体になりたい、それを維持したいと希望する人々だ。RIZAPの顧客は、当初は、どうしても体重を減らしたい、体型を変えたい、という強いニーズをもった顧客が中心で、20代から30代の女性が多かった。その後、30代から40代の男性が加わったが、現在は60代までまんべんなく顧客になっている。

これらの顧客にRIZAPは、専属のパーソナル・トレーナーをつけ、共同で2か月後のなりたい姿の目標設定を行なう。週2回のジムでのトレーニングに加え、日々の3食の食事内容と毎日の体重の携帯アプリ「RIZAP touch」からのレポートと、それへのパーソナル・トレーナーによる毎日のアドバイスとサポートを通じて、ジムでの時間に限らず日々の行動変容を促す。指導内容は、年齢やライフスタイルなどによって異なる。心理学を専門とするカウンセラーもメンタル面のケアとサポートを提供し、たとえば、体重変化の停滞期などを支える。また、栄養士のチームが、365日、顧客からの質問に答える。RIZAPの累積顧客も12万人を超え、体重減少などについての顧客のコミットメントは、当初の顧客ほど強くない場合も増えている。しかし、そのような顧客であっても、スマホのメッセージ機能を使ったコミュニケーションに加え、来店しなくなったら電話するなど、あきらめずに継続してもらうための専属トレーナーによる働きかけが行われる。エビデンスに基づいたエクササイズ・メニューに加え、これらの諦めさせない、挫折させないサービスによって、顧客は、高い確率で目標を達成する。

当然、目標の質が重要になる。RIZAPでは、専属トレーナーが、顧客がはっきり口に出さない希望も理解できるようなカウンセリングを心掛けている。さらに、累積12万人のユーザーの実績データに基づいたプログラムが、一人一人の顧客の情報に基づいて到達可能な目標値を導き出す。このプログラムによって、これから起こる可能性の高い変化の様子のイメージを予め共有することで、顧客の目標設定を支援する。トレーナー達は、結果にコミットするからといって目標を低く設定するのではなく、RIZAPの実績に基づいた現実的、かつユーザーにしてみれば高い目標を設定する。

このようなサービスによってRIZAPが提供する価値は、一義的にはより健康的な体だが、顧客の自己変容とそれを成し遂げたことによる自信などの精神的な変化もまた、同社の提供する価値である。

RIZAPの価格設定は、業界に比較して高額である。入会金5万円、2か月の会費298,000円で、これには、専属のパーソナル・トレーナーによる個室での1時間のトレーニング16回、日々の食事などへのフィードバック、SNSを通じたコミュニケーションによる動機づけ、無制限のジムのセルフ利用が含まれているが、パーソナル・トレーナーによるジムでの指導の多くが1時間5000円で提供されていることを考えると、非常に高額であることがわかる(RIZAPブランドのサプリメントや低糖質食品の価格は、確立されたブランドによる商品と同等、全体から見れば高価格帯に位置する)。割賦払いも選択肢として提供されているが(※2)、顧客は前払いを求められる。これは、顧客から2か月のコミットメントを引き出す効果がある。高額な価格設定は、結果にコミットしているから可能なのであり、RIZAPは、転居や仕事が忙しくなったなどの理由を含め、いかなる理由でも開始後30日以内にサービスを中断する場合には、全額返金を保証している(全額返金保証)。

また、RIZAPは、2か月のプログラムを終了した顧客には、正しい生活習慣の定着と、リバウンドさせずにさらに良い体をつくることを目的とする長期のプログラム、「ボディ・マネジメント・プログラム(BMP)」を提供している。1年間継続のコミットメントの下、月々29,800円で、1か月後、1年後、3年後の目標を設定。顧客の期待に応えられない結果になった場合には、同じ専属トレーナーの下、サービスを追加で2か月まで無料で延長することができる(リバウンド保険)。

2017年度は、約5%の顧客が全額返金保証かリバウンド保険を使用した。2017年度の一人当たりの売上は約90万円であり、2か月を超えてRIZAPのサービスを継続している顧客が一定数いたことがわかる。同社によれば、たとえば、100キロの体重の顧客が60キロまで減量する場合、およそ1年間を要し、総額150万円ほどになるという。

(※2)2017年の顧客の4割が割賦払いを利用。

独自のバリューチェーン

RIZAPボディメイク事業のバリューチェーンの最大の特徴は、R&Dと人的資源管理にある。

調達
RIZAPで販売しているサプリメントや低糖質食は、RIZAPグループの子会社、健康コーポレーションが開発製造している。。

R&D
RIZAPはトレーニング・メソッドを、医師、研究者、管理栄養士などの監修を経て開発し、トレーナー・マニュアルにまとめた。これは、日本トレーナー協会の支持を得ている。その後も研究開発を進め、顧客の年齢、性別、身体状況に応じて、安全かつ効率的に目標が達成できるようなものに改善が続けられている。RIZAPメソッドによる累積12万人の顧客の身体の変化は電子カルテに記録され、その分析結果は、「RIZAPナビゲーター」として実装され、店舗での、新しい顧客へのRIZAPメソッドの体重、体脂肪の予想に使われている。RIZAPメソッドの効果の検証を、大学や病院と行い、その結果を公表している。

健康情報の配信、顧客からの食事内容の報告が簡単にできたり、質問や悩みを投稿しフィードバックを受けられるメッセージ・アプリなどを含むスマホアプリRIZAP touchなど、ジム外での顧客とのコミュニケーション・ツールの開発にも注力している。

全国にある125のRIZAP店舗全てが、近隣の医療機関と連携しており、提携している医療機関数は170あまり。入会時に健康面で不安がある顧客を医療機関に紹介し、事前に検査を受け、RIZAPメソッド適用の可否、注意点を把握する。また、トレーナーは、ゲストを対応する際に生じた医療的な疑問について、医師にメールで相談し、アドバイスをもらうことができる。

専属トレーナーによる指導
年齢や体の状態などによってカスタマイズした、エクササイズと食事の指導が提供される。週2回のジムでの指導以外の時間のすごし方が、成果に与える影響が大きいため、スマホアプリを使用して顧客に寄り添う。具体的には、スマホアプリで顧客が3食の食事に何を食べたかを報告し、専属トレーナーから5段階評価を受けたりコメントを受け取ったりする他、毎日の体重の記録をする。加えて、栄養士や心理カウンセラーからのアドバイスも受けることができる。

マーケティング
RIZAPは積極的なTVコマーシャルとターミナル駅における交通広告により認知度を急速に高め、関東圏における認知度は74%に達した。会員から紹介をうけて入会した新会員には、5万円の金券が付与される(入会金が5万円なので、実質的に入会金免除の効果がある)。提携医療機関から、過体重で膝に負担がかかっており減量が望ましい患者や、生活習慣病等のリスクがあり痩せた方が良い患者の紹介を受けることもある。
アフター・セールス・サービス
理由を問わず顧客が満足しなければ、プログラム開始から30日間、全額返金保証を受けることができる。また、2か月のプログラム終了者には、体型維持のための、ジムでのトレーニングの頻度がより緩やかなボディ・マネジメント・プログラムが用意されており、その契約者はリバウンド保険によって無料で追加2か月のサービスを受けることができる。
店舗開発
RIZAPのジムは全て直営である。直営であることによって、需要に合わせて店の間でパーソナル・トレーナーを機動的に移動することができる。ジムにはスイミングプールやサウナなど大規模な設備を持たないので、幅広い選択肢から場所を選ぶことができる。さらに、会員制の顧客が目的を持ってジムを訪れるので、路面店である必要はなく、地下やビルの2階、3階など、路面店に比べれば家賃を抑えることができる。
人的資源管理
RIZAPは全てのトレーナーを正社員として採用しているが、採用に経験の有無を問わない。採用率は非常に低く、たとえば2017年は3.2%であった。採用者は、RIZAPアカデミーで192時間に及ぶカリキュラムを履修する。内容は、トレーニングの知識、技術、生理学、栄養学、メンタル・ケア、ビジネスなど。修了時には、難易度の高い試験に合格しないと店舗に配属されない。

店舗への配置後は、定期的な研修への参加が求められる他、Eラーニングによる自己研鑽が可能。店舗責任者やエリア統括者など、経営管理の分野でキャリアパスを構築したいトレーナーにはそのための社内のライセンスが、トレーニング・スキルを軸にキャリアパスを積み上げたいトレーナーにはコーチング・トレーナーになるための社内ライセンス制度が用意されている。

パーソナル・トレーナーの評価は、顧客にいかに寄り添っているかを中心に行われる。具体的には、契約期間に顧客が何回ジムを利用したか、顧客の食事報告に5段階評価をつけたりコメントを送るなどのRIZAP touchの稼働状況、目標達成度など。

パーソナル・トレーナーの離職率は数パーセントで推移している。これは、個人にスキルがあり流動性が高いパーソナル・トレーナーとしては低い割合だ。この数字は、新人トレーナーが最初に受講する192時間に及ぶ研修の終了前に離職する場合も含んでおり、店舗で働き始めてからの離職率はさらに低い。

活動間のフィット

RIZAPのボディメイク事業には、3つのコアとなる戦略上の選択がある。「徹底的な寄り添いサービス」、「結果にコミットするブランド力」、それを支える「パーソナル・トレーナーの育成と評価」だ。徹底的な寄り添いサービスは、エビデンスに裏付けられたRIZAPメソッドとこれまでの利用者の実績に基づいたRIZAPナビゲーターという方法論を柱として指導内容をパーソナライズすることと、RIZAP touch(スマホアプリ)によって顧客の日々の行動に影響を与えることで実現できている。結果にコミットするブランド力は、専門家の監修や大学や病院との共同研究によるメソッドへの信頼、パーソナル・トレーナーの個人技に依存しないサービス、全額返金制度やリバウンド保険の仕組み、成果が出ることを伝える積極的なマーケティングが支えている。RIZAPアカデミーでの人材育成と寄り添いを重視した評価の仕組みが、寄り添いと結果を出すことに貢献している。(本セクション最後に掲載した「RIZAP株式会社ボディメイク事業の活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • ボディメイクという個人差の大きいサービスにおいて結果にコミットする価値提供を選択し、トレーナーの個人差少なく、高い確率でそれを実現する方法を生み出したこと。
  • 減量、増量(筋肉量の向上)、美脚など、各種トレーニング・メソッドを自社開発。医師、管理栄養士、スポーツ科学、心理学などの専門家チームが監修し、科学的根拠に基づき体系化。
  • 独自の予測システム。RIZAPのトレーニングを経験した12万人を超える顧客データを基に、体組成情報や生活習慣に関する情報を入力することで、RIZAPメソッドを実施した場合の、その顧客の体重、体脂肪の推移、停滞期などをシミュレーションできる。
  • 日々の3食の食事を含め、ジムにいない時間帯に行われる食事やライフスタイルに影響を与えるための、スマホアプリ、RIZAP TOUGHを基盤としてパーソナル・トレーナーが主となってアドバイスなど日々のコミュニケーションを行う手法。
  • 「自己変容」が顧客にもたらす価値を信じて「100%結果にコミット」するという理念を共有し、ボディメイクのメソッドを身に着けたパーソナル・トレーナーを育成する人材育成の仕組み。
  • 全額返金制度とリバウンド保険。

トレードオフ

  • 採用時にトレーナー経験の有無を問わない。RIZAPは、顧客の求める結果にコミットできる、顧客に寄り添うことができる人材であることが、最も重要と考える。
  • 一人の顧客を複数のトレーナーで担当しない。一人の顧客を複数のトレーナーで担当する場合に比べて、予約の調整や新規顧客の受入に制約が生じるが、RIZAPは、徹底して寄り添うには一人のトレーナーが担当する方が良いと考える。
  • 価格競争をしない。
  • 非稼働会員をよしとしない。
  • 店舗にスイミングプールや大浴場、サウナなどの大型設備を持たない。

戦略の一貫性

RIZAPの1号店は、2012年2月に東京の都心にオープンした。専門家により多角的に検討されたメソッド、食事を含むジム外の日常に寄り添う指導、顧客の選んだ目標に100%コミットする姿勢、専属パーソナル・トレーナーなどの戦略の核は、当初から一貫している。

1号店の開店にあたってRIZAPは、短期間で結果が出るメソッドを、心理学、解剖学、生理学、栄養学などの専門家の協力を仰いで開発し、「顧客の求める結果にコミット」し、顧客に徹底して「寄り添う」ことのできるトレーナーを育成した。価格設定も現在と同じ、入会金5万円、2か月30万円弱であった。全額返金制度も1号店の開店時から導入。2013年、パーソナルトレーニング市場の満足度1位、プライベートジム市場で人気1位、完全個室プレイべートジム市場で売り上げ1位(株式会社ネオマーケティング社調べ)。

2015年1月、RIZAPアカデミーを設立、多店舗展開に備え、トレーナーを育成する体制を強化した。

2017年7月、目標達成後の顧客が健康的な体を維持することを長期的に支援する「ボディ・マネジメント・プログラム」を導入。月2回のジムにおけるパーソナル・トレーナーによるセッションと、メールでのアドバイスを月29,800円で提供している。

2016年、RIZAPは企業の福利厚生市場、2017年には自治体の健康増進事業など、BtoB市場に参入した。企業向けでは、3か月で全8回、企業にトレーナーを派遣し、講義とエクササイズを行なう。RIZAPのジムと違って、トレーナー一人に対して多くの社員が受講することができる。日々の寄り添いについては、参加者のグループを形成し、グループリーダーを支援することで、継続的に寄り添い、行動変更を促すことに成功している。2017年3月には自治体向けのプログラムを開始。静岡県牧之原市における、23名を対象としたシニア向けパイロット・プログラムで体力年齢の若返り、体重減少(筋肉量は減らさず体脂肪率を下げた)の成果を出した(※3)。2017 年 8 月、2020年までに1000万人にRIZAPメソッドを経験してもらう「1000 万人健康宣言」を発表。2018年には、1月から3か月間、長野県伊那市と提携、RIZAPメソッドによるエクササイズと食事指導を提供した。この取り組みには46名が参加し、そのうち36名が体力年齢を測定し、35名の体力年齢が10歳以上若返った。伊那市との取り組みでは、RIZAPは、成果報酬型の料金体系を導入、?体力年齢が10歳以上若返った人数につき一人5万円と、参加者全員の医療費削減分が?を上回った分の半額の合計を報酬として受け取る仕組み。同社は、医療費削減効果が表れる時期や因果関係などについて、精査を続けている。

(※3)RIZAP株式会社、プレスリリース、2017年11月8日。
https://www.sse.or.jp/wp-content/uploads/2017/11/rizap171108-1.pdf (アクセス、2018年11月1日)

収益性

RIZAP株式会社ボディメイク事業の投下資本利益率、営業利益率ともに5年間の業界平均を上回っている。(業界平均との収益性比較は、PwC Japanグループの協力を得ている。)
収益性

RIZAP株式会社ボディメイク事業の活動システム・マップ

活動システム・マップ
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