受賞企業・事業レポート

株式会社MonotaRO

2018年度 第18回ポーター賞受賞 間接資材のEC小売事業

工場などでのオペレーション、メンテナンス、補修などに必要な備品や消耗品など、間接資材の小売Eコマースを運営。製造業、建設・工事業、自動車整備工場などの中小企業を主な顧客とする。

たまに少量しか購入しない事が多いうえに種類が多い間接資材を、ワンプライス販売、簡単に検索、発注、納期を確定できるようにすることで、顧客の手間を大幅に削減。新しい顧客セグメントに求められる品揃えを加えて新規顧客を獲得しつつ、顧客利便性を改善し続けることで既存顧客への販売量も拡大。

業界背景

img_2018_02_p1.jpg 間接資材はMROとも呼ばれ、MonotaROの社名にはMROが含まれている。MROとは、メンテナンス(保守)、リペア(修理)、オペレーションズ(稼働)の頭文字をとった言葉で、主に工場や作業場で業務を行うために必要な器具や資材を意味する。大きな特徴は、最終製品に組み込まれない間接資材だということ。具体的には、コンプレッサーやポンプなどの小型機器、ドリルなどの工具や冶具、潤滑油やテープ、パテなどの補修用品、防塵マスクや手袋などの消耗品、燃料など。現在は、PCや文具、オフィス用品、蛍光灯などの簡単な設備用品まで、幅広い間接資材を含む概念となっている。

img_2018_02_p2.jpg 間接資材は、多品種で供給業者が多く、また、顧客数も多いという特徴がある。SKU 数 1,000 万以上、メーカーは国内外1 万社あるとされるが、大手メーカーは数社に限られ、その多くは中小メーカーである。最終顧客であるユーザーは製造業、自動車整備業、建設業などの工場や作業現場を主な顧客として、一般のオフィスを含む全事業所や日曜大工を行う個人も含まれる。間接資材の市場規模は日本で約 8 兆円(2015年)。1990年代以降、ほぼ横ばい(※1)。

メーカー、顧客ともに小規模なプレイヤーが多数存在する間接資材の流通は従来、全国規模の一次卸、二次卸、小売、という多層構造になっていた。間接資材小売業の中心となってきたのは、機械工具商であった。機械工具商は、地域の工場などを訪問し、専門性の高い商品の納入に力を発揮する。機械工具商は、顧客の購買部門との関係性を構築しており、御用聞き営業の下、様々な要望にきめ細かく対応する。しかし、資金力の制約から、機械工具商が在庫する商品は、購買頻度が高いナショナル・ブランドのものが中心となり、品揃えも限られる。品揃えにない商品は、卸から調達し、顧客に納品する。訪問営業の手法でカバーできる顧客数と地域は限られるため、間接資材小売業界は、機械工具商による商圏の棲み分けにより、地域別に分断されていた。機械工具商の数は減少傾向にあるが、その理由としては、家族経営であることが多い機械工具商の高齢化とそれゆえの廃業が指摘されている。

(※1)経済産業省、商業統計。

ユニークな価値提供

MonotaROは、間接資材の購買における、商品を探す、見積もり依頼、在庫確認、注文、支払い、配達を待つなどの作業を簡単にし、顧客がこれらに費やす時間を短縮することに貢献している。顧客が使用する間接資材は種類が多いうえに、一商品あたりの購買金額は大きくない。非常にたまにしか購入しないものもあり、購買経験の蓄積が購買活動の効率化に結び付きにくい。少ない品種を大量に購入する直接資材であれば少しでも安く調達したり納期をコントロールすることが重要だが、それと比較して、間接資材購買は活動にかける時間に対するリターンは小さい。

MonotaROの顧客は、中小の事業者が中心で、従業員10人以下が32%、11から30人が26%。これらの顧客は、事業規模が小さく間接資材の購入規模も小さいため、多くの機械工具商が十分な営業をできてこなかった顧客層でもある。業種としては、製造業が41%、建設業が18%、自動車整備業が12%(2017年売上高を基に試算。従業員数は会員登録時の顧客による任意の自己申告)。

購買活動における顧客の効率を高めるため、MonotaROは、ワンプライス・ポリシーを採用している。MonotaROが事業を始めるまでは、間接資材は価格が公表されておらず、小売業者に問い合わせて初めて価格がわかるうえ、購入数量によって割引を受けられるため、価格交渉が行われるのが一般的であった。MonotaROは、必ずしも最低価格ではないが、リーズナブルな価格を商品ごとに設定し、それをインターネットで一般に広く公表し、価格交渉を行わない。顧客はその価格に満足であれば、より安い商品を求めて商品を探す必要がなくなる。

また、MonotaROは、多品種にわたる間接資材をワンストップ・ショッピングできる利便性を提供している。MonotaROは顧客が必要とするものを買えるよう、1,700万点超(2018年10月末実績)の商品を取扱っているが、サイト内の検索機能を高め、顧客が必要とする商品を短時間で探し出すことを可能にしている。また、300万超口座の顧客との取引データを分析し、個々の顧客に対して、ニーズのありそうな商品を適時に紹介している。MonotaROは分野別に19種類のカタログを顧客に配布しているが、カタログは顧客がそれまで意識していなかった商品を発見するきっかけとなっている。MonotaROの品揃えの拡充に加えて、これらの施策が功を奏し、MonotaROの既存顧客あたりの購買額は、同社との取引が長くなるにつれてより多くなる傾向を示している。

MonotaROは短納期の利便性も提供している。約40万点の商品については、自社物流センターに在庫を有しており、平日午後3時までに受け付けた注文についてはその日のうちに出荷する。この中には、売れる頻度が低く一度に複数買う顧客が少ないため、1個しか在庫を置かない商品も含まれている。また、在庫商品とは別に10万点は、自社在庫ではないが、注文当日に出荷する体制を整えている。

MonotaROはリーズナブルな価格で良い品質の商品を提供するため、販売量がある程度見込めるものについては、プライベート・ブランド商品を開発し、ナショナル・ブランド商品よりも低価格で提供している。たとえば、綿軍手、ゴム手袋、ウエス、コピー用紙、クリーナー、ブルーシート、ナット、ボルトなど、顧客がメーカーにあまりこだわらない消耗品が中心。プライベート・ブランド商品の売上は、2017年度売上の約2割であった。

独自のバリューチェーン

MonotaROのバリューチェーンの最大の特徴は、マーケティングと仕入れ、人的資源管理にある。優れたデータ分析力で市場ニーズに対応して品揃えを整え、検索と調達に関わる顧客の利便性を高めるための実験と進化が起きている。

品揃え決定・仕入れ
MonotaROは、商品カテゴリーごとに、顧客が購買する間接資材の種類やその商品の市場環境の調査を行い、取扱商品とサプライヤーの選定を行う。商品によって、メーカーから直に仕入れる場合と、卸から仕入れる場合がある。品揃えの決定と仕入れ業者選定は、専門チームが担当し、対応する商品カテゴリーが広がっても担当者の人員増を抑えられるよう、ノウハウの蓄積・共有が行われている。

仕入れは当初はサプライヤーからの直送や都度取り寄せでスタートし、ある程度の販売頻度が実績として確認されると在庫保有する。安定した販売頻度が見込め、汎用品に近いものについては、プライベート・ブランドとして商品化し、十分に良い品質で低価格、短納期な商品として提供する。

マーケティング
MonotaROのサイトでの商品選択のプロセスを快適なものにするため、商品間の比較が可能な商品情報の充実、検索ロジックの改善、商品推薦機能の改善を行うとともに、これらの機能を顧客ごとに適時かつ適切に実現するための取組みを行っている。また、販売促進活動は、電子メール、カタログ、チラシなどを組み合わせるが、顧客ごとに最適なアプローチを、蓄積したデータの機械学習などの分析により費用対効果の確率計算やABテストの活用(パターンの比較)などによって最適化、その精度を改善し続けている。

MonotaROの新規顧客獲得の最大のチャネルは、インターネットにおけるキーワード検索だ。同社は、検索エンジン最適化を行い、ウエブを検索する顧客の目に留まる確率を高めている。また、2013年より大阪地区で開始したテレビコマーシャルを、2015年からは一部地域を除く全国に広げ、知名度向上に努めている。この結果、放映地域におけるMonotaROの社名認知度は8割に達している。

カタログは創業当初より発行している。ネット検索が、欲しい商品を探す行動を中心にしているのに対し、カタログは、顧客がそれまで意識していなかった商品の存在に気付くきっかけを与えている。

物流
MonotaROは、関西、関東、北海道にディストリビューション・センターを持つ。在庫品については、平日の午後3時までに受け付けた注文はその日のうちに出荷される。

人的資源管理
MonotaROの行動指針第一は、他者への敬意である。他者への敬意は、バックグラウンドの異なる様々なスタッフが前向きに業務に取組み、自己実現を果たしていくための社内文化であると共に、サプライヤー、顧客との関係を健全に保ち、社会における共生を果たしていくための手段でもある。また、自らの誤りを素直に認め、他者の誤りを受け入れ、小さな実験でデータを分析し、学習することを組織文化として定着させている。更に、週に一度、上司に週報を提出することと、週次で上司と部下が面談することを業務の中に組込み、社員間の相互連携を促している。

活動間のフィット

MonotaROには、3つのコアとなる戦略上の選択がある。「検索機能の向上」、「トラフィック・顧客ベースの拡大」、「リードタイム短縮」だ。これらは、互いを強め合う関係にある。検索機能の向上は、顧客数と取扱商品の増加、それに伴うトラフィックの増大によるデータの蓄積と分析によって可能になる。顧客数の増大は、品揃えの充実、広告キーワード数の増加と質の向上、検索エンジン最適化、マス広告、短納期(リードタイム短縮)、サイトの使いやすさなどが支えている。リードタイム短縮は、主に顧客ベースと利用の拡大によって在庫商品が増大することで可能となり、倉庫オペレーションの効率化がこれを支えている。(本セクション最後に掲載した「株式会社MonotaROの活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 少量ずつ多品種で購入する多数の顧客という市場特性から、地域に分散していた間接資材市場において、検索、納期確定、発注の容易なECによって、地域を超えた市場を創造。
  • 価格情報が公開されていなかった間接資材市場にワンプライス・ポリシーを導入。価格をオープンにし、価格の比較、価格交渉における顧客の手間を減らした。
  • データベース・マーケティングの活用により、新規顧客獲得や既存顧客向け販売促進策の実施を標準化、オンライン化しており、少数の大企業担当者を除き、訪問営業や企業別担当をなくした。
  • 多様な人材を受け入れ、失敗を恐れず小さな実験を積み重ね、学びとする企業文化の創造。

トレードオフ

  • 営業担当者による販売価格・条件の交渉を行わない。ワンプライス・ポリシーを採用、価格はオープンにしている。
  • 直接資材(原材料)は取り扱わない。直接資材は、価格や取引条件が顧客の利益率に大きな影響を与えるため、個別交渉を避けることが難しい。
  • 産業資材以外の品揃えにフォーカスしない。取扱商品採用の基準は、顧客の購買プロセスの生産性向上に貢献できるかどうか。事業所で使われるものでも日用品に近い物の品揃えには注力しない。
  • モール型ECサイトは運営しない。モール型ECサイトでは、複数の出店者が品揃えや価格を競うことができるが、同一基準で商品情報を提供することが難しく、また、一覧性を損なうことも多いことから、類似商品の比較、同一商品の価格や納期の比較が煩雑になることが多い。
  • 社員間の相互連携を排除した生産性向上は追わない。報告や連携の頻度を個人任せにした方が個々人における短期的な生産性は上がるかもしれないが、MonotaROでは、週報や週次面談を業務に組込み、サービス水準の継続的な向上のため、社員相互の連携や学習を重視する。

戦略の一貫性

MonotaROは2000年、間接資材のEコマースサイトとして事業を始めた。その時から、間接資材を発注する顧客の手間とそれに費やす時間を削減する、顧客の時間あたりの生産性を高めるという価値提供は一貫している。その実現のためには、ワンプライス・ポリシーは必須と考えられ、当初から実行された。しかしながら、価格の透明性が高まることを望まない卸やメーカーの存在もあり、現在のように幅広くは品揃えできなかった。それでもワンストップ・ショッピングの利便性を実現するため、ターゲット顧客を中小規模の鉄工所や機械加工業者とし、彼らが必要とする商品の品揃えを優先した。また、対象とする中小事業所のネット普及率はまだ低かった。そこでMonotaROは、ファックスとダイレクト・メールでも顧客にアプローチし、注文を集めた。ウエブ注文は、2003年に受け付けた注文の3割弱であった。2004年、ヤフーとグーグルが日本で検索広告事業を始め、ウエブでのキーワード検索を経た新規顧客の流入が増えていった。

MonotaROは、新規顧客がどの業界から入ってきているかを分析、それに対応して、ターゲット市場を拡大し、品揃えを対応させていった。2008年に自動車整備工場、2009年に建設・施工業者、2010年に研究所・研究開発部門、2011年にオフィス・店舗、2014年に農業関連と厨房関係、2015年に医療・介護関係が取扱カテゴリーとして加わった。ターゲット市場の拡大は、それまで購入頻度が低かった商品の売上を拡大する効果があった。購入がある程度の頻度に達するとMonotaROはその商品を在庫するので、顧客にとっては納期の短縮という利便性が向上する。つまり、ターゲット市場の拡大によって、既存、新規両方の顧客の利便性が拡大するという正の循環が生み出された。さらに、安定的に売上が見込め、かつ、汎用品に近い商品については、プライベート・ブランド化することで、十分に良い品質で低価格、短納期で入手できる商品を提供し、顧客の利便性を高める、という価値提供をより強化した。

MonotaROは、中小事業所をターゲットとして成長してきたが、2010年頃から大企業の工場や事業所がMonotaROの利用を始めた。直接資材と違い、間接資材については、購入意思決定が現場に分散している場合が多い。MonotaROは、大企業がこれら分散して行われた購買を取りまとめられる、大企業向け購買管理システムとして、2014年に「MonotaRO One Source」を、2017年に「MonotaRO One Source Lite」を導入し、大企業担当者を置いたが、これら以外の事業活動においては、中小企業ターゲットの方針の下で開発してきた活動の仕組みが活かされている。つまり、戦略の一貫性を保ったまま大企業への取組みを本格化させることに成功している。

収益性

株式会社MonotaROの投下資本利益率、営業利益率ともに5年間の業界平均を大きく上回っている。(業界平均との収益性比較は、PwC Japanグループの協力を得ている。)
収益性

株式会社MonotaROの活動システム・マップ

活動システム・マップ
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