受賞企業・事業レポート

株式会社ミルボン

2020年度 第20回ポーター賞受賞 美容室向けヘアケア製品製造販売
ミルボンは、美容室専売のヘアケア商品を製造、販売。一般消費者向けの製品は扱わない。 「美容室の増収増益につながる」事を第一の価値提供とし、製品開発においては、先端の美容師にしかできないような技術も製品と技術マニュアルに落とし込み、教育支援を提供することにより、多くの美容室が、顧客が求める高度なサービスを提供できるようにする。 美容室への営業・教育支援の「フィールドパーソンシステム」という仕組みを持ち、営業担当社員と教育担当社員が、美容室の成長を支援する様々なサービスを提供する。
本稿は、受賞企業の応募資料、受賞企業へのインタビュー、公表資料に基づいて、一橋ビジネススクール教授 大薗恵美が執筆した。受賞企業の応諾を得て公開している。

業界背景

2020_Milbon_photo.png ミルボンは美容室専売のヘアケア商品を製造販売しているが、ヘアケア商品は、肌の調子を整える「スキンケア化粧品」、口紅等の「メイクアップ化粧品」、香水、ボディソープ等と共に、「化粧品業界」を構成する。化粧品業界の国内市場規模は、2018年実績で2.6兆円であった。うち、ヘアケア商品の市場規模は、4,540億円、化粧品市場全体の構成比17.1%であった(*6)。

ヘアケア商品市場は、広く小売店を通じて製品を提供する「パブリック市場」と、美容室などの専門店に対してのみ製品を提供する「プロユース市場」に分類される。ミルボン担当者によると美容室のみを対象としたプロユース市場の規模は2019年実績で約1,780億円、ヘアケア商品市場の約38%程度であると見込んでいる。

プロユース市場に商品を提供している多くのメーカーは、パブリック市場でも事業を展開している場合が多いが、ミルボンはプロユース市場、中でも美容室に特化、同市場セグメントで約17%程度のシェアと見込んでおり、1999年よりトップシェアを維持している。

(*6) メーカー出荷金額ベース。矢野経済研究所、プレスリリースNo2355、2020年2月5日、「化粧品市場に関する調査を実施(2019年):インバウンド需要継続と機能性の高い商品の投入により、全カテゴリーで市場拡大?2018年度の国内化粧品市場は前年度比4.1%増の2兆6,490億円?」 https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2355(最終検索日、2020年11月25日)

ユニークな価値提供

ミルボンの価値提供は、化粧品業界において美容室・美容師のみをターゲット顧客として、製品提供をはじめ、技術支援、経営支援、人材育成支援まで総合的なサービスの全てを社員が提供することにより、「美容室の増収・増益に貢献すること」である。

ミルボンは、「プロユース市場」の中でも美容室に対象を絞って、シャンプーなどの「ヘアケア化粧品」を中心とした化粧品の製造、販売を行っている。パブリック市場はヘアケア商品市場の6割強を占め、市場規模は魅力だ。しかし、パブリック市場とプロユース市場はトレードオフの関係にあるとミルボンは考えている。優れたヘアケア商品やカラーリング剤など、自宅でプロ並みのヘアケアが可能なパブリック市場の商品ができれば、消費者は美容室を訪れる回数を減らすなどの影響が生じ、これはプロユース市場の衰退につながりかねない。したがって、パブリック市場とプロユース市場の両方で活動する企業は、プロユース市場を拡大させようという意思を美容師と共有することが難しくなり、美容師からの支持を得にくくなる。ミルボンは、プロユース市場で展開する企業がパブリック市場との両天秤をかけることは、企業イメージや戦略の一貫性を著しく損なうリスクがあると考えている。

日本全国に25万軒以上(*7)の美容室が存在し、美容室の数は年率1から2%程度のぺースで微増しているが、その内実は、約4%にあたる1万軒程が毎年開廃業する競争の激しい業界である。同年度の従業美容師数は53万人強(*8)、美容室当たり平均美容師数は2.1人であり、小規模な美容室が多数存在することがわかる。

ミルボンは、25万軒ある美容室の中でも、時代の変化に即応する、「成長意欲が高く、同社の方針や政策への共鳴度が高い美容室」をターゲット顧客とする。製品開発は、トップクラスの美容師が持つ美容技術を商品に落とし込み、使い方も含めて誰もが同じ効果を出せるように技術の標準化を目指して行われており、美容師から高い支持を得ている。(美容室には複数メーカーの商品が納入されている事が多く、美容師に選ばれて使われなければミルボンは成長する事ができない。

ミルボンは、フィールドパーソンシステムで支援している美容室の中から毎年、1,000件強の美容室から「経営指数調査」として売上データ等を無償で提供を受けており、このデータの変化を分析し、美容室の増収・増益が達成されているかを確認している。商流は美容室専業代理店を経由するが、ミルボンはこのようにして自社の目的が達成できているか、確認している。売上情報という貴重な経営情報を共有してもらえるのは簡単な事ではなく、ミルボンは、単なる商品上のつながりではなく、増収・増益に貢献するという姿勢への賛同を美容室から得られている結果だと考えている。

価格設定は、中?高価格帯だ。競合他社に比して高価格なラインナップが多いものの、製品だけでなく総合的な支援体制を付加価値として提供しており、高価格に支持を得ている。

(*7) 2018年度末時点、厚生労働省、『平成30年度衛生行政報告例』、https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/18/dl/kekka3.pdf (最終検索日、2020年11月25日)
(*8) 同上

独自のバリューチェーン

ミルボンのバリューチェーンの最大の特徴は、製品開発、美容室支援、マーケティング、人材育成にある。美容室の活動を深く理解した人材を育成する体制が、製品開発システムや美容室支援といった独自性の高い活動の実現につながっている。

製品開発
ミルボンでは、顧客からの評価が高い美容師から美容ノウハウを学び、これを反映して製品開発する仕組みがあり、「TAC製品開発システム」と呼ばれている。TACとはTarget Authority Customer(顧客代表制)の頭文字の略称。TAC製品開発システムは、「感性と科学の融合」というキーワードの下、美容師の感性的な技術力や美容ノウハウを科学の力で実現するという開発方針を持っている。ミルボンの開発担当者は、自ら美容室に出向き、美容師の技術や考え方を学び、製品開発に活かす。ミルボンの社員は、新入社員研修を通じて美容師・美容室を理解し美容技術の習得経験を有しているので、開発者も美容師の説明を理解することができる。

TAC製品開発システムでは、トップクラスの美容師が有する独自の美容技術や考え方を標準化し、製品に落とし込むことで、広く他の美容師も活用できるような製品を開発することを目指す。顧客から支持を得ている美容師は、顧客に対する接し方、活用している美容技術に独自性がある。また、製品の使い方についても、複数の商品を併用したり、通常想定される使い方とは異なる手法で使用していることもある。こうした独自の技術やノウハウは、顧客からの支持につながっているが、その美容師にしか再現することができない。そこで、TAC製品開発システムは、こういった美容師が持つ独自の技術やノウハウを、製品と製品の使い方(ノウハウ)までを含めたパッケージとして開発し、一般化・普遍化する。これにより、ミルボンが開発した製品は、製品の質だけで価値が決まるのではなく、パッケージ化された美容ノウハウを含めて製品を顧客に提供することによって付加価値が生ずる。この結果、顧客は、美容師からその製品を美容技術と合わせて提供されることによって実感される価値や、美容師からのパーソナライズされたアドバイスや、商品の正しい使い方のレクチャーを受けることによって提供される価値に、魅力を感じる。これは、美容師と顧客の関係性を強化させ、プロユース市場の拡大に貢献する価値創造である。

たとえば、2007年に発売された「オルディーブ」というヘアカラー剤は、その成功例だ。発売当時、単なる色味や明るさの違いに加え、高度な質感や立体感までを消費者は求めていた。高度な美容技術を持つ美容師は、アルミホイル等で髪をいくつかのブロックに分け、複数の色味で塗分け、質感や立体感を表現する高度な技術、「ホイルワーク」を実践していたが、当時これができたのはごく一部の限られた美容師だけだった。オルディーブは、最適な発色速度や薬剤の粘度を追求し、「ホイルワーク」の標準化に成功。同時に、「ホイルワーク」の技術マニュアルを作成、美容師への教育支援活動を展開した結果、多くの美容師が「ホイルワーク」を行うことができるようになった。オルディーブとホイルワーク・マニュアル、教育支援の3つを組み合わせる事によって、より多くの美容室においてパブリック製品との明確な差別化が可能になった。

研究開発
ミルボンでは、頭髪に関する研究が行われている。たとえば、高齢化によって要望が高まると考えられる「加齢による髪や頭皮の変化」を、科学的に解明した。加齢による髪や頭皮の変化」に対する悩みは美容室においても聞かれるものの、これに関する文献や学会発表は非常に限られていた。そこで、2012年より、理化学研究所が所有するSPring-8(*9)という大型放射光施設を用いて、髪や頭皮の研究を行った。また、2012年以降毎年300人以上に頭皮・毛髪のモニター診断を開始し、モニターの毛髪解明や、加齢による髪や頭皮の状態変化などの経年比較を進めた。その結果、加齢によって毛髪に骨と同様に骨粗しょう症のような空洞化が起きている現象"毛粗しょう????"を解明した(*10)。その後も、SPring-8を活用した毛髪研究や、300人規模のモニター観察を毎年行っており、研究成果を製品開発に応用している。このような研究開発体制を構築した美容室専売メーカーは他にない。

アウトバウンド・ロジスティクス
出荷物流においては、美容室等のプロユース市場に特化した専門代理店を通じて美容室に製品の供給を行う(一部商品はミルボンから美容室へ直送)。美容室からの急な要望に代理店が応えられるよう、代理店への配送は、個口商品であっても翌日には、全国にある代理店の配送拠点に届ける体制を確保している。代理店も美容室へのサービス提供に特化しているため、ミルボンの「美容室の増収・増益に貢献する」という戦略は、契約代理店の事業拡大という戦略にも合致する。美容室を経由しない一般顧客への直販の販路は採用していない。

ミルボンの営業社員は、代理店を頻繁に訪問し、常に最新のサービス情報を共有している。これにより、代理店が製品の供給のみならず、ミルボンの戦略を美容室に伝える役割も担っている。

美容室支援
ミルボンは、代理店経由でなく、美容室を直接支援する、「フィールドパーソンシステム」(以下、FPシステム)という独自の美容室支援体制を構築している。FPシステムは、「営業担当社員」と「教育担当社員」からなる。営業担当社員は、社員は自分でデモンストレーションを行いながら、製品の使用感なども美容師目線に立って製品の紹介ができる。また、美容室経営に必要な情報を踏まえた提案を行ない、美容室の営業面での支援をはじめ、様々な課題解決に貢献する。教育担当社員は、高度な美容技術の指導や人材育成等の教育支援を行う。それぞれの専門に分かれたこの2種類の社員が協働して、美容室の増収・増益に貢献する。たとえば、営業社員が美容室と共有した課題に対して、教育社員と協働して技術支援を含めた複合的な支援を行うことができる。この体制により提供されるサービスは、一方的に技術指導を行うのではなく、美容室の課題に寄り添いつつ美容室の成長を支援するために必要な技術支援を行なう。この結果、ミルボンは、美容室と製品を通じた単発的な連携ではなく、ともにパートナーとして成長しうる関係性を構築している。近年は、美容室向けのスキンケア化粧品の展開を始めたため、スキンケアの教育に特化したコスメティクス担当社員も加わった。

FPシステムは、プロパー社員が担っている(*11)。これに対し、競合他社では、特に美容室に対して技術的な支援を行う社員は、即戦力となる、予め美容技術を体得した人材を中途採用するケースも多く見られる。あるいは、外部委託して美容室の教育支援体制を構築しているケースも多い。ミルボンは、新入社員研修により社内で「教育人材」を育成する制度が構築されているため、教育社員の人員数が他社に比し圧倒的に多い。また、社員が担当する事から、ミルボンの戦略や製品について深い理解を持ち、提供するサービスの質を高めている。

マーケティング
ミルボンは、独自の顧客マッピングを通して美容室を分類し、これに応じて、FPシステムによる支援活動をしている。顧客マッピング分析には、代理店セールスとともに行う美容室訪問や、代理店から共有された情報を活用する。ミルボンではこれを、「フィールド活動システム」と呼ぶ。加えて、社長が、国内外問わず年間400軒以上の美容室を訪問し、オーナーの声を聴く。

これらの活動を通じて形成される市場政策は、マクロ経済環境から人口動態、市場動向までを踏まえた総合的な市場政策であり、まずミルボンの幹部社員に向けて発表し、続いて、年に一回の「政策発表会」において、契約代理店と美容室に共有される。

人的資源管理
新入社員研修は、入社後9か月間実施され、その間一切の営業活動を行わずに研修に専念する。職種にかかわらず全社員が最初に受講する3か月間の「ミルボンパーソン研修」では、美容室の事業、ミルボンの戦略についての理解を深め、美容技術をミルボン独自の検定制度に合格するまで学ぶ。その後、職種別の「6か月間研修」では、営業・教育社員は高度な美容技術の体得と美容室経営に対する理解等を深め、営業拠点でのOJTも実施する。

ミルボンが人材の育成に投資を惜しまない理由は、美容室の増収・増益を支援するにあたり、専門性をもった社員によるサポート体制が不可欠であると判断したからである。ミルボンのプロパー社員比率は高く、約85%。社員の大半が新入社員研修を受講している結果となる。業界では中途社員比率が高く、研修内容においても同等に長い期間をかけている例はない。また、営業から開発社員までが美容技術を習得している企業は他にない。

全般管理
ミルボンの戦略のコアとも呼べる部分は、『THE MILBON WAY』という、ミルボン社員が常に携行する小冊子にまとめられている。ミルボンパーソン研修で社長自らが勉強会を行うなど、社員一人ひとりにその考えが根付いている。2019年度に実施した従業員調査では、経営理念への理解が5段階中4.13ポイントと、同調査の他社平均(3.81ポイント)と比べても高い水準であった。

(*9)SPring-8 大型放射光施設公式ホームページ、 http://www.spring8.or.jp/ja/about_us/whats_sp8/(最終検索日、2020年11月25日)
(*10)この研究成果は2015年に第11回SPring-8産業利用報告会において、優秀賞を受賞した。その後も2018年に第30回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)ミュンヘン大会で「最優秀賞」を受賞、2019年に第14回アジア地区化粧品技術者会(ASCS)香港大会で「若手奨励賞」を受賞するなど、その研究成果は対外的にも高い評価を得ている。パブリック業界を含めても、化粧品業界でSPring-8を用いた研究成果を製品開発に応用している企業は、ミルボンの他は、株式会社花王、プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社などの数社に限られる。
(*11)コーポレート部門、営業総務等では一部中途採用を行っている。

活動間のフィット

ミルボンの活動は、美容室の増収・増益に貢献するために最適化されている。カットだけならば、シャンプーやセットをしないで10分で低価格で提供するサービスがある。トリートメントやヘアカラーは、自宅で手軽にできる商品が年々改良されている。したがって、美容室の増収増益に貢献するためには、パブリック市場で入手可能な商品よりも圧倒的に優れた商品が美容室のみで使われ、しかも、美容師の技術と一体となって提供されている、とお客様が感じることが必要だ。そこでミルボンは、商品の流通ルートを美容室に限定した。そして、先端的な美容師が提供している技術を製品に落とし込み、多くの美容師が同じ結果を出せるような製品開発を行い、また、そのプロセスをマニュアル化する「TAC製品開発システム」を作り上げた。そして、その製品の特長を伝え、プロセスを伝授し、加えて美容室の経営改善に資する様々な支援を提供する「フィールドパーソン」という支援体制を整えた。これを実行するためには、自社製品の知識だけではなく、美容師の技術や美容室の経営を良く理解した人材がフィールドパーソンになる必要があり、新入社員研修に始まる育成システムを構築した。育成された人材は、フィールドパーソンとして、あるいは研究開発担当者として働くことで美容室の付加価値を高め、美容室の増収増益に貢献することで、やりがいを感じ、高い率で定着する。高い定着率は高いサービス品質につながる。このように、ミルボンの活動は互いにフィットし、強めあっている。(本セクション最後に掲載したミルボンの活動システム・マップ」を参照ください。)

戦略を可能にしたイノベーション

  • 美容室に対する総合的な支援体制「フィールドパーソンシステム」。
  • フィールドパーソンによる支援先となる美容室を分類するための「フィールド活動システム」
  • 「TAC製品開発システム」。美容師の技術を理解した開発担当者が美容室を訪問し、美容師のニーズを理解し、また、先端的な美容師の技術を理解した上で製品開発を行う。
  • 欲しいものをすぐに、ひとつからでも届ける物流体制。1990年に業界としてはじめて個口配送、翌日配送を実現。当時、美容業界では「最低発注単位」というものがあることが通例であったが、小規模な美容室にとっては、過剰在庫となり大きな負担となっていた。
  • 多様化する美容ニーズに応える、毛髪の基礎研究体制。毛髪を専門的に研究している研究者は、日本でも非常に数が少ない。

トレードオフ

  • 美容室以外への製品展開をしない。市場規模の大きいパブリック市場を放棄する。結果、化粧品業界内の競争に巻き込まれにくい。
  • 営業・教育社員の中途採用はしない。
  • モノ売りをしない。ミルボンのFPシステムは、「モノを売るな、コンセプトを売れ」と、定義されている。これは、美容室に対して商品を「販売」するのではなく、美容室の増収・増益に貢献するための解決策や、技術支援を提供するという「コンセプト」を常に重視するという意味だ。目先の一時的な売り上げに捕らわれることなく、美容師の成長に向けて継続した関係性を持つこと、美容室の増収・増益に貢献するという姿勢を徹底することで、美容室との強固なパートナーシップを構築することを目指す。
  • シーズ開発に注力しない。TAC製品開発システムは、開発部門などで誕生した新技術を起点とする「シーズ開発」ではなく、顧客ニーズを起点とした、いわゆる「ニーズ開発」による製品開発システム。
  • 美容室の増収・増益につながらない活動は行わない。すべては美容室の増収・増益に貢献する為。

戦略の一貫性

ミルボンの「すべては美容室の増収・増益のために」という価値提供は、1960年の創業以来。美容室専売の化粧品のみの製造、販売という選択も、海外13地域への進出を果たしても、2020年現在に至るまで、約60年間変わっていない。

ミルボンの戦略のコアとも呼べる部分は『THE MILBON WAY』という、ミルボン社員が常に携行する小冊子にまとめられている。これは、創業者である鴻池一郎の戦略を、2012年に現2代目社長の佐藤龍二が文章化したもの。本質的な部分は変わらないものの、これまで5回の改版が行われ、時流の変化に対応しながら受け継がれてきた。

『THE MILBON WAY』を具体的な活動に落とし込んだものが、ミルボン独自の美容室支援体制である「フィールドパーソンシステム」だ。これは、1984年に研修センターを開設し、新入社員研修を開始した際に始まった。以降、営業・教育社員が美容室の増収増益に貢献できるように社員育成を徹底している。

また、TAC開発システムは1988年より開始された。「感性と科学の融合」というキーワードの下、今日まで製品開発の根幹となっており、これまでTAC開発システムで開発された商品ライン数は約200ラインとなっている。

美容室においてヘアカラーが盛んであった2000年代後半には、より高度なヘアカラーを実現するために、「カラースペシャリスト」という専門職を創設し、教育社員の中から育成した。カラースペシャリストの社員は、高度な技術はもとより、色彩や染毛に対する深い理解、薬剤の高度な使用方法まで習得し、最先端の技術を求める美容師のニーズに応えていった。また、フィールドパーソン研修においても「ホイルワーク」という新たなヘアカラー技術の習得をカリキュラムに取り入れ、美容室への教育支援体制を強化した。

2010年代にかけては、「ヘアケア」と呼ばれるシャンプーやトリートメントへのニーズが高まった。これに伴い、美容室に来店した顧客が技術メニューを受けるだけではなく、自宅でケアができる商品を購入する動きが生まれ、美容室における「店舗販売」という市場が拡大した。ミルボンはこのニーズに合わせ、TAC製品開発システムによって、日本人の髪の悩みに特化した総合ヘアケアシリーズである「Aujua」を開発した。また、教育社員の中から「Aujua専任社員」という組織を作り、顧客の髪の悩みを引き出すカウンセリング方法や高度な毛髪診断理論などを美容室に提供した。さらに、美容師向けに「Aujuaソムリエ認定制度」という検定制度を設け、これまで3,273人の認定を行った。認定を受けた「Aujuaソムリエ」が在籍している美容室はミルボンの専門サイトで公開している。

近年は、髪から肌までを含めたトータル・プロデュースのニーズが高まっているため、2017年、株式会社コーセーと資本業務提携を行い、美容室専売スキンケア化粧品の開発、販売を始めた。フィールドパーソンシステムにおいても、コスメティクス専任の社員を設け、美容室に対してスキンケア化粧品の教育支援を提供している。

また、美容室に来店する顧客からのインターネット販売への要望の高まりを受け、美容室が店舗販売をしている製品の一部について、2019年、顧客直送のECサイトを開設した。当サイトは、登録美容室が来店した顧客に対して発行したIDを用いてのみ使用することができ、一般顧客には開放していない。あくまで、美容室の増収・増益に貢献する仕組みと位置付けている。したがって、物流上はミルボンから顧客への直送であるが、商流上は店舗販売の製品と同じく、代理店を経て美容室で販売されたとの取り扱いをしている。

以上の通り、美容室の増収増益に貢献するという基本は一貫して変わらず、顧客ニーズの変化に応じて必要となる支援体制を拡充してきた。

収益性

ミルボンの投下資本利益率、営業利益率はともに、5年間の業界平均を上回っている。(業界平均との収益性比較は、PwC Japanグループの協力を得ている。)
収益性

ミルボンの活動システム・マップ

活動システム・マップ

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