受賞企業・事業レポート

株式会社ヤッホーブルーイング

2020年度 第20回ポーター賞受賞 クラフトビール製造販売
ヤッホーブルーイングは、エールビールに特化したクラフトビール・メーカー。市場の主流であるラガービールは扱わない。 顧客からの強い共感を得ることを目標に、個々の製品に明確な個性を持たせている。そのために、具体的なペルソナを念頭に、100人に一人が強く共感することを目指した製品開発で、個性的な味わい、製品ネーミング、パッケージを開発。常時10数種類を提供。「よなよなエール」などの全国に流通している主力製品についてはキリンビールに生産を委託。自社工場では製品開発と少量生産品の製造を主に行う。 顧客のブランド・ロイヤルティを高め、伝道師ともなる「熱狂的」レベルでファン顧客との関係を長期的に築くため、リアル、オンライン双方でファンが集まるイベントや参加型プロモーション、双方向コミュニケーションを充実させている。
※本稿は、受賞企業の応募資料、受賞企業へのインタビュー、公表資料に基づいて、一橋ビジネススクール教授 大薗恵美とヤッホーブルーイング社内有志プロジェクト「ポーター賞執筆・仮装PJ 」が執筆した。受賞企業の応諾を得て公開している。

業界背景

2020_Yoho_photo.jpg 国内ビール系飲料(ビール、発泡酒、新ジャンルを含む)業界は、キリン、アサヒ、サントリー、サッポロ、オリオンの大手5社が生産量で99%(*12)を占める集中化の進んだ業界。国内で生産しているのは303事業者。大手5社を除くと、小規模な生産者が多数存在する市場で、製造数量で年100キロリットルに満たない製造業者が総事業者数の83%を占める(*13)。

ビールの市場規模は1994年をピークにしばらく横ばいであったが2002年から減り始め、現在はほぼ半減した(数量ベース)。酒離れと言われるものの、酒類全体の市場規模は1999年のピークから1割強の縮小であった(*14)。その中でビール類の縮小幅は突出しており、リキュールを含む他の酒類に需要が流れた様子。2011年以降のビール消費量は年率1から2%でゆるやかに減少が続いている。

販売ルートでは、レストラン併設型が最も多く38.0%(事業者数)、卸売り・その他が31.4%、料理店・チェーン店供給が23.4%、テーマパーク内施設・物産店・売店等併設型が7.3%であった。近年、居酒屋の売上減少が顕著。居酒屋は、上の統計では、料理店・チェーン店供給チャネルに含まれる。

縮小傾向にあるビール系飲料の中で、近年成長しているのが、クラフトビール、と言われる。ヤッホーブルーイングの調査によれば、クラフトビール消費量はここ数年、年率4?5%で成長している。従来大手ビールメーカーは、ラガー酵母を下面発酵させたラガー系ビール、特に、ラガービールの一種である「ピルスナー」に特化して製造してきた。ラガービールは、のどごしやキレが特徴。これに対して、1994年の酒税法改正で小規模事業者の参入が許されるようになって以降、小規模生産が可能なエール酵母を上面発酵させたエール系ビールが供給されるようになり、それまでラガー系ビールという枠の中で行われていた競争が、エール系ビールという明確に異なるテイストが提供されるようになった事と、小規模生産ゆえに個性的な味にチャレンジできるようになった事で、ビールの味に多様性が生まれ 、これがクラフトビールという新しいセグメントを創った。

クラフトビールの定義はあいまいで、大手ビールメーカーの資本下にない独立した小規模醸造所が製造している場合も、大手ビールメーカーが従来品と異なる味わいのビールを製造し、クラフトビールと銘打つ場合もある。以下、日本におけるクラフトビール市場の形成を振り返る。1994年4月の酒税法改正により、ビールの製造免許取得に必要な最低製造量がそれまでの年間2,000KLから清酒と同じ60KLにまで引き下げられた結果、「地ビール」として少量製造する事業者が多数生まれた。参入したのは、日本酒メーカー、テーマパーク、地域おこしの活動の一環として第三セクタ―などで、主たる事業を他に持っている事業者が多かった。個性豊かな風味が人々の関心を呼び、また、地域の特産品として贈答やお土産に多用されるなど、地ビールブームが起こった。しかし、発泡酒(*15)が低価格もその魅力の一つとして台頭した事に加え、個性的すぎる味や、品質のばらつきがある醸造所も中にはあり、2000年代に入ったころ当初のブームは終わった。一方で、海外で醸造技術を学ぶなど技術を磨き、本格的なクラフトビールを造り続ける醸造所もあった。そして、2010年代半ばくらいから米国でクラフトビール人気が盛り上がる中、日本国内でもクラフトビールとして再び脚光を浴びるようになった。しかし、冒頭にも紹介したように大手5社が国内生産量の99%を占め、その他のメーカーの生産量シェアは1%でしかない。アメリカではクラフトビールのシェアは数量ベースで13.6%、金額ベースで25%(*16)と言われ、日本におけるクラフトビールの成長余地は大きいと期待されている。

クラフトビール・セグメントに対する大手4社のアプローチは、キリンとサッポロ、アサヒとサントリーの2グループに分けられる。キリンとサッポロは別ブランドで展開しており、商品を見てもすぐには両社の製品とわからない。アサヒとサントリーは自社ロゴが目立つ商品パッケージで、自社ブランドと紐づけながらも「クラフト」という言葉を使い、ラガービールとの違いをアピールしている。

クラフトビールに最も積極的だったのはキリンビールで、2014年にヤッホーブルーイングと業務資本提携、2015年には東京都心の代官山に醸造所を併設したレストラン、スプリングバレー・ブルーワリーを開店。2016年、米ブルックリン・ブルワリーと資本業務提携、日本国内での同社製品の取り扱いを始めた。また、飲食店がクラフトビールを提供しやすくするため、ビアサーバー「タップマルシェ」を2017年に導入した。タップマルシェは2つか4つのディスペンサーが選べ、様々なメーカーが提供する20種類から選ぶことができる。その20種類には、スプリングバレー・ブルーワリー、ヤッホーブルーイング、ブルックリン・ブルワリーなどの商品の他、日本国内様々な地域のクラフトビールが含まれている。タップマルシェは、小型で置く場所を取らず、ビールは3リットルのペットボトルで供給され、そのペットボトルは返却不要と取り扱いが容易で、既に13000店舗に導入されている(*17)。キリンは2019年11月、米クラフトビール・メーカー、ニュー・ベルジャン社の買収を発表した。

サッポロビールは2015年、100%子会社であるジャパンプレミアムブリュー社を通じて自社製品「クラフトラベル 柑橘香るペールエール」を発売。2017年には米老舗クラフトビール・メーカーのアンカーブリューイングを買収。2019年にはサッポロビール本体から「イノベーティブブリュワー」ブランドを投入し、個性的な味のエールビールを相次いで発売した。

サントリーは「クラフトセレクト」シリーズを持ち、また、東京の武蔵野工場で製造し「Brewed in Tokyo」と銘打った「東京クラフト」シリーズを販売。

アサヒビールは、1994年に株式会社隅田川ブルーイングを設立。東京都墨田区にパブブルワリーを持ち、また、茨城県にマイクロブルワリーを有する。アサヒビールブランドからも、「クラフトスタイル」シリーズを発売しているものの、2018年度に始まった中期経営計画の優先順位は、プレミアムセグメントにあった(*18)。ビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)からイタリアの「ぺローニ」やチェコの「ピルスナーウルケル」などを買収。「スーパードライ」を含め、世界のプレミアムセグメントでの販売を拡大する計画と報じられている。

(*12)国税庁、2020年、『地ビール等製造業の概況(平成30年度調査分)』. https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/seizogaikyo/beer/pdf/h30/h30beer_all.pdf(最終検索日、2020年11月27日)
(*13)同上.
(*14)国税庁、2020年、酒類課税数量の推移(国税局分および税関分の合計)国税庁ホームページ https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shiori/2020/pdf/026.pdf (最終検索日、2020年11月25日)
(*15)麦芽比率を低く抑えた発泡酒はビールの規定から外れるため、ビールより酒税が低く、小売価格もビールより安い。
(*16)米業界団体、Brewers Associationによる統計。数字は2019年。https://www.brewersassociation.org/statistics-and-data/national-beer-stats/ (最終検索日、2020年11月25日) 統計は同団体によるクラフトブリュワーの定義に従っている。自ら醸造所を持つメーカーで小中規模生産者(年間生産量600万バレル以下、7億リットルに相当)であり、かつ25%以上の株が大手アルコール飲料事業者に所有されていない独立した事業者。 https://www.brewersassociation.org/statistics-and-data/craft-brewer-definition/(最終検索日、2020年11月25日)
(*17)キリンビール株式会社、タップマルシェ・ホームページ、https://www.tapmarche.jp/(最終検索日、2020年11月25日)
(*18)アサヒグループホールディングス、公式ホームページ、 https://www.asahigroup-holdings.com/company/summary/(最終検索日、2020年11月25日)

ユニークな価値提供

ヤッホーブルーイングの価値提供は、「クラフトビール体験」の提供だ。ヤッホーブルーイングは、自社が顧客に支持されている価値を、「個性的な味わい、つくり手の顔が見える、革新的行動」と定義している。同社はクラフトビール体験を、クラフトビールという製品の提供だけではなく、様々なコミュニケーションを通じて作り出そうとしており、この考え方は、同社の事業定義が「ビールを中心としたエンターテインメント事業」であることに表れている。同社は、「短期的な売上・シェア拡大や新規顧客の獲得を追うこと以上に、長期的にお客様との関係性を深め、人生で不可欠な存在になること」を経営目標に掲げており、その結果として伝道師ともなる「熱狂的なファン」が生まれると考えている。同社のミッションは、「ビールに味を!人生に幸せを!」だ。「画一的な味しかなかった日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出することで、ビールファンにささやかな幸せを届けること」を目指している。

ヤッホーブルーイングはエール系ビールに特化し、常時10数種類ほどの製品を提供している。同社の商品の特長は、それぞれの個性が際立っている事にある。味の個性だけでなく、想定する顧客がどのような人で何を求めているかというイメージがそれぞれにあり、その中にビールを飲むという体験が位置付けられている。その結果、個々の製品にはっきりしたパーソナリティがあり、顧客が今の気分にぴったりだと感じたり、親近感を感じたりするなど、情緒的なつながりが生まれやすくなっている(*19)。たとえば、製品開発において同社が設定した顧客のペルソナは、「よなよなエール」は、「多くの人と少しだけズレており、型にはまらない趣味趣向を持ち、自分の価値基準を持っている40歳前後のビール好きの大人の男性」、「水曜日のネコ」は、「責任ある仕事をこなすキャリアウーマンで、ファッションや持ち物にこだわりが強く、休日は朝からヨガに行くような、東横線沿線に在住の30歳前後の女性」といった具合だ。「よなよなエール」「水曜日のネコ」、苦みの強いインディアペールエールである「インドの青鬼」など、製品のネーミング、イラストを使ったラベルのデザイン、ともに個性的で、製品ごとにテイストが異なる。

10種類以上ある製品のうち、「よなよなエール」や「水曜日のネコ」など、数種類は定番商品で販売数量も多く、広く流通している。それ以外の商品は時折入れ替わる。

顧客との関係性を深めるコミュニケーションもまた、同社のクラフトビール体験という価値提供の実現に貢献している。同社のコミュニケーションの特徴は、双方向、参加型のスタイルで、楽しむ事を中心テーマにしている点にある。たとえば、自社ECサイトは、定期購買プログラムに申し込むことができる他、クラフトビールを軸にした多様な楽しみ方を紹介している。たとえば、クラフトビールと他ジャンルの組み合わせを紹介する「よなよなアウトドア部(クラフトビール?アウトドア)」等の部活動形式の記事が掲載される。これらの記事は販売促進を目的とするのではなく、サイト訪問者が純粋に楽しめることを重視している。また、顧客がSNSに投稿したビールの写真を記事で紹介したり、記事の一部をファンイベントの場で体感する機会を設けたりするなどして、顧客と双方向のコミュニケーションを増やしている。

ファンイベントもまた、顧客参加型で行われる。よくある「ビアフェス」ではビールとフード提供し、新しい顧客や既存顧客との接点を設けると同時に、売上獲得を目的とする事が多い。一方、同社のファンイベントは、「エンゲージメント向上」を最重要目的と位置づけている。最も規模が大きく人気も高いイベント、「よなよなエールの超宴」では、ビールの提供に加え、醸造知識の提供やテイスティング講座など、「好きな製品について、もっと知りたい」という知的好奇心を満たすコンテンツを提供。ファンイベントの開催回数は通算で500回以上、延べ参加者数はおよそ44,000人に達する。2019年は台風のため直前に開催中止となったものの、企画は10,000人という規模にまで拡大した。これは、ビールメーカーが単体で主催するイベントとして国内最大規模。多くのスタッフがイベント運営や出演に関わり、ファンと双方向に懇親する。また、顧客が運営スタッフや出演者として参加できる機会を設けており、ヤッホーブルーイングとファンとの共創によってより強い関係性が構築されている。イベントに参加した顧客の満足度は非常に高い(*20)。

ヤッホーブルーイングのファンイベントが熱心な顧客が望むものである事は、ファン主導で行われるイベントが誕生したことから推し量ることができる。2018年、20人のファンが企画・運営した「ファンによるファンのためのイベント、ファン宴」が行われ、ヤッホーブルーイングの社員も招かれた。100人規模の「超ファン宴」も、やはりファンの企画で開かれている。

新型コロナウイルスによるイベント自粛下、ヤッホーブルーイングは「おうち超宴」をオンライン開催し、延べ約10,000人のファンが参加した。ヤッホーブルーイングはコロナ以前の2015年から小規模なオンライン飲み会を主催していた。テーマは季節や新商品、イベント企画など、時によって異なるが、チャット機能を使ってファンとのコミュニケーションを取っている。これまでに放送は44回(*21)を超え、2か月に1回ほどのペースで実施している。

(*19)同社の顧客調査からは、「理想像の実現」「癒やし・くつろぎ感」「自己確信」「世界観への共感」「仲間をつくる」といった価値観を顧客が感じていることが示された。
(*20)同社が行った2018年の超宴終了後の顧客調査では、顧客満足度94.6%であった。
(*21)2020年12月1日現在。

独自のバリューチェーン

ヤッホーブルーイングのバリューチェーンの最大の特徴は、製品開発、製造、販売、マーケティング、人的資源管理、企業文化・風土の形成にある。

技術開発
ヤッホーブルーイングは、個性的かつレベルの高い製品開発を維持し続けるため、世界的なビール品評会に出品し、絶えず外部からの客観的な評価を受けている(*22)。また、クラフトビールの先進国アメリカやヨーロッパをはじめ各国を代表する醸造家との技術交流を続け、世界最先端の醸造技術や設備、市場情報などを収集している。和の食材である鰹節や柚子、桜の葉の塩漬けなどを使った製品を発売したり、国内での量産事例のほとんどない最先端のビアスタイルを国内でいち早く製品化したりするなど、革新的な製品づくりを行っている。

製品開発
ヤッホーブルーイングは常に10以上の製品を販売しているが、マスマーケットを狙うのではなく、それぞれの製品はその市場規模が限定されたニッチ・セグメント向けに開発される。同社の製品開発の方針は、1)差別化を他社が真似を躊躇するくらい行う、2)ターゲットは狭く、具体的に、3)賛否両論あって良い。

製品開発の過程で具体的なペルソナを設定し、製品ごとにターゲット顧客を徹底的に絞り込む。そしてターゲット顧客の価値観や嗜好に合致するように製品の香味やパッケージ・デザイン、ネーミングを徹底的に追求する。顧客調査では、平均点が最も高い選択肢よりも、平均点が多少低くても一部の人に非常に高い評価を得た選択肢をあえて採用し、より個性を尖らせる。端的に表れているのはパッケージ・デザインだが、笑っているような笑っていないような無表情なネコのイラストが描かれた「水曜日のネコ」、カエルのヘタウマ調のイラストが描かれた「僕ビール君ビール」など、一見するとビールとわからない個性的なものばかりだ(*23)。

製品開発は、マーケティングの初期段階から製造メンバーも加わり、部署横断プロジェクトとして進められる。これにより、製造チームもターゲットの理解がより深まり、かつ双方向からの議論が行われる。製造部門以外を含む全スタッフが自由にビール醸造できる「試験醸造制度」があり、実験的な製品を自由な発想で生み出すことができ、大胆な製品開発を支えている。

製造
ヤッホーブルーイングは小規模な醸造所を2つ持っており、ここで製品開発ならびに少量生産の製品を製造する。「よなよなエール」、「水曜日のネコ」といった全国流通している主力商品は大きな生産量が求められるため、業務資本提携を結んでいるキリンビール社に生産委託をしている。この組み合わせにより、全国流通を可能にする生産能力を確保しながら、自社工場では少量多品種で個性的な製品の開発に集中することができる。

販売
ヤッホーブルーイングは大手競合の追随が難しいようなチャネルに集中して販売を行っている。1つ目は自社ECだ。ECにより店舗流通では行き届かない全国各地にも製品を1本単位で販売することができる。また、EC上では顧客と直接コミュニケーションを取ることができるため、個性的なブランドの価値を十分に伝えることができる。2007年より始めた定期宅配サービス「よなよな月の生活」では、限定ビールを含むヤッホーブルーイングのクラフトビールを毎月自分で選ぶ体験や、会報誌によるビールの楽しみ方等の情報を提供している。イベント先行予約権利、公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS割引」などの特典もあり、ファンのロイヤルティ形成に貢献している。2020年9月における定期購買会員数は5400人、継続率は9割を超える。一方、大手ビールメーカーは、流通業界からの反発を招いて店頭シェアを落とすおそれから、ECに注力することが難しい。

2つ目は、日本有数の観光地であり、日本で最もクラフトビールシェアの高い軽井沢エリアだ。軽井沢はヤッホーブルーイングの地元であり、軽井沢という特定のエリアに集中的に営業リソースを投下している。地の利を活かした高頻度の営業や高レベルのサービス提供を通じて地域の小売店舗との信頼関係を構築、その結果、地域トップのスーパーチェーン「ツルヤ」では、充実した品揃えを実現している。特にツルヤ軽井沢店は、ヤッホーブルーイングの「聖地」のような存在として話題となり、全国各地からファンだけでなく、全国のバイヤーまでもが視察に訪れる店舗になっている。一方、大手ビールメーカーにとって特定のエリア集中型の営業は、その他地域の取引先から同様の対応を求められるなど、全体のコスト増につながる可能性があり、選択しにくいアプローチである。

3つ目は、ターゲット顧客との親和性が高い流通事業者への集中だ。具体的には、流通では大手コンビニエンス・チェーン「ローソン」や高級スーパーマーケットの「成城石井」など、料飲店向けでは、ワンダーテーブル社と提携した公式ビアレストラン「YONA YONA BEER WORKS」、キリンビール社が手がける飲食店向けクラフトビールサーバー、「タップマルシェ」に集中している。これにより、クラフトビールに関心のある層へ効率の良いアプローチができている。

マーケティング・プロモーション
ヤッホーブルーイングのコミュニ―ションやプロモーションは、顧客のブランド・ロイヤルティのレベルに合わせて、ブランド・ロイヤルティを高めていくように設計されている。最初の段階は、SNSやメルマガなどのコミュニケーションを通じてヤッホーブルーイングに対する理解を進めてもらい、ブランドに対する好意が生まれることを目指す。ある程度好意を持っている顧客は、同社が企画する各種イベントに参加してくれる傾向が高いので、そこで同社スタッフ、顧客同士で交流する機会を設けることで、同じ価値観を共有する仲間との認識を形成する。参加型の活動を重ね、より深い関わりの機会を設ける事で、互いのニックネームと顔が一致する、顧客もスタッフも互いにニックネームで呼び合う仲間としての関係が構築される。この状態を同社では、「熱狂的ファン」と表現する。さらには、ヤッホーブルーイングのスタッフでないとできないような体験に参加することによって、顧客がヤッホーブルーイングを大切なものとして考えるようになり、その良さを周囲の人に伝え、また、時には建設的な批判もする、最もブランド・ロイヤルティの高い伝道師のレベルに至る。

たとえばヤッホーブルーイングの認知を高める段階では、顧客が思わずSNS上でシェアしたくなるような参加型のプロモーションを重点的に行っている。たとえば、若年層をターゲットとしたローソン限定販売の商品、「僕ビール、君ビール。」では、パッケージにデザインされた「カエル」のイラストになぞり、「カエル捕獲大作戦」というプロモーションをツイッター上で告知。ローソンで同商品を購入し、カエル捕獲、としてビールの写真を撮り、ツイッターで報告してもらう企画だった。夜にはオンライン生配信による飲み会を実施。発売後4日間で2500件以上の「○○(地域名)でカエル捕獲!」などの投稿が集まり、「#カエル捕獲」が一時トレンド入りするほど盛り上がった。「僕ビール、君ビール。」は発売開始初週の販売実績において、同時期に発売された大手競合の限定商品のローソンにおける売上を上回った。

また、夏季土日限定で行われる醸造所見学ツアーは、スタッフ自ら現場のガイドを行なう。参加する人はビールが好きでも必ずしもヤッホーブルーイングのファンではないかもしれないが、見学ツアーを通じてクラフトビールへの理解を深めるだけでなく、ヤッホーブルーイングのミッションやスタッフの想いに触れる。年間3000人が訪問。

ファンイベントは既存の顧客との関係構築に役立っているだけでなく、ヤッホーブルーイングとの関係がまだ浅い潜在顧客との関係の始まりや強化にも役立っている。たとえば、超宴に関して同社が行った調査によれば超宴の参加者の5割はメルマガ、SNS、公式ウェブサイトなど、ヤッホーブルーイングのオウンドメディア経由で超宴が行われることを知っており、既にヤッホーブルーイングとのコミュニケーションが成り立っているファン層である事がわかる。しかし、3割は友人・知人からの口コミだった。超宴が楽しいと考えるファンが知り合いを超宴に連れて行き、ヤッホーブルーイングのファンが広がる構図ができている。

最終段階である、ヤッホーブルーイングのスタッフでなければ味わえないような体験としては、ヤッホーブルーイングのスタッフと共に同社の未来を考えるイベントが行われている。2018年、ヤッホーブルーイングは、ファンとヤッホーブルーイングの中期計画を共有し、一緒に会社の未来を考える、「よなよなこれから会議」を開催した。ヤッホーブルーイングにやって欲しいことではなく、ヤッホーブルーイングと一緒に自分がやりたい事があるファンを書類審査で選び、アルコールなしで3時間半におよぶ議論が行われた。

コミュニケーション
ヤッホーブルーイングは、短期的な売上や利益の獲得よりも、中長期的な顧客のロイヤルティ向上に注力している。様々な施策を通じて顧客のエンゲージメント向上を実現することで、長く顧客として留まり購入してもらえるだけでなく、周囲への推奨活動にもつながる。たとえば、「熱狂的なファンを増やすこと」をミッションとしたファンイベントをはじめとした施策を継続実施している。加えて、自社ECの定期会員サービスにおいては同梱の会報誌をする他、ECサイトやフェイスブック、ツイッターなどを通じて様々な活動の紹介や、ファンからのコメントの紹介など双方向性を意識した取り組みを行っている。

お客様対応
ヤッホーブルーイングでは、受注処理のような定型業務は外部のパートナー企業に委託する一方、お客さまからの問い合わせ対応には自社スタッフがあたる。顧客対応部署ではマニュアルに沿った均質で効率的な対応をする場合が多いが、ヤッホーブルーイングでは「究極の顧客志向」という組織文化の下、効率やマニュアルにとらわれずお客さまの期待を超える感動レベルの対応を常に推奨している。お客様の期待を超える実践を重ねることによって顧客との長期的な関係の構築を目指しているからだ。これを組織として実現するため、「究極の顧客志向」という価値観の浸透に加え、主要KPIを、一般的に使われるコストに関連したものから、顧客対応における熱狂度へとシフトした。近年、年間400件を超えるペースで同社が「Wow!」と認定する対応が生まれている。たとえば、南極地域観測隊に所属している顧客から年間契約の途中退会の相談があった際、その理由が南極への派遣が決まったためであると顧客から知らされたスタッフは、違約の案内をするのではなく、出発日を聞き、「遠い新天地に向かうお客様に"エール"を送るため」、勤務地である長野県から顧客の旅立つ成田空港まで、よなよなエールとともに見送りに行った。

人的資源管理
ヤッホーブルーイングは、スタッフの自主性を重視し、所属部署問わず課題意識を持つスタッフが自発的に部署横断型のプロジェクトを立ち上げることができる「プロジェクト制」の仕組みがあり、20%の時間をプロジェクトに充てる。

スタッフ一人ひとりが自ら考え行動し、チームで成果を生み出す手法を学ぶために「チームビルディングプログラム」を年1回、希望者を集め業務時間内に行う。5日間にわたってチーム作りの手法を学び、実践し、その学びを自分のチームに持ち帰る。近年はより上位のプログラムや、新入社員やパート社員でも気軽に参加できるライトなプログラムを追加開催し、80%以上のスタッフがいずれかのプログラムを受講済み。

ヤッホーブルーイングの本社と醸造所は長野県にあるが、正社員の8割は県外出身者。新卒採用では文系理系を問わず、学士卒から博士卒まで、中途採用では、官公庁、人材関連サービス業界、情報通信業界など、他分野からの出身者を採用し、多様な人材が集まっている。採用時から、経営理念への共感を採用条件としている。

入社後には、新卒・中途関係なく1ヶ月もの期間をかけて「新人研修」を行い、経営理念や企業文化を丁寧に伝える。研修の過程では、実際の事業上の課題解決を行う「新人PJ」を行い、上述のチームビルディングやプロジェクト制を実体験することで、確実な文化浸透を図っている。

平均年齢は33歳で、若手のうちから全社的なプロジェクトのリーダーを担当する。管理職にあたるディレクターへの昇進は、立候補制をとっている。年に一度プレゼン大会が開かれ、立候補者が立案した経営戦略や事業計画を全スタッフの前で発表する。次期ユニットディレクターは、スタッフからのアンケート結果を基に決められる。OJT期間中の新卒採用1年目を除き、誰でも立候補することができる。

柔軟な働き方を推奨しており、就業時間はプライベートの都合であっても柔軟に調整が可能。理由は問わない。チーム内のコミュニケーションと信頼関係がなければ成立しにくいため、日常から積極的にコミュニケーションが増えるような施策を行っている(下の組織・風土づくりの項を参照)。正社員産休取得率100%、産後復帰率100%、男性社員育休取得率66%(2019年度)。ヤッホーブルーイングは、Great Place to Work社の主催する「働きがいのある会社」ベストカンパニーに2017年から2020年まで4年連続で選出されている。2020年度は中規模企業(従業員100人以上999人以下の部門で27位)(*24)。

組織・風土づくり
ヤッホーブルーイングは、独創的な取り組みを実行し続けるためには、スタッフ一人ひとりが個性を十二分に発揮し、高い質で十分な量の議論をすることが欠かせないと考え、これを実現するため、フラットな組織づくりを行っている。組織設計の面では、階層を極力廃し、社長-ディレクター-プレイヤーの3階層としている。

風土づくりの面では、フラットな企業文化をつくるために様々なコミュニケーション施策を設計し取り入れている。例えば、年次や職位を問わずあだ名で呼び合う「ニックネーム制」を取っており、社長の井手氏は「てんちょ」と呼ばれている。 毎朝30分を使って業務と関係ない雑談を行い相互理解と心理的安全性を高める「朝礼」には、社長、ディレクター、パートスタッフも含め全員が参加し、一人ずつ「仕事と関係のないくだらない話」をする。相互理解が深まることで、仕事でも立場や経験を超えて忌憚のない意見交換ができる。

ヤッホーブルーイングは、あらゆる場面における施策を通じて、社員間のコミュニケーションを活性化させることで、フラットに議論し合える文化を作っている。同社は、フラットな文化が、個性的なビールの開発や顧客へのビールの楽しみ方を提供する上で、最も重要な土台だと考えている。

(*22)「よなよなエール」がInternational Beer Competitionアメリカン・ペール部門金賞受賞(2000?2008)。「IPA2016」がWorld Beer Cup 2016でアメリカンスタイル・ストロング・ペールエール部門銀賞受賞。「軽井沢ビールクラフトザウルスペールエール」がInternational Beer Cup 2018アメリカンスタイル・ペールエール部門銀賞を受賞。「クラフトザウルスブラックIPA」がInternational Beer Cup 2019アメリカンスタイル・ブラックエール部門銅賞を受賞。
(*23) アルコール飲料のパッケージ・デザインが一見してそれとわからない事について、未成年誤飲を誘発する可能性があると、消費者団体が懸念を指摘しており、大手ビールメーカーは、このようなデザインを忌避している。たとえば、2000年7月に主婦連合会が、国税庁長官、ビール酒造組合会長などに宛てた「未成年の飲酒防止についての要望書」の中で、「一見清涼飲料に見えるようなパッケージ・デザインを採用しないこと」を、要望の一つとして挙げている。 https://shufuren.net/requests/requests052/(最終検索日、2020年11月25日)
しかし、ヤッホーブルーイングは実売データを元に、誤飲を誘発するリスクは極めて少ないと判断し、業界の慣習にとらわれないデザイン考案を続けている。
(*24) Great Place to Work Institute Japan ホームページ、 https://hatarakigai.info/ranking/japan/2020.html(最終検索日、2020年11月25日)

活動間のフィット

ヤッホーブルーイングの活動は、「ビールに味を!人生に幸せを!」という同社のミッションを実現するために選択され、最適化されている。自由で遊び心があり、かつ技術に裏付けられた製品開発は、一人ひとりが自律して考え、かつチームとして議論を深められる同社の企業文化・風土と、それを支える人材育成と社内コミュニケーションの仕組みが可能にしている。(本セクション最後に掲載したヤッホーブルーイングの活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 採算度外視で熱狂を生み出すファンイベント。ファンイベント企画・運営機能を担当する部署を社内に持ち、企画から運営に至るまで、ほぼ全て自社で設計、実行をする。製造業においてこのような部署を社内に持つことは非常に珍しい。
  • インサイトを深く捉えた、個性的な製品。
  • ビール業界の慣習にとらわれないパッケージ・デザインやネーミング。デザインやネーミングは、個性的で世の中にないようなものであるべきと、同社は考えている。
  • 職位が3階層しかないフラットな組織文化とそれを支えるコミュニケーション施策。「朝礼」、「ニックネーム制」、「チームビルディング研修」など。
  • 競合他社(キリンビール)へのビール生産委託。

トレードオフ

  • マス層をターゲットにした製品はつくらない。顧客からの強い共感を得るために100人に1人が深く共感してくれるようなニッチに刺さる製品づくりをする。
  • ファンとのコミュニケーションにおいて短期的な売上・利益を追わない。お客様と長期的に関係を築くことを重視する。
  • ファンイベントの企画・運営を代理店に一任する効率性を捨てる。代理店が提案を躊躇するようなイノベーティブな企画を生むために、社員が担当する。また、社員が担当する事で社員のコミットメントも高まり、イベントにおけるファンとの交流の質も高くなる。
  • 管理統制型のピラミッド組織の意思決定スピードを捨てても、チームによるイノベーションを重視する。フラットにコミュニケーションをとるための組織文化を全員に浸透させ、全スタッフが自ら考えて行動するようにマインドを変革するには、膨大な時間とエネルギーを要するため、容易に真似できない。
  • 経営理念に強い共感のない人を採用しない。フラットな組織を維持するために経営理念への共感は必須と考える。
  • 製造と販売における設備、施設の自社所有をしない。製造においては、大規模製造設備を所有せず、主力製品のほとんどをキリンビール社へ生産委託、東京都内に8店舗ある公式ビアレストラン事業を飲食店舗運営に長けたワンダーテーブル社に委託。店舗の所有から運営、商標まで全てを渡している。これにより、運営の自由度を失い、自社のブランドを毀損する危険性を伴うが、莫大な投資を避け、自社リソースを得意分野に集中することができる。委託によるリスクは、取引先とのチームづくりに注力し、信頼関係を構築する事で低減している。
  • 全国均質な営業体制を捨てる。全国的な認知を獲得するために、あえて地元の軽井沢に集中する。ヤッホーブルーイングは地域限定ブランド「軽井沢高原ビール」「軽井沢ビール クラフトザウルス」を発売しており、また、軽井沢専門の営業部署を設けている。さらに、軽井沢でも地域トップのスーパーチェーンである「ツルヤ」に集中して営業をかけ、店頭には同社製品がずらりと並ぶ。軽井沢市場において66%(同社調べ)を占める弊社の製品は、東京などからの訪問客に強い印象を残し、軽井沢での滞在を終えた後の継続購買につながっている。

戦略の一貫性

ヤッホーブルーイングは「ビールに味を!人生に幸せを!」という企業ミッションを実現するにあたり、自社の事業領域を単なる「ビール製造販売業」ではなく、「ビールを中心としたエンターテイメント事業」として位置付けており、2004年から約16年間にわたり「究極の顧客志向」と「独自の組織文化」の両輪を戦略のコアとして継続・強化し続けている。

同社の「究極の顧客志向」を目的とした戦略の原型は2004年に力を入れ始めたインターネット通信販売から始まった。地ビールブームが去り、苦境に陥っていた当時、唯一の顧客接点であるメールマガジンで、ビールや販促とは全く関係のない、プライベートを含めた面白い話やなにげない話を配信したところ、顧客の反響が増えたことに端を発する。これを期に、資本力に勝る大手メーカーとの差別化を進める上で、機能のみの訴求には限界があること、それ以上に一人ひとりの顧客を楽しませる"エンターテイメント"の可能性に気付いた。

ホームページ上で「店長争奪総選挙」、「フォトコンテスト よなよなエールの大冒険」など、ユニークで商売気の無い、エンターテイメント性の高いウエブ企画を行い続け、全ての反響に対して1件1件熱意を持って返信を続けることで、互いの人柄が分かるような双方向性の関係をもった顧客であるファンが徐々に増えていった。

2007年には、EC最大手の楽天市場における優秀店舗「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー(SOY)」に初選出され、以降10年間連続で選出された。2008年からは表彰式に井手社長が仮装で登壇し会場を賑わせた。その様子を顧客へ配信し、リアルの場での個性的な活動を、ネット配信で顧客に届けるという取り組みをはじめた。

2008年からは、通販部門だけでなく全社を顧客へより多くの価値を提供できるようなチームとするために、「チームビルディング研修(TBP)」を開始。任意参加ではあるものの、3ヶ月に亘るハードな研修であり、研修非参加スタッフの業務負荷が高まるため社内から大きな反発もあった。しかし、3年を過ぎたころから成果が出始め、現在まで10年間継続開催しており、既に90名以上のスタッフがこの研修を修了。

また、同時期より「経営理念」の策定を開始し、目指すべき方向性や価値観の共有に取り組みはじめた。2008年に目指すべき方向性として「ミッション」「ビジョン」を、2010年には「究極の顧客志向」「フラット」「仕事を楽しむ」などの要素を明示した組織文化「ガッホー文化(頑張れヤッホー文化)」を、2012年は全スタッフの規範となる「価値観」、2014年に弊社や製品が顧客に支持される理由である「ヤッホーバリュー」をそれぞれ定め、繰り返し浸透を促し続けている。

2009年、初の部門横断プロジェクトが立ち上がった。お客様に喜んでもらうために原材料体験企画を行ない、チームとして「究極の顧客志向」を目指す活動が始まった。この後「チーム」の重要性への理解が全社的に深まり、2018年秋からは外部の専門家に協力を仰ぎTBP1.5やTBP2.0という上位プログラムや、よりライトなTBP0.5を追加開催、役職や雇用形態、働き方に関わらずチームへの理解向上の取り組みを強めた。新入社員向け研修にもTBP要素を取り込み、全従業員が「チーム」を意識した働き方に取り組めるような仕組みを導入した。

2010年には、ファンイベント企画プロジェクトが立ち上がり、オフラインでのリアルな交流の場を持つべく、ファン約40名を集めた第一回ファンイベント「よなよなエールの宴(うたげ)」を開催。その後、徐々に規模を拡大しながら、「学び・交流・共創を意識したコンテンツ作り」「アンケート結果を基にPDCAをまわす」ことを続け、2016年までに40から80名規模の宴イベントを数十回以上開催。近年ではチケット販売開始からわずか数分で完売する人気イベントへと成長した。

さらに多くのファンとの交流を深めるべく、2015年春に500名のファンが一同に集うイベント「よなよなエールの超宴(ちょううたげ)」を初開催。以降2016年春に1,000名、2017年春に1,000名、2017年秋に4,000名、2018年秋に5,000名、2019年春に1,000名のイベントを継続して実施。(2019年秋には約10,000名規模、2020年春には2,000名規模のイベントを開催予定だったが、それぞれ大型台風、新型コロナウイルス流行により中止。)イベント当日は全従業員の6割以上が有志参加し"顔が見える"交流を行っている。これらの取り組みをより強化するため、2016年にはファンイベント専任部署を立ち上げ、顧客満足を追求したコンテンツ開発を続けている。

リアルな場でのファンイベントに加え、より気軽に参加できるオンライン飲み会イベント「よなよナイト」を2015年秋に開始。不定期開催ながらこれまで35回以上実施。オンラインにおいても双方向的コミュニケーションを図っている。2020年5月と6月に実施したオンラインイベント「おうち超宴」では、2日間の開催で延べ10,000名のファンが参加した。

こうして、ファンとの関係性が深まってきた結果、2018年春から、ファンによるファンのためのファンイベント「ファン宴」「超ファン宴」「めっちゃ宴」といったイベントが複数の地域で開催されるほどに顧客エンゲージメントが高まった。

2018年にはファンとともにヤッホーブルーイングの中期戦略や弊社との未来を議論するイベント「よなよな これから会議」を開催。

これらのイベントでは短期での収益性を度外視しており、いずれも開催の都度の単体収支は赤字だが、長きにわたる小さな交流と事業成長の積み重ねから、同社は、「ファンの顧客満足度を高めることが中期的な事業の成長に繋がるに違いない」と信じて継続してきた。その因果関係が明らかになるには時間がかかるが、だからこそ、他社の追随を許さない圧倒的なコミットメントがファンづくりにつながり、「日本有数の熱狂ファンを持つ企業」と評されることも多くなっている。

収益性

ヤッホーブルーイングの投下資本利益率、営業利益率はともに、5年間の業界平均を上回っている。(業界平均との収益性比較は、PwC Japanグループの協力を得ている。)
収益性

ヤッホーブルーイングの活動システム・マップ

活動システム・マップ

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第24回 ポーター賞 応募期間

2024年5月 7日(火)〜 6月 3日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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