受賞企業・事業レポート

株式会社ワークマン

2019年度 第19回ポーター賞受賞 ワークウエアやワーク関連用品の専門店チェーンを展開
フランチャイズ・システムにより、建設技能労働者向けを中心としたワークウエアやワーク関連用品の専門店チェーン「ワークマン」と「ワークマンプラス」を展開。 45都道府県に837店舗(2019年3月末)を有し、ワークウエア小売りの圧倒的リーダーである。専門店として1,700アイテム、9,000 SKU以上を扱い、防水、防風、防寒などプロ仕様の製品を低価格で販売する。製品寿命が長く、売切りのための値引きや廃棄をしない。品揃えや店舗レイアウトを全国共通にすることにより、業務を効率化している。地域や店ごとのニーズの違いには、週6回の高頻度配送で対応する。店舗は2人で運営可能で、フランチャイジーの事業性も良い。近年、アウトドアやスポーツテイストのデザインを入れ、アウトドア派やバイカーなどへの販売を増やし、さらには一般消費者にも受け入れられるようになっている。
※本稿は、受賞企業の応募資料、受賞企業へのインタビュー、公表資料に基づいて、一橋ビジネススクール教授 大薗恵美が執筆した。受賞企業の応諾を得て公開している。

業界背景

img_2019_04_p1.jpg 矢野経済研究所、『2019年ユニフォーム市場年鑑』によれば、2018年のユニフォーム市場規模(*1)は出荷金額ベースで5,254億円であった。過去5年間の傾向としては、2014年の4,949億円から前年比1%から2%強の割合で微増してきた。ワークマンが対象とするワーキングユニフォーム(食品以外の製造工場、建築業向け等の現場作業着)は、2018年度において、ユニフォーム市場の54.4%であった(矢野経済研究所、同調査)。

2008年9月のリーマンショックをきっかけとする景気低迷と建設投資の減少により、企業による作業服の支給(BtoB)が減り、代わって個人による購入(BtoC)が増加した。ワークマンの調べによれば、ユニフォーム市場の約7割が大企業・官公庁向けの納品(BtoB)、約3割が自営業者など個人向け小売販売(BtoC)であった。企業支給の際にはシンプルで地味なデザインが選ばれたが、個人が購入するようになり、派手な色遣いや、アウトドアやスポーツの要素を取り入れたスタイリッシュなデザインが投入され、顧客に選ばれるようになった。従来からの建設技能労働者の減少(*2)と高齢化に加えて、2020年開催の東京オリンピックに関連した建設投資の増加によって若手の建設技能労働者の不足に拍車がかかった結果、服装に対する職場の自由度が高まり、作業服のデザインの多様化が一層進んだ。

(*1) ユニフォームには、ワーキングウェア、オフィスウェア、メディカルウェア、フードウェア(飲食店向け、食品工場向け)、アミューズメント向けウェア、宿泊施設向けウェア、リラクゼーション向けウェア、学校制服を含む。
ユニフォーム市場に関する調査株式会社矢野経済研究所、アクセス2019年11月1日
(*2) 建設技能労働者の人数は1997年の455万人をピークに減少を続けており、2018年は328万人であった(総務省労働力調査を国土交通省が分析、暦年平均)。技能労働者とは、建設工事の直接的な作業を行う、技能を有する労働者で、人数は総務省労働力調査における「建設業の生産工程従事者、建設・採掘従事者、輸送・機械運転従事者」の合計。一方、技術者とは施工管理を行う者であり、直接的な作業は基本的には行わない。
「技能労働者の位置づけについて」国土交通省、2018年3月20日、アクセス2019年11月1日

ユニークな価値提供

株式会社ワークマンは、作業服の小売に特化、市場規模で7割を占める法人向け販売を行わない。45都道府県に837店舗(2019年3月末)をフランチャイズ方式で展開し、2019年3月期の売上は約670億円、うち約3割が作業服、残りは、作業靴、作業用品、レインウェア、アウトドアウェアであった。個人向け作業服市場の規模が857億円だったとすると、ワークマンは個人向け作業服市場において2割強のシェアを有している。作業服を売る小売店は全国に2,000店以上がある(*3)が、作業服の小売チェーンでは、ワークマンが最も多い店舗を持ち、続く「無法松」は50店(*4)、「プロノ」が43店(*5)であった(2019年10月末)。

ワークマンのターゲット顧客は、建設現場などで働く作業者だ。同社は一般消費者と対比して、これらの顧客を「プロ顧客」と表現する。ワークマンの第二のターゲット顧客は、一般消費者だ。オートバイに乗る人やキャンプなどのアウトドア・アクティビティを楽しむ人々が、防風、防水、防寒、防炎などの高機能なアウターウエアを既存の商品よりも大幅に低価格で販売するワークマンの顧客となり、ワークマンも2018年9月、一般消費者にアクセスの良いショッピングセンター内にワークマンプラスを開店、積極的に一般消費者にアピールしている。

ワークマンの商品は、高機能でありつつ、低価格だ。これがワークマンの第一の価値提供である。創業時より、「安く売っても儲かる」ローコスト経営を徹底。たとえば、1992年には業界慣行に反して売れ残り品のメーカーへの返品を廃止、全商品の買取に移行し、買取価格を低減。販売数量の多い物からプライベートブランド品(PB)を開発、機能、デザイン、価格競争力を強化。現在はPB品が販売金額で全体の40%を占める。ワークマンの価格競争力は、定価販売を前提としている。値引き販売は商品が廃番になる時のSや5Lなど端サイズの処分のために行われるのみで、全体の2%以下に抑えられている。

価値提供の二つ目は、求めている商品を顧客が短時間で見つけられることだ。プロ顧客は、現場によって様々な地域で働くことが多く、同じ店に通い続けるわけではない。また、気に入った用品を使い続ける傾向があり、明確な目的買いをする。職場への行きかえりに来店し、滞留時間は平均5分でしかない。ゆえに、短時間で求めている商品を簡単に見つけられることが重要なのだ。そのためにワークマンは、多くの店舗を出店し、その売り場レイアウトと品揃えを全国で共通化している。

ワークマンは、2013年から自社サイトでオンライン販売を開始。利用顧客は法人が中心だったが現在は個人が増加。オンライン販売の66%が、送料無料となる店頭受取を選択しており、全国に広がる店舗網との相乗効果を活かしている。

価値提供の三つ目は、プロ対象の専門店としての品ぞろえの充実だ。1,700アイテム、9,000SKU以上を取扱う。たまにしか売れない商品は、一つしか棚に陳列しないが、そのような陳列定数が1の商品が70%を占める。同時に、プロ顧客は安全面や使い勝手へのこだわりがあり、同じ商品を使い続けたいという希望が強く、そのような商品の欠品は許されない。商品を欠品しないためにワークマンは、店舗への夜間配送を一日一便、週6日行ない、売れた商品については翌々日の開店前までに補充する。

ワークマンの顧客は、プロ顧客を中心としており、その9割が月に1回のペースで来店する固定客だ。その数はおよそ200万人。平均して月に1回消耗品を、年4回作業服を購入する(*6)。消耗品は、手袋、タオル、作業靴などで、固定客の来店頻度を上げるため、ワークマンはこれらの商品の競争力を圧倒的なレベルにする事を重視している。

(*3) ワークマン調べ。
(*4) 株式会社細井が運営、九州、山口県を中心に展開。店舗数は無法松のウエブページより、アクセス2019年11月1日。
(*5) ハミューレ株式会社が運営、北海道、東北を中心に展開。店舗数はハミューレのウエブページより、アクセス2019年11月1日。
(*6) ワークマン調べ。

独自のバリューチェーン

株式会社ワークマンのバリューチェーンの最大の特徴は、製品開発、サプライチェーン・マネジメント、データに基づいた経営にある。

製品開発
製品開発は、デザイン、データ分析チーム、生産管理の人材が製品カテゴリー別にチームを構成し、担当する。PB商品の開発力強化のため、製品開発部門の人員を2016年度から2018年度の3年間で2.5倍に増強した。

ワークマンのPB商品は複数年販売するうえ、定価販売の方針もあり、数年間は維持可能な競争力が求められる。そこで、ワークマンのPB商品の開発方針は、機能面では競合が数年追いつけず、ECで販売される商品に定価で勝てるもの、「機能と価格に新基準」(*7)をもたらすようなもの、「WOWな製品のみ」を作ることだ。その結果、顧客が欲しいものはワークマンで購入する状態を作り出し、繰り返し購入するリピート客・固定客が顧客の大多数を占める状態を目指す。

海外素材メーカーとの素材開発段階からの協業と、数年間にわたる製品の提供保障による数量の見込みなどにより、機能と価格で突出した商品の開発が可能になっている。たとえば、企業でユニフォームとして採用されることも多い作業着のG-Nextシリーズは、10年間の供給保障付き、上下セットで税込み3,000円から提供しており、年間400万着以上を販売、競合はこの価格帯から撤退した。

アウトドアやスポーツテイストの商品開発においては、これらの分野で活動し、SNS上のフォロワーを多く持つインフルエンサーを「製品開発アドバイザリー・ボード」に招き、商品開発に参加してもらっている。ワークマンのアウトドアウェアは、作業着としての需要もあるため、10万着単位の生産を行うことができ、価格競争力をもたらしている。一般消費者にもアピールするアウトドアやスポーツテイストの商品の売上は全体の15%強(2019年3月末)。

サプライチェーン・マネジメント
ワークマンの品揃えの97%は全国共通商品で、商品部の分析チームが担当、3%は地域別の企画で、営業部の分析チームが地域クラスター毎に企画を担当している。実際の顧客ニーズよりも大幅に標準化した品揃えによる欠品を防ぐため、ワークマンは、2か所の物流センターから1点からの出荷を週6日行う。在庫回転数が年4回であることから週6日配送は過剰とも考えられるが、品ぞろえの標準化を維持しつつ顧客ニーズの多様性に対応するために、あえて行われている(*8)。物流施設や設備は自社所有だが、物流センターの運営はアウトソース。配送も専用のチャーター便を使用。

需要予測システムを自社開発。スーパーバイズ部、ロジスティクス部、ネット通販部、商品部のデータ分析チームが、店舗の最適品揃えと陳列数量、PB商品の発注量、サイズとカラーの最適アソートメント、海外生産品の物流センターへの最適入荷量などを算出。ワークマンは値引き販売を行わないため、販売データは顧客の需要をよく反映しており、需要予測に良質なデータを使用できる。予測精度は高く、さらに、予測精度を5名の専任チームが常時監視しており、週単位で予測アルゴリズムの微調整を行う。同時に、次世代のアルゴリズムを開発し、順次新システムに置き換える予定。

ワークマンは、主要国内ベンダーとの間で、買取型VMI (Vender Managed Inventory)を行っている。この仕組みでは、ワークマンが、需要予測、物流センターの在庫と入出荷データ、全国・地域・個店別の在庫と販売データをベンダーに提供し、ベンダーが自らの分析に基づいてワークマンの物流センターに納品、ワークマンは全量を買い取る。参加ベンダーは31社でワークマンの国内仕入れ量の87%をカバーしている。ワークマンは、欠品や物流センターの在庫増加などが一時的に起きても、ベンダーへのクレームとしない。ベンダーは、ワークマン以外のチャネルの販売動向も把握しており、的確な納品が行われる結果、買取型VMI導入前と比較して欠品率が減少し、物流センターの在庫回転率も大幅に改善した。これらのベンダーに対しては、発注業務が不要なため、ワークマンの業務も大幅に簡素化している。

ワークマンは、業界慣行に逆らってメーカーから直接調達を始めた際に応じたメーカーを重用しており、国内の主要調達先は20年前とほぼ同じ。長期的、安定的な取引関係にある事は、メーカー側もリスクを取ってワークマンの注文前から自主的に作りだめをして生産の平準化を行うなど、双方に利益をもたらしている。海外ベンダーも、10年前くらいからの取引を継続中。ワークマンは、わずかな価格差で取引先を変える事で得られるコスト削減よりも、取引先切り替えによるスイッチングコストの方が大きいと考えている。

販売促進
ワークマンの販売促進活動は、SNSを中心としており、3年前からインフルエンサーとマスコミ向けの新製品発表会を開催している。たとえば、2019年秋冬商品の発表会は、ランウェイに雨雪風の過酷な環境を作り出し、大いにマスコミに取り上げられた。2020年秋冬商品発表会では、インフルエンサーとのコラボ商品のみで構成されたファッションショーを計画している。

伝統的な販売促進手法の利用は限定的で、季節品の投入を知らせるチラシを年4回全国で配布する。チラシによる値引き販売は行わない。

店舗開発・フランチャイズ運営
1980年よりフランチャイズ・システムによる小売店運営を開始。地域とのつながりの強い地元の人材を中心にフランチャイザーを募集。直営店で開店し、売り上げが増えると業務委託契約、在庫リスクを取れるだけの売り上げ規模になるとフランチャイズ契約に移行する。フランチャイズ加盟店は、在庫リスクを取らない業務委託契約に戻ることもできるが、これを選択した例はほとんどない。加盟店収入は売り上げに完全比例。加盟店の満足度は高く、6年ごとの加盟店契約の更新率は、高齢による引退を除くとほぼ100%。50%以上の加盟店が親族への継承を希望しており、3世代目の経営者も誕生している。

出店は綿密な立地調査に基づいて、人口10万人に1店舗の割合で出店。目的買いの顧客が中心であるため、国道沿いなど視認性の良い一等地にはこだわらない。店舗は100坪の1パターンのみで標準化。用地によって縦長や横長のバリエーションはある。

店舗からの発注は、自動発注化が進められている。需要予測システムを基に本部が開発した自動発注システムが提示する推奨発注リストを、フランチャイジーが承認する仕組み。2017年に導入され、2019年3月末時点で837店舗中265店舗に導入済み。導入店は、店舗運営の省力化効果があった事に加えて、発注の適正化により、未導入店よりも売り上げ成長率が3%から5%高かった。

自動発注システムに加えて、標準化された店内レイアウト、定価販売によって値段変更作業が不要であること、プロ顧客は商品説明を必要としないことなどからワークマンの店舗運営はシンプル。また、品出し作業は朝のプロ顧客のピークが過ぎた後、一般消費者が来店し始める前の10時までを目途に行い、レジ清算は14時に行なう設定となっていることなどから、開店5分前の入店、閉店5分後の退店が可能。7時から20時の営業時間のためシフトが必要になるが、店長ともう1名の計2人で十分に運営が可能である。

人的資源管理
ワークマン社員の能力開発は入社1年目から2年目にかけての直営店での店長経験でコミュニケーション能力を育成することから始まる。加えて、全社員にデータ活用研修を行い、その後はデータ活用力かデザイン力の育成に注力する。

建築技能者を中心顧客としたまま一般消費者にもアピールする新業態、ワークマンプラスを成功させるため、データに基づいた経営を目指し、データ分析ソフト導入の2年前から、スーパーバイズ部門を中心にデータ活用研修を開始。部長以上の任用条件に改革意欲とデータ活用力を入れ、あるべき人材像を示し、自己研鑽を動機づけた。データ分析ソフト導入後は、一日何回データ分析ソフトにアクセスしたかで活用度を把握、低利用者には指導を行った。スーパーバイズ部、ロジスティクス部、ネット通販部、商品部それぞれにデータ分析チーム(兼務)を設け、分析ツール作りの指導や、自作分析ツールの発表会を実施。

人事評価は、直属の上司だけでなく、関連する他部署の責任者5から6人、部下も参加し、多面的に行う。

全般管理
ワークマンの重要な経営方針は、ステークホルダーの固定化と良好な関係構築である。顧客、株主、供給元、加盟店、社員が、ワークマンと関わって本当に良かったと思える事を目標としている。

最重要経営指標は社員一人当たりの営業利益で、これで小売企業No.1を目指している。そのために、徹底した標準化と効率化を行う。また、売上金額よりも、客数と常連客化を重視。

ワークマンは現場主義の会社で、経営幹部や社員の多くが月曜日にしか本社に出社しない。多くの決定は、月曜日の一日に集中して行われる。

効率的な意思決定を支えているのが、データ経営だ。地域や個店間の比較、未導入製品の発見、最低陳列量設定、気候クラスター毎の品ぞろえ、PB商品の生産量、物流センターの最適在庫量、配送計画など全ての業務分野でデータ分析ソフトが活用されている。

2014年から2018年目途で設定された中期業態変革ビジョンでは、ワークマンプラス店舗、オンライン販売という2つの成長戦略を設定。お客様には低価格、株主には高配当、社員には5年間で定昇分を除いて年収を100万円アップする、という目標にコミットした。

一方で、働き方改革のため、効率・能力アップと仕事を減らす事に取り組み、さらに、残業を減らすためなら、お客様や加盟店に迷惑をかけずにすむ場合、期限や納期を遅らせても良いと社員に宣言した。たとえば、決算発表日を1週間遅らせたことによって、経理部門の決算期の残業が半減した。投資家とのコミュニケーション改善のために決算発表日を早くしようという動きの中、働き方改革に対する経営陣の本気度を社員に示す事例となった。これらの選択の背後にあるのは、本気で変革するならば痛みを伴う意思決定を避けてはいけないという経営陣の考えだ。中期業態変革ビジョンも、目標達成のために社員の残業が増えることを避けるため、実現時期にはこだわらなかった。しかし、時間がかかっても必ず実行する、責任者は目標達成まで異動しない事が企業文化の一部となった。2018年度の社員の定休日は2017年度から5日増えたが、平均残業時間は年間84時間減少した。離職率も2.6ポイント減少。

(*7) ワークマンのテレビコマーシャルで使われているキャッチコピー。
(*8) ワークマンの試算によれば、週2回配送にすることで数億円の物流費の削減が可能。

活動間のフィット

株式会社ワークマンには、4つのコアとなる戦略上の選択がある。「WOWな製品のみを作る製品開発」「徹底した標準化と効率化」「関係先との長期的関係構築」「本気の働き方改革」だ。(本セクション最後に掲載した「株式会社ワークマンの活動システム・マップ」を参照ください。)

「WOWな製品のみを作る製品開発」は、海外素材メーカーとの協業、インフルエンサーとの協業、定価での複数年販売、固定客に支えられた販売数量、プロ客と一般客両方へのリーチがもたらす販売数量が支えている。

「徹底した標準化と効率化」は低コストを可能にし、「WOWな製品のみを作る製品開発」を支えている。「徹底した標準化と効率化」は、品ぞろえと店舗レイアウトの全国標準化、1品からの週6日配送、定価販売とデータ分析に基づいた経営(自動発注システム)が可能にしている。

「関係先との長期的関係」は素材メーカーとの協業を可能にし「WOWな製品」を可能にし、また、ベンダーとの買取型VMIを可能にすることで「徹底的な標準化と効率化」に貢献している。

「本気の働き方改革」は、残業よりも納期延長を選ぶ経営方針に加え、「徹底した標準化と効率化」によって可能になる。以上のように、4つの戦略上の選択肢とそれを支える活動が互いに整合性を持ち、強めあっていることがわかる。

戦略を可能にしたイノベーション

  • 日本初の買い取り型VMI(Vender Managed Inventory)。ワークマンは需要予測や在庫・販売データを提供するが、納入数量の判断はベンダーが行う。ワークマンは、自社の物流センターに納品される際に、全量を買い取る。
  • 同じ商品で、プロ顧客と一般消費者の両方を顧客に持つ、ハイブリッド型のワークマンプラスという小売業態を開発。ワークマンプラス専用商品はない。平日の朝夕はプロ顧客が来店、平日の昼と週末は一般消費者が来店、従来型店舗の2倍以上の売上をもたらしている。
  • アウトドアウエア市場に、低価格・高機能の新しい市場セグメントを創出。プロ顧客向け商品でもあるため、大量の販売が可能。最低10万着単位の生産をし、大幅にコスト低減。アウトドア、スポーツウエア市場にはこれまでになかった機能と価格のバランスを実現。

トレードオフ

  • 作業服の市場規模で7割を占める法人向け販売を行わない。法人向け販売の方がより大きい売り上げ規模を期待できるが、入札、見積もり、掛け売りなどの事務が煩雑になるうえ、少量多頻度納品が多く、物流管理も複雑になる。また、大手法人向け市場は、作業服・ユニフォームの大手卸売企業の寡占状態ができていて、参入障壁が高い。ワークマンは、売掛などを求めず店頭販売で対応できる20人以下の小規模法人には積極的に対応している。
  • 法人との加盟店契約・複数店契約を行わない。個人がフランチャイジーとして店舗を運営することで、店舗の成功が個人の成功に直結する仕組みとし、加盟店と本部が共に成長するモデルを目指す。
  • プライベートブランド商品(PB)による高利益率の追求をしない。低コスト、高機能なPB商品には競争力があるので粗利率を高く設定することも可能だが、ワークマンではナショナルブランド品、PB品問わず、原価率を一律63%に設定している。ワークマンの顧客は値札を見ずに購入する顧客が多く、顧客からの価格設定への信頼を損なわないため、ワークマンの取る粗利は一定に保つ。価格設定に費やす手間を省くこともできている。
  • 専門性の高い高額な工具は扱わない。専門性の高い工具は高度な商品知識が必要で、購入頻度も低く、加盟店の在庫負担となりやすい。ワークマンは、購入頻度の高い、働く人が身に着ける物を中心にした品揃えに特化し、加盟店の負担を軽減している。
  • 値引き販売をしない。PB商品は「機能と価格に新基準」をもたらすような特徴ある商品を開発基準としており、SNSの評判だけで完売するなど、競争力が高い。加えて、初年度はテスト販売と位置づけ、少量しか生産せず、次年度からは誤差10%の需要予測に基づいて生産しているため、売れ残りが出にくい。翌年に在庫で持ち越す季節品の場合にも、定価で売り切る。値引き販売をすると価格への顧客の信頼を失ううえ、値札の付け替えなどで店舗の作業が増える。
  • 流行を追うアパレル業にならない。ワークマンのPB商品は全て、プロと一般消費者の双方が使える商品として、平均5年の継続販売を前提に企画される。プロには製品の継続性と売り場レイアウトの固定化が評価されるが、一般消費者は新しい商品や売り場レイアウトによる刺激を求める傾向が強い。一般消費者のニーズに応えるために次年度は色や柄を変えることはあっても、デザインのパターンを変えることはせず、追加コストの発生を最小限に留める。
  • アウトドアウェアの専門家の雇用をしない。「製品開発アドバイザリー・ボード」制度を設け、キャンプなどアウトドアの製品使用状況をよく知るインフルエンサーの協力を得て製品開発に活かす。
  • 海外出店をしない。海外への販売はオンラインに特化。
  • 完璧な情報システムを求めない。ベーシックな機能だけの開発でスタートし、使っているうちに明らかになってくるどうしても必要な機能を追加開発する。最初から完璧な情報システムを求めないことによって、使わない機能を開発するコストを節約できる。
  • 社員の業績ノルマを設けない。各自の業績目標はあるが、必達のノルマではない。ノルマ達成のために残業して個人が頑張るのではなく、データ分析に基づいて業務を標準化・マニュアル化し誰でも業績を上げられる状態を目指している。
  • 意見を変えない上司を作らない。ワークマンではデータに基づいた経営を目指しており、データ分析の結果を見て意見を変える上司が良い上司として評価される。人事評価制度に部下が上司を評価する仕組みがある。
  • 社内行事をしない。社内行事は社内の人間関係構築やコミュニケーション改善のために行われる事が多いが、ワークマンでは、社内行事をせずに仕事上での社員の連携やコミュニケーションを育てている。例えば、新入社員の評価指標を「親切心・学習意欲・機動力」に設定、入社後2年間の直営店舗での研修(店長を経験)でコミュニケーションや接客能力を育成。ワークマンは、時間内に仕事を終えて家族や友人との時間、自分のための時間を多く持ち、リフレッシュすることを尊重している。

戦略の一貫性

ワークマンの競争戦略は、現場を移動する建築関係の作業者というコア顧客のニーズにいかに応えるかを中心に構築されてきた。それが、圧倒的な商品力、買い物しやすさ、品ぞろえという価値提供の選択につながっている。その価値提供を実現するために、徹底的な標準化と効率化、値引きなし数年間供給、長い取引関係を持つサプライヤーとの協業が行われてきた。これらの活動が形成されていった経緯は以下に見ることができる。

ワークマンの1号店開店は、1980年9月30日。創業時より、「安く売っても儲かる」ローコスト経営に努め、卸や代理店経由で調達する業界慣行に逆らって、メーカーとの直取引を始めた。1992年、業界の商習慣であった売れ残り品のベンダーへの返品を全てやめ、全商品買取に移行。売れ残りリスクを取ることによって、仕入れ値の低減を実現。2000年、「エブリデー・ロー・プライス」を打ち出し、一層の低価格戦略を開始。2010年、販売量の多いものからPB商品へ移行。価格競争力と収益力を高めた。

ワークマンの戦略の一貫性で特筆すべきは、一般客という新しい顧客セグメントに成功裏にアプローチしながら、プロ客を対象とした事業でそれまでに培った強みを損なわず、活かすことに成功した点にある。具体的には、作業着としても売れることによる規模の経済がもたらすコスト削減、値引きしないで定価で売り切る方針、品揃えと店舗レイアウトの標準化、シンプルな店舗運営などだ。同時に、単品管理やデータ経営を導入し、また、両方の顧客セグメントにアピール可能なハイブリッド型店舗の開発など、新しい顧客セグメントへのアプローチに求められる新しい組織能力の獲得に成功した。

2014年、この年から2018年目途の中期業態変革ビジョンを策定。プロ顧客以外への客層拡大とオンライン販売によるチャネル拡大による成長戦略を設定。そのため、2012年、データ分析についての教育を開始。2013年、単品管理プロジェクトをスタート。2014年、データ分析ソフトを導入し、単品データの高度な分析を開始。2016年、機能、デザイン、価格競争力に優れたPB商品を、アウトドアテイストの商品ブランドにまとめ、立ち上げた。2018年9月、既存の商品ラインの中から一般消費者にアピールする商品のみを取り扱うアウトドア専門の新業態店、ワークマンプラスを、大型ショッピングセンター、ららぽーと立川に出店。ワークマンプラスでは、ワークマン既存店で販売していた1,700アイテムから320アイテムだけ抜き出して販売。高機能、低価格、デザイン性があった商品を、マネキンに着せ、照明を工夫することで、一般消費者を惹きつける事に成功した。2018年11月、路面店でプロ顧客と一般消費者の両方に対応するハイブリッド店をワークマンプラスとして開店。その後に開店する新店は全て、ハイブリッド型ワークマンプラスとした。

収益性

株式会社ワークマンの投下資本利益率、営業利益率はともに、5年間の業界平均を大きく上回っている。(業界平均との収益性比較は、PwC Japanグループの協力を得ている。)
収益性

エン・ジャパン株式会社 中途求人メディア事業部の活動システム・マップ

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