受賞式・カンファレンス

ストーリーとしての競争戦略 "ポーター賞企業の戦略ストーリーを読み解く"

一橋大学大学院国際企業戦略研究科
教授 楠木建

ストーリーとしての競争戦略 "ポーター賞企業の戦略ストーリーを読み解く" 一橋大学大学院国際企業戦略研究科 教授 楠木建

本日は、ポーター賞受賞企業の戦略の面白さを読み解いてみようと思います。私は競争戦略という分野で仕事をしておりますが、超間接部門であるといえます。実際に企業を経営して方からは、「机上の空論」ではないかと言われることもあります。一方、大学では基礎的な研究をしている方からは、「理論がない」と言われ板挟みです。経営や戦略は、自然科学とは異なり法則はありません。法則とは、再現可能な普遍的因果関係で、こうやったら上手くいく、儲かるということです。つまり、科学は「人によらない」が、商売は「人による」ということです。有名な「アインシュタイン方程式」がありますが、これはあらゆる自然現象で成り立っています。一方、商売においては、同じ業界であるユニクロの柳井社長と、ZARAのインディテックス社の創業者オルテガ氏が、もし交代して経営しても上手くいかないだとうと思います。これが、法則がないということです。

私に「どうしたら儲かるのか」と聞かれても「分かりません」としか言えないのですが、「こう考えたどうでしょう」という考え方、論理を提供することはできます。その論理をまとめた本が「ストーリーとしての競争戦略」です。

ゴールは何か

ゴールが間違っていると戦略に意味がなくなるので、昔から、何をゴールとすべきかについて議論があります。これに決着を付けたのがポーター教授です。ゴールには次のものが考えられます。利益、シェア、成長、顧客満足、従業員満足、企業価値、社会貢献。それぞれが密接につながっていますが、競争戦略論では、「長期利益」が最終目標であるとしています。「顧客満足」は事業が作る重要な価値ですが、普通の競争状態では、「長期利益」と「顧客満足」は重なる部分が多く、「長期利益」は「顧客満足」の一番の指標であるとも言えます。「長期利益」があるから従業員に適正な給与が払える、「長期利益」があるから配当ができ株価があがる、「長期利益」があるから社会貢献もできる、というように多くのものと関連し中心に位置していると考え、「長期利益」をゴールとしています。
例を挙げてみますと、ファーストリテイリングの柳井社長の目標は一言「儲ける」で、これはどの会社でも原理原則です。昭和の経営の神様、松下幸之助氏の目標も、「儲ける」です。
ポーター賞のもう一つ重要な視点は、「企業」と「事業」が必ずしも同じではないことです。会社は複数の事業が入っている入れ物です。会社の代表取締役は資本市場を見て仕事をし、投資家に対して責任を負います。会社は、稼ぐ力という観点ではフィクションであり、稼ぐ力は個々の商売の中にあり、ポーター賞では会社ではなく事業を対象にしています。

競争戦略における「違い」

長期利益を得るために競争戦略があり、競争戦略の基本論理は「競合会社との違いをつくる」です。「違い」には2つのタイプがあります。OE(Operational Effectiveness)とSP(Strategic Positioning)です。OEはどちらがBetterなのか、ということで物差しがある「違い」です。人間では身長、体重、視力などです。SPはDifferentということで、物差しはありません。人間では男と女です。
ポーター教授の競争戦略では、「違い」はSPのことであり、他社よりBetterであっても、必ずしも戦略とは言えません。そして、他社と「違い(Different)」を作るために、トレードオフが必要であり、受賞企業インタビューでも取り上げていました、例えば、「北へ行こう」という意思決定をする場合、「南にも、東にも、西へも行かない」と決めることが重要なのです。戦略の本質が出るのは、そこに「あるもの」よりは「ないもの」なのです。
日経の一面を見ても戦略は見えてきません。それは、「あるもの」しか書いていないからです。

星野リゾートの「違い」

星野リゾート(2014年受賞)の星野社長から聞いた話を紹介します。
世界のホテル業界では、「おもてなし」という言葉が有名になりました。ホテル業界のコンベンションにおいて、ハイアットグループの社長が日本のホテル経営者に、「おもてなし、とは何なのか」と聞いたら「日本の得意な親切、丁寧、きめ細かい、正確なサービスです。」と答えたそうです。するとハイアットグループの社長は、「それはハイアットでも同じだ。」と答えました。超一流ホテルであれば、親切、丁寧、きめ細かい、正確なサービスは当たり前であり、日本のホテル経営者は黙るしかなかったそうです。そこで星野社長が答えたのは、「それは違います。世界の超一流ホテルがやっているのは、バトラー・サービスです。お客様がマスターであって、サーブ権はお客様にあります。お客様の要望に対し、正確、丁寧、迅速に応えるサービスです。星野リゾートがやっている日本の旅館に昔からある『おもてなし』は、旅館とお客様は対等の関係で、サーブ権は旅館側にあります。旅館が自分の世界観を作り、お客様はその世界を堪能する。これが『おもてなし』です。」と答えたそうです。星野社長は、何をしないかを考えます。これがない人は、もっと「親切、丁寧、きめ細かい、正確なサービス」を目指しOEを追求しますが、これは戦略ではありません。
次も星野リゾートの例です。青森の団体向けの大型温泉ホテル「青森屋」の再生の際の話です。青森で一番有名な観光イベントは「ねぶた祭り」なので、毎晩、団体客の夕飯の時に「ねぶたショー」をやり、これが大成功となりました。ところが2年後、青森のすべての大型温泉ホテルで「ねぶた祭り」をやるようになりました。これは、優れた施策ではあったが戦略ではなかった。それは、競争相手にトレードオフを迫っていないからです。戦略とは、競争相手にトレードオフを迫るものなので、今年受賞企業4社は、すべて、トレードオフを迫っています。
もう一つ星野リゾートの例です。北海道のトマムという、典型的なバブル開発のスキーリゾート地です。スキーリゾートは冬は良いのですが、夏にお客さんが来ません。かつ、リフトをリゾート側が資産として持っているので、その稼働率が問題となります。そこで、夏にリフトを使ってお客さんに山に登ってもらう施策として、「雲海テラス」を始めました。山の上に簡単なテラスを作り、そこから雲海を眺めるものです。大変好評で、冬よりもお客さんが来るようになりました。しかし、2年後、JTBの夏の北海道旅行のパンフレットの表紙は「あなたはどこの雲海テラスにいきますか」と10個の写真が並んでいました。これも、トレードオフを迫っていません。

では、星野リゾートの戦略は何かというと、それは「所有はしない、運営に特化」です。典型的な小規模のホテル、旅館は、所有と運営が一体となっていますが、星野リゾートは運営に特化し所有はそれぞれのオーナーになります。一方、国際的なホテルチェーンは、所有と運営は分かれていますが、運営も効率を求めるので外部委託し、基本的にマーケティングに特化します。星野リゾートは、これとも異なり、「所有はしないが、独自の運営にこだわる」スタイルです、両方に対し差別化し、今後のグローバル化の可能性が見えています。

「違い」を長期利益につなげるストーリー

そして、このような「違い」を長期利益に向けてつなげるのが「ストーリーとしての競争戦略」です。何故このような考え方をするようになったのかをお話しします。「当社の戦略を評価して欲しい」、と言われることがよくあります。その内容の8割、9割が、戦略のアクションリストになっています。一つひとつは有効な手段なのかもしれませんが、これらが、どのようにつながって利益を生み出すかが理解できません。私は、これを戦略のローリングストーンズ化、と呼んでいます。「I can't get no satisfaction....」。
今、つながり、と言っているのは、因果関係の論理ということです。最終的な長期利益というゴールに向かって、
「何故儲かるのか」、それは、「我だけがこういうことができるから」
「何故それができるのか」、それは、「うちのお客様がこうなっているから」
「何故そうなっているのか」、それは、「我々がこれをやっているから」
「何故それをやっているのか」、それは、「そもそもこれに特化しているから」
これが「つながり」であり、戦略のストーリーです。
ポーター賞受賞企業の例を見てみます。
ピジョン(2016年受賞)が儲かっているのは、世界一の哺乳瓶があるからです。日本でも中国でもトップシエアで、かつ競合商品よりも高い値段で売れます。しかし、これだけでは良くある「モノづくりの力」ですが、戦略のストーリーがピジョンにはあります。18か月未満しかやらないことです。18か月未満は言葉を話さないので文化的な影響を受けず、世界中の赤ちゃんがほぼ同じ行動を取ります。本当に良い哺乳瓶を作れば、その努力がグローバルで報われることになります。18か月以上になると、言葉、文化、食生活、ライフスタイル、宗教等の影響を受け、日本で良いと思っても、グローバルで受け入れられるとは限りません。つまり、「何をしないかという戦略」と「モノづくり」がつながって長期利益を生み出しています。

IBJ(2015年受賞)は、好業績の婚活サービスの会社です。今、婚活ビジネスは有望視され様々な企業が参入しています。多くの企業はマッチング・サービスを提供しており、男性会員と女性会員の間にアルゴリズムやSNSを置いています。IBJの石坂CEOは少子化対策に目を向け、「結婚したい人が結婚する」ことが有効であり、それに貢献したいと考えました。マッチィングと結婚の間には大きなギャップがあり、それを埋めるのが本当の婚活サービスと考えたのです。また、多くのマッチング・サービスは、相手が見つからないと「いいお客様」になってしまう仕組みですが、IBJでは、まず広い入口を設け、階段を上がるように結婚に向けてステップアップします。そして、「お見合い」のステップになると、「IBJメンバーズ」が登場します。今でも全国に結婚相談所があり、「IBJメンバーズ」はそれを組織化したものです。これがIBJの戦略の面白いところであり、成婚率を上げるのに大きな効果があるのです。IBJの競合他社との違いは成婚率が高いことで、だから会員が集まるのです。その裏には戦略のストーリーがあります。

時間的な奥行きと広がり

IBJの例で良く分かることだと思いますが、戦略は「組合せ」ではなく「順列」であり、その違いは時間軸が入っているということです。戦略の話で良く聞くのは、「相乗効果を梃子にして」、「シナジーを発揮して」です。それは、戦略が単なる組合せになっており、順番が重要な要素であることに気付いていません。戦略においては、時間的な奥行きと広がりが極めて重要です。

野球に例にとります。元中日の山本投手は50歳過ぎまで現役で、最後は速球も135km位でした。一方、大リーグのイチロー選手はマウンドに立つと150km近く出せるそうです。イチロー選手が山本投手に「スピードガンでは僕の方が速いのに、何故打者は山本さんの方が速いと言うのか」と聞いたところ、山本投手は、「それは俺がプロの投手だからだよ。プロの投手は速い球ではなく、速く見える球を投げる。」と答えたそうです。速く見える、というは順列の問題で、前に緩い球を投げれば速く見える、ということです。順列が重要であるという点で野球と商売が共通しているという例ですが、それは共に、必殺技はがないものだからです。
もう少しスポーツにおける順番の話をします。陸上の100mは何しろ速い者が勝ちますが、100m×4では、走る順番も重要な要素になります。また、ラケット競技では、テニスが速いサービスでポイントを取れますが、バドミントンでは、どのような順番でどのようなショットを打つのかが重要です。
今の日本のように成熟経済下では、商売は100m走やテニスよりも、バドミントンに近いのではないか。ある一つの戦略的意思決定だけではなく、それをつなげたストーリーが大切です。飛び道具に寄りかからないことです。「新規」で「セクシー」な「旬」のタマに依存すると、ストーリーがなくなります。個別のアクションやディシジョンの意味は、ストーリー全体の文脈に置かなければわからないのです。「違い」の正体は、個別のタマ(構成要素)でなく、総体としての「ストーリー」です。

戦略のジレンマ

優れた戦略の条件に、「クリティカル・コア」、即ち商売の肝(きも)があります。これまで、「他社と違った良いことをやる」とお話ししてきましたが、ここには戦略のジレンマがあります。良い戦略は他社に真似され、結果、良い戦略にならないということで、このジレンマを乗り越えてこそ、良い戦略なのです。
ある企業が「良い戦略」を立て長期的に利益を出しているとすると、2つの謎があります。一つは、何故、これまで誰もその戦略を思いつかなかったのか、二つ目は、何故、他社がその「良い戦略」の成功を知っているにもかかわらず、模倣されずに競争優位を持続できるのか。
「ブルー・オーシャン戦略」という本があります。市場を再定義してレッド・オーシャンではなくブルー・オーシャンを見つけよう、という考え方です。ブルー・オーシャンでも、同じようにそこで商売しようという者が出てきます。それでも儲かり続けるのは、規模の経済、範囲の経済、先行者優位(とくにグローバル化)、ネットワーク外部性、豊富な投入資源、パテントプロテクション等の論理がありますが、あまり面白くありません。
戦略論は常に模倣障壁の議論になります。ブルー・オーシャン戦略では、「同じことをやりたいのだけれども、先にブルー・オーシャンを発見した企業が先行者優位を構築してしまっている」。ポーター先生のポジショニングでは、「同じことをやりたいのだけれども、トレードオフがあるのでできない」とあり、更に、活動システムの一貫性として、「同じことをやりたいのだけれども、一部の要素については模倣できる(リポジショニング)にしても、活動システムの全部に渡って模倣することはできない」となっています。

模倣の忌避

私は、模倣障壁について、「競争相手による模倣の忌避:そもそもそういうことをやろうと思わない、やりたくない」が優れた戦略ストーリーではないかと思っています。「ストーリー全体の合理性」と「部分(アクション)の合理性」で4つに分けて考えてみます。ストーリー全体も部分(アクション)も合理性があるのは、「普通の賢者」であり、ストーリー全体は合理的であるが、部分を見ると非合理なものがあるのが、「賢者の盲点」であり、優れた戦略であると考えます。これによって競争相手による模倣の忌避が生じ、長期的利益をもたらしているのです。「普通の賢者」は模倣障壁をつくる必要がありますが、「賢者の盲点」をついた戦略は、他者がそもそも真似したいと考えないので、「違い」が持続します。具体例を挙げてみます。

ZARA

ファッション業界は競馬に似た面があります。2018年春夏シーズンを考えると、今はパドックで新作を品定めしている状況で、何が流行するか予想します。そしてシーズンが始まると、自分が予想した物がはやると儲かりますが、しばしば外れます。そこでZARAの創業者のオルテガ氏は、外れが続いた状況で、「予想するから外れる、第3コーナーで馬券を買う」、「売れる物を作れば売れる」という結論をだしました。しかし、これを実現するためには充実したサプライチェーンを作る必要があります。広告をせず、配送センター、倉庫、システムに投資し、大成功を収め、ファストファッションという業態を作ることになります。例えば、社内に大量のデザイナーを抱えます。ファッション業界では、その時流行っているデザイナーと契約するのが一般的で、社内には抱えません。かつ採用条件は「創造性、独創性のないデザイナー」というものです。ZARAの戦略は、売れている物を即座に模倣し市場にだすことなので、創造性、独創性は不要なのです。製造のし易さ、コストコントロール等が考慮された商品をスピーディに作るために、デザイナーも含めた社内のチームが必要なのです。

ユニクロ(2009年受賞)は、ZARAから20年後にでてきました。ユニクロは、東レと提携して素材から手掛けて「ヒートテック」を生み出しました。大切なのは、戦略のストーリーがファストファッションとは違うということです。ファストファッション業界では、ZARAの後に様々な企業が生まれています。H&Mは、バックストレートで馬券を買い、最後の直線で馬券を買うスーパーファストファッションです。その中でユニクロが優れているのは、「初めて牧場にいった会社」ということ、「牧場で絶対勝てる馬を自ら育て、勝てる馬しか出走させない」ことです。開発に3年を要していますが、今に至るまで15年、改良を加えて、大きな収入源であり続けています。マーケットインのファストファッション業界とは反対の戦略を採っていますが、ZARAも、ユニクロも非常に優れた戦略です。ユニクロでは、素材開発に量的にコミットしていますが、これもZARAとは真逆です。しかし、これを行うから、低価格で高品質のカシミヤを供給できるのです。ファストファッション業界では、週を単位として販売計画を立てるのが普通ですが、ユニクロの販売計画は3年スパンです。

ガリバー(2006年受賞)の初期の戦略に感動しました。まずは中古車販売業の基本的な仕組みを説明します。一般の方から中古車を買い取り、マージンを取って売るという一見シンプルに見えるものですが、モデル、色、走行距離等多くのバリエーションがあり、売り手と買い手をマッチングさせるのは簡単ではかく、大型の展示場で台数を多く揃えることが大切になります。なおかつ、買い取ってから時間が経つと価値が下がっていき、3か月を過ぎると不良在庫になります。優秀なセールスマンがいても、並べた車の3割が売れればいい方だそうです。この売れ残った在庫は、B to Bのオークションに出して売ります。また、オークションで買い取ることもあり、B to CとB to Bが補完しあって回っているビジネスです。オークションでは利益率が低いので、中古車販売業者はできるだけ展示場で一般に販売したいと考えます。なので、店頭に派手な装飾を施し、イベントを開催して集客に注力します。
では、ガリバーの場合は、一般の方から中古車を買い取ることは同じですが、展示販売をせず、B to Bのオークションに出して売ります。週1回くらいの頻度でオークションがありますので在庫は1週間程度です。この戦略は良い事がたくさんあります。展示場がいらない、セールスマンがいらない、広告がいらない、プロモーションがいらない等によりコストが下がります。もっと影響が大きいのはリスクが下がることです。販売先はB to Bのオープンマーケットなので、販売価格が予想しやすくので、利益を確保できる買い取り価格を設定できます。
そこで疑問に思うのは、長い歴史のある中古車業界で、何故これまで誰も思いつかなかったのか、ということです。世田谷にスポーティなメルセデス専門の中古車屋がありますが、展示車両2台しかないのに商売が成り立っていますが、それは、売れた時のマージンが大きいためで、それが中古車販売の魅力のようです。このような中古車業界にあってガリバーは、マージンが小さいオークションのみで販売しており、誰もそのような方法を思いつかなかったのです。

スター・マイカ(2011年受賞)は、都市部でのマンション仲介ビジネスです。このビジネスの魅力は売買差額であり、高い物件、大きな物件に惹かれます。ところが、スター・マイカはそうではなく、東京近郊のファミリー向けマンションのように実需が多い物件しかやりません。この物件は、普通の不動産業者には魅力のないものです。しかも、スター・マイカは、人が住んでいる物件を買います。居住者がいる物件は、強制的に退去させることが難しいので、価格は安くなります。中々売れない可能性があるのですが、その場合は家賃収入を得て保有し続けます。こればビジネス上のリスクなのですが、このような物件を多数保有することでリスクを分散しているのです。

オープンハウス(2016年受賞)も不動産ビジネスですが、都心の一戸建てを販売しています。土地の仕入れがユニークで、四角形でない、前面道路が小さい、高さ制限があるような土地、即ち、普通の不動産業者であれば避けるような土地を積極的に仕入れます。また、東京23区に特化しており、本年度受賞のカチタスの逆のエリアです。オープンハウス、スター・マイカ、カチタスは同じ不動産業者ですが、それぞれがユニークな戦略を持って勝者となっています。

ほぼ日(2012年受賞)は最近上場しましたが、売っているものは、手帳、土鍋、腹巻などで、とても儲かりそうには見えません。ほぼ日の戦略ストーリーは、HPにおいて生活者の日常の動機を毎日発信?消費者と動機の継続的なやり取りを行う?動機の共感に基づく自社商品の開発?日常生活での商品の実感?ロングラン商品、というものです。

ネットプロテクションズ(2017年受賞)は、EC、通販における後払いサービスの会社です。ネットプロテクションズでは、名前と住所、電話番号、メールアドレスだけで54,000円与信します。勿論、貸倒もあり直ぐには儲かりません。ところが、最初の手続きを簡単にすることで広く集まり、与信の本質はクレンジング・ビジネスですから、回数が増える程リスクが減り、高収益を上げています。

以上のように、いずれの会社も部分だけを見ると非合理であり、他社が避けていた、真似しようと思わないものがあるのが、優れた戦略です。

成熟経済下では、あからさまなオポチュニティはそうはありませんし、政府にできることに限界があり、アベノミクスは「そよ風」にすぎません。高度成長期には、大きな帆船が最適で、帆いっぱいに風を受けて進めば良かったのですが、今の日本には、それぞれがエンジンを着けた高性能のクルーザーがたくさんあるべきだと思います。

ポーター賞では、このような企業を、その理由も含めてお伝えしています。これからも、優れた戦略を理解して、言語化して皆さんにお届けすることによって、日本の産業、経済に少しでも貢献したいと思っており、ポーター賞はそのために非常に重要な事業ですので、これからもご感心を持っていただき、また、ご応募いただきたいと思っております。

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第24回 ポーター賞 応募期間

2023年5月 8日(月)〜 6月 5日(月)
上記応募期間中に応募用紙をお送りください。
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